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【スバル フォレスター試乗①】土台から一新された新型は走りのレベルが2ランクアップ!:岡崎五朗の眼

&GP / 2018年7月8日 19時0分

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【スバル フォレスター試乗①】土台から一新された新型は走りのレベルが2ランクアップ!:岡崎五朗の眼

SUBARU(スバル)の年間販売台数のうち、実に1/3を占める重要なモデル「フォレスター」がフルモデルチェンジ。5代目へと進化しました。

新型は、2016年に登場した現行「インプレッサ」から導入が始まったプラットフォーム“SGP(スバルグローバルプラットフォーム)”を採用。10年先まで見据えた高い衝突安全性能や、剛性アップによる走りの質感向上などを実現したといいます。

『&GP』ではそんな注目度の高い新型フォレスターの実力を、前編、後編の2回にわたり、モータージャーナリストの岡崎五朗さんと掘り下げていきます。今回は、スバル車としては絶対に外せない“走り”に関する考察です。

■10kWの小型モーターで力強い出足を演出したe-BOXER

ーー新型フォレスターには、インプレッサに先行導入され高評価を得ているSGPが採用されました。

岡崎:SGPで車体剛性が大幅にアップし、それに伴い、サスペンションの構成も一新されたおかげか、新型フォレスターをドライブしてみると、1ランク、いや、2ランクくらい走りがレベルアップしたように感じるね。

走行中のクルマの動きがより滑らかになって、コーナーを自然に、そしてきれいに曲がっていく。身のこなしが、ドライバーの意思に対してより忠実になった印象。ハンドルを切ったら切った分だけ素直に曲がってくれるし、ハンドルを切った時の“初期応答”にも遅れが感じられない。

だからといって、クルマの向きがクイックに変わり過ぎることもなく、早すぎず遅すぎず、ちょうどいいタイミングでドライバーの思ったとおりに曲がっていく。本当に良くできたフットワークだよね。

ーー曲がり過ぎる、クイック過ぎるとった過敏な反応ではなく、ドライバーがクルマと一体になったかのように気持ち良く曲がっていきますよね。これぞ大人のためのクルマ、といった乗り味でした。

岡崎:単にスパイスを効かせてごまかしたような味じゃなく、ベースとなるルーの部分からきちんと作り込んだカレーを食べた時のような、奥深さを感じるフットワークだよね。

ーー新型フォレスターの走りに関して、真新しい機構といえば、なんといっても「アドバンス」グレードに採用された“e-BOXER(イー・ボクサー)”だと思います。2リッターの水平対向4気筒DOHC直噴エンジンにモーターを組み合わせた、一種のハイブリッド機構ですが、モーターの最高出力は10kW(13.6馬力)に過ぎません。これで、どのようなメリットを得られるでしょうか?

岡崎:発進時や低速走行時はモーターだけで駆動するし、下り坂では積極的にエンジンを止めてくれるe-BOXERだけど、一般的なハイブリッドカーのように、いかにも「モーターで走ってます!」といった感覚は薄いね。

10kWというモーター出力は、ハイブリッド車としてはとても小さい。だから燃費に期待しちゃうと、ちょっとガッカリするかもしれないな。つまりe-BOXERは、燃費だけを追い求めたハイブリッド機構ではないということ。

では、モーターの10kWをどのように活用してきたのか? モーターのメリットとして一番分かりやすいのは、レスポンスがいいこと。スバルの開発陣はその美点をうまく利用し、分かりやすい形でe-BOXERならではの走りを演出していると思う。特に、走行特性を自在に使い分けられる独自のドライブアシストシステム“SI-DRIVE(エスアイ・ドライブ)”で「S(スポーツ)モード」を選んで走っていると、アクセルペダルを軽く踏んだだけで、クルマがスッと前に出て行く感覚がある。

比較用に用意されていた、先代フォレスターの2リッター自然吸気エンジン搭載車の場合、エンジンがドライバーの意思に反応してくれるまで、一瞬、タイムラグがあり、そこにCVT独特の反応遅れも重なって、正直いって、アクセルペダルを踏んでからクルマが加速してくれるまで、1.5テンポくらいの遅れを感じた。e-BOXERはそうしたタイムラグを、モーターがうまくカバーしている印象だよね。

ーースバル独自のパワーユニットが持つ弱点みたいなものを、モーターが上手に補完していますよね。

岡崎:例えば、2リッター自然吸気エンジンを積む先代フォレスターのオーナーが、街中でe-BOXERに乗ったとすると、排気量などは同じはずなのに「これは全然違うパワーユニットだ!」と驚くんじゃないかな。交差点で信号が赤から青に変わった時の出足や、高速道路を巡航中にアクセルペダルをスッと踏み込んだ時のレスポンスなどは、自然吸気エンジンよりも明らかに良くなっている。

ハイブリッド車というと、燃費が良くなるのと引き換えに、走行フィールに違和感を覚えるクルマも少なくない。けれど、e-BOXERはそうした違和感もなく、モーターの美味しいところを上手に使いながら、自然に気持ちよく走れるように仕立てられたパワーユニットだといえるね。

ーー「ツーリング」、「プレミアム」、「X-BREAK(エックス・ブレイク)」の3グレードに搭載されるもうひとつのパワーユニット、2.5リッター水平対向4気筒DOHC直噴エンジンの印象はいかがでしょう?

岡崎:個人的には、2.5リッターの方が好きだね。アクセルペダルを踏み込んだ直後のレスポンスこそe-BOXERの方に分があるけれど、2.5リッターの場合、その後も加速が長続きし、自然にスピードが伸びていく感覚がある。e-BOXERの場合は、モーターアシストの恩恵で出足こそいいけれど、その先の加速は、結局、2リッター自然吸気エンジンのレベルでしかない。頭打ち感というか、なんとなく息切れしてしまう印象があるんだよね。

ーーe-BOXERは、アクセルペダルを踏んでしばらくの間は、クルマが押し出される感覚が強いのですが、その先の領域になると、ちょっともどかしく感じることもありました。

岡崎:2.5リッターは、上の回転域で“プラス500cc”のゆとりを感じられて、直線的にスピードが伸びていく。だから、ドライバーが望むだけの加速を、より自然なフィーリングで手に入れられるんだ。それに4気筒とはいっても、スバルの水平対向エンジンはすごく滑らかに回るし、高回転域まで回してもイヤな雑味が感じられないから、すごく気持ちいいよね。そうした点も、2.5リッターの魅力だと思う。

交差点などのストップ&ゴーが多く、全開加速のシーンがさほど多くない街中をキビキビ走れるのはe-BOXER、高速道路や山道、ワインディングロードなど、いろんなシーンを走って気持ちいいのは2.5リッター、というのが、新型フォレスターにおけるパワーユニットの位置づけだね。

ーーちなみに新型フォレスターでは、歴代モデルに設定のあったターボエンジンがなくなってしまいました。この点については、どのようにお考えですか?

岡崎:できれば設定して欲しかった、というのが正直なところ(苦笑)。でも、2.5リッターでも速さは十分だし、ステーションワゴンの「レヴォーグ」と差別化を図るという点でも、今回のスバルの決断は納得できるかな。

ーー個人的には「レヴォーグに設定があるのなら、フォレスターにも用意してよ」と少し残念に思いました。

岡崎:仮定の話に過ぎないけれど、もし将来的に、レヴォーグで人気のスポーツグレード「STIスポーツ」がフォレスターにも用意されたなら、それにターボエンジンを積むのはアリかもしれないね。多くを望み過ぎるのは、スバルに対して酷な話かもしれないけれど。

ーーSTIスポーツなら、車高を下げてオンロードを意識したモデルになるでしょうから、パワーユニットの面でも特別感を出して欲しいですね。

■長年、磨き込んできたシンメトリカルAWDの走破力は健在

ーー今回の試乗コースには、オンロードに加え、特設のオフロードコースも用意されていました。オフロードを走ってみての印象は、いかがでしたか?

岡崎:オフロードコースの試乗車は、4グレード設定されている中で唯一、オールシーズンタイヤを履くX-BREAKだったけれど、正直いって、あの険しいコースをよくぞ走りきったな、と感心したね。

初めコースを見た時は、オフロード専用タイヤを履いたクルマじゃないと走破できないと思った。X-BREAKのタイヤは、オールシーズンといってもオフロード走行を特に意識したトレッドパターンではないし、朝方まで雨が降っていた影響で、コースの一部はぬかるんでいた。おまけにコースの途中には、対角にあるタイヤが浮くようなセクションも用意されていたよね。

そんな難コースでも、新型フォレスターはしっかりとタイヤが地面へ駆動力を伝えていたし、スタックしたり、シャーシ下面を地面にハードに打ち付けたりすることもなく、危なげなく走破した。220mmというSUVとしては十分過ぎる最低地上高も大きいけれど、やはり走破力を高めるためのメカニズムの数々がすごいと思うな。

ーー新型フォレスターの4WDシステムは、水平対向エンジンを軸に、左右対称のドライブトレーンで構成されたスバル独自の“シンメトリカルAWD”を踏襲しています。

真新しいポイントはというと、4輪の駆動力やブレーキを適切にコントロールして悪路からのスムーズな脱出をサポートする“X-MODE(エックス・モード)”で、ふたつのモードを選べるようになったことくらいです。雪道や砂利道に適した「SNOW・DIRT」モードと、深い雪やぬかるみといったタイヤの埋まってしまうようなシーンに適した「DEEP SNOW・MUD」モードとを選択できるようになりましたが、それにしたって、スバルが長年培ってきた技術の延長線上にある機能に過ぎません。

岡崎:まさに、完成の域に達した技術なんだろうね。それでも今回のオフロードコースでは、途中までそのままの“素の状態”で難なく走れた。改めて、シンメトリカルAWDの走破力の高さにはビックリしたね。

ただ、よりハードなセクションになると、さすがにそのままでは走れなくなったから、X-MODEのSNOW・DIRTモードをセレクトしてみた。そうしたらもう“鬼に金棒”状態! X-MODEは、シフトレバー手前のダイヤルで簡単にモードを切り替えられる機能だけど、本格的なクロカン4駆にも負けないくらいの走破力を得られる。しかも、40km/hになると自動でキャンセルされ、本格的なクロカン4駆のように、走行レンジのハイ/ロウを切り替える手間がいらないから、利便性も高いよね。

ーー新型フォレスターでも驚くべき走破力を見せてくれたシンメトリカルAWDは、今ではすっかり、スバルのアイデンティティのひとつになりましたよね。

岡崎:アメリカのスバルディーラーからは「スバルはAWDでプレミアムなブランドイメージを作れているのだから、AWD以外の車種はアメリカ市場に持ち込んでくれるな」とさえいわれているらしい。スバル=AWDという良好なブランドイメージが出来上がっている証だよね。

もちろん、険しい悪路でも苦もなく行けるくらい走破力は高いから、実利も大きい。シンメトリカルAWDの威力を日常的に実感できるシーンって少ないかもしれないけれど、例えば、荒天時に高速道路を移動する時の走行安定性や、年に数回、大雪が降り積もった場合の脱出など、オーナーになった人なら知らず知らずのうちに、そのメリットを享受できるはずだよ。

<SPECIFICATIONS>
☆アドバンス
ボディサイズ:L4625×W1815×H1715mm
車重:1640kg
駆動方式:4WD
エンジン:1995cc 水平対向4気筒 DOHC+モーター
トランスミッション:CVT(リニアトロニック)
エンジン最高出力:145馬力/6000回転
エンジン最大トルク:19.2kg-m/4000回転
モーター最高出力:13.6馬力
モーター最大トルク:6.6kg-m
価格:309万9600円

<SPECIFICATIONS>
☆X-BREAK
ボディサイズ:L4625×W1815×H1730mm
車重:1530kg
駆動方式:4WD
エンジン:2498cc 水平対向4気筒 DOHC
トランスミッション:CVT(リニアトロニック)
最高出力:184馬力/5800回転
最大トルク:24.4kg-m/4400回転
価格:291万6000円

<SPECIFICATIONS>
☆プレミアム
ボディサイズ:L4625×W1815×H1715mm
車重:1530kg
駆動方式:4WD
エンジン:2498cc 水平対向4気筒 DOHC
トランスミッション:CVT(リニアトロニック)
最高出力:184馬力/5800回転
最大トルク:24.4kg-m/4400回転
価格:302万4000円

(文責/&GP編集部 写真/SUBARU)

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