日本独自のAIエージェントが、あの“羊”から「キューブ」になったワケ
&GP / 2018年7月14日 20時0分
日本独自のAIエージェントが、あの“羊”から「キューブ」になったワケ
昨年さまざまな海外メーカーから登場し、話題をさらったAIスピーカー。AppleのSiri、AmazonのAlexa、GoogleのGoogle Assistantといった独自のAIアシスタント(エージェント)が搭載されています。音声で話しかけて起動するインターフェイスに慣れないユーザーも多いようですが、段々と生活に浸透してきている雰囲気もありますね。
そこで思い当たるのは、国内にもAIアシスタント的な存在がいたような…。
そうです、スマホ内でさまざまな情報を提示してくれるドコモの羊キャラクター! 「しゃべってコンシェル」というサービスなのですが、このたびAI型になり、「my daiz(マイデイズ)」というアプリとして生まれ変わりました。羊(ひつじのしつじくん)の代わりに、なんだか「箱」っぽいキャラクターが登場。え? どうして、こんなにシンプルになったの…? というわけで、ドコモさんへ話を聞きに行ってきました。
■スマホ・タブレットでAIと一緒に出かけられる
まず「my daiz(マイデイズ)」の概要から。このアプリはスマートフォン向けエージェントサービスで、ドコモ以外のキャリアでも利用は可能。スマートフォンならではのパーソナライズ情報を活用して利用者の行動を推定し、一人ひとりに合わせたタイムリーな提案により、ドコモやパートナー企業との接点を強化してくれるとのこと。つまり、天気予報や買物情報、電車の乗り換え案内などをスマホでお知らせするというわけです。
今回、話を聞かせてくれたのは、コンシューマビジネス推進部第一エージェントサービス担当・担当課長、近藤 佳代子さん。ドコモAIエージェントのブランディングをマネジメントされています。
▲近藤 佳代子さん
「AIスピーカーなども音声エージェントサービスとしては話題を集めていますが、『my daiz』が一番違うところは、持ち運びながらご利用いただけることと、ひとりひとりに合わせて提案していけるというところです」
「デフォルトではNOW、出かける、買う、楽しむのタブが4つあります。これまで『しゃべってコンシェル』でもやってきたんですが、“生活密着”こそ我々が非常にこだわっているところです。生活の中で今後、いろいろなカテゴリーが増えていけばと思っていますが、まずはその4つの主要なテーマに対して、コンテンツやパートナー企業様の参画というところに取り組み、できるだけお客様の毎日に寄り添っていけるサービスにしていくことに注力しています」
なるほど、持ち歩けるAIエージェントという方向性のサービスのようです。プロフィール情報を入力したり、サービスを利用したりすればするほど賢くなっていく模様。雨が降っていればアラームを少し早く鳴らす、主要なニュースの読み上げ、dヒッツなどエンタメコンテンツとの連動など、一日の中のさまざまなシーンで活躍してくれます。
■プッシュと対話の両方からアプローチできる
では、これまでの「しゃべってコンシェル」と大きく違うところは、どこになるのでしょうか。
「従来の『しゃべってコンシェル』は、インターフェイスがユーザーとの対話だけでした。でも、『iコンシェル』の方で取り組んできた“プッシュ通知”や“情報配信”をミックスさせたのが、今回の大きな変化になっています。ユーザー様の外出のタイミングで『まもなく出発ですよ』というプッシュがスマホに届き、ルート案内を情報として表示することもできます。また、別のルートで行きたい場合は、対話で行き方の検索を行うことも可能です。プッシュと対話をハイブリットして提案するというのが、新たなお客様体験につながると思っています」
確かに、対話とプッシュ通知の両方が使えるのは大きな魅力です。なんせ自宅でひとり「アレクサ!音楽かけて」とか「へ、へい!Siri」とか言っていると、おそろしく寂しい気持ちに襲われます。
「そうですね、ユーザー様自身が能動的に話すと言うのが、音声エージェントサービスの主流だと思われますが、『何をしゃべっていいのかわからない』というコメントをいただくことがあって…」
AIアシスタントあるあるですね。とりあえず呼びかけてみるけど、特に用はなかったという…。
「私自身もとっさにデモをするときに、『今日の天気は?』しか思いつかないとか、そういうことが起きてしまいます。実際にはエージェント側から話しかけてきて、それに応えながら対話で新しいサービスにつながっていくことができるということを作りたい。そうすれば、今まで培ってきたものや、今回新たに加えたものへ最大限つなげていけると思いました」
■キャラクター誕生のコンセプトとは
サービスの内容は確かに便利そう。持ち運べるAIというと、一番近いのはSiriですが、あまり使いやすいと感じることは少ないのが現状。しかし今回、もっとも気になったのが四角い新キャラクターです。なんだか…とっても手抜…いやいやシンプル!
キャラクター担当の大場さんはこう言います。
▲コンシューマビジネス推進部・エージェントサービス・第一エージェントサービス担当、大場さおりさん
「『my daiz』を開発するにあたり、どういったキャラクターが対話するのがいいかを考えたときに、羊のように“具体的”なキャラクターにするのか、シンプルな線で表した方がいいのか悩みました。実際のお客様の声などでわかったのは、キャラクターを作る上でのポイントは“目があること”だということ。結構いろんなパターンで検討したんですが、その中で身近なものに捉えていただける、例えば『豆腐』とか『コンセント』とか愛着を持っていただけるものを、キャラクターとして今回『my daiz』のキャラクターにしました」
豆腐! ぱっと見、「箱」かと思いましたが、なるほどシンプルだからこそ見る方のイメージに左右されやすいということのようです。このキャラクターこそが「my daiz(マイデイズ)」らしく、レコメンドやメッセージ中など、いろいろな場面で登場してくれます。
「四角いまっさらなキューブは普遍的なもので、どちらかというと、“お客様ごとに好き嫌いが別れない”というところも重要なポイント。でもこれ、コンテンツごとに形を変えるんです。シルエットを変えながら、『情報はこういう内容ですよ』というふうに合わせて自分を変えていく。そこがサービスの本質とも関わっていますし、なじみやすい部分だと思っています」
このアプリは、前述したように、おでかけや天気予報など生活に密着した側面があるわけですが、面白いのが「my daiz(マイデイズ)」くんが状況に合わせて“変身”するというのです。
ちょっとアプリで試してみたら、確かに変わる変わる(笑)。音楽なら音符、買い物ならカート、アラーム設定時はめざまし時計にまで。そしてなんと、勝手に「くん」かと思っていたら「さん」でもなく、性別も特にないのだそう。声優もこだわっており、さまざまな話し方のパターンを持ち、ケースバイケースで使い分けています。
特に、パートナー企業のアナウンスなどをする場合は、例えば「高島屋」だったら丁寧に返してくれるとか、「dマガジン」だと書店ぽく語尾なども変化していく。これらは全て録音したり加工したりで、膨大な音声データをドコモ側で管理しているとのこと。いくつもの人格を持ったAIエージェントサービスを実現しており、「ちゃんと人と接しているようなサービスを目指したい」と、大場さんは話していました。
* * *
さて、いかがだったでしょうか。このように、国内のAIが目指す人工知能エージェントサービスは、「人に寄り添う」が基準になってきそうですね。「my daiz(マイデイズ)」は、AIプラットフォームとしてユーザーに利便性を提供し、パートナー企業も続々参画してくるとのこと。どこに行くにも、マイデイズにお願い!という日も近いかもしれません。海外勢のAIと差別化を図りながら、独自の成長を楽しみにしていきたいと思います。
(取材・文/&GP編集部 三宅隆)
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