ジェームズ・ダイソンが語る「Dyson Cyclone V10」と先端テクノロジー【GoodsPress特別企画】
&GP / 2018年5月6日 18時0分
ジェームズ・ダイソンが語る「Dyson Cyclone V10」と先端テクノロジー【GoodsPress特別企画】
「世界の問題を技術で解決する!」という使命感を持ち、理想のモノ作りを続けるダイソン。同社は今まさに、家電メーカーから総合テクノロジーカンパニーへと劇的な進化を遂げようとしている。その進化を証明するのが、去る3月20日に創業者でチーフエンジニアのジェームズ・ダイソン氏が自身で発表した新しいコードレスクリーナー「ダイソン サイクロン V10(ブイテン)」だ。この新型掃除機には、ダイソンの、そして世界の未来を拓く画期的な3つのキーテクノロジーが搭載されている。そのスゴさをお伝えしよう。
「ダイソン サイクロン V10」は最速・最少・最軽量の新型デジタルモーターと14個の同心円状配置のサイクロンなど最新の空力学設計、そして軽量&大容量を両立させた新型充電池。世界を変える3つのキーテクノロジーを搭載。
毎分最大12万5000回転という超高速で回転するダイソン史上最速・最少・最軽量のダイソンデジタルモーターV10。14個のサイクロン(遠心分離装置)を同心円状に配置し空気の流路も直線的に見直した最新の空力学設計。重さを変えずに従来の最長40分から60分へと伸ばした大容量のニッケル&コバルト&アルミニウムを電極に使った画期的な新型充電池。基本の3技術をすべて革新して生まれた、0.3ミクロンのゴミまで捉える最新のコードレスクリーナー。本体サイズもさらにコンパクトな幅136×奥行312×高さ245mm、本体重量1.54kgに。
2種類のヘッドと8種類のお掃除ツールが付属する「V10 アブソリュートプロ」から、7種類のお掃除ツールが付属する「V10フラフィプラス」、5種類のお掃除ツールが付属する「V10 フラフィ」と、ヘッドやアタッチメントの数が異なる3種類のバリエーションがある。すべてオープン価格。
全モデルに標準装備されるソフトローラークリーナーヘ ッド(フラフィ)。フローリングからカーペットまでさまざまな床の上で、大きなゴミから微細なゴミまで、内蔵のダイレクトドライブモーターで駆動されるナイロンフェルトと9120本のカーボンファイバー単繊維のブラシが確実に捉えて吸い取る。開発には467kmのフローリングを掃除する試験が行われたという。
▲これまでの製品のオーナーも、手にした瞬間からその持ちやすさ、軽さに驚くはず。トリガー(スイッチ)の操作感もソフトタッチでさらに快適になった
▲空気の流路を従来よりも直線的に一新。デジタルモーターの吸引力をより活かせる基本構造に進化した
<すべてはEVに直結する3つの革新技術>
「ダイソン サイクロン V10」の3つの革新技術は、すべて最新のEV(電気自動車)に術だ。そのスゴさをひとつひとつ説明しよう。
▼ダイソンデジタルモーター V10
ダイソンV10で最も革新的なのは、5年間をかけ180種類の部品を試作し2630台の試作品を経て完成した「ダイソン デジタルモーターV10」。電極を4極から8極に増やすなどモーターの基本構造を根本的に変えた上に、空気を動かし気流を生みだすインペラー(羽根)の形状も改良。
さらに頑丈で軽量なセラミックシャフトを新採用し毎分最大12万5000回という超高速回転により最強のパワーを実現。さらに制御回路に新たに圧力センサーを搭載し、現在地の高度、気圧、気温や天候を把握、分析し、どんな状況でも自動的に最高の性能を発揮する。この技術とノウハウからEV用の画期的なモーターが生まれるのは間違いない。
▼サイクロンなど最新の空力学技術
超高速で回転する空気の渦を生み出して、その遠心力で空気とゴミを分離する。それが、ジ ェームズ・ダイソン氏が開発したクリーナーの基幹技術であるサイクロンテクノロジー。V10では14個のサイクロンユニットが同心円状に配置され、空気はその中を通るとき時速72kmから193kmへと一気に加速され、7万9000G以上の遠心力が発生。
この遠心力が空気の中から微細なゴミを分離して、クリアビンに落としてくれる。この技術は空気を対象にした流体力学であり、それは自動車の設計でも最も重要な車体の空気抵抗を軽減する空力学技術に直結する。この技術からどんなフォルムのボディを持つEVが生まれるのか楽しみだ。
▼新素材の高密度充電式バッテリー
EVでいちばん技術的なブレークスルーが必要なのは充電池。現在はリチウムイオン電池が使われているが、その容量は不十分で航続距離が短いという問題を抱え、よりコンパクトで大容量の充電池の開発競争が続いている。
今回、V10に搭載された新型充電池はリチウムイオン電池の正極にニッケル、コバルト、アルミニウムを使ったリチウム充電池の進化型。セルの数を増やし制御回路も進化させることで従来の約40分から約60分に使用時間が大きく伸びた。この新しい充電池も画期的なEVにつながる独自技術。さらにダイソンはEV用次世代電池の本命と言われる、電解液がなく大容量の「全固体電池」の開発も行っている。
■「このコードレスクリーナーは、私たちの『世界を救うEV』の基本技術をすべて備えています!」
「これから、私たちダイソンは“世界を救う”ための、新しいステージに入ります」2018年3月20日、ネクタイこそ締めていないが、いつもと違うスーツ姿でステージに登場したジェームズ・ダイソン氏は、力強く、高らかに宣言した。ダイソン氏の手に握られていたのは、新しいコードレスクリーナー「ダイソンサイクロンV10」。サイクロン技術を筆頭に画期的な技術で「もう大した進化はない」「完成している」と思われていた掃除機の世界に革命を起こしたダイソンの最新モデルだ。
体験コーナーで実物を手にして驚いたのは、これまで以上にコンパクトで軽量であるにもかかわらず、吸引力がさらにパワフルなこと。そしてバッテリーの持続時間も最長約分と史上最高なのだ。クリーナーのトリガーを引くと、これまでにないハイビートな音を響かせながら、カーペットや床板の隙間にある細かなホコリやゴミまでどんどん吸い取っていく。
ダイソンが独自のサイクロン技術、紙パックを使わず吸引力が変わらないクリーナーを開発したのは1993年。そして日本でこの技術を搭載したキャニスター型、コード付きの掃除機「ダイソンDC02」が初めて発売されたのは今からちょうど20年前の1998年。さらに同じ技術を搭載したコードレスハンディークリーナー「DC16」が発売されたのは2006年だった。あれからまだ12年。
「これからは、コード付きのクリーナーは過去のものになるでしょう。私たちダイソンはもう作りません。軽くて小さくて、どんな人にも扱えるうえに、途中で充電しなくてもこれ1台で、家中の掃除がすべて行えるのですから」とダイソン氏。
しかもこのコードレスクリーナーは、ただのコードレス掃除機ではない。2017年9月26日にダイソン氏が開発中であることを明かした、2年後の2020年に発表、2021年に発売する予定の世界が注目するEV(電気自動車)のキーテクノロジーである、ダイソン独自開発の3つの技術がすべて搭載されている。
それが①デジタルモーター②サイクロンテクノロジーの開発で培った空力学技術③新型充電池だ。
「エンジニアは技術で社会の問題を解決して世界を幸福にすることが仕事です。そして、私たち独自のこうした技術は、すべてEVにも最適な技術であり、私たちなら自動車メーカーとは違う独創的EVを作ることができる。それが、私たちがEVに参入する理由です。そして私たちはこれまで以上に技術で大きく社会を変える、社会に貢献するテクノロジーカンパニーに生まれ変わります。このV10はその大きな飛躍の第一歩なのです」
■「自動車業界は変革の時期」」
ダイソンと聞いて気になるのが2020年に発表を予定している電気自動車事業だ。現在、世界中の大手自動車メーカーのほか、米テスラなどの新興企業がしのぎを削って開発を進めているが、ダイソンもまた、そのひとつ。デジタルモーター、空力学技術、新型バッテリーという独自の技術力で、存在感を高めている。「V」発表会後、グッズプレスなどの取材に応じたジェームズ・ダイソン氏は、今後のEV開発に関する質問にも、これらの技術が「多くの部分で応用できる」と話す。
「こうした新技術を開発できたこともあって、私たちはEV開発をはじめました。これはとても自然な流れでした。自動車産業は現在、変革の時期を迎えていますが、そうした意味でもEV市場への参入はいいタイミングだったと思ってます」
改めてEV参入への意向と自信を示したジェームズ・ダイソン氏。発表が待ち遠しい。
●サー・ジェームズ・ダイソン
1947年イギリス・イングランドのノーフォーク生まれ。ロンドンのロイヤ ル・カレッジ・オブ・アート(王立美術大学)で家具とインテリアデザインを学んだ後、エンジニアに。1978年、製材工場の木くずと空気を分離するサイクロン装置をヒントに5 年と5127台の試作品を経て世界初のサイクロン掃除機の開発に成功(日本で製品化)。1991年 にイギリス・ウィルトシャー にダイソンを創業。現在も創業者 、チーフエンジニアとして製品開発のすべてを統括する。イギリスの工場や経済への多大な貢献によりナイトの爵位、さらに文化や公共の福祉に多大な貢献があった人に送られるメリット勲章も受賞。現在、母校ロイヤル・カレッジ・オブ・アートの学長を務めるほか、多摩美術大学・美術学部生産デザイン学科のプロダクトデザイン専攻客員教授も務める。
本記事の内容はGoodsPress5月号67-70ページに掲載されています
(企画・構成・取材・文/渋谷ヤスヒト 撮影/松山勇樹 協力/ダイソン・一般社団法人ジェームズ ダイソン財団)
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