時計型が減りメガネ型が増加!「ウェアラブルEXPO」で見えた最新トレンド
&GP / 2018年1月23日 6時30分
時計型が減りメガネ型が増加!「ウェアラブルEXPO」で見えた最新トレンド
2018年1月17日~19日、東京ビッグサイトにて「第4回ウェアラブルEXPO」が開催。同展示会では、数多くのウエアラブル端末や、活用ソリューションが出展されました。
一般消費者向けの商品こそ限られてはいるものの、筆者が会場で感じた展示のトレンド・傾向についてお伝えしたいと思います。
■腕時計型のデバイスはあまりない?
「ウエアラブル」と聞くと、まずスマートウォッチ/スマートバンドのように“腕に巻く”デバイスを想像しがちですが、目立った商品はあまりありませんでした。
▲Fitbitが発売した新モデル「Fitbit Ionic」。同社の時計型製品としては初めて防水をサポート。新たに音楽データを保存できるようになった点も特徴だ
唯一存在感があったのは、Fitbitが発表した新モデルくらいでしょうか。Apple WatchやAndroid Wear、そして時計メーカーが展開するコネクテッドウォッチなどを除くと、純粋なウエアラブルデバイスという形で生き残っているブランドは同社くらいなのかもしれません。
一方、BtoB向けでは、“腕に巻く”という選択肢も提案され続けている模様。例えば工場のラインなど、現場でタブレットを使うと両手が塞がれてしまいます。「じゃあデバイスを腕に巻けばよいではないか」という商品もチラホラ…。とはいえ、どれも目新しさに欠ける印象でした。
▲株式会社トランザスが提供する「Cygnus(シグナス)」。昨年の第3回ウェアラブルEXPOでも展示されていた商品だが、今年は既に試験的な発売が始まっており、導入事例が紹介されていた
▲手の甲などの装着して使うウェルキャットのウエアラブルターミナル「WIT」シリーズ。初代は2006年から出ている定番の商品だ
■「メガネ」型を展示するメーカーが増えた気がする
一方、展示が増えたなぁと感じるのは、メガネ型のウエアラブルデバイス。OSにAndroidを搭載している製品や、メガネやヘルメットの上からでも装着できる製品が多く見受けられます。また、フレーム部分にカメラが搭載されていて、自身の見ている映像を遠くに伝達できる機能をウリにしている企業も多いですね。
▲エプソンが提供する商用スマートグラス「MOVERIO」。Androidをベースにしている。筆者は、同社が提供する「LiveTalk」というソフトウェアで、音声をテキスト化および翻訳して表示できるというデモを体験した
▲こちらもエプソンが提供する商業向けのスマートヘッドセット「MOVERIO Pro」
何より、提案されるソリューションが具体的になり、実際にデモとして体験できるようになっていたことが印象的でした。例えば、翻訳ツールや美術館の展示の解説。あるいは、遠隔地のオペレーターに映像を伝えて現場の作業者に指示を出す。ドローンを遠隔で操縦する、などなど。
▲サン電子株式会社が提供する「AceReal」はヘルメットと一緒に装着でき、防塵防滴性能(IP54準拠)を備える。会場では3D映像を映し出すデモが展示されていた
さて、そんな乱立する眼鏡型デバイスコーナーで目立っていたのが、QDレーザが展示していた「RETISSA Display」です。こちらは、小型プロジェクタで網膜に直接映像を投影するという技術が目新しく、体験コーナーには長蛇の列ができていました。
▲QDレーザの「RETISSA Display」は、レーザー網膜走査技術「VISIRIUMテクノロジー」を採用。7月から販売を予定
約3年前から開発を始め、過去のウェアラブルEXPOでは技術展示として参加していたとのこと。今年は商品展示が行われ、7月からの発売も発表しています。
同製品の特徴はピント調整が不要なこと。通常型のウエアラブルだと、メガネに映る映像を見ようとしなければいけないのですが、こちらはプロジェクターが目に直接映像を投影するので、視点をどこに合わせても良いといいます。
なお、レンズが付いているのは、視界を暗くして暗幕のようにするためです。
▲エンハンラボが展示する「b.g.(ビージー:beyond grassesの略)」。眼鏡の上からかけられるのが特徴で、上下に2段階で位置を調整できる。残念ながら展示品はモックアップで、使用感は分からなかった
一方、ユニークな形状で注目されたのが、エンハンラボの「b.g.」というデバイス。同社は、メガネスーパーを展開しているビジョナリーホールディングスの子会社です。
昨年公開されたプロトタイプとは形状が大きく変化し、鼻の頭に存在感あるデバイスが乗る形状に…。第一印象としては「無しだろこれは」と思うデザイン。しかし、見え方のクオリティにこだわったという製品ゆえ、レビュー無しでの正確な言及は避けようと思います。
▲ボストンクラブが2016年に発表したスライド式着脱機構「neoplug(ネオプラグ)」
最後に、筆者が気になったのは、ボストンクラブが展示していた「neoplug」という規格。2016年に発表されたデザインで、一見すると通常のメガネだが、対応するデバイスを装着できるのが特徴です。
今年は5~6社のメーカーが同規格に合わせたデバイスを開発していました。こうした商品が洗練されていけば、ウェアラブルデバイスをより気軽に利用できるようになるかもしれませんね。
■「着る」ウエアラブルは型が定まってきた
ウエアアラブルでもうひとつ大きなジャンルを挙げるとすると、服として「着る」商品が存在します。
▲ミツフジが展示していた「hamon」。心電、心拍、活動量といった生体情報をモニタリングできる。胸部のトランスミッターからスマホへと情報が送信される
こうした商品の基本的な構造は共通していて、みぞおちに相当する部分にデバイスがあり、衣服に忍ばせたセンサーからの情報を解析するというもの。それをタブレットないしパソコンへと送信するわけです。
▲ユニオンツールが提供する心拍センサーの裏側。ボタンで衣類と接続するようになっている
デバイスと衣服は金属のボタンでカチッとはめ込んで取り付けます。洗濯時には取り外す仕様。
▲東洋紡が展示するフィルム状の機能性素材「COCOMI(心美)」を活用した衣類。開発は2015年頃から行っている。今年は呼吸や心電位、筋電図などを測定できるバリエーションや、活用事例を紹介
こうした商品では、呼吸や心拍数、筋肉の動きなどを測定可能。スポーツはもちろん、医療分野、見守り用途での活用などを中心に、さまざまな分野での応用を模索している段階です。
例えば、東洋紡では、馬の健康をモニターしたり、眠気感知システムに利用したりするシステムを開発済み。
▲米Du Pont(デュポン)が展示していた製品群。開発期間は約5年。インク状の電極をフィルム状に印刷し、布へと転写する技術を持つ
どの商品も、(胸部のデバイス以外は)野暮ったさがあまり感じられないデザインです。特にスポーツ分野では、抵抗なく着用できる人も多いと思うので、こうした衣類を何気なく着用する未来も近いかもしれません。
一方で、一見しただけでは各社の商品の差が分かりづらいのも事実。製品自体は洗練されてきた印象があるので、あとはキラーコンテンツが欲しいところでしょうか。
▲クラボウ(倉敷紡績株式会社)のスマート衣料「Smartfit」は工事現場の熱中症対策を想定して開発された。将来的には、体温を検知してエアコンと連携するまでを実現しようとしている
* * *
劇的な変化こそまだありませんが、少しずつ実用性を帯びてきたウエアラブルデバイス。いまのところ、B to Bを中心に展開する商品が多い印象ですが、将来的には私たちの生活において、より身近な存在になるかもしれません。
(取材・文/井上 晃)
スマートフォン関連の記事を中心に、スマートウォッチ、ウエアラブルデバイス、ロボットなど、多岐にわたる記事を雑誌やWebメディアへ寄稿。雑誌・ムックの編集にも携わる。モットーは「実際に触った・見た人だけが分かる情報を伝える」こと。編集プロダクション「ゴーズ」所属。
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