【クルマ初モノ図鑑⑩】現在では“当たり前”の電装装備を初搭載したのは?[その3]
&GP / 2018年3月20日 21時0分
【クルマ初モノ図鑑⑩】現在では“当たり前”の電装装備を初搭載したのは?[その3]
高度経済成長で日本車が飛躍的な発展を遂げると同時に、庶民にもクルマが浸透した1960年代。オイルショックや大気汚染など世界的な問題により、世界中の自動車が対策に追われた’70年代。
そして’80年代。日本は世界で最もクルマを生産する国になります。さらにバブル景気へと向かう中で日本人に高級志向が生まれ、クルマもハイソカーや大排気量スポーツカーが登場しました。
潤沢な開発費をかけ、新しいモデルを世に送り出した’80年代には、日本のクルマを本当の意味で世界水準に引き上げようと各社が切磋琢磨し、さまざまな技術や新しい装備も生まれました。
そんな技術の数々と、初搭載されたクルマを見ていきましょう。
■ホンダアコード(1985年) -キーレスエントリーを日本初採用
現在は、キーを携帯していればドアノブに触れたりドアに近づいたりするだけで解錠され、さらにスタートボタンを押せばエンジンを始動できるスマートキー(メーカーにより呼称が異なります)が主流です。かつてはドアについた鍵穴にキーをさして解施錠していましたよね。キーを使うのが面倒で、内側の鍵を施錠状態にして外のドアノブを引いたまま閉めてロックする。これをやったあとにキーが室内にあることに気付いて、慌ててJAFに連絡した経験、きっと誰もが一度はあるでしょう。
スマートキーが一般化したのは2000年代。それまではキーのリモコンボタンを押してドアの解施錠を行うキーレスエントリーが主流でした。キーレスエントリーを初搭載したのは1985年にデビューした3代目アコード&2代目ビガー。
「21世紀に向けた人間とクルマとの理想的関係がここにある」というコンセプトのもと、当時のホンダが持つすべての技術と知恵を結集して開発されたアコード&ビガー。キーレスエントリーは最上級グレードの2.0Siに搭載されました。また、FF量産車で初めて4輪ダブルしッシュボーンサスペンションが搭載されたのもこのモデルです。
■日産スカイライン(1985年) -「カードエントリーシステム」を搭載
前述したようにキーレスエントリーを初搭載したのは1985年6月に登場したホンダアコード&ビガー。その2カ月後、’85年8月に登場したR31スカイラインには、キーレスエントリーとは違うアプローチの便利機能「カードエントリーシステム」が搭載されました。
専用のカードを身につけているとドアハンドルやトランクリッドのリクエストスイッチを押すだけで解施錠できるという、現在ほとんどの日産車に搭載されるインテリジェントキーの先駆けのようなシステムです。ただしカードエントリーシステムはエンジンスタートを行うことはできません。
R31スカイラインはほかにも5連装カセットチェンジャーやアシンメトリーミラー(運転席側がドアミラー、助手席側がフェンダーミラーという設定)など斬新な装備が用意されていました。そして技術の日産を象徴する四輪操舵システム「HICAS」が初搭載されたことでも知られています。
■トヨタソアラ(1986年) -電子制御式エアサスペンションを世界初搭載
日本がバブル景気へと向かう中、世は空前の高級車ブームに。土地価格の高騰や金利上昇でサラリーマンがマイホームを持つのは夢のまた夢となってしまい、代わりにBMWやM・ベンツを手に入れて六本木辺りを走るサラリーマンが出現したりしました(まだ今ほど輸入車が一般的ではなかった時代です)。女性をデートに誘うとまず乗っているクルマを聞かれ、輸入車じゃないと誘いを断られるということが本当にあったあの時代。ドイツの高級車にガチで肩を並べることができた数少ない国産車がハイソカーというカテゴリーを切り開いたソアラです。
1986年にデビューした2代目ソアラは、世界初となる電子制御式エアサスペンションを搭載。コイルスプリングの代わりにエアチャンバー内に封入した空気にスプリング機能を持たせ、コンピュータ制御で走行条件に応じてばね定数・減衰力と車高を3段階に自動的に切替えることができたこのシステム。「エアサス」というワードには、今でも無条件に惹かれてしまうという人もいるのではないでしょうか。
ちなみに’89年には、500台限定で2代目ソアラエアロキャビンが発売されます。これは日本初の電動開閉式ハードトップです。
■トヨタセラ(1990年) -車両と一体開発したスーパーライブサウンドシステム
日本初のガルウイング(バタフライ)ドアを採用した量産車として知られるセラ。そんなセラは世界初となるスーパーライブサウンドシステムも話題だったのを覚えているでしょうか。
これはクルマの設計段階から室内の音響特性を徹底解析し、スピーカーの形状や大きさ、配置のほか、ボディシェルとの一体的な構造などを十分吟味しながら開発した「DSP音場創出型カーオーディオ」です。
トヨタの資料(トヨタ自動車75年史/技術開発)には、「車室内にいながら、あたかもコンサートホールにいるような広がり感のある音響空間づくりも行っている」と書かれています。今では臨場感のあるサウンドを出すカーオーディオは珍しくないですが、当時としては画期的なシステムだったはずです。
(文/高橋 満<ブリッジマン>)
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