【日産 セレナe-POWER試乗】静かでスムーズな走りが武器!100%モーター駆動で反撃開始

&GP / 2018年3月24日 19時0分

写真

【日産 セレナe-POWER試乗】静かでスムーズな走りが武器!100%モーター駆動で反撃開始

2016年11月にデビューした日産「ノート e-POWER(イーパワー)」は、デビューするやいなや、関係者も驚くほどの人気でマーケットに受け入れられた。デビューした月の月間新車乗用車販売台数ランキング(軽自動車を除く)で、日産自動車として実に30年ぶりとなるトップセールスを獲得。その後も毎月、首位争いを繰り広げている。この大ヒットの要因は、なんいってもe-POWERの魅力に尽きる。

そもそも、e-POWERとは何なのか? ノート e-POWERはエンジンを搭載しているが、それは駆動力を生み出すのではなく、あくまで発電に徹し、その電気を使ってモーターで走る。いってみれば“シリーズハイブリッド”と呼ばれるハイブリッドカーの一種だ。

その走行フィールは、ほぼEV(電気自動車)。EVと同じようにモーターを使って走るのだから、当然といえば当然だが、一般的なエンジン車とは加速感がまるで違う。スムーズで静か、そして何より、アクセル操作に対するリニアな反応が心地いい。「EVの加速感に魅力を感じるけれど、充電や航続距離が不安で購入まで踏み切れない」という人は多いだろうが、e-POWERならば、ガソリンを注げば走れるから、そうした心配もない。語弊を恐れずにいえば、e-POWERは「ガソリンを入れて走るEV」である(もちろん、システムで分類すれば“ハイブリッドカー”だが、駆動力で分類すれば完全にモーターで走行するので“EV”といえる)。

そんなe-POWERの第2弾としてデビューしたのが、ミニバンの「セレナ e-POWER」。セレナはこれまで、強力なモーターを積む“フルハイブリッドカー”をラインナップしていなかったため、それを求めるユーザーは、ライバルであるトヨタの「ノア/ヴォクシー/エスクァイア」や、昨2017年末に登場したホンダ「ステップワゴン」を選んでいた。しかし今回、e-POWERの登場により、セレナの満を持しての反撃が始まったのだ!

■ライバルを大きく引き離す圧倒的な静粛性

セレナ e-POWERの基本システムは、ノート e-POWERと共通。1.2リッターの3気筒エンジンを発電機として使い、EVの「リーフ」と同じモーターを組み込んでいる。しかし、車体の重いミニバンへ搭載するに当たって、ノート e-POWERと比べてエンジン出力を7%(最大回転数を上げ、オイルクーラーを追加することで出力向上)、バッテリー容量を20%、そして、モーター出力を25%アップさせてきた。つまり、基本は同じだけれど、しっかり強化されているのだ。

また、ノート e-POWERにはなかった、ふたつのシステム制御モード「マナーモード」と「チャージモード」が追加されている。前者は可能な限りエンジンを止め、静かに走行するモードであり、後者は積極的にバッテリーを充電するモード。走行中でも、標準モードとそれぞれのモードとを、任意に切り替えられる。

そして、実はセレナ e-POWERは、パワートレインだけでなく、居住スペースにおいても、ガソリン車から変更が加えられている。

ガソリン車の場合、2列目シートの中央に、フロントシートまでスライドする“スマートマルチセンターシート”が採用されるが、e-POWERでは走行用バッテリーがフロントシートの床下に搭載される関係上、運転席と助手席の間には固定式のトレーが組み込まれる。そして2列目シートは、多彩なアレンジが自慢の3人掛けベンチタイプとなるガソリン車に対し、e-POWERは左右の席が独立した、2人掛けのセパレートシートを採用。その分、乗車定員はひとり減り、7名になっている。

ただし、荷室などを含めた空間の絶対的な広さは大きく変わらないため、どうしても8名乗り仕様じゃなきゃ、という人でなければ、使い勝手においてネガティブな要素は見当たらない。加えてe-POWERでは、ガソリン車にはないステアリングヒーターや、エンジンの発熱に頼らず素早く暖まる“PTCヒーター”、オートマチックハイビーム、ナビ用の大画面に映せる全方位モニター(ガソリン車はメーター脇の小さな画面内にのみ表示)などがプラスされていて、快適性も高められている。ちなみにエアコンは、エンジンが停止している時でもしっかり冷風を送れるよう、電動式を採用している。

走り出してみると、ドライブフィールは完全にEVのそれ。加速力の増減はアクセルを踏む右足の動きにダイレクトに反応し、まるで雲に乗っているかのようなスムーズな加速感が心地いい。セレナ e-POWERは車重が重いため、リーフやノート e-POWERのようにグイグイ加速していけるほどの力強さこそないが、かといって、日常生活では十分すぎるほどの加速力を備えている。もちろん、停車時からの発進加速は、ガソリン車よりも速い。燃費の良さも大きな魅力だが、この加速感を味わうためにe-POWERへプラスαの金額を払ってもいい、と思う気持ちがよく分かる。

セレナ e-POWERには、リーフやノート e-POWERに続いて“e-PEDAL(e-ペダル)”が採用されているが、これが慣れると実にスムーズに走れて、ドライブがラク。アクセルペダルを戻すと回生ブレーキを使って減速する制御が組み込まれているので、上手に使えばブレーキペダルを踏むことなく、停止することができる。ちなみに、日産自動車による実験では、走行中にアクセルペダルからブレーキペダルへ踏みかえる回数が、e-ペダルでは約7割も減ったという。また、アクセルペダルを戻したり離したりした際に生じる減速感が、急に立ち上がって同乗者が不快に感じないよう、緻密な制御が行われているのも特筆すべき点。慣れればコレがないと違和感を覚えてしまうほどのアイデアメカだ。確かに好き嫌いはあるだろうが、もし好ましくなければ、スイッチをオフにすることで一般的なアクセルペダルと同様の制御にも切り替えられるので、心配はいらない。

魅力が盛りだくさんのセレナ e-POWERだが、実は試乗して最も驚かされたのは、その静粛性の高さである。運転していて、とても静かなのだ。

セレナ e-POWERの開発に当たって、開発陣は静粛性の向上に注力。遮音フィルムを挟んだフロントガラスや、日産車としては初採用となる4層構造のカーペットなど、ガソリン車に対して25カ所以上もの手を加えている。そもそもe-POWERの場合、駆動力を生み出すのは静かなモーターだから、前に進むために発生する音自体が小さい。そのため、静粛性を高めるためのカギとなるのは、音の発生源となるエンジン音をどれだけ静かにできるか、だ。その点セレナ e-POWERは、ノート e-POWERに比べてエンジンがかかる時間が長くなっているものの、エンジンが止まった状態とかかった状態との“音の差”を少なくすることで、エンジン始動時に音が目立たないよう配慮。その結果、びっくりするほどの静粛性を実現している。

厳密にいえば、e-POWERの機構はシリーズハイブリッドのため、本来ならエンジン回転数をアクセル開度と同調させる必要はないが、エンジンの音がドライバーにとって違和感とならないよう、ある程度はアクセルの踏み方に同調する制御となっている。もちろん、加速しようとしてアクセルを全開にすると、その分、エンジン音も騒がしくなるのだが、エンジン停止の状態から、騒がしくなるまでの過渡領域における音が、本当に静かなのだ。これは、ライバルを大きく引き離すアドバンテージといえる。また、実際の運転シーンでアクセルを全開にする状況は、そうそうあるものではないため、実際の使用シーンではかなり静かなクルマだといえる。

さらに、力強いモーターを積んだクルマならではの、停止状態からのスムーズな発進と加速が生み出す快適な走りは、ドライバーだけでなく、同乗者にとっても大きな魅力だろう。静かでスムーズな走りというのは、ファミリー向けミニバンにとって極めて大切な要素であることを、今回、セレナ e-POWERに乗って改めて実感した。

さて、そんな魅力あふれるセレナ e-POWERだが、ウィークポイントがないわけではない。ベース車比で約40万円高いプライスや、15インチしか選べないタイヤサイズ(その分、見た目が心もとない)、他のハイブリッド車に比べて控えめな高速走行時の燃費、そして、長い上り坂をハイペースで登り続けた際、一時的に電力不足が生じてパワーダウンしそうな不安(これが生じるのは極めて稀な状況だろうが)などがそれだ。とはいえ、そうしたネガティブな面があったとしても、e-POWERならではの爽快な加速と快適な走りを知ってしまうと、なかなか普通のガソリン車には戻れないかもしれない。スムーズな走りと快適性で選びたくなるミニバン、それがセレナ e-POWERだ。

<SPECIFICATIONS>
☆e-POWER ハイウェイスター V
ボディサイズ:L4770×W1740×H1865mm
車重:1760kg
駆動方式:FF
エンジン:1198cc 直列3気筒 DOHC
エンジン最高出力:84馬力/6000回転
エンジン最大トルク:10.5kg-m/3200〜5200回転
モーター最高出力:136馬力
モーター最大トルク:32.6kg-m
価格:340万4160円

(文/工藤貴宏 写真/ダン・アオキ)

×


この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング