【VW up!GTI試乗】急いで!クルマ趣味人もうなる本格ホットハッチは600台限定
&GP / 2018年7月14日 18時0分
【VW up!GTI試乗】急いで!クルマ趣味人もうなる本格ホットハッチは600台限定
「VW(フォルクスワーゲン)のインポーターの中に、相当な“クルマ趣味人”がいるんじゃないの?」。そんな楽しい想像をさせてくれるのが、VW「up!GTI」です。
ベースとなった「up!」は、いうまでもなく、かつての「ルポ」に代わるVWの末っ子モデル。GTIは、同社の誇るスポーツモデルに冠するグレード名で、「ゴルフGTI」、「ポロGTI」、そしてup!GTIと、約13年ぶりに日本のVWラインナップに、俊足3兄弟がそろったことが話題になりました。
■シート生地はGTI伝統のタータンチェック
up!GTIは、驚くことばかりです。まずそのボディ形状。「move up!」にもボトムエンドモデルとしてカタログに載ってはいますが、この手の実用ハッチバックでは鬼門とされてきた、3ドアボディが輸入されました。VW流の呼び方では、5ドアハッチバックは4ドアと称されるので、up!GTIは“2ドア”ということになります。
ちょっと古いクルマ好きの方は、4ドアセダンに対する2ドアセダンという存在を思い出すかもしれません。流麗なクーペボディ…というわけではなく、どちらかというと、廉価版としてドア数を減らしたモデルのこと。
日本に輸入されるup!GTIもいわばこの例に倣ったもので、本国には4ドアモデルも用意されますが、今回はあえて2ドアをセレクト。もちろん2ドアモデルの“パーソナルな感じ”も導入理由に挙げられますが、VWスタッフによると「できるだけ価格を抑えたかった」ためだとか。その甲斐あって、GTIモデルにして219万9000円と、魅力的なプライスを実現しました。
ドア数を減らしてまで価格を抑えたかった理由は、この末っ子GTIが、日本で販売するには野心的な(!?)パワーユニットを搭載しているから。ノーマルのup!が積む1リッターエンジンに過給器を与えた3気筒ターボ(116馬力/20.4kg-m)に組み合わされるのは、なんと3ペダル式の6速MT! やってくれますね!
さらに驚くのは、AT大国のニッポンにおいて、MTのみの設定であるにもかかわらず、当初予定されていた輸入台数300台は文字どおりアッという間に納入先が決まり、インポーターがあわててさらに300台を確保したという人気ぶり。up!GTIは「限定600台」とアナウンスされていますが、舞台裏では、そんなうれしい苦労!?が展開されていたのです。
自動車ビジネスとして見ると、600台は絶対的に大きな数字ではないし、また、趣味性だけで商売できるほどクルマ業界は甘い世界ではありませんが、一部の層の熱烈な要求にしっかり応えることは、日本における輸入車ブランドの立ち位置を考えると、とても大切なことだと思います。
取材時点では、当初の300台に加え、新たに導入した300台も、すでに残りわずかだとか。日本におけるVWブランドの強さはもちろんのこと、up!のMTモデルを待ち望んでいたユーザーがいかに多かったことか。ノーマルモデルで採用された“ASG”ことシングルクラッチ式5ATに「どうしても馴染めない」という人も一定数いるわけで(ワタシもそのひとりです)、そうしたユーザーが、up!GTIのリーズナブルな価格を見て飛びついていたわけですね。2ドアモデルの選択は、まさに核心を突いていたのです。
試乗に供されたのは、トルネードレッドに塗られたup!GTI。小粒なGTIは、このほか黒と白のボディカラーから選べます(まだ、在庫があれば、ですが…)。ボディ各部に輝くGTIのバッジと赤いストライプ、ノーマルモデルよりググッと大きな17インチホイール、そして、ルーフエンドのスポイラーとボディサイド下端のサイドスカートが、スペシャルモデルであることを主張します。全体に、ひと目見て精悍な感じがするのは、GTIにはスポーツサスペンションがおごられ、車高が1485mmと、通常のup!より10mm落とされていることも関係していましょう。
ドアを開ければ、GTIシリーズ伝統のタータンチェック地のシートが迎えてくれます。目の前を横切る“ピクセルレッド”と名づけられた赤いダッシュパネルが華やかですね。専用の革巻きステアリングホイール、シフトノブ、ハンドブレーキグリップが、スポーティな気分を盛り上げます。フルオートエアコン、シートヒーター、UVカット機能付きのティンテッドガラス(リア左右)と、up!GTIはスポーツモデルといえどもトップグレード。ノーマルup!の高級版というべき「high up!」(197万4000円)と比較しても、装備面で遜色ありません。
軽量コンパクトな3気筒ターボは、999ccの排気量からベースモデル比40馬力アップの115馬力と、トルクにいたっては、なんと2倍強の20.4kg-mを発生します。車重はノーマルのup!より50kgほど増加していますが、それでも1000kgのウエイトですから、走りの力強さは容易に想像できましょう。
実際、峠&山道に持っていったup!GTIは、素晴らしい健脚を披露してドライバーを喜ばせます。クラッチペダルを備えた3ペダル式MTゆえの、ダイレクトさもいい。「オレが操っている」感満載のup!GTIは、しっかりしたボディと低回転域からボディを押し出すブッ太いトルクで、弾丸のように走る。ファニーな外観とは裏腹に“心情的”ならぬ“本格派”ホットハッチ。GTIの名に恥じません。
ノーマル比2インチアップの40タイヤを巻いた足回りは少々ハードに硬められ、常にスポーツモデルであることを主張します。舗装が荒れている箇所などでは「もうちょっとサスペンションがストロークしてくれても…」と思わないでもありませんが、そんな部分もやんちゃな末っ子GTIゆえと、笑って許せる特別なキャラクターの持ち主です。
一方で、ドライバーが熱くなりすぎてクルマが挙動を乱しそうになると、すかさずESC (エレクトロニック・ スタビリゼーション・コントロール/横滑り防止装置)が介入して各輪のブレーキを適正にコントロール。電子デバイス“転ばぬ先の杖”として早めに作動してくれます。そんな点も、エントリーGTIらしい一面です。
手頃な大きさと、操っている感が楽しい6MT。そして、手を伸ばしやすい価格。VWディーラーの中にも「個人的に欲しいのに…」と、限られた割り当て台数を恨めしく思っているスタッフが少なくないのだとか。「最近は欲しいクルマがなくってねぇ」と嘆いていたエンスージアストの皆さん。迷っている時間はありませんよ!
<SPECIFICATIONS>
☆GTI
ボディサイズ:L3625×W1650×H1485mm
車重:1000kg
駆動方式:FF
エンジン:999cc 直列3気筒 DOHC ターボ
トランスミッション:6MT
最高出力:116馬力/5000〜5500回転
最大トルク:20.4kg-m/2000〜3500回転
価格:219万9000円
(文&写真/ダン・アオキ)
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