【保存版】ナイフの達人に教わるグリーンウッドワークの基礎技術
&GP / 2018年7月31日 20時0分
【保存版】ナイフの達人に教わるグリーンウッドワークの基礎技術
焚き火の前で、そこら辺にある木を使って身の回りのモノを作る。そんなキャンプ、憧れます。でも、一泊のためにテントを立てて、焚き火をして…、キャンプって案外忙しく、ナイフを使うシーンがあまりないのも事実。
アウトドア好きならナイフを使いこなしたい。でも、どうやって練習すれば?
そんな疑問に答えてくれたのがスウェーデン出身のヨゲ・スンクヴィスト。
世界中で愛用されている伝統的なスカンジナビアンナイフ「モーラナイフ」のグローバルアンバサダーであるヨゲ。彼は、木と対話し、ナイフやナタで生木を加工していく“グリーンウッドワーク”の第一人者なんです。
丸太の状態から切り出していくところからスタートするグリーンウッドワークは、木の節やゆがみを利用して作品を作るのが醍醐味です。
きちんと乾燥させた製材ではなく、切ったばかりの生木は水分が多く、ナイフで削りやすいことも特徴のひとつ。半面、完成後に乾燥していくので、多少のゆがみが生じることもありますが、それも味わい。
ヨゲは、地元であるスウェーデンはもちろん、北欧各国、アメリカやドイツ、そして日本でもワークショップを開催しているので、そのパフォーマンスに触れた人も多いのでは。
2018年7月、北海道で行われたモーラナイフアドベンチャー・イン・ジャパンのために来日したヨゲに、バターナイフ作りを通じてナイフの扱い方を教えてもらいました。
■アウトラインを描く
これは、バターナイフの仕上がりイメージです。テーパーを付けることで、適度にしなりをもつ扱いやすいバターナイフになるそうです。赤い矢印は削る方向。
鉛筆で仕上がりのアウトラインを描きます。ナイフの刃と木の繊維が平行に近いほど削りやすくて仕上がりがきれい(順目)なので、なるべく木の繊維の向きを利用するようにアウトラインを描くといいそうです。
■大まかな形を作る
ナタを使って、鉛筆で描いたアウトラインのそばまで切ります。最初からアウトラインどおりに切る必要はありません。ナイフ部分とハンドルの境目はV型にナタを入れて三角に切り落としておきます。
そのほかの部分は、ナタで小さなささくれを作りそぎ落とす、を繰り返します。
ナタだけで、なんとなくナイフっぽい形になりました。刃の厚みがあるナイフならバトニングでなんとか形作ることができますが、ナタのほうがパワーがありサクサク作業が進みますね。
■形と厚みを整える
ここからは、目指す形になるようにナイフで削るのみ。使用するのは、モーラナイフのウッドカービング120です。
削り方を教わらない状態では、写真のように親指を添えて削ろうとするのではないでしょうか。これはサム・プッシュ・グリップと言って、日本人にもなじみのある削り方です。細かなところはこの削り方でいいのですが、大きく削ろうとしても思うように進みません。
そこで、そのほかのスウェーデン流の持ち方、削り方を教えてもらいました。
▼エルボーグリップ
木材を持った手を膝で固定し、ナイフを持った手を上から下にスライドさせます。ナイフの刃先は自分側に向けた状態をキープします。このエルボーグリップは、安全に、大きく削ることができます。
▼パワーグリップ
膝で固定する点と、刃先を自分の方に向ける点はエルボーグリップと同じですが、このパワーグリップは、肘を伸ばして肩から腕全体を下に向かって動かして削ります。先ほどの削り方よりも力強く削れます。
▼シザーズグリップ
ハンドルの端っこなど、細かなところだけれども硬い場所を削るときは、背中の筋肉を利用します。ナイフを短く持ち、体を前傾させた状態で木に添えます。腕は体に付けたまま、両肘を後ろに引きます。肩甲骨を近づけるイメージで。シザーズグリップと言いますが、鶏のものまねをする時のような動きになります。
▼プルグリップ
ナイフを自分のほうに動かすのはちょっと怖いのですが、逆目のときなどどうしても……というときはプルグリップで対応します。木の先端を持ち、胸に木を押しつけます。ナイフは刃先を体の外側に向け、肘を後ろに引きます。細かなコントロールが必要なときは、親指と人差し指で木を持ち、中指・薬指でナイフの背を押します。
▼ヨゲ考案の削り方
バターナイフ作りでは使いませんでしたが、弱い力でも削れるようにと、ヨゲのお父さんが考案した削り方も披露してくれました。ナイフの刃を外側にして持ち、腕を突き出すようにします。カンナのように薄く削るのに向いているそうです。
■できあがり
スウェーデン流の削り方を駆使して作るバターナイフ。
夢中になって削ってしまい、いつがやめどきなのか迷ってしまうのが玉にキズですが、ナイフの扱い方を身につけるにはちょうどいい感じです。
※素手で作業をしていますが、ナイフやナタを持つ利き手は素手、木を持つ手は薄手のレザーグローブをはめておくとより安心です
>> モーラナイフジャパン
(取材・文/大森弘恵)
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