【ボルボ XC60雪上試乗】状況が過酷になるほど真価を発揮!雪上でも“不安”は皆無
&GP / 2018年1月21日 20時0分
【ボルボ XC60雪上試乗】状況が過酷になるほど真価を発揮!雪上でも“不安”は皆無
2017-2018 日本カー・オブ・ザ・イヤーの受賞など、今まさに“時のクルマ”として注目を集めるボルボ「XC60」。
兄貴分たる「XC90」や「V90」譲りの知的で落ち着いた北欧デザインはもちろん、都市部でも扱いやすいボディサイズや最先端の各種電子デバイスなど、新世代のボルボ車らしい魅力にあふれています。
もちろん、XC60に限らず、クロスオーバーSUVといえば、使い勝手や居住性も要注目ポイントかと思いますが、ウインターシーズンともなれば、やはり「雪道での走行性能が気になる」という人も多いはず。もちろんボルボといえば、いわずと知れた北欧ブランドですから、雪道への期待値もおのずと高めになってしまいます。
そこで今回、長野駅を起点に、長野北部、新潟、群馬を巡り、東京へと戻る雪上路中心のロングドライブに出掛けてみました。果たしてXC60は、我々の期待に応えてくれるのでしょうか?
■どんな路面でも安心して走れることこそボルボの個性
XC60の素性の良さやオンロード性能の高さなどについては、すでにレポート済みですが、その概要を振り返ると、十分な動力性能と先進の安全装備、センスの良い内外装など、ドイツ御三家もかくや…という完成度にあるようです。
またXC60は、全長4690mm、全幅1900mm、全高1660mmという、都市部でもなんとか取り回せるボディサイズに加え、3つのトリムレベルに4種類のエンジンを組み合わせることで、ユーザーの使い方や趣味に合わせた1台が選べるのも美点といえるでしょう。
ちなみに、今回、テストドライブに連れ出したのは、2リッターのガソリンターボ“T5”ユニットを搭載した上級グレード「インスクリプション」。エントリーグレードである「モメンタム」でも、安全装備、快適装備ともに充実していますが、それに加えてインスクリプションでは、ナッパレザーシートやエクステリアのクロームトリムなど、内外装の質感アップが図られています。
走り出す前から「あぁ、北欧ブランドらしいな…」と感心させられたのは、シートでした。たっぷりとしたサイズに加え、フロント、リアともにヒーターが内蔵されており、氷点下の屋外から乗り込んでも、たちまち快適な暖かさがカラダを包みます。また、インスクリプションに備わるステアリングヒーターも、この季節、ドライバーにとっては重宝する装備。ちなみにレザーシートといえば、夏場は背中がじっとり汗ばむといったことがありますが、内蔵されるベンチレーション機能はなかなか強力なので、季節を問わず座り心地は快適です。
さて、長野駅をスタートして進路を北にとりますが、雪の予報を裏切るかのように、ドライ路面が続きます。テスト車両はオプションの電子制御エアサスペンション装着車で、連続可変ダンパーを備えるほか、ドライブモードや車速により車高が自動調整され、「ダイナミック」モードを選べば20mmダウン、「オフロード」モードでは40mmアップするなど、凝った足回りとなっています。そんなテクノロジーに少々身構えつつも、ドライブモードはデフォルトの「コンフォート」モードのまま、一般道から高速道路へと上がりますが、その乗り心地は速度域の別なく、フラットで快適でした。
エンジンは、最高出力254馬力、最大トルク35.7kg-mというスペックですが、スムーズな8速ATのサポートもあり、パフォーマンス的には過不足なく、といったところでしょうか。法定速度上限でのクルージングでは、エンジンの回転計は1500回転前後を行ったり来たりという感じですし、ドライバーを刺激するような感触ではありませんが、伸びやかでキレのある加速は清々しくもあります。
XC60のタイヤサイズは、グレードにより235/60R18、235/55R19、さらに、20インチや21インチの設定もありますが、インスクリプションは235/55R19が標準となります。試乗車には真新しいブリヂストン製スタッドレスタイヤが装着されており、ステアリングを通じて舗装状況の変化はしっかり伝えつつも、タイヤが発するノイズや不快な振動を車内で感じることはありませんでした。
上信越自動車道を走ること30分あまり。信濃町インターチェンジで高速道路を降り、いよいよ今回のハイライトである斑尾山、そして、新潟方面へと抜ける峠越えへと進みます。
予想に反し、新雪に遭遇することはありませんでしたが、圧雪、軽めのアイスバーン、水分を含んだシャーベットと、刻々と路面状況が変わる悪コンディション。アップダウンや細かいカーブも続きますから、いかに最新の4WD車とはいえ、状況としては手ごわく、精神的にも走りづらいというのが本音でしょう。
実は、ボルボが市販モデルに4WDメカニズムを採用したのは、さほど昔のことではなく、1996年のこと。「850」シリーズの末期に試験的に導入され、翌年にはボルボ初のクロスカントリーモデル「V70 XC」で本格的な量産へと移りました。オフロードでの走行性能向上も4WD採用の大きな理由ですが、さらには、ヨーロッパでスパイクタイヤ規制が強化されたこともあり、雪上を安全に走るための機能として、ボルボの4WDは急速な進化を遂げていくのです。何しろ、ボルボ車にとって安全は最も優先すべきテーマであり、その技術開発に傾ける熱意はクルマ好きならご存知のことでしょう。そして現在、その完成度の高さは誰もが認めるところとなり、ボルボ車全体の受注のうち、実に40%以上を4WDモデルが占めるようになったのです。
さて、意を決して、100kmあまりの山間コースへと進みましたが、結果からいえば“不安”や“危うさ”を感じるようなことは何も起こらず、とてもリラックスした山間ドライブを楽しむことができました。まるで雪などなかったかのような…というのはいいすぎですが、XC60の電子制御4WDシステムと最新スタッドレスタイヤのコンビネーションは、1860kgの車体をドライバーの意思どおりに走らせ、曲がらせ、止まらせるに十分なパフォーマンスを披露してくれたのです。
タイトな上りコーナーでもトラクションが抜けるような感触はありませんでしたし、ステアリングにもしっかりと路面の感触が伝わってきます。下り坂もしかりで、足裏の動きがペダル、ブレーキ、タイヤへと伝わり、確実に減速してくれますし、ステアリングを操作すれば忠実にノーズの向きが変わります。何より感心させられたのは、その自然なフィーリング。物理の法則に反する操作に挑まない限りは、雪上ならではの緊張感を感じることはありませんでした。
欠点らしい欠点など見当たらなかったXC60での雪上ドライブですが、唯一、重箱の隅をつつくなら、微かに聞こえるエンジン音がやや色気に乏しいということでしょうか。とはいえ、イギリスの高級スピーカーブランド“Bowers & Wilkins(バウアーズ&ウィルキンス)”のプレミアムオーディオシステムもオプションで用意されていますから、エンジン音に一喜一憂するのではなく、好みの音楽を聞きながらくつろいだドライビングを楽しむというのが、イマドキのボルボにふさわしい付き合い方なのかもしれません。
雪上での走行性能を含め、ミドルクラスのクロスオーバーSUVとしては全方位で水準以上の出来栄えを誇るXC60。400km超の距離をともにして強く感じたのは「コレならどこへでも行ける」という安心感でした。ドイツ御三家のモデルに加え、ランドローバーの「レンジローバー レヴォーグ」やポルシェ「マカン」などがしのぎを削るミドルクラスの輸入クロスオーバーSUVですが、シチュエーションを問わないXC60の安心感は、ライバルたちの強力なキャラクターとも十分に対抗できる、ボルボならではの個性だと思います。
<SPECIFICATIONS>
☆T5 AWD インスクリプション
ボディサイズ:L4690×W1900×H1660mm
車重:1860kg
駆動方式:4WD
エンジン:1968cc 直列4気筒 DOHC ターボ
最高出力:254馬力/5500回転
最大トルク:35.7kg-m/1500~4800回転
価格:679万円
(文&写真/村田尚之)
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