【日産 セレナAUTECH試乗】ミニバンだけど走りは爽快!クルマ好きにとっての“最後の砦”!?
&GP / 2018年7月1日 11時0分
【日産 セレナAUTECH試乗】ミニバンだけど走りは爽快!クルマ好きにとっての“最後の砦”!?
クルマ好きの人であっても、家族と出掛ける時の利便性を考えて、スライドドア付きのミニバンを選ぶというケースがある。この時、想定ターゲットとしてよく挙がるのが、いわゆる“5ナンバーサイズの箱型ミニバン”。トヨタだったら「ノア」や「ヴォクシー」もしくは「エスクァイア」、ホンダなら「ステップワゴン」、日産自動車なら「セレナ」が相当する。
でも、本当はプレミアムセダンやSUVが欲しいと考えるクルマ好きの人にとっては、ミニバンは少し物足りない乗り物かもしれない。便利なのは分かっているけれど、スタイルは箱型でクルマ好きにとっては退屈。走りも、一般的なミニバンは爽快感をあまり感じられない。
そんな人に向けて、各メーカーがミニバンに用意しているのが“エアロシリーズ”。ノアなら「Si」グレード、ヴォクシーなら「Z」グレード、ステップワゴンでは「スパーダ」、セレナでは「ハイウェイスター」がそれに当たる。
もちろん、それらも悪くはないのだが、いずれも人気車種だけに、街を走る姿をたくさん見掛けるのが気になったりする。クルマ好きというのは、クルマの良し悪しだけでなく、そんな“どうでもいいようなこと”が気になる生き物なのだから仕方がない。
そうしたクルマ好きの心理を考慮したのか、ノアやヴォクシーなら「GR」、ステップワゴンは「モデューロX」、そしてセレナは「NISMO(ニスモ)」といった具合に、ここへ来て各モデルに“メーカー純正”ともいえるカスタマイズモデルが用意されるケースが増えてきた。それらは、クルマにこだわりつつミニバンを買う人のための“最後の砦”ともいえる存在。このように、かゆいところまでしっかりと手の届くモデルが用意されているのが、今どきのミニバン事情なのである。
■走りのフィーリングは高評価のセレナNISMOに通じる
ここからは、そんなメーカー純正カスタマイズミニバンの中でも、日産自動車のセレナにフォーカスして話を進めていきたい。
先日レポートをお届けした「セレナNISMO」は、確かに魅力的な選択肢だ。レーシーなスタイルのエクステリアデザインは走り好きにピッタリだし、赤をアクセントに、バックスキン風の表皮を組み合わせたインテリアも上質。オプションではあるが、レカロ製のバケットシートだって装着できる。その上、走りもミニバンとは思えないスポーティなハンドリングだし、乗り心地だって上々。クルマ好きが選ぶファミリーカーとしては抜群の出来栄えといえる。
ただし、中には「エアロパーツがハデ過ぎてちょっとね…」と感じる人がいるかもしれない。いや、決して少なくないだろう。そんな人におススメしたいのが、ここに紹介する「セレナAUTECH(オーテック)」。日産自動車の関連会社として特装車などを手掛けるオーテックジャパンがまとめ上げ、ディーラーで普通に購入できるカスタマイズモデルだ。ちなみにセレナNISMOも、開発や製造(専用アイテムの装着)はオーテックジャパンが担当。つまりNISMOとAUTECHは、方向性の異なる兄弟車のような関係といえる。
セレナAUTECHのメニューは分かりやすい。専用のエアロパーツを身にまとったエクステリアに、ブルーのアクセントを配したインテリアをコーディネート。エアロパーツはNISMOと違ってハデさがなく、シンプルなデザインながらドアミラーや車体下部のアイテムにシルバーのアクセントをプラスするなど、細かい部分までいちいち凝っている。欧州プレミアムブランドのテイストを微妙に取り入れつつ、ツボを押さえたコーディネートかつ上質感あふれるのがいい。
同様に、インテリアも上質感が魅力。インパネなどに張られたスエード調の表皮に加え、キルティング状の処理を施した専用のシート表皮は、ちょっと人に自慢したくなるこだわりぶり。さらには、普通のセレナには設定のない本革シートも選べるのだから驚きだ。
オトナ仕様のつややかな外装と、ラインナップ中、最も上質なインテリアとを組み合わせたセレナAUTECHは、もはや“ミニバンのパッケージングを持つ高級車”といってもいいほど。これならきっと、クルマ好きの心にもグッとくるはずだ。
しかし、それだけにとどまらないのが、セレナAUTECHの奥深さ。中でも、ドライブ好きの人に対する真骨頂といえるのが、爽快な走りである。セレナAUTECHにはいくつかの仕様が用意されるが、頂点となる「セレナAUTECH SPORTS SPEC」には、セレナNISMOゆずりのアイテムを搭載。フロントクロスバーなど合計9点(15カ所)のボディ補強、スプリング&ショックアブソーバーとリアの強化スタビライザーで構成されるサスペンション、17インチタイヤ&専用ホイール、そして、チューニングコンピューターといったNISMOの走りを支えるパーツが組み込まれ、高次元の走りを楽しませてくれる。
僕自身、クルマ好きかつ家族持ちのひとりのパパだが、セレナAUTECHをドライブしていると、なんだか「こういうの、好きなんでしょ?」と心を見透かされているかのような気分になる。しっかり主張しているけれど決して子どもっぽくない外装と、上質な内装とのバランスが絶妙で、その上、走りも磨き込んであるのだから、セレナAUTECHはまさに、僕ら世代にはド直球ストライクだ。
ちなみに、セレナAUTECH SPORTS SPECに採用されるスポーツパーツのうち、唯一、セレナNISMOのそれと異なるのがタイヤだ。NISMOはブリヂストンの「ポテンザ Adrenarin RE003」を履くのに対し、AUTECHではミシュランの「パイロットスポーツ4」をチョイス。クルマのキャラクターの違いによる乗り味に合わせた選択だという。
運転してみると、ノーマルとの違いは歴然で「普通のセレナもこうだったらいいのに」とつい思ってしまうほど、ハンドル操作に対して遅れがなく、素直に曲がる挙動が好印象。「ミニバンは走りがイマイチで…」と思っているクルマ好きには、ぜひ試して欲しい出来栄えだ。また、専用のチューニングコンピューターの採用により、アクセル操作に対する加速のダイレクト感が高まっているのも特筆すべきポイント。「どこまでも運転したくなる」といった表現も、決して誇張ではないほどに走りは爽快だ。
さて、そんなセレナAUTECHで気になるのが、やはりセレナNISMOとの走りの違いだろう。結論からいうと、タイヤが異なるからといってガラリと印象が異なるといったことはなかったし、ハンドリングの爽快感も同水準だった。
ただし乗り心地は、ミシュランタイヤを履くAUTECHの方がいいのでは? と予想していたのだが、段差を通過した後などに感じる路面からの衝撃自体は上手にいなしている印象だが、その後の車体の揺れの収まりは、ポテンザを履くNISMOの方がいいと感じられるシーンもあった。もちろんこの辺りは、好みによっても異なるので、購入後にいろいろタイヤを履き替え、自分好みの味を探し出すのもいいかもしれない。
セレナAUTECHのバリエーションは、頂点に立つセレナAUTECH SPORTS SPECのほかに、300万円を切るベース仕様のセレナAUTECH(298万5120円)と、LEDヘッドランプやクルーズコントロールを備える「セレナAUTECH V Package」(311万1480円)、そして、高速道路での同一車線自動運転技術“プロパイロット”を装着した「セレナAUTECH Safety Package」(331万8840円)など、好みに応じて幅広いモデルを展開する。
大人気のパワートレーン“e-POWER”を組み合わせた「セレナAUTECH e-POWER」(382万1040円)もあるが、こちらにはSPORTS SPECの用意がないのが惜しいところ。「車両重量によるタイヤ耐荷重がネックで、17インチタイヤを履けないから」というのが、設定のない理由だというが、今後の登場に期待したいところだ。e-POWERの爽快な加速感に、AUTECHの走りのエッセンスが加われば、毎日がきっと楽しくなるミニバンに仕上がるのは間違いないのだから。
<SPECIFICATIONS>
☆AUTECH SPORTS SPEC
ボディサイズ:L4810×W1740×H1850mm
車重:1740kg
駆動方式:FF
エンジン:1997cc 直列4気筒 DOHC
最高出力:150馬力/6000回転
最大トルク:20.4kg-m/4400回転
トランスミッション:CVT
価格:356万7240円
(文/工藤貴宏 写真/&GP編集部)
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