【アウディA1 1.0 TFSI試乗】品の良さと活発な走りが◎の、オトナの小型ハッチ
&GP / 2015年10月23日 18時0分
【アウディA1 1.0 TFSI試乗】品の良さと活発な走りが◎の、オトナの小型ハッチ
トヨタ「ヴィッツ」と同じくらいのボディサイズ。リッターカーにしてエンジンは3気筒。ドアは3枚で荷室は小さめ。なのにプライスは249万円から…。
正直「リッターカーなのにちょっと高くない?」と思う人も多いでしょう。だからこそ、ここに紹介するアウディ「A1」は、クルマというものの不思議さと面白さを体現したモデルといえます。
…などと、いきなり論を大上段に振りかざした始まりで我ながらビックリなのですが、それはともかく、アウディA1 1.0 TFSI、なかなか魅力的なコンパクトハッチです。“品のよさ”と“活発さ”がいい案配で同居した、ほかでは得がたい個性を持っているクルマなんです。
■インテリアの仕上がりも“アウディクオリティ”
フロントマスクが、スポーティ版の「S1」に通じるデザインとなった、ニューA1。従来の1.4リッター直列4気筒ターボのほか、新たに、1リッターモデルがラインナップに加わりました。
ニューカマーである1.0 TFSIのエンジンは、999ccの直列3気筒。フォルクスワーゲン「up!」に用いられるものをベースに、ターボで過給して最高出力95馬力を発生。その上、回転フィールの向上に寄与するバランスシャフトが与えられています。
up!に試乗した時、「最近の3気筒はこんなにも滑らかなのか!」と驚かされたのですから、さらに改良されたA1 1.0 TFSIのエンジンフィールは、推して知るべし。
といっても、退屈な、俗にいう“デッドリー・スムーズ”というフィーリングではありません。なんというか、“粒のそろったビート”を伴った回転フィールがあるんです。スロットルペダルを踏むたびに「精緻に組まれた機械が調子よく動いている感じ」があって、ドライバーはうれしくなります。
最大トルクは、フォルクスワーゲン「ポロ」の1.2リッター直列4気筒ターボエンジンと奇しくも同じ、16.3kg-m。わずか1500回転で最大トルクに達しますから、A1の出足は力強い。“小排気量”も“3気筒”も、気になることはありません。
トランスミッションには、デュアルクラッチ式の7速ATが使われます。オートモード時に感じられがちな、ギヤをチェンジするごとに船を漕ぐような空走感も無縁です。
A1 1.0 TFSIは、アウディブランドのエントリーモデルなのですが、インテリアがキチンと“アウディクオリティ”に保たれているのも美点です。シックな黒とシルバーで統一されていて、浮ついたところがないのです。
もちろん、カーナビやオーディオを統合制御する“MMI(マルチメディアインターフェイス)”も装着可能。センターコンソールに設けられたダイヤルを回すだけで、サッと地図の表示範囲を大小できるので便利。目的地の設定も簡単です。また、メーターパネルの速度計と回転計の間に、進行方向を矢印でシンプルに表示するなど、このナビは機能面でも過不足なしといえます。
乗り心地も、車内の居心地も、ハンドリングも、全体的に“オトナ”な印象です。ステアリングホイールを握りながら感じたのですが、A1 1.0 TFSIは、初めてアウディを買う人、というよりも、むしろ、これまでさまざまなクルマに乗ってきたオトナが、新たな選択肢として選ぶのに合っている1台かもしれません。
昨今のコンパクトSUV人気の背景には、大型の高級車を持て余したユーザーが、一般的なコンパクトカーに乗り変えた時にどうも“格落ち感”がぬぐえないことから、ジャンルを変えてSUVにシフトする、という事情があるといいます。
あえてそうしたトレンドに乗っかるのもいいですが、A1 1.0 TFSIのような、ハイクオリティな小型ハッチバックも素敵じゃないでしょうか? ちょっと知的だし、運転ラクだし。
機能や性能だけでなく、バランスの良さや雰囲気、質感に投資する…。そんな選び方ができるのも、クルマの不思議さであり、アウディA1 1.0 TFSIの面白さといえそうです。
<SPECIFICATIONS>
☆1.0 TFSI
ボディサイズ:L3985×W1740×H1425mm
車重:1120kg
駆動方式:FF
エンジン:999cc 直列3気筒DOHC ターボ
トランスミッション:7速AT(デュアルクラッチ式)
最高出力:95馬力/5000〜5500回転
最大トルク:16.3kg-m/1500〜3500回転
価格:249万円
(文&写真/ダン・アオキ)
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