【三菱 エクリプス クロス公道試乗】見た目だけじゃない!随所に光る真面目なクルマ作り
&GP / 2018年4月1日 19時0分
【三菱 エクリプス クロス公道試乗】見た目だけじゃない!随所に光る真面目なクルマ作り
三菱自動車にとって久しぶりのニューモデル「エクリプス クロス」の発売が始まりました。
スタイリッシュなたたずまいを武器に、クルマ好き男子だけでなく、女性をも魅了したクーペ「エクリプス」の名を受け継ぎ、コンパクトSUVとして生まれ変わったブランニューモデル。一般公道での乗り味はどうなのか? 開発時はどんなところにこだわったのか? 試乗会で探ってきました。
■スタイリッシュなルックスは女性ウケも上々
クローズドコースでの試乗会や氷雪路でのテストドライブなど『&GP』ではデビュー前から、エクリプス クロスのプロトタイプについてご紹介してきました。そして、ついに正式発売を迎えたわけですが、試乗会場で対面した第一印象はというと「凛々しくてスタイリッシュだな」のひと言でした。
ひと目で三菱自動車のSUVと分かる精悍な顔つき、クーペを思わせる強めの傾斜が与えられたCピラーとリアウインドウ、そして、前傾姿勢を強調するボディサイドを走るキャラクターラインなど、全体的に躍動感あるスタイルにまとめられています。
過去のレポートにもあるように、エクリプス クロスは「RVR」や「アウトランダー」と基本的なプラットフォームを共用しています。しかし、SUV&アウトドア色の強いRVRとアウトランダーに比べると、都会的でカジュアルなイメージでまとめられてるのがエクリプス クロスの大きな特徴。
実際、これまでの三菱製SUVでは、ご夫婦など男女ペアでディーラーへ来店されたお客さんのうち、男性がクルマに興味を持たれている場合の方が多かったようですが、エクリプス クロスの場合、女性の方が興味津々というケースが多いそうです。女性=デザイン感度が高い、というのは短絡的かもしれませんが、少なくとも、これまでとは異なる層の人々も反応しているクルマであることは間違いありません。
エクリプス クロスがデザインにこだわったクルマであることは、ドアを開けて車内に収まっても感じ取ることができます。手前へとラウンドしたダッシュボードは質感が高く、中央のエアコン吹き出し口が手前にせり出しており、立体感のある造形となっています。またシルバーの加飾パーツは、左右への広がりを演出するだけでなく、インパネまわりが重苦しく感じないようにする効果もあるようです。
装備面では、上位グレードに“Apple CarPlay”や“Android Auto”などが使えるスマートフォン連携ディスプレイオーディオを用意し、シフトレバー横にある“タッチパッドコントローラー”で各種操作を可能にするなど、エンターテインメントやコネクティビティについても充実しています。
これらデジタル系装備は最新モデルでは必須となりつつありますが、ディスプレイに表示されるアイコンも操作性重視のデザインにするなど、使いやすさにもこだわりが感じられます。
実は、こうした実用性については、三菱自動車の社内でもあらゆる部分に関して検討を重ねたとのこと。そして、内外装ともデザインを重視しながら、SUVとしての本質や機能を犠牲にすることはなかったといいます。
例えば、リアゲートのウインドウを上下2段としたのは、クーペフォルムのせいで犠牲になりがちな後方視界を確保するためのものですし、ダッシュボードの形状を水平基調、かつ左右対称にしたのは、オフロード走行時にも水平感覚を失わないようにしたい、との理由から。長年に渡ってSUVを作り続けてきた三菱自動車ならではの基準を満たしつつ、ファッション性も取り入れるための工夫を凝らしているのです。
そんな生真面目さを感じつつ、シートに腰を下ろしますが、ここでもちょっとした発見がありました。近年、クルマのシートといえば、張りが強め、クッション硬めというのが主流ですが、エクリプス クロスのそれはしっとりとしたタッチで、クッションのストロークも十分。お尻や腰全体をじわりと包み込んでくれます。シートの感触は好みが分かれるところではありますが、サポート性もよく、ロングクルーズでも疲れを感じることはなさそうです。
さて、走り出してみての印象はというと、これまたちょっと意外性のあるフィーリングでした。搭載されるのは、1.5リッターの直列4気筒DOHC直噴ターボで、最高出力は150馬力、最大トルクは24.5kg-mというスペックです。駆動方式はFFと4WDが用意されており、今回の試乗車はFF(前輪駆動)仕様比で70kgほど重い4WDモデルなので、車両重量は1550kg。
こうした数値だけを見ると、走りはちょっと鈍重かな? と思ってしまいますが、エンジンはそれなりに高い回転域まで自然吸気エンジンのようにスムーズに回りますし、トルクやパワーの立ち上がりも滑らかなので、心地良い加速感を味わえます。もちろん、絶対的なパワーは平均的なので、ターボエンジン特有のパンチを期待すると物足りなさを感じるかもしれませんが、むしろオフロードや雪道などでは扱いやすいのではないかと思います。
また、電子制御4WDとブレーキを制御する“AYC(アクティブヨーコントロール)”や“アクティブスタビリティコントロール”など、常時4輪を最適制御する“S-AWC”によるサポートもあって、コーナリングはなかなか爽快。出口へ行くに従って曲率が大きくなるようなカーブでステアリングを切り増していっても、ノーズがスムーズに内側を向くのは快感ですらあります。この辺りは「ランサー エボリューション」シリーズなど、かつてのスポーツモデルで培われた制御のノウハウ、サジ加減の巧みさに加え、ストラットタワーバーや構造用接着剤を効果的に使用し、剛性を高めたボディもひと役買っているのは間違いありません。
久しぶりの新型モデルであること、また、既存モデルのコンポーネンツを活用していることなどを考えると、エクリプス クロスはSUVとしても、手頃なスペシャリティカーとしても、十分な完成度の持ち主といえるでしょう。でも、RVRやアウトランダーと比べて幅広い層から注目を集めるモデルだけに“もうひと声”、既存のモデルにはない特別感を求めたくなるもの。
例えば、イメージカラーでもある彩やかな赤メタリック“レッドダイヤモンド”のように、グリーン系やオレンジ系などでも、鮮やかで華のある外装色が欲しくなりますし、明るめのインテリアカラーもあればいいのになぁ、と思ってしまうのです。とはいえ、ひとつのモデルをじっくり熟成させていくのは、三菱自動車の得意技。今後のバリエーション展開に期待しましょう!
<SPECIFICATIONS>
☆Gプラスパッケージ(4WD)
ボディサイズ:L4405×W1805×H1685mm
車重:1550kg
駆動方式:4WD
エンジン:1498cc 直列4気筒 DOHC ターボ
トランスミッション:CVT
最高出力:150馬力/5500回転
最大トルク:24.5kg-m/2000~3500回転
価格:309万5280円
(文&写真/村田尚之)
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