Siriのカスタマイズや32人同時のFaceTimeが斬新!「WWDC 2018」のココに注目
&GP / 2018年6月6日 19時0分
Siriのカスタマイズや32人同時のFaceTimeが斬新!「WWDC 2018」のココに注目
米Appleは6月4日(現地時間)、「WWDC 2018」を開催。「iOS」「macOS」「watchOS」「tvOS」という4つのソフトウェアプラットフォームについて、次期バージョンの全貌が明かされた。
■6000人のディベロッパーに囲まれて
昨年秋のiPhone XがiPhoneの10周年という節目だったとすると、今年のWWDCはiOSの一つの節目だったのかもしれない。正確に言えば、今年の7月にiOSの「App Store」が10周年を迎える。10年前といえば、スマホにアプリをインストールして活用するなんて、考えてもいなかった。しかし、いまではアプリなしでの世界は考えられない。僕の生活の中には、いつもiPhoneがある。
WWDCといえば、オープンニングのムービーが楽しみのひとつだ。日本で中継を見ているときには、毎年眠い目をこすりながら見ていた。今年は初めて現地にて、これを体験した。いやしかし、すごい迫力だった。
▲会場の様子
オープニングは世界各国からWWDCに集まってくる「不思議な生き物(ディベロッパー)」を描いていた。筆者はプレス席に座っていたわけだが、その周囲には6000人のディベロッパーがいた。周りを見渡すと全員ディベロッパーなのだ。ムービーが流れるとともに、会場は瞬く間に熱気を帯びた。
▲オープニングのムービーで空港にディベロッパーが到着するシーン
結論を先に言うと、ネットの速報に書かれているように、事前に噂されたような新デバイスは登場しなかった(Apple Watchのバンドの素敵な新カラーはあったけど)。しかし、次期OSの新機能については、例年通りとてもボリューミーで、2時間ちょっとのキーノートでは消化しきれないものでもあった。ここでは、筆者が興味深いと感じた新機能に絞り、その概要を紹介していきたいと思う。
■iOS 12(前半):「手の届く未来」を感じる、実用的な機能たち
iOS 12で必ず押さえておきたいのは、「AR」「Siri」「FaceTime」に関する新機能だ。
▲ARのポイントは、AR空間を共有できて、状態を保存できること、そして3次元の物体を認識してARを重ねられること
まず「AR」については、フレームワークのバージョンが「ARKit 2」に上がる。最大の進化は、複数人でAR空間を共有できること。会場では、LEGOのデモンストレーションが行われた。
実物のLEGOで組み立てられた建物をアプリで写す。すると、周りに追加の建物や、道路、人形が表示される。iPadのカメラは、オブジェクトをしっかり認識していて、建物の中身もARで表示された。別のiPadを操作するプレーヤーが同時に同じARの世界に入り、同じ空間を楽しめる。キャラクターを動かし、ときには火事が発生して、消火・救出作業を行い、新しいアイテムをゲットしていく。
このほか、会場ではテーブル上にARで構築された積み木を狙撃するというゲームアプリも紹介された。こうした対戦型のゲームが増えることで、ARの楽しさはぐっと高まると思う。
ちなみに冒頭には、アップル純正のアプリとして「Measure(メジャー)」も紹介された。同アプリは、カメラに写したオブジェクトのサイズを測定できるというもの。サード製の類似アプリはすでに多く存在する。これが純正で登場するというのは、ひとつ段階が変わったということ意味するのかもしれない。
▲Siri用の「Shortcuts」で、Editorを使う画面
続いて、「Siri」だ。最新機能の名は「Shortcuts(ショートカット)」。簡単に言うと、Siriのボイスコマンドと、実行する操作を自身でカスタマイズできるようになる機能。カスタマイズしたコマンドはiPhoneやiPadだけでなく、HomePodや、Apple Watchでも使えるようになる。
会場のデモンストレーションでは、まずSiriに「鍵を無くした(Hey Siri, I lost my keys)」と話しかけて「Tile」アプリを連携する例が紹介された。返事は「タイルによると、鍵は近くにあります。いま音を鳴らしています。ソファーのクッションの下にないといいですね(Tile Says:”Your keys are nearby. Ringing them now... Hope they’re not under a couch cushion!”)」という流れだ。
こうしたコマンドはショートカット機能の「Editor」からカスタマイズできる。そして、実行する操作は複数をまとめることができる。キーノートのデモでは、こんな操作が行われた。「家に帰るよ(Heading Home)」というコマンドで、マップが起動して家までのナビゲーションを実行し、家族に「◯時頃(自動入力)に着くよ」とメッセージを送り、家の温度を21.1℃に設定、そしてラジオを再生する。会場からは歓声が上がった。
もちろんこれは一例だ。「行ってきます」「走るよ」「買い物」「ただいま」ーー。いろんな選択肢が想像できる。
▲「Group FaceTime」でアニ文字を使っている様子
最後に、FaceTimeの新機能について。最大32人でビデオ通話できる「Group FaceTime」が登場した。これは特にUIが秀逸だ。画面上には、複数の相手の映像が左右交互に並ぶ。そして、話したユーザーの画面が大きくなる。ダブルタップして、特定の人物を大きく表示させることもできる。
iPhone Xでは、TrueDepthカメラを利用したアニ文字も活用可能。新たに登場した4種類のキャラクターや、アニ文字用のアバターをカスタマイズして使用する「Memoji(ミー文字)」機能なども、同機能と併用できる。素顔では小恥ずかしいビデオ通話も、アニ文字ならもしかするといけるのでは…と感じるものがあった。
■iOS 12(後半):人に寄り添う、でも近すぎない
iOS 12でもうひとつだけ注目しておきたい新機能がある。それは「ScreenTime」だ。毎週iPhoneやiPadをどのくらい使ったのか、サマリーを表示してくれる。
▲子どもの利用について管理できる機能も
個別のアプリに対して、利用制限時間も設定でき、上限が近づくとアラートがプッシュ通知されるようになっている。スマホホリックになりがちな現代人だからこそ、こういった機能は重要だろう。
また、「ファミリー共有」機能を利用している子どもの場合、親が子どものScreen Timeを確認できる。さらに、使用できない時間帯や、常に使用できるアプリなどを、親がリモートで設定可能。一種のペアレンタルコントロール機能として活用できるわけだ。
■watchOS 5:「ウォーキートーキー」がかなり面白そう
「watchOS 5」についても魅力的な新機能がたくさん紹介された。ここでは、そのなかから3つの特徴をピックアップしたい。
ひとつ目は「Walkie-talkie(ウォーキートーキー)」という新機能。「こちら〜です、どうぞ」ーー。誰しも真似したことがあるアレだ。日本語だと「トランシーバー」。
▲「Walkie-talkie」機能のデモンストレーションの様子
なんと、Apple Watchにこの機能が追加された。簡単に言えば、ボイスメッセージ機能なのだが、LTE経由でもWi-Fi経由でも利用できる。ボタンを押して、短いメッセージを話せば、相手に声が送られる。
タッチ操作による文字入力にはあまり向かないApple Watchだからこそ、メッセージアプリの代用として機能しそうだ。一度テキストに変換して誤認識されるリスクも低くなる。通話するほどの用事ではないが、ちょっと伝えたいことがある。そんなシーンで大活躍するのではないだろうか。…何より、めちゃめちゃ楽しそうだ。
▲「Activity Competitions」では、相手と1週間のポイントを競う
ふたつ目は、Activityに搭載された相手と競争する機能。以前からアクティビティの「共有」機能で、友人と運動量を競うことはできた。しかし、新仕様では、ポイント制で競い合うものへと変わるようだ。
競争は1週間単位で行われ、ポイントは目標値に対する達成率で算出される。単純に運動量ではないので、年齢や体力に差がある家族や友人とも使いやすいだろう。なお、勝利することで、トロフィーを獲得できる。
▲通知画面からの操作が、Apple Watchの可能性を広げる
3つ目は、通知機能に関するアップデートだ。まず、通知画面がいろんな操作に対応した。例として、フライトのチェックイン、予約人数の変更などが可能になる。また、メッセージがリンクを含んでいるときには、それをタップすることで、通知から直接ウェブサイトを表示できるようになる。
通知を生かすことで、いままでApple Watchと相性が良くなかったアプリでも、ポテンシャルを発揮する可能性がある。そんな期待を抱かされるアップデートだ。
■tvOS 12:Dolby Atomosをサポートする
tvOSに関するアップデートはシンプルだ。「Apple TV 4K」がサラウンドフォーマットの「Dolby Atomos」をサポートする。
▲Dolby Atomosのサウンドを再現するシーンでは、花火を真近でみるような振動が身体に伝わった
また、購入済みのコンテンツに関しては、Dolby Atomos対応版に無償でアップグレードされるという。
なお、スクリーンセーバーについては、航空映像を映せるほか、国際宇宙ステーションから撮影した地球の映像が追加される。
■macOS Mojave:4年続いた「山」から「砂漠」へ
macOSのネーミングに、カリフォルニア州にある海や山の名称が使用されるのは、周知の通りだ。ここ4年間は「山」の名称が続いたが、次期OSは「砂漠」になった。
砂漠の名前は「Mojave」。日本語読みだと「モハべ」とか「モハーベ」になるようだ。カリフォルニアを含む4州にまたがり、サンノゼからは東南東に約600km以上進んだところに位置する。
▲Xcodeで「Dark Mode」を使う
“砂漠の時間の移ろいを意識した” と紹介されたのが「DarkMode」だ。デスクトップを暗い色合いに変えることで、例えば、暗い場所でも使いやすくなる。また、動画や写真の編集を行う際にも適している。そして、コーディングを行うさいのエディタは、やはり暗い方がかっちょいい。
では、以下3つの新機能をピックアップして締めにしたい
▲こんなデスクトップが…
▲あっという間にこうなる
ひとつ目は「Stacks」という機能だ。散らかってしまいがちなアイコンをあっという間にまとめられる。アイコンはファイルタイプに基づいて、近しいグループに振り分けられる。振り分け方は、ユーザーがカスタマイズできる。
また、ファインダーに関しては、ファイルのメタデータを見られるようになったり、PDF化のクイックアクションが可能になるなど、利便性が向上している。
▲新しいApp Storeのデザイン
ふたつ目は「App Store」がリデザインされること。左に並ぶタブをそれぞれ見ていくと、「Discover」タブで、新しいアプリを取り上げる。その他の「Create」「Work」「Play」「Develop」では、目的に応じたアプリを見つけやすくするといった具合にデザインされている。
▲iPhoneのカメラで写した映像が、すぐにmac側へ反映される
3つ目が、「Continuity Camera」だ。これはMacの近くにあるiPhoneやiPadのカメラを利用して、写真を撮影したり、PDFをスキャンして瞬時に画面上に反映させるという機能。背面カメラをもたないMacゆえに、モバイルとのこうした連携はクリエイティブな作業で役立ちそうだ。
* * *
WWDCの冒頭で、スライドに表示された言葉、ーー「Customer at the center of everything(全ての中心に顧客)」。iOSに限らず、今回発表された内容は、まさにこうしたAppleの哲学に沿ったものであると感じられた。どの機能も、一般向けのリリースが待ち遠しいばかりだ。
なお、本記事では紹介しきれなかった各OSに関する新機能が、実は山のように残っている。アメリカ向けのサイトに詳細が記載されているので(※執筆時点では)、英語に恐怖心のない人は、ぜひ公式サイトで詳細を確認してみて欲しい。
>> Apple
(取材・文/井上 晃)
スマートフォン関連の記事を中心に、スマートウォッチ、ウエアラブルデバイス、ロボットなど、多岐にわたる記事を雑誌やWebメディアへ寄稿。雑誌・ムックの編集にも携わる。モットーは「実際に触った・見た人だけが分かる情報を伝える」こと。編集プロダクション「ゴーズ」所属。
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