日産「リーフ」の中古車がバリューアップの予感!再生バッテリーの販売始まる
&GP / 2018年5月7日 18時0分
日産「リーフ」の中古車がバリューアップの予感!再生バッテリーの販売始まる
先頃、日産自動車と住友商事の合弁企業であるフォーアールエナジーが、福島県浪江町に“使用済みEV(電気自動車)用バッテリーの再製品化専用工場”を開設しました。
EVと聞いて真っ先に思い浮かぶのは、日産「リーフ」という人も多いかと思いますが、初代モデルが発売されたのは2010年末のこと。以来、世界累計販売台数は30万台を超え、そのうち約30%%が日本市場で販売されています。また、リーフは昨2017年、フルモデルチェンジを実施したこともあり、初代モデルは買い替えの時期を迎えています。
となると、ユーザーが手放したリーフの使用済みバッテリーはどうなるのか? という疑問が生じるのも自然のこと。フォーアールエナジーが取り組むのは、この使用済みバッテリーの再活用事業、というわけです。
では実際に、バッテリーの再製品化とはどのようなプログラムなのでしょうか? また、一般ユーザーにはどのようなメリットがあるのでしょうか? 工場の模様とともにレポートします。
■24kWhの再生バッテリーを30万円強で提供
フォーアールエナジーが設立されたのは、2010年9月。初代リーフ発売の2カ月前、というタイミングでした。同社の代表を務めるのは、日産自動車でEVの開発や普及に従事していた牧野英治さん。これまで広く公開されることはありませんでしたが、EV開発に当たっては、バッテリーの再利用まで視野に入っており、技術開発や検証を重ねていたそうです。
ちなみにフォーアールエナジーは、これまで家庭用蓄電池システム事業などを展開しており、EV用電池に限らず、さまざまなノウハウを蓄積してきました。そして、新たに開設した浪江事業所で行うのは、リーフのバッテリーを用いた“4R”事業。すなわち、リチウムイオンバッテリーのReuse(再利用)、Resell(再販売)、Refabricate(再製品化)、Recycle(リサイクル)です。
100%電気自動車のリーフは、動力源としてリチウムイオンバッテリーを搭載しています。バッテリー製造に際しては、コバルトやニッケルなどの希少金属が使用されており、貴重な資源としての価値があるのもご存知のとおり。一方で、EV用途としては寿命を迎えても、実はバッテリーの容量としては十分な余力があり、別の使い途においては十分に活用可能。つまり、リーフに搭載された使用済みリチウムイオンバッテリーの回収や再利用は、資源の有効活用として大きな意義を持つのです。
では、フォーアールエナジーは実際にどのような作業を行い、どのようなカタチで再製品化するのでしょうか?
まずは日産自動車から、リーフで使用されたバッテリーを受け入れます。1台分の電池パックは48個の電池モジュールから構成されていますが、モジュール個々の性能分析を行い、性能によりランク分けを行います。
というのも、クルマの使い方や使用環境により、電池パックの劣化の度合いが異なるのはもちろん、モジュール単位でも劣化状態が大きく異なるのだそうです。
これまでは、この性能分析が難しく、日産自動車の方法では、1台分48個の測定に16日間もの時間を要していました。これをフォーアールでは、独自技術の開発によって一気に4時間にまで短縮することに成功したそうです。
ちなみに分析作業は、温度を25℃に保った専用の検査室で、3台分同時に行えるのだとか。つまり、1日当たり8時間の稼動で6台分/日、夜間も稼動させると9台分の分析が可能となり、年間で約2250台分の電池パックを診断できるのです。
こうして、各モジュールの状態を把握した後、モジュール単位での分解、性能ごとの仕分けが行われます。そして、十分な性能(電力容量80%ほど)を保っているモジュールを新たに48個組み合わせ「リーフ用の交換用再生バッテリー」として再製品化を行います。まずは、初代リーフの初期型に搭載されていた24kWhのバッテリーが、日産自動車を通じて有償交換プログラムとして用意され、30万円(税別・工賃別途)で供給されることになっています。新品バッテリーの場合、約65万円とのことなので、かなり割安な価格設定といえるでしょう。
一方、リーフ向けとしての基準を満たさなかったモジュールはどうなるのでしょうか? こちらも必要な数のモジュールを組み合わせ、電動フォークリフトや工場電源バックアップ、街灯用や産業用の蓄電池として再活用されるとのこと。「低ランクのバッテリーでは性能的に不十分なのでは?」と思われるかもしれませんが、異なる性能ランクのモジュールを組み合わせるよりも性能的に安定すること、また、元々1台分で24kWhという大容量であることから、これらの用途では十分な性能を確保できるのだそうです。
急速にEVの普及が進む昨今としては興味深い話ですし、初代リーフ初期型のオーナーにとって朗報であるのは間違いありません。さらに、お手頃なエコカーを探しているという人にとっても、この再生バッテリーは少なからぬメリットを与えてくれるかもしれません。
例えば、記事公開時の中古車の市場価格を眺めてみると、初代リーフの初期型(2011年式)は50~60万円台の価格帯で推移していて、ライバルであるハイブリッド車と比べ、30万円ほどお手頃な設定。「EVに興味はあるけれど、中古車だとバッテリーの劣化具合が気になる」という人も、再生バッテリーへ交換することを前提にすれば、コストを抑えつつ不安も解消できるのではないでしょうか。初代リーフは、エアロパーツを始めとするドレスアップパーツが多く出回っている車種だけに、中古リーフでお手頃に“遊ぶ”という手も、アリかもしれません。
そして将来的に、日産自動車がユーズドカーに設けている“認定中古車制度”において、こうした再生バッテリーを搭載したリーフや、購入時の交換パッケージなどが設定されるようになれば、EVユーザーの裾野はますます広がるのではないでしょうか。事業としてはスタートを切ったばかりですが、日産自動車と住友商事、そしてフォーアールエナジーの今後の動向は、リーフのオーナーやオーナー予備軍にとっては要注目といえるでしょう。
(文/村田尚之 写真/村田尚之、日産自動車)
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