【マツダ ロードスター刷新】2リッターエンジンが激変!RFの走りがもっと楽しく、より爽快に
&GP / 2018年6月13日 19時0分
【マツダ ロードスター刷新】2リッターエンジンが激変!RFの走りがもっと楽しく、より爽快に
「ちょっと早過ぎやしませんかね?」
そんな言葉が口から出ないよう(そして、間違ってもマツダ関係者に聞こえないよう)、しっかりと口を一文字に結んで参加したマツダ「ロードスター」と「ロードスターRF」の商品改良モデル取材会。
何が早過ぎなのか? それは、ロードスターの商品改良ペースである。ロードスターとロードスターRFが前回、商品改良を受けたのは、昨2017年11月のこと。そこからわずか半年ちょっとで、またまた商品改良のニュースが飛び込んできた。これはもう、驚かずにはいられない。
■新2リッターエンジンの改良ポイントは23箇所にも及ぶ
2017年11月にロードスターとロードスターRFに施された商品改良メニューを並べてみると、リアコンソールボックス内の床面に遮音マットを追加したり、一部グレードのサンバイザーに表革巻きタイプを採用したりといった、質感アップを目的とする細かい改良に始まり、新ボディカラーの採用、布シートへのシートヒーター搭載(従来は革シートのみだった)、アダプティブLEDヘッドライトの装備、視認性アップのためのメーター表示の変更、そして、リアサスペンションやステアリングフィールの改良などなど、何気に盛りだくさん。「ロードスターもこれでしばらくは安泰だ」なんて思っていたほどだ。
もちろん、製品がどんどん進化していくのは大歓迎。特にクルマは、売りっぱなしではなく、デビュー後もしっかりと進化させていくべきだし、その手を緩めないマツダの姿勢には拍手を送りたい(とはいえ、この半年の間にロードスターを購入したユーザーには、同情を禁じ得ないけれど…)。
しかも、半年前にあれほど進化したから今回はおとなしいだろう、と思いきや、そんなわけでは決してなかったことにも驚く。今回の改良における“表向きの”注目ポイントは、RFに積まれる2リッターエンジンの大改良と、自動ブレーキの採用だ。
2リッターエンジンは、従来の158馬力から184馬力へとパワーアップ。だから動力性能が高まった…わけだが、注目すべきはそこではない。むしろフィーリング面の進化なのだ。何よりお伝えしたいのは、2リッターエンジンの高回転域での“伸び感”が、大幅に良くなったことである。
1個当たり27g軽くしたピストンや、41g軽くしたコンロッドなど、回転系部品の軽量化に始まり、ウエイトの見直しでバランスを改善したクランクシャフトの採用や、スロットルバルブの通路拡大(28%増)、吸排気ポート形状の変更、そして、カムプロフィールの変更など、今回、2リッターエンジンには大きく手が入れられた。雑音が消え、音質がピュアになった排気系まで含めると、エンジン関連の改良ポイントは、なんと23箇所にも及ぶ。
その結果、高回転域まで回した時のエンジンフィーリングが、格段に爽快になったのに加え、最大回転数は6800回転から7500回転へと、約1割も上昇。自然吸気エンジンを搭載するスポーツカーの勘どころは、なんといっても高回転域の気持ち良さにあるわけだが、新型はそれが格段にアップしていることを、決してオーバーな表現ではなく、走り始めて最初の加速で実感できたのだ。“加速の速さ”ではなく“爽快感”が断然違う。この加速フィールだけでも、新型を積極的に選ぶ理由になるはずだ。
それにしても、昨今は燃費面への配慮などから、高回転域は抑え気味にする、というのが、エンジン開発における常識だ。だが“気持ち良さ”を重視した結果、そんな常識さえも無視し、あえて高回転化の道を選択した開発陣の姿勢には“走る歓び”を第一に考えるマツダらしさを感じずにはいられない。
しかもこの新2リッターエンジン、高回転域まで回るようになった結果、新たな副産物も手にしている。今回、試乗の舞台となった峠道のようなコースでもそうだったし、サーキットなどでも時として「2速のまま走るか、それとも3速にシフトアップするか」と悩まされる場面がある。
そんな時でも、高回転の伸びが良くなり許容回転数がアップした結果、新しいロードスターRFは、2速のままで問題なく走れる領域が増えたのだ。ギヤ比や最終減速比は従来と変わっていないが、2速での上限速度は、6800回転時代が90km/h強だったものが、7500回転まで回るようになって約100km/hまで伸びた。この違いは、ドライブを楽しむ上で大きな差となる。どうしてもパワーアップといったスペックにばかり目が向きがちだが、実は最大回転数のアップこそが、新2リッターエンジンのポイントなのである。
ついでにいうと、高回転化を果たしながら、低中回転域は全く犠牲になっていないこともお伝えしておきたい。トルクはむしろ全域で太くなっていて「スポーツ走行では高回転域が気持ち良くなり、それでいて、日常の扱いやすさも向上している」という、まさに失うもののない進化といえる。もちろん、燃費も悪化していない。とはいえ、これだけ高回転域が気持ち良くなると、思わずエンジン回転を上げ気味に走ってしまいがちなので、実燃費は悪化するかもしれないが…。
ちなみに、ソフトトップ仕様に搭載される1.5リッターエンジンも、新2リッターエンジン同様の燃焼改善技術を採用したほか、レスポンスフィールの向上を図っている。結果、全回転域で従来型以上のトルクを獲得しつつ、より高い環境・燃費性能を実現。最高出力は1馬力アップの132馬力、最大トルクは0.2kg-mアップの15.5kg-mとなっている。
■新2リッターエンジンなら、ソフトトップ搭載もアリでは?
もうひとつ、現代のクルマとして欠かせない進化ポイントが、安全性能の進化だ。最大の注目は、ついに実現した自動ブレーキの採用。改良前、ロードスターはマツダ車の中で唯一(OEM供給を受ける軽自動車は除く)、自動ブレーキを搭載していなかった。でも今回の改良では、MT車も含め、ロードスターの全グレードに自動ブレーキが採用されたのである。
“アドバンスド・スマート・シティ・ブレーキ・サポート”と呼ばれるシングルカメラ式の自動ブレーキは、約4〜80km/hの範囲で車両を、約10〜80km/hの範囲で歩行者を検知、衝突が予測されると警告を発し、さらに衝突が避けられないと判断するとブレーキを作動させて被害を軽減、もしくは衝突を回避してくれる。同時に、リアバンパー内に搭載された超音波センサーで、後退時の自動ブレーキを実現している。またAT車では、アクセルとブレーキの踏み間違いや、シフトレバーの入れ間違いによる急加速を抑える誤発進抑制機能を採用。そのフロント用センサーを搭載するために、イメージを崩さないAT車専用のフロントグリルを新設計した点は、デザインを重視する近年のマツダ車ならではといえる。
熱狂的なロードスターファンの中には「そんな装備はいらない。それよりも軽くして欲しい」と眉をひそめる人もいるかもしれないが、現代のクルマにとって、事故を防止するための装備の充実は、欠かすことのできない要素だ。先進安全装備がないことで、オーナー予備軍のショッピングリストから漏れるケースさえ少なくない時代ゆえ、軽量化にこだわるロードスターといえども、安全性は決して無視できない時代なのだ。
しかし、これら多彩なメニューも、今回の改良ではさほど大きなニュースではないと思う。個人的には、ロードスター史上初めて採用された“テレスコピックステアリング”こそが、今回に改良における最大のトピックだと考えるからだ。
ついにロードスターにも、前後調整(調整量30mm)できるステアリングが組み込まれた。デビュー時は「重くなるから」と、開発陣が頑なに採用を否定していた装備だが「市場からの求める声が大きくて、今回はそれに応えた」とのこと。例えば、サーキット走行時にヘルメットを被る場合などは、頭上空間を確保するためにシートの背もたれを寝かせ気味にセットするが、そうしたシーンでもハンドル位置をドライバー側に寄せられるようにし、適切なドライビングポジションを採れるよう配慮したという。
そもそもロードスターの楽しさは、絶対的な速さでもなければ、極限域での優れた性能でもない。運転することの気持ち良さ、思いどおりに操れる人馬一体感こそが、このクルマの真髄である。その楽しみをより際立たせるためには、クルマとドライバーとを最大限にフィットさせることが不可欠。その点において“テレスコ”は、これまで設定がなかったことが不思議に感じられるくらい、重要な装備だと考える。
もちろん、テレスコ採用による重量増が気になる人もいるかもしれない。だが心配はご無用。「ステアリングコラム単体は700gアップしたが、他を軽量化して相殺した結果、車両トータルでは重くなっていない」というのだから。テレスコはもちろん、重量増が避けられない安全装備を充実させたにもかかわらず、改良前のモデルと車両重量は変わっていない…。こうした車重に対するこだわりは、エンジニアの高い志と執念の賜物としかいいようがない。見事だ。
このほかにも、新しい内装色“スポーツタン”を設定したり、ソフトトップモデルにブラウンの幌を採用した特別仕様車「キャラメルトップ」を用意したりと、前回の改良からわずか半年余りで、再び完成度を高めてきたロードスターシリーズ。当然、走りの爽快感も安全性も利便性も高まったわけだが、理想を追い求め続けるマツダのことだけに、進化はまだまだ止まらないだろう。
個人的には、格段に気持ち良くなった新2リッターエンジンを、ソフトトップ仕様にも積んで欲しいと感じた(北米向けには存在するが、日本市場向けは「予定なし」とのこと)。デビュー時は「軽快感では圧倒的に1.5リッターエンジンが勝るので、ソフトトップ仕様はこちらのエンジンの方が気持ち良く走れると考えている」として、日本向けには2リッターのソフトトップは用意されなかった。だが、大改良を受けた2リッターエンジンに乗った今となっては「このエンジンならばソフトトップ仕様への搭載もアリなのでは?」と思わずにはいられない。
<SPECIFICATIONS>
☆ロードスター RF VS(MT)
ボディサイズ:L3915×W1735×H1245mm
車両重量:1100kg
駆動方式:FR
エンジン:1997cc 直列4気筒 DOHC 16バルブ
トランスミッション:6速MT
最高出力:184馬力/7000回転
最大トルク:20.9kg-m/4000回転
価格:365万400円
<SPECIFICATIONS>
☆ロードスター RF VS(AT)
ボディサイズ:L3915×W1735×H1245mm
車両重量:1130kg
駆動方式:FR
エンジン:1997cc 直列4気筒 DOHC 16バルブ
トランスミッション:6速AT
最高出力:184馬力/7000回転
最大トルク:20.9kg-m/4000回転
価格:367万7400円
<SPECIFICATIONS>
☆ロードスター キャラメルトップ(MT)
ボディサイズ:L3915×W1735×H1235mm
車両重量:1020kg
駆動方式:FR
エンジン:1496cc 直列4気筒 DOHC 16バルブ
トランスミッション:6速MT
最高出力:132馬力/7000回転
最大トルク:15.5kg-m/4500回転
価格:309万4200円
(文/工藤貴宏 写真/&GP編集部)
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