吉田由美の眼☆ブームのど真ん中!最新・最旬のコンパクトSUV、BMW「X2」にポルトガルで試乗
&GP / 2018年2月5日 19時0分
吉田由美の眼☆ブームのど真ん中!最新・最旬のコンパクトSUV、BMW「X2」にポルトガルで試乗
「もう誰にも止められない!」といった感じの、昨今のSUVブーム。
SUVには、シート位置が高いので見晴らしが良いとか、トラックなどから車内を覗かれる心配が少なく、プライベートが守られるといったメリットがあります。
でも、SUVの一番の魅力は、なんといってもデザインではないでしょうか。車高がほどほどに高いSUVは、スタイリッシュなデザインで個性をアピールしやすく、カーデザイナーにとっては絶好のキャンパスともいえるのです。
そうした魅力が人気を呼び、どんどんバリエーションを拡大しているSUVですが、かつては、ガッシリと頑丈な本格ヨンクがラインナップの主流という時期がありました。でも、そうしたモデルには、サイズが大きくて取り回しが良くない上に、燃費も悪くて価格も高い、というデメリットが…。そのため昨今の主流は、コンパクトなモデルへとシフトしています。
ちなみに、コンパクトSUVの目安は、全長が4400mm以下であること。そのコンパクトSUVのブームに火をつけたのは、さかのぼること2010年にリリースされた日産の「ジューク」でしょう。コンパクトカーの「マーチ」や「ノート」のプラットフォームをベースに、全長4135mmというコンパクトボディで登場。さらに、ルックスやインテリアのデザインが斬新だったこともあり、一躍、注目の的となりました。
そして現在では、車高を抑えたクーペフォルムのSUV人気が上昇中。これも大きなモデルから、徐々にコンパクトモデルへとバリエーションが広がり、マツダ「CX-3」やアウディ「Q2」など、各メーカーから注目モデルが続々登場しています。
■新生X2はX1ベースのクーペフォルムSUV
そんな中、BMWが新しいSUV「X2」をリリースしました。
BMWのSUV「X」シリーズは、これまで「X1」、「X3」、「X4」、「X5」、「X6」がラインナップされていました。数字が大きくなるほど大型かつ高級で、奇数モデルは車高が高い王道の“ワイルド”SUV、偶数モデルは車高を低く抑えた、スタイリッシュなクーペスタイルSUVという布陣です。
その“法則”から推測できるとおり、X2はX1をベースに仕立てた、コンパクトなクーペスタイルSUV。ですから、ルックスはX1と似ていますが、全高はX1より76mm低い1526mmに抑えられ、日本の立体駐車場にも対応できるサイズになっています。ちなみに、全幅はX2の方が3mm広く(1824mm)、全長は同79mm短く(4360mm)設定されているので、まさにX1を短く、広く、低くしたモデルがX2、という位置づけです。
2017年に日本で最も売れたコンパクトSUV、トヨタ「C-HR」(全長4360×全幅1795×全高1550mm/ハイブリッド S)と比べると、X2の全長はC-HRと同じ4360mm。ただし、全幅はX2の方が30mmほど広く、全高は同じく40mmほど低いため、C-HRよりもワイド&ローのフォルムに仕上がっています。
X2のキーワードは“コンパクトサイズ”、“高級感”、“(ルーフが低い)クーペスタイル”、そして“(若い世代をターゲットにした)個性的なデザイン”ということなので、そのコンセプトは、2017年に日本へ上陸したライバルのアウディQ2と似ていますね。
2018年中頃の日本上陸が予定されているX2ですが、それに先駆け、ポルトガル・リスボンで国際試乗会が開かれましたので、ひと足早く試乗してきました。
当初、日本に導入されるのはガソリン仕様とのことですが、今回、試乗できたのは、2リッターのディーゼルエンジンを積む4WDの「X2 xDrive 20d Model M Sport X」。X2のラインナップには「M Sport」と「M Sport X」が用意されていますが、今回の試乗車はすべて、オフロード色をより強めた後者でした。
試乗会場でお会いしたX2のデザイナーさんいわく「X2はひと目でBMWらしく見えるデザインに仕上げた」とのこと。X2のルックスは、これまでのBMW車とはどこか印象が異なっています。特にフロントから見ると、キドニーグリルの形状が従来のものとは変わっているのが目につきます。でも、それらの変化を斬新にし過ぎないことで、BMW“らしさ”をしっかりと残しています。
その上で、SUVらしい力強さをプラス。サイドスカートやホイールアーチなどのカラーをフローズングレーにすることで、踏ん張り感と引き締まった雰囲気を演出しています。そして、新しい世代にアピールするための遊び心も忘れてはいません。ルーフを低く抑え、かつリアへいくにしたがってなだらかに傾斜させることで、クーペライクなフォルムを実現。さらにCピラーには、誇らしげにBMWのエンブレムを装着しています。どうやらこれは、1960年代にモータースポーツなどでも活躍した「3.0CS」へのオマージュなのだとか。
ちなみに、エクステリア部品でX1と共通なのはドアノブだけで、プラットフォーム以外はすべて別とのこと。なるほど確かに、X1と比べるとX2はフロントピラーが寝ていて、よりシャープな印象です。視覚の上からも、スポーティさを実感できるデザインに仕上げられているのですね。
インテリアは基本、X1と同じですが、質感を一段と高め、よりコントラストの効いた雰囲気に仕上げています。加えて“手縫い”ステッチのようなハンドメイド感を、あえてトッピングしているのも特徴です。
試乗車は19インチタイヤを装着。雪の結晶をイメージさせるようなデザインのホイールが印象的です。パワーユニットは、ディーセルエンジン+8速ATで、耳を傾ければ特有のノイズが聞こえてきますが、決して耳障りではありません。確かに、1000回転くらいでは少々ディーゼル音が気になりますが、ほかの回転域では、意識しなければディーゼルエンジンとは分からないほどです。アクセルペダルを踏み込んだ瞬間の出だしの良さ、気持ちよくスッと進んでくれる加速感などは、トルクの強力なディーゼルエンジンならではの賜物(たまもの)ですね。
試乗ルートは、リスボン郊外のベレン地区にあるリゾートホテルから、ヨーロッパ最西端のロカ岬までを往復する片道約50kmのコース。
今回ドライブしたM Sport Xには、専用チューニングのサスペンションが装着されていました。ポルトガルという土地柄、石畳の路面があったり、トラムと共有する道が多く段差も多かったり、荒れた路面なども多かったりで、当初は「乗り心地が悪いのでは?」と思っていましたが、どんなシチュエーションでも硬いということはありませんでした。ガッチリとしつつも乗り心地は良く、むしろ、このサスペンションの方がしっくり来るレベル。私たちがドライブしたのは、試乗会開催期間の前半でしたが、走れば走るほど、乗れば乗るほど、足が馴染んでいくのが分かります。
このサスペンションには「スポーツ」、「エコ」、「コンフォート」という3種類の走行モードが用意されていますが、個人的には、最もマイルドなコンフォートモードが好みのセッティング。少しだけリアシートにも座ってみたところ、決して広いとはいえませんが、サスペンションの不快な突き上げもなく、なかなか好印象です。
X2のカーナビゲーション&オーディオシステムは、アップデートされた最新の“BMWコネクティッドドライブ”。スマートフォンと連動し、スマホ内の情報から次のアポイントの予定を推測したり、Amazon の「Alexa」と連動して会話ができたりするのだとか。日本仕様ではどこまで使用可能になるか分かりませんが、いずれにせよ、最新スペックのインフォテインメントシステムが導入されることになりそうです。
X2のデビューで、さらにバリエーションが拡大したクーペスタイルSUVは、まさに“時代の顔”ともいうべきカテゴリーです。近年、子どもたちが描くクルマの絵といえば“四角い箱型のミニバン”というのが定説でしたが、これだけSUVが増えると、今後、子どもたちが描くクルマの絵が変わる時が来るかもしれません。そうなれば、今よりもずっと、クルマ好きの人が増えるのではないかと、密かに期待している今日この頃です。
(文/吉田由美 写真/ビー・エム・ダブリュー)
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