【レクサス LS試乗】地味だけどスゴい!安全との両立をにらんだ自動運転技術:岡崎五朗の眼
&GP / 2018年4月10日 19時0分
【レクサス LS試乗】地味だけどスゴい!安全との両立をにらんだ自動運転技術:岡崎五朗の眼
先のフルモデルチェンジで(トヨタ「セルシオ」時代を含め)、5世代目へと進化したレクサスのフラッグシップサルーン「LS」。メルセデス・ベンツにもBMWにもアウディにも似ることなく、それでいて、しっかりとした高級車像を描いてきたエクステリアデザインに、僕は好感を抱いている。
しかし、新しいLSで注目すべきは“たたずまい”だけではない。レクサスの特徴のひとつとして挙げられるのはなんといっても“先進性”だが、新型は、今、注目を集める自動運転技術において、最も進んだクルマに仕上がっている。
自動運転は、レベル0からレベル5までグレード分けされていて、新しいLSが搭載するのは“部分自動運転”となるレベル2。先頃、本国で発表されたアウディ「A8」は、人間による操作への介入がなくても走る“条件付き自動運転”=レベル3の実現を謳っていることを考えると、新型LSのそれは少々もの足りなく感じるかもしれない。
だが実のところ、レベル3以上の使用にはまだまだ厳しい制限があり、現在、日本国内で認可されているのはレベル2まで。その中において新型LSの自動運転技術は、かなり進んだものなのだ。
■進んだ“自動運転技術”を積極訴求しないトヨタの謎
さて、新しいLSでは、具体的にどのようなことが可能になったのか?
近年、日本車、輸入車を問わず、先行車との距離を保ちつつ追従走行を行う“ACC(アダプティブクルーズコントロール)”の搭載車種が増えているが、LSのそれは、白線や先行車の走行軌跡を利用した“LTA(レーントレーシングアシスト)”や、カーナビの地図データとも連動。車両がカーブを認識すると自動で減速し、ステアリング操作も支援する。
例えば、80km/hにセットして高速道路を走行中、目指す出口に差し掛かったため、60km/hまで減速して本線を離れるとする。従来型のACCでは、その先にカーブがあったとしても、前走車がいなくなったことで再加速してしまい、あわててシステムをキャンセルする、ということがあった。しかしLSのそれは、カーブに合わせて減速しつつ、操舵支援も継続されるようになっている。
ドライバーがステアリングを握っているかどうかを確認する“保舵検知”機能についても、大きな進化が見られる。従来型は、ステアリングにトルクを検知するセンサーが内蔵されていて、ドライバーの入力状況によって保持しているか否かを検出。そのため、手をそっと置いているだけでは“手放し運転”と判断され、機能がキャンセルされるというのが一般的だ。その点LSでは、ステアリングに備わる静電容量センサーと併用することで、手指の接触からも保舵状態の判断を可能にしている。
そして、これら機能を巧みに協調させた新型LSは、ハンドルに軽く手を添えているだけで、事実上、レベル2の自動運転を可能にしている。先日、空いた首都高速でドライブする機会を得たが、その時も、ハンドルに手を添えているだけで、目的地付近の出口まで無事にたどり着けた、といえば、その実力の高さがお分かりいただけるだろう。
さて、ここまで進んだ“自動運転技術”を搭載しておきながら、トヨタはそれを、販売戦略やマーケティングにおいて、積極的に活用していないように見える。それは、なぜか?
トヨタが自動運転において、最もプライオリティを置いているのは「事故をなくすこと」。LSに搭載される各種機能も、目標達成のためのひとつのテクノロジーとして磨きを掛けてきた。もちろん、仮に自動運転が実現されれば「流通の世界ではドライバーが不要になって輸送コストが下がる」とか「低コストの相乗りビジネスであるライドシェアが進む」といったメリットがあり、経済性や快適性といった側面から、自動運転の実現を強調する新興ブランドもある。だが、そうしたメリットだけを謳わないトヨタの慎重さこそが、自動車メーカーとしての良心があると考える。
実際、新しいLSには、自動運転と連携する“安全技術”においても、数々の最新装備が搭載されている。例えば“アクティブ操舵回避支援機能”を備えるプリクラッシュセーフティもそのひとつ。
これは、歩行者と衝突する可能性があると判断した場合、警報やブレーキアシスト、自動ブレーキによる衝突回避支援機能に加え、自動でステアリング操作を行うという仕組み。実際、テストコースで体験してみたが、歩行者にぶつかりそうになるとブレーキをかけて反対車線に飛び出さない程度にハンドルを右に切り、万一、対向車がいる場合は、その加減もコントロールする。そのアルゴリズム、サジ加減はとても絶妙だ。
また、LTA(含むACC)を使用しての走行中に、ドライバーが気を失うなどの緊急事態が発生した場合を考慮した“ドライバー異常時停車支援システム”も、新型LSにおける先端装備のひとつだ。これは、無操作状態が続くと、警告を発してドライバーに操作を促すだけでなく、ハザードとホーンで異常を知らせながら、自車線内に減速・停車する機構。さらに、停車後は車載の通信モジュールを介し、ヘルプネットに自動接続して救命要請まで行うのである。
こうした安全への取り組みを見ても、トヨタが自動運転という表現を軽々しく口にしない背景がお分かりいただけると思う。
新型LSに搭載される装備の数々をひもとけば、アピールこそ控え目だが、トヨタは先端技術の開発に対し、十分積極的であることが伝わってくる。特に自動運転技術に関しては、レベル3への道筋をつけた“最も進んだレベル2”を実現していることがよく分かる。
ともあれ自動運転技術は、ひどい渋滞や単調な高速道路での走行など、ストレスが掛かる場面においてドライバーの負担を軽減してくれるはずだし、現実的には、そういうシーンでの使用から、実現、浸透していくのだと思う。新型LSは、刷新されたエクステリアや走りにばかり目が向きがちだが、実はこうした、自動運転と安全の両立をにらんだ最新のメカニズムの数々も、注目すべきクルマなのである。
(文/岡崎五朗 写真/村田尚之)
外部リンク
この記事に関連するニュース
-
自動車の先進安全技術の理解度・運転に対する意識を調査 「令和5年度 ASV機能に関する調査」(国土交通省)分析結果
@Press / 2024年9月20日 11時15分
-
「自動ブレーキ」でも運転者がブレーキを踏む必要がある? 知っている人は半数以下に
マイナビニュース / 2024年9月19日 11時0分
-
ホンダ新「フリード」人気の秘訣は日本仕様の追求 販売好調、本質を変えないことが売れる理由
東洋経済オンライン / 2024年9月14日 9時30分
-
AT車のシフトレバー「2」「L」「B」どんな意味? 実は…めちゃ「便利な機能」も! いつ使うの?
くるまのニュース / 2024年8月31日 7時10分
-
三菱ふそうの大型トラック『スーパーグレート』を新旧比較試乗、「なぜ、ここまで違う?」新型最大の魅力とは
レスポンス / 2024年8月27日 12時0分
ランキング
-
1内臓脂肪に悩む人、やめるべき「お酒の飲み方」5つ 日本人の3人に1人は「脂肪肝」だといわれている
東洋経済オンライン / 2024年9月24日 15時0分
-
2WHOが注意を呼びかける「エムポックス」とは?治療薬はあるのか【薬学部教授が解説】
オールアバウト / 2024年9月24日 20時45分
-
3和田アキ子の限界「アッコにおまかせ!」に終了説 強面キャラが本物の権力者として批判されるように
東洋経済オンライン / 2024年9月24日 12時0分
-
4本当に実写? 再現度がヤバすぎたキャラに「すべて完璧」「あまりに自然」
マグミクス / 2024年9月24日 21時25分
-
5「真ん中の子だけ顔が似てないね」DNA鑑定で明らかになった“衝撃の真実”…父親はまさかの
日刊SPA! / 2024年9月24日 8時53分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください