【VW ポロ試乗】「ゴルフ」オーナーが怒りそう!?8年ぶり刷新で“いいモノ感”高まる
&GP / 2018年3月31日 19時0分
【VW ポロ試乗】「ゴルフ」オーナーが怒りそう!?8年ぶり刷新で“いいモノ感”高まる
VW(フォルクスワーゲン)の「ポロ」がコンパクトカーの基準、つまり、世界中のライバルの手本や目標とされる存在になったのはどうしてなのか? 理由は簡単。「いいクルマだから」に尽きる。
実は、ポロは販売台数の面でコンパクトカーの頂点に立っているわけではない。例えば、ヨーロッパの販売実績を見ると、ルノー「クリオ」(日本名「ルーテシア」)に届いていない。だが、そうしたセールス面ではなく、クルマ作りのクオリティの高さによって、ポロはベンチマークと位置づけられるクルマとなったのだ。
■さらなるパワーアップ版の登場にも期待!
それにしても、先代のポロがライバルに与えた衝撃は大きかった。作り込みにおいて、他を圧倒的にリードしていたからだ。見て、触れて、座って、走って…そのクルマ作りの高い水準には、誰もが驚いた。ライバルを寄せつけない、圧倒的なすごさがあった。あの時のインパクトは、8年経った今でも忘れられない。
では、新型はどうだろうか?
しっかりと手間をかけて作られた、いいクルマである。それは断言できる。しかし結論からいえば、先代モデルのような、ライバルに対する圧倒なアドバンテージはないように思えた。
もちろん、新型ポロの仕上がりが悪いわけではない。クルマとしては本当によく作られている。しかし、ライバルが着実にレベルアップしてきた今、相対的な優位性が下がってしまったのである。そんなことを頭に置きつつ、新型ポロをチェックしてみよう。
まずは外観。デザインはキープコンセプトで、一見したところあまり変わっていない…ように思えるかもしれないが、ひときわシャープになり洗練された。中でも、サイドパネルに走るプレスラインのエッジの鋭さは見事で、鉄板をプレス処理する際の技術の高さ、そして、コンパクトカーながらしっかりとコストをかけている辺りはさすがだ。
そしてリアスタイルは、スモーク調のレンズにLEDを組み合わせたコンビネーションランプが精悍。
ボディサイズは大きくなり、先代モデルに比べて全長は65mm、ホイールベースは80mm、そして全幅は65mm拡大された。結果、全幅が1750mmになったため、日本の登録分類において先代モデルの5ナンバーから3ナンバーになったが、自宅の車庫に制約があるといった人を除けば、気にしなくてもいいレベルだろう(3ナンバー車だからといって自動車税が高くなるわけでもない)。
それよりも、ボディサイズが大きくなったことによって、リアシートのスペース(特に足下)やラゲッジスペース(先代モデル比で71Lアップ351L)が拡大されたことを評価したい(いずれも、2006年まで販売されていた4世代目「ゴルフ」より広い!)。その上で、リアシートの着座姿勢の自然さ(座る姿勢に無理がない)といった、VWならではの美点が受け継がれているのはいうまでもない。
先代モデルでは、乗り込んだ瞬間にクラスを超越した作り込みと質感の高さに驚かされたインパネ周りは、ライバルのクオリティが大きく向上した結果として、ポロならではの優位性が低くなったように感じる。とはいえ、上質感はさらに磨かれ、ゴルフなど上級モデルのオーナーが見たら「格下のクルマなのに質感が良過ぎる」と怒るかもしれないほどの水準だ。この辺りは、コストを最重視した廉価版コンパクトカーとは大きく異なる部分だ。
インパネのデザインはイチから見直され、先代モデルとは違って、センター部にディスプレイのインストールを前提とした設計。これは、ディスプレイに地図だけでなく、多くの情報を表示して車両設定なども行う時代になったことを受けての進化である。そのため、ディスプレイはメーターと同じ高さまで位置が高くなっている、ポロ史上初めて、中央のスイッチ類がドライバー側に傾けられるなど、視認性や操作性を高める工夫も盛り込まれている。
その上、新型ポロから採用された新しいナビ&オーディオ系のインターフェイスは、モニターの左右に配したダイヤルで音量調整や地図画面の縮尺調整を注視せずに行えるのも見逃せないポイント。また、USB端子をインパネに2個内蔵するなど、時代の変化による求めに応えた、高い使い勝手を実現しているのも朗報である。
変化といえば、2009年に先代モデルが日本デビューした時と大きく変わったのが、先進安全性能に対する市場からの要求。新型ポロも一段と進化し、これまでは難しいとされていた“カメラを使わずミリ波レーダーのみで歩行者も検知する自動ブレーキ”が全グレードに標準装備された。資料には対応速度などが記載されていないが、フォルクスワーゲン グループ ジャパンの商品企画担当者によると「『パサート』など上級モデルと同等の性能」を実現しているという(ただし、パサートはミリ波レーダーにカメラを組み合わせているので、システム構成は異なる)。
従来のポロ・ユーザーの中には、排気量1リッターの3気筒へとダウンサイジングしたエンジンに対して、興味津々という人も少なくないだろう。そんな人にまず伝えておきたいのは、ガサツなエンジン音やアイドリング時の振動といった、3気筒エンジンのネガティブな部分はしっかりと対策され、ほとんど気にならなかったということ。
一方でパワー感は、発進加速やアクセルを踏み込んだ際の反応が少し物足りない印象を受けた。最高出力/最大トルクのスペックは、先代モデル(1.2リッターのターボ)よりも上だが、その発生回転数が高回転寄りになっている影響もあるのだろう。動力性能に関しては、今後、高出力モデルの追加にも期待したいところだ。
一方で、コーナリング性能に関しては、ステアリングの手応えも、旋回中の姿勢や安定感も素晴らしかった。この辺りは、多くの国産コンパクトカーとは一線を画する部分。また、ブレーキのダイレクト感も「さすがVW!」と思わせるのに十分な実力を示してくれる。
新型ポロはどんなクルマか? いいクルマであると間違いなく断言できる。“いいモノ感”においては、先代モデルのデビュー時のように、ライバルに対する圧倒的なアドバンテージこそないものの、依然として、世界のコンパクトカーの基準という立ち位置に揺るぎはないだろう。
<SPECIFICATIONS>
☆TSI ハイライン
(“Discover Pro”パッケージ)
ボディサイズ:L4060×W1750×H1450mm
車重:1160kg
駆動方式:FF
エンジン:999cc 直列3気筒 DOHC ターボ
トランスミッション:7AT(DSG/デュアルクラッチ式)
最高出力:95馬力/5000~5500回転
最大トルク:17.9kg-m/2000~3500回転
価格:287万6800円
(文/工藤貴宏 写真/&GP編集部)
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