吉田由美の眼☆ボルボ「XC40」の“顔”は、あの“ワンちゃん”からのひらめきでした!
&GP / 2018年5月14日 20時0分
吉田由美の眼☆ボルボ「XC40」の“顔”は、あの“ワンちゃん”からのひらめきでした!
「XC90」のフルモデルチェンジ以降、明らかにデザインが良くなったボルボ。しかもそれは、エクステリアだけではなくインテリアにも通じていて、全体的にも大幅なイメージチェンジに成功しています。
先日発売された、ボルボで最もコンパクトなSUV「XC40」も、これまた期待を裏切らないカッコよさ。そんな最新ボルボのデザインの秘密を、ボルボ本社でチーフデザイナー兼エクステリアデザイン部門のバイスプレジデントを務める、マクシミリアン・ミッソーニさんにうかがいました。
■イケメンSUVを手掛けたのはイケメンのデザイナーさん
ミッソーニさん:XC40は、現行のボルボのラインナップの中で一番小さなSUVですが、上級モデルのXC90 や「XC60」を小さくしたクルマではありません。ボルボのSUV「XCシリーズ」は、実はセグメントによってクルマの性格を変えています。シューズに例えるなら、XC90はエレガントな革靴、XC60は少しスポーティなスエード靴、XC40はおしゃれでカジュアルなスニーカーです。でも、たたずまいや存在感は、小さなXC40でも上級の2台に対してヒケをとりません。
左:XC60/右:XC40
――ミッソーニさんは、かつてはフォルクスワーゲンに在籍され、5年ほど前にボルボへ移籍されました。現在はどのようなお仕事をなさっているのですか?
ミッソーニさん:ボルボとポールスターのデザインを手掛けています。ポールスターは、以前はボルボのスポーティブランドでしたが、現在は電動化されたハイパフォーマンスモデルを扱う独立したブランドになりました。2018年3月のジュネーブモーターショー2018では、新生ポールスターの第1弾となる「ポールスター1」を発表。電動化されたパワーユニットはもちろんのこと、とてもスタイリッシュなデザインでも話題となりました。
ポールスター 1
――2012年、筆頭株主が中国の吉利汽車(ジーリー)となって以降、ボルボには大改革が訪れます。私たちから見ると、吉利は「口を出さないけれど金は出す」というボルボにとって理想的なパートナーで、そのお陰で、ボルボは開発に多額の投資を行うことができ、ここ数年、その成果が現れ始めているように思えるのですが。
ミッソーニさん:吉利は、ボルボと信頼関係を構築しながら調整を繰り返し、ボルボを独立した企業として財政面をバックアップしてきました。その結果がまず現れたのが、XC90のフルモデルチェンジです。そして、フルモデルチェンジしたXC60は、世界の自動車アワードで大賞を独占! そして、XCシリーズの各モデルが、世界各国でアワードを獲得しました。
――吉利の資本注入による改革の影響は、デザイン部門にも及んでいますか?
ミッソーニさん:吉利が筆頭株主になった2012年に、ボルボは新しいデザインランゲージを掲げました。それは、かつてのボルボの名車「P1800」がキーになっています。
P1800
でも、決してレトロを目指すのではなく、そこに新しいエッセンスをプラスしています。デザインの手法のひとつとして、成功したモデルをスケールダウンするというものがあります。でも我々は、それをトレースしませんでした。XC90は落ち着きや自信に満ちています。XC60はアスレチックでスポーティ、そしてダイナミックです。そしてXC40は、それらとは全く別の新しいものにしました。XC90やXC60とはアーキテクチャーを変えたのです。
XC90
XC60
XC40
――具体的に、XC40とその他2台とのデザインの違いを教えてください。
ミッソーニさん:XC90は、直線で落ち着いた感じを強調し、XC60はふたつのラインを強調してスポーティさを演出しています。一方XC40は、プロダクトのデザインをアップライトにしつつ、縦のラインを強調することでカジュアルダウンしています。ファッションブランドでも、ひとつのブランドの中に全く異なるテイストのものがあるのと同じです。
XC90では、フロントマスクのデザインに、ライオンをインスピレーションとして使って欲しいとデザインチームに伝えました。一方、XC40では、スケールダウンしたライオンではなく、ブルドッグをインスピレーションとして使っています。
また、グレードごとに個性を変えているのもXC40の特徴です。「Rデザイン」はスポーティさを追求。「モメンタム」はホワイトルーフと、1960年代にボルボで使っていたアマゾンブルーというボディカラーを採り入れることで、アーバンな雰囲気をプラスしています。そして「インスクリプション」では、メイプルブラウンを導入しています。
XC40 Rデザイン
XC40 モメンタム
――インテリアのデザインでは、どのような個性を求められたのでしょうか?
ミッソーニさん:1/4サイズのスケールモデルからスタートし、元々のテーマにリアリティを加えていきました。ダッシュボードのテーマはクリーンかつピュア。全体を3つに分割し、真ん中のインストルメントパネル以外は縦のラインを強調。真ん中を中心として傾きのあるデザインにしています。8つのスイッチ以外はすべて液晶パネルで操作するようにしました。また、すっきりとした収納も、大きな特徴です。昨今、人気の素材となっているフェルトを、ドアの内側に使用しています。ドアポケットには大きな収納スペースを設け、ノートPCやペットボトルを収納できるようにしました。このほか、スカンジナビアの立木をイメージした流木風のデコレーションパネルでも、個性を演出しています。
* * *
なるほど! 最近のボルボがイケメンになっている背景には、吉利による資金的なバックアップはもちろん、イケメンデザイナーのミッソーニさんを始めとする、デザイン部門のこだわりなども好影響を生んでいるんですね。でも、XC40のフロントマスクが、ブルドッグからインスピレーションを得たデザインだったとは…。かわいらしいとは思っていましたが、ちょっと驚きです。
ところで今、私がボルボで気になっているのは、XC90、XC60と来たのに、次は「XC30」…ではなく、XC40になったこと。なんか引っ掛かります。この件をミッソーニさんに尋ねてみたところ、うまくかわされてしまいました(苦笑)。もしかして近い将来、SUVラインナップの新たな一員として、XC30が登場する日が来るのかも!?
(文/吉田由美 写真/村田尚之、ボルボ・カー・ジャパン)
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