OPPOの工場をOPPOのカメラフォンで撮ってきた!
&GP / 2018年4月4日 21時0分
OPPOの工場をOPPOのカメラフォンで撮ってきた!
今年1月に日本市場に参入したスマホメーカー・OPPO(広東欧珀移動通信有限公司)が、3月21日〜22日に日本のメディアに生産拠点を公開するプレスツアーを開催しました。
OPPOは中国で2004年に創立されたメーカーで、2008年に携帯電話市場に参入。2011年に初のスマホをリリースし、以降、アジアを中心に飛躍的にユーザーを増やしています。2016年にはスマホの年間出荷台数が中国で1位になり、2017年にはアジアで1位、世界で4位にラインクインしています。
▲1月31日に日本市場に参入する発表会を開催
OPPOのスマホは、若年層をメインターゲットにし、とくにカメラ性能の高さに定評があります。日本市場参入の第1弾として発売された「R11s」も、背面に2000万画素+1600万画素のデュアルカメラを備え、自撮り用に2000万画素のフロントカメラも搭載するモデル。OPPOは、自らの製品を“カメラフォン”と呼んでいます。
▲日本でも発売中の「R11s」。海外ではデザインに対する評価も高い
スペック的にも話題性においても競争力のあるOPPOですが、日本でのブランド知名度は、まだ著しく低いのが実情。2月9日の発売時点では、MVNO(格安SIM事業者)での取り扱いは発表されず、日本での展開に苦戦している印象も受けました。3月には、日本法人が2018年12月末までに約200名の採用を計画しているというプレスリリースも発表されましたが、OPPOの本気を感じると同時に、人材確保に苦戦している側面が見えた気も……。
そんな中で開催されたプレスツアーには、どんな意図があったのか? まずは筆者が見てきたことを率直にレポートさせてください。なお、写真はすべてOPPOのカメラフォン「R11s」で撮りました!
◼︎東京ドーム5個分の広大な工場に約1万人が勤務
OPPOの本社は、香港に近接する中国・深圳から車で1時間ほどの東莞市にあります。東京ドームの約5個分という、約22万㎡の広大な敷地に工場および社員寮などがあり、約1万人が勤務しています。ちなみに中国全土での従業員数は約3万人とのこと。
▲OPPO東莞本部のジオラマ。手前にあるのは社員寮で約7000人が居住。奥に見えるのは工場で、現在、新しい工場も増設中
敷地内は緑が多く、工場というよりも大学のキャンパスのような雰囲気。OPPOの社員の平均年齢が29.5歳と若いので、なおさらそんな印象を受けたのかもしれません。
▲説明員いわく「この界隈で最も緑が多いのがOPPOの工場」とのこと
敷地内には、一度に2000人が食事ができる食堂のほか、図書室、インターネットカフェ、サッカー場、卓球場など、休憩時間や終業後に利用できる施設も充実。子供用の遊具を備えた公園もありました。将来的には敷地内に保育園や学校を設置することも検討しているそうです。見学させてもらったのがお昼時だったこともあり、昼寝をしている社員も多く見かけました。OPPOでは、中国の昼寝の習慣に合わせて、昼休みは2時間取れるそうです。ちなみにOPPOの日本法人でも同じシステムを採用しているそうです。
▲従業員用の食堂。食費はスマホ決済で、給与から差し引かれる仕組み
▲美味しそうでした。メニューが豊富で、外部の飲食店よりもかなり安いそう
▲自由に使える卓球場もあるが、遊んでいる人は少なかった
▲図書室は昼寝する社員でほぼ満席
◼︎基盤の製造プロセスや品質試験場を公開
防塵服を身にまとい、最初に案内されたのはSMTセンター。SMT(Surface mount technology)とは「表面実装」のこと。プリント基盤に細かい電子部品を取り付ける工程で、そのほとんどは自動化されています。エプソン製のアームロボットなど、日本製の工業機器も多く見かけました。
▲防塵服を着用し、空気のシャワーを浴びてから工場内へ
▲プリント基盤は4枚1組で部品が実装され、最後に切り離される
▲細かい部品はリールに巻かれている
▲このようなラインで基盤に部品が取り付けられていく
精密な電子部品を扱う工程にもかかわらず、かなり接近して見ることができ、写真も撮り放題。OEMやODMに委託するのではなく、すべてのプロセスを自社で管理・製造していることをアピールしたかったのではないかと思います。
▲最終的なチェックは目視で行う
続いて案内されたのは品質をチェックする「QE(Quality Engineering)」という部門。大きく電気性能試験、構造試験、環境劣化試験の3つに分けられ、試験項目は全部で150以上に及ぶそう。たとえば、スマホを10cmの高さから全方位で合計2万8000回も落下させたり、サイドキーを1kgの力で10万回押したり、スマホに圧力をかけたり、ねじったり……。
スマホのさまざまな使い方を想定した試験の後に、端末を分解して、内部の損傷までチェックするとのこと。OPPOのスマホは、まだ日本で「防水」と呼べる水準には達していませんが、浸水や風雨による影響を試験する施設も整えられていました。
▲組み立て後のスマホの強度を試す装置
▲静電気を発生させた状態での動作性も確認。販売する国・地域によっては重要らしい
▲最後は、やはり人の目によるチェック
なお、当初は、撮影NGの前提で、組み立て工場も見学させてもらえる予定でしたが、残念ながら中止となりました。
◼︎深圳オフィスは、カジュアルな雰囲気
工場見学の翌日、深圳市内にあるオフィスを訪問しました。高層ビルの19階から22階までの4フロアを占め、管理部門、デザイン部門など、本社機能の一部があるそうです。ここは、世界4位のスマホメーカーのわりには小規模な印象を受けました。てっきり自社ビルがそびえているものだと思っていたので……。
深圳オフィスの内部は明るい雰囲気で、座席を固定しないフリーアドレスを採用し、服装もたぶん自由。スーツ姿の人が少なく、メーカーというよりはITベンチャー、あるいはクリエイティブ系の会社といった印象を受けました。ランニングマシンやトレーニング器具を揃えたジムがあり、ヨガやダンスができるスタジオも。さらに、香港を望むテラスがあったりと、居心地のよさそうな雰囲気でした。
▲仕事の息抜きによさげなテラスからは香港が見えた
▲デザイン事務所のような雰囲気
▲トレーニングルームも完備
▲食堂の一角には、スマホのQRで決済できる“無人コンビニ”のようなコーナーも
筆者は中国語が多少話せるのですが、デザインの打ち合わせをしている社員が「どこから来たの?」と話しかけてきたり、取り掛かっている仕事について説明してくれたりと、なんともカジュアルな空気感。人材育成の担当者から、OPPOでは若い社員でも意見を述べられ、早い時期に後輩を率いる立場にまで成長させるシステムがあるいった説明を受けましたが、まさに、それを実感できる雰囲気でした。OPPOだけじゃなく、中国に、こういう会社が増えているとしたら、先行きが恐ろしいというか、期待できるというか……。
ちなみに、OPPOという社名は、中国語では「欧珀」と表記しますが、漢字に大きな意味はないとのこと。創業当初からグローバルでの展開を想定していたため、どの国・地域でも悪い意味にならないブランド名として「OPPO」と決めたそうです。
◼︎中国では最新モデル「R15」が発売
4月1日にはOPPOの最新モデル「R15」が中国で発売されました。筆者は、プレスツアーで訪れた深圳市内のOPPO専売店にて、いち早く実機に触れることができました。R15は、「R9」「R11」に続くモデルですが、型番が抜けることについて以前から疑問を感じていました。なぜ「R12」は出さないのかと。OPPOの端末担当者によると、型番には奇数を用いて、縁起が悪い数字を外すために「R13」を飛ばして「R15」となっているそうです。中国は偶数を好み、とくに「8」は縁起が良いという認識があったので、その「8」を使わないことにも、OPPOが中国の国内ではなく、世界を向いているメーカーなんだなぁと感じました。
▲中国だけでなくアジアの主要都市でも見かけることが多いOPPOの専売店
▲4月1日に発売されたR15の「夢鏡版(ドリームミラーエディション)」という特別仕様モデル。日本発売は未定
◼︎日本での成功の鍵はキャリアでの取り扱い
アジアのスマホメーカーが日本のメディアに工場を公開することは、さほど珍しくはありません。されど、ここまで自由に写真を撮らせてもらったのは初めての経験でした。OPPOは、スマホを軸にいろいろな製品や関連サービスを展開するエコシステム型の企業ではなく、純粋にスマホの開発・製造に特化した企業で、「不良品を受け付けない・生産しない・提供しない」という「3ない原則」を厳守しているとのこと。大企業ではあるものの、職人気質の会社とも呼べそうです。右肩上がりの成長を続けているのも、品質が評価されているからこそでしょう。
しかし、iPhoneが根強い人気を維持し、Androidではシャープ、ソニーモバイルといった国内メーカー勢が強い日本市場。サムスンやファーウェイといったグローバルメーカーでも、日本市場で安定した人気を得るまでには長い年月を要しました。新規参入のOPPOが存在感を示すには、思い切った策も必要でしょう。OPPOがすでに明言しているように、大手キャリアでの取り扱いが実現するか否かが鍵となりそうです。
>> OPPO
(取材・文/村元正剛)
iモードが始まった1999年からモバイル業界を取材し、さまざまな雑誌やWebメディアに記事を寄稿。2005年に編集プロダクション「ゴーズ」を設立。スマホ関連の書籍・ムックの編集にも携わっている。
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