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iPhoneやスマホと連動!光と音で知らせる「雰囲気メガネ」

&GP / 2015年10月6日 18時0分

iPhoneやスマホと連動!光と音で知らせる「雰囲気メガネ」

iPhoneやスマホと連動!光と音で知らせる「雰囲気メガネ」

「デジタル窓:アトモフ」「スマートロック」など、クラウドファンディングで新たな“ものづくり”にチャレンジしている企業を紹介する本シリーズ。今回は、先日、本サイトでも紹介したウエアラブルガジェット「雰囲気メガネ」の秘密に迫ります。

これはスマホと連動し、着用者にLEDによる光と音でさまざまな情報を伝えてくれるアイテムで、“メガネのパリミキ”でお馴染みの三城ホールディングス内の「株式会社なまえめがね」が製作を手掛けています。

 

「Google Glass」を想起せるガジェットではありますが、その機能性を確認する限り、レンズにディスプレイ機能は搭載しておらず、通知機能に特化していることが分かります。

■雰囲気めがねの機能一覧

 

・電話、メール、SNS、スケジュール、株価、天気の「通知機能」
・指定した時間にメガネを光らせる「タイマー機能」
・ジョギングや楽器の演奏に役立つ、設定した感覚でメガネを光らせる「テンポガイド」
・入力したテキストをモールス信号に変換して、光を発信する「モールス機能」
・雰囲気メガネとスマートフォンが離れたことを光と音で知らせる「置き忘れ防止機能」
・MIDIやOSCに対応した楽器やアプリを連携させる「音楽同期機能」
・鮮やかに移り変わる色や刺激的に点滅する光を楽しむ「イルミネーション機能」


 

■開発に至った経緯

DSC_2260 代表取締役・河村和典さん

開発ディレクター・白鳥啓さん 開発ディレクター・白鳥啓さん

DSC_2253 総合セクレタリー・多根周作さん

今回、お話を聞かせてもらったのは「株式会社なまえめがね」の取締役社長・河村和典さん、開発ディレクター・白鳥啓さん、取締役総合セクレタリー・多根周作さんの3人です。


 

――まず、開発に至った経緯をお聞かせください。

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河村:もともとは3年半くらい前、三城ホールディングスの中でプロジェクトのような形でスタートしました。そのときに開発していたのは、「気配メガネ」というプロジェクト名で、誰か自分の知っている人が来たら教えてくれるようなデバイスを作れないかというものでしたね。

カメラやディスプレイを付けるのではなく、どういう形が着用者に負担にならないかということを考えていて。その時期にちょうどBluetooth4.0がリリースされました。メガネくらいの大きさであればバッテリーが1日もつくらいのものは作れるということで、プロトタイプを作り始めました。

そしてウエアラブル機器に対する世の中の動向を見ようということで、3年前のバルセロナで行われたモバイル・ワールド・コングレスに視察へ出掛けました。その少し前にGoogle Glassが発表されたのですが、何か違うなと。われわれは母体がメガネメーカーですので、それを活かしたウエアラブルを目指そうとしたのが最初です。

大資本で開発されているところは、すごいデバイスをどんどん進められますが、われわれはカメラもイメージセンサーもやったことがないし、スクリーンやディスプレイ関係も経験がない。だからメガネメーカーとしてできる技術で考えていくと。

やはり“そぎ落とし”だよねという考えに行き着き、「雰囲気メガネ」の開発が始まりました。

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白鳥:最初のコンセプトは、総合ディレクターであり「セカイカメラ(アプリ)」を製作した赤松正行教授(情報科学芸術大学大学院 IAMAS教授)にお願いして、新しいものができないか相談しました。

研究を重ねた結果、“視覚に頼り過ぎない”“過度な情報提示をあえてしない”という方向性になり、ハイスペックではなく、なんとなく「雰囲気」という“イメージ”や“気配”という抽象化されているものを知らせるだけでいいんじゃないかというのがコンセプトになりました。

そこからは、なるべく普通のメガネとして使えることを重視して、河村が言うようにどんどん機能をそぎ落としていったという感じです。

河村:どちらかと言うと、われわれのプロジェクトそのものがソフトウエア系の人間中心だったというのが、この形に収まった一番の理由です。ハードウエア系の人間が入ると、やはりそちらを重視して「他がやっていない何かをやらなければ」となりますが、機能はアプリで作るものだという考えがありますので、そこで他社と製品の性質が違うのかなと思います。

――現在の「株式会社なまえめがね」の設立はいつでしょう?

河村:2015年の3月です。初代モデルに関しては、クラウドファンディング「Makuake」で販売しましたが、そこでどれくらいのニーズがあるかをつかむことと、アプリの開発者にアピールすることが目的でした。おかげさまで反響もあり、社内での評価も良かったので、事業会社を設立したということです。


■開発におけるポイント

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――素材やレンズについて聞かせてください。

河村:素材はプラスチックです。メガネメーカーなので、メガネとして実用的な重さじゃないと自分たちも許せないんです。レンズも遠視・近視・乱視と全て入れることが可能になっています。鼻パットの金具部分も普通のメガネと同じ方式にしてあります。

――確かに、かけやすくできていますね。上部LEDが発光することによる目への影響などは考慮されていますか?

河村:上部が光っているのですが、直接光が目に入ると視野を妨げてしまうので、間接光になるように真下に光を落とす設計になっています。

多根:直接光源が見えると、気にする方もいらっしゃるので、LEDの部分にカバーをのせて光を拡散させるようにしています。これは“初代モデル”になかったので、今回の製品版からの機能となります。最初のクラウドファンディングでいろいろなご意見を頂きまして、それをフィードバックさせているのが最新版なんです。

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――開発で苦労した部分はどこでしょう?

白鳥:全般的にです(笑)。特に、Bluetoothの仕様が出てきたばかりということもあって、モジュールメーカー自体もiOSとの接続がまだ確立されていない部分もあって……。

AppleのANCS(Apple Notification Center Service:BluetoothでiOSに接続する方法の一種)を実装したのは、うちが一番早かったんじゃないかな。つまり、iPhoneの通知をしっかり雰囲気メガネに伝える、という部分をいち早く実行しようとしたために苦労が多かった。

河村:初代モデルからアップデートしていったのは、「省エネ」の部分なんです。プロトタイプは、フル充電して10時間前後しか保ちませんでした。ですが、最新モデルは3倍くらいの時間になっています。

それは、省エネ用のチップを搭載したり、コントロール可能なファームウェアを変えたりという部分が大きいです。外装よりも、こういった内部にお金をかけています。

 

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白鳥:光とか音で通知をするデバイスは、これまであまりなかったと思います。なので、適切な部品がないという状況でした。まさかメガネにLEDを入れるなんて想定していないでしょうし、さらにグラデーションやフェードインやフェードアウト、弱く光らせるとなると「なんで?」ということになってしまう(笑)。

結局は、かなり部品を変更、改修しアルゴリズムを構築することで思う通りに光らせることが可能になりました。


■「雰囲気メガネ」のさまざまな使い方


――実用的なメガネ以外にも、イベントとの相性がよさそうですね。

河村:ライブで使いたいということで、お貸し出したりすることはあります。開発協力をいただいている赤松先生もエレクトリック系の音楽が好きなので、MIDIを連動させて光らせたいとおっしゃっていました。

他にもパーティーやカラオケで小道具として使う案も出ていますし、単純に光らせるモードもアプリで設けようと考えています。

耳にかかる部分に小型スピーカーを搭載。さまざまなパターンの音が通知として流れる 耳にかかる部分に小型スピーカーを搭載。さまざまなパターンの音が通知として流れる

 

白鳥:このメガネが他のガジェットと違うのは、自分だけの通知ではなく、周囲に見せることができるところで、そこが強みだと思っています。外部に対して光ってアピールするというのは、ファッションやメッセージ、感情といったコミュニケーションの手段としてあり得るんじゃないかなと。

実際、それがどういう場面で必要とされるのかはこれからですが、ユーザーの方から面白い使い方が出てくるのを期待しています。

――「モールス信号」機能はまさにコミュニケーションの一貫ですよね。

多根:例えば、会議中に声は出せないけどメッセージを出したいとか、緊急用とか。

河村:やはり「雰囲気」なんですよね。”何かが起きている”ということを伝えてくれる。道端で人がうずくまっていても、単純に座っているだけなのかは分かりませんが、メガネが赤く光っていれば、なんとなく「助けを求めているんだな」と感じることができる。

そういう道具として使うことはできますよね。他には渋谷のハチ公前広場で待ち合わせるとき、「メガネが緑に光っているから」と言っておけば探しやすい。暗いときにも探しやすい。

――「雰囲気メガネ」はガジェットではなく、メガネになるのでしょうか?

多根:軸はメガネでしょうね。でも、こだわらなくてもいいのかなと。もともとコンセプトの中に“生活を豊かにする”とありますし、メガネじゃなくてもいいよねと。今はメガネに特化した方が面白いと思っていますが、いろいろな可能性を排除はしたくないです。

河村:「なまえめがね」という社名ですが、これは英語名も同じです。三城ホールディングスのトップが言うには、「Glasses」じゃないんだと。「めがね」という新しいモノを作ろうということなんです。

そういう意味では、形にこだわらずいろいろな可能性を考えています。コミュニケーションの新しい形をつくるのが「めがね」であればいいなと思います。

――アプリ経由以外で本体を操作する方法はありますか?

白鳥:レンズ上部のボタンを押せば、レンズが光ります。電源のオン・オフが分かるようになっています。これから“スタンドアローン”はすごく大事になってくると思っていて、スマホを経由しないでも使えないと価値がない。だから次のバージョンでは、もっと独立型の機能を増やすつもりです。

このボタンを押すとLEDが点灯する このボタンを押すとLEDが点灯する

 

――今後の方向性はどのようにお考えでしょう?

河村:弊社のお客様は、もともと一般の方ですから、B to Cは外せないという前提がありました。B to Bであれば「2時間しか使えません」と言っても我慢できますが、日常生活なら「いらないよ、こんなもの」となる。

子どもでも年配の方でも満足して使えるようにするために、メガネを長く扱ってきたノウハウがあります。「絶対にここは譲れない」という部分をキープしたのが今の姿ですね。

それが受け入れられるかは一般販売(2015年10月〜)してからですが、機能性に走るのではなく、「かけ心地がいい」「金属部分が錆びない」など、メガネとしての基本的な品質にこだわりたいと思います。

そして五感のうち、どこまでをカバーできるのか。「考える」のではなく、「感じる」メガネとして進化させていきたいですね。

 

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【データ】(2015年10月時点)
社名:株式会社なまえめがね
製品名:雰囲気メガネ
価格:2万7000円
サービス開始時期:2015年8月
事業参加人数:約7人

(取材・文/三宅隆)

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