【レクサス RX450hL試乗】110mmのロング化で、3列目席と“より使える”荷室を獲得
&GP / 2018年2月23日 20時0分
【レクサス RX450hL試乗】110mmのロング化で、3列目席と“より使える”荷室を獲得
思いがけないプレゼントやおみやげというのは、うれしいものです。また、それらが想像よりも使えるモノや望んでいたモノであれば、うれしさもひとしおです。
レクサスのクロスオーバー「RX」に新設定された3列シートのロングバージョン「RX450hL」に触れて感じたのは、まさにそんなことでした。
昨今のクロスオーバーSUV人気は説明するまでもないと思いますが、レクサスにおいてもRXは、ブランドの中核を担うモデルとして安定したセールスを記録しています。とはいえ、RXもデビューから2年が経過。国内外を問わず個性的な後発モデルもデビューしており、その人気を確固たるものとすべく、ちょっとしたサプライズを用意する必要があったのでしょう。
そこで投入されたロングバージョンですが、並み居るライバルに対するアドバンテージとなるのはもちろん、「これはありがたい」と感じる人も、結構多いのではないでしょうか。
■じっくり見ないと気づかないサイドビューの変化
RXの一部改良が発表されたのは昨2017年末のこと。セキュリティ機能の強化や、ターボモデル「RX200t」の名称を「RX300」へと変更したほか、3列シートの7人乗りモデルであるRX450hLが新たに設定されました。
RX450hLのボディサイズは、全長5000mm、全幅1895mm、全高1725mmと、標準ボディに比べ全長で110mm、全高で15mm拡大されています。一方で、ホイールベースは2790mmと共通、かつフロント回りも変更はありませんから、3列シート化に伴いリアのオーバーハング部分が延長されたというわけです。
では、そうした変更がお手軽なのか? といえば、それは間違い。
1列目から3列目にかけて少しずつ視点が高くなるシアタースタイルの空間構成とすべく、ボディ後端からルーフ部分の設計までが改められています。
標準ボディでは、ルーフエンドからテールゲートにかけて、ファストバッククーペのごとくなだらかなラインを描きます。
しかし、450hLをじっくり眺めると、ルーフラインが延長されただけでなく、やや高めに設定され、かつテールゲートのウインドウも起こされた設定になっていることが分かります。
これは、3列目シートのヘッドスペースを確保するための修正ですが、Cピラー部分のデザインやクロームのあしらいといったディテールも、標準ボディと同様の処理が施されているので、じっくり観察しないと気づかないかもしれません。ともあれ、RXらしい流麗で力強い印象を崩すことなく、室内スペースの拡大に成功しています。
気になるインテリアですが、日本仕様の3列シートモデルは450hL、つまり、頂点グレードがベースなので、装備も充実しています。セミアニリン本革シートは、フロント席に10ウェイの電動調整機能が付いていますし、ヒーターやベンチレーション機能ももちろん内蔵です。
また、セカンドシートは標準モデルと変わらず40:20:40分割タイプを採用。操作は手動となりますが、十分な調性幅がある、スライド&リクライニング機能が備わります。
注目の3列目シートには、標準ボディの2列目シートと同様、電動可倒式を採用しており、スイッチ操作によりシートの格納・展開が可能となっています。
また、専用の温度調整オートエアコンも備わりますから、3列シート車にありがちな夏場の車内温度差を感じるケースも少なそうです。
しかし、3列目のパッセンジャーは、身長170cm前後を想定しているとのことで、居住スペースは正直にいえばミニマム。身長182cmの筆者では、ルーフライニングに頭が着きますし、ヒザもセカンドシートに触れてしまいます。開発陣によると「3列目シートは基本的に、エマージェンシー用として設定した」とのことですが、パッセンジャー全員が身長180cm以上なんてケースはまれでしょうから、いざという時の備えとしては十分だと思います。またそう考えれば、この3列目シートは、RX本来のスタイリッシュなイメージを保ちつつ手にした、ちょっと贅沢な“プラス2”シートということなのでしょう。
確かに、ランドローバー「ディスカバリー」やマツダ「CX-8」のように、フル7シーターをうたうクロスオーバーSUVもありますが、それらはミニバンの代用としての用途に力点を置いたモデル。価格やサイズなどを含め、RXシリーズの直接的なライバルといえば、ボルボ「XC60」やジャガー「F-PACE」、メルセデス・ベンツ「GLC」など、プレミアム指向のクロスオーバーであることを考慮すれば、このシート設計も、RXならではのアドバンテージになるのではないかと思います。
また、全長110mm程度の延長では、ラゲッジスペースもさほど拡大されていないのでは? と思うかもしれませんが、それも早計というもの。ルーフラインが延長されたこと、リアウインドウが起こされたことで、荷室の天地スペースが数値以上に拡大しており、かさ張るレジャーアイテムや大型のスーツケースなども余裕を持って積み込めるようになりました。
さらに、シートアレンジのバリエーションも増えていますから、2列目と3列目の片側を倒した状態で大きな荷物を積んだとしても、4人または5人乗車が可能です。
走りに関するメカニズムは、標準ボディの450hと共通。262馬力を発生する3.5リッターのV6ガソリンエンジンをベースに、167馬力のフロントモーターと68馬力のリアモーターをプラスしたハイブリッドAWDシステムを採用しています。
車重は2240kgと、標準ボディの「バージョンL」より100kg増加していますが、そのパフォーマンスは元々かなりの余裕がありましたから、不満を感じることはなさそうです。
全長を110mm延長、2名分のシートを増設、と数値的な部分だけを見れば、その魅力やこだわりが分かりづらいのも事実。標準ボディでも居住性や荷室スペースに不満を感じるようなシチュエーションは滅多にないと思いますが、450hLに触れてみると、思ったよりも便利だな、と感じました。こんな装備があって、ここをちょっと大きくすれば使い勝手が向上し、ユーザーに喜んでもらえるのは…。そうした、ちょっとしたプレゼントのような開発陣の思いが、この110mmに込められているのだと思います。
<SPECIFICATIONS>
☆450hL
ボディサイズ:L5000×W1895×H1725mm
車重:2240kg
駆動方式:4WD
エンジン:3456cc V型6気筒 DOHC
トランスミッション:電気式無段変速機
エンジン最高出力:262馬力/6000回転
エンジン最大トルク:34.2kg-m/4600回転
フロントモーター最高出力:167馬力
フロントモーター最大トルク:34.2kg-m
リアモーター最高出力:68馬力
リアモーター最大トルク:14.2kg-m
価格:769万円
(文&写真/村田尚之)
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