クレイジーケンバンド横山剣とヤマハ「PSR-280」【アーティストの愛用品】
&GP / 2018年7月27日 21時0分
クレイジーケンバンド横山剣とヤマハ「PSR-280」【アーティストの愛用品】
アーティストの“愛用品”。レコーディングやステージで使う楽器などの相棒も当然気にはなるけれど、日常使っている、いわゆるオーディオ製品だって気になるところ。音を生み出す、音楽を紡ぎ出すアーティストたちが日常触れている“音モノ愛用品”を紹介してもらう新連載。
第1回は “東洋一のサウンドクリエイター” クレイジーケンバンド 横山剣さんの愛用品です。
──今回、“愛機”をお持ちいただいたわけなんですが…
横山剣 はい、これなんですけどね。(電源を入れる…が、音が出ない)アレッ? つかないや。アレ?(と、サイド部分をバシバシ叩き始める)
──そんな、「ドラえもん」でTVが壊れた時みたいな(笑)
横山 あ、ついた。(ポロロン♪と弾く)いやぁ、もうベテランですからね(笑)
──よかったです(笑)。というわけで、我々モノメディアということで、プロミュージシャンの方々が普段どういうオーディオ機器を使っているかを見せていただくという企画なんですよ。
横山 全然プロらしくないですけどね(笑)。10数年前に買ったんですけど、ただ鍵盤でコードが鳴らせればいいという楽器がほしくて。全体にもっとコンパクトなものはたくさんあるんですけど、鍵盤部分が小さいとストレスが溜まるので、これぐらいの大きさがあるとうれしいなということでね。
▲2001年発売の電子キーボード、ヤマハ「PSR-280」。ポータトーンの愛称で知られ、現在も最新モデルが発売されている
──YAMAHAの「PSR-280」ですね。最初に購入された時は、いろいろ試した上で決めたんですか?
横山 ツアー先で時間がない時に、曲が作りたくなったんですよ。それでたまたまあった楽器屋さんに入って、「あ、これでいいです」って(笑)。
──即買いじゃないですか!
横山 まぁ、これの先代の先代の先代ぐらいの機種が気に入ってて、それに連なるものであればいいというのもあって。これ以降のシリーズは自分的にはちょっと使い勝手がよくなくて、これまでが好きなんですね。実際、もっと新しい機種も持ってはいるんですけど、億劫でこっちばっかり使ってるんですよね。新しい機種が紐靴だとすれば、こっちは健康サンダルというか(笑)。
──足になじむわけですね(笑)。どういう部分がいいんでしょうか。
横山 まず、メチャクチャ軽いんですよ。それにACだけでなく、電池で起動できる。単1電池6個で。だからどこでも弾けるんです。公園とか、車の中とか。
▲軽イイネ!
──車の中で弾くんですか?
横山 運転中が一番メロディが浮かぶんですよ。だから浮かぶと車を停めて、後部座席に載せたコイツを取り出して弾くんです。そのために電池がいるんですね。弾こうとした時に電池が切れてるとガッカリしちゃいますよ(笑)。車内でもACアダプターをつなげば使えるんですけど、その手続きをやってるうちに忘れちゃうから。
──メロディをメモする感じなんですか?
横山 歌メロは頭の中でずっと鳴ってるからいいんですけど、コード進行ですよね。このメロディにこういうコードを当てようという思いつきが、すぐやらないと忘れちゃう。緊急作曲用ですね。
──録音機能もついてるんですか?
横山 いや、録音はガラケーでやります。音質は全然だけど、とりあえず脳内にあるものの導火線になればいいという感じですから。いまだにガラケーなんですよ、絶望的ですよね(笑)。
──そこは個人のお好みですから(笑)。
横山 あとは、トランスポーズといって、キーを自由に変えられるのがありがたいんです(と言いながら実演)。これが便利で、この機能を使ってできた曲も多いですね。それと、このDJボタン。この「イエー!」という声は『まっぴらロック』という曲で使ってるし、女性の声は『1107』という曲で使いました。あとは特にどうってことないですね。他の機能はほとんど使ってません。
──どうってことない!(笑) こんなに、テープで補修してまで愛用してるのに、ですか?
横山 今日はよりによって、一番ヒドいヤツ持って来ちゃったな(笑)。今、同じ機種を5台持ってるんですよ。「本牧ガレージ」っていう、僕らの楽器置き場兼バイク置き場があって、そこに1~2台。あとは事務所に1台、自宅に1台という感じで分散して置いていて、どこでも行った先でできるようにしてます。
▲テープで補修してでも使い続けるほどお気に入り
──ご自宅で使われることもあるんですね。
横山 それも緊急時だけですね。家ではまったく作曲はしませんし、何も浮かびません。家は家族や犬がいて戦争状態で、音楽すら聞きませんから。音楽を聞くのに、一番天国なのは車の中なんですよ。爆音で聞けますからね。自分たちの音源も、スタジオでミックスが終わったら車の中で聞いて、最終のOKを出してるんです。
──なるほど! ではカーオーディオにもこだわりが?
横山 今の車もオーディオの良さで選んでますから。クライスラーなんですけど、店の⼈にオーディオを聞かせてもらったら、Harman Kardonのスピーカーの⾳がよかったのですぐに決めました。最初に影響を受けたのは、大瀧詠一さん。キャデラックのフリートウッドというデカい車に乗ってたんですね。やっぱり大物はいい車に乗るんだなと思ったら、大瀧さんはキャデラックが好きというよりも、オーディオ機器と車内での響きがよかったから選んだらしいんですよ。(音楽評論家の)湯浅学さんにその話を聞いて、じゃあ俺もキャデラックにしよう!と思って買ったんです。
──普段、音楽を聞くのは車の中が多いんですか?
横山 わりと最近iPodを買って、Bluetoothで飛ばせるので気に入ってるんですよ。あ、Bluetoothなんて普通ですかね。僕にとっては革命的なんですけど(笑)。それまではMacBookを車の中に持ち込んで、iTunesからBluetoothで飛ばしてたんですけど、小さくて楽になりました(笑)。まあでもそれは簡易的に聞く場合で、本当に本格的に聞く場合は本牧ガレージにあるテクニクスのレコードプレイヤーで聞きますね。
▲横山剣革命的デバイス「iPod」
──やっぱり、一番はレコードですか?
横山 厳密に言うと、レコードだから必ずしもいい音とは限らないんですけどね。でも音がいいものはレコードで聞くのがいいです。聞く時に針を落とす感じがいいし、めんどくさいと思われるかもしれないけど、わざわざひっくり返して第2章が始まる感じとかも好きですね。CDではそれができないので、アルバムの中にジングルを入れたりしてますけど。
──CRAZY KEN BANDの作品は、どう聞くのが一番のオススメですか?
横山 やっぱりカーステレオで聞いてほしいですね。なるべく車の中で、大音量で。
──よく分かります(笑)。さて、ニューアルバム『GOING TO A GO-GO』がリリース間近ですね。テーマは「支離滅裂」ということですが…。
▲『GOING TO A GO-GO』初回限定盤(7000円/税別) 8月1日発売 ※2017年9月2日に横浜赤レンガ倉庫で行われた「CRAZY KEN BAND 20TH ATTACK! Presented by NISHIHARA SHOKAI」のライブの模様を収録横山 オリジナルアルバムは3年ぶりなんですよ。だから溜めてた分、パッションが爆発しちゃって、四方八方に飛び散っちゃってるんですね。いい意味で支離滅裂なんです。
──どの曲も、楽しんで思いついたものを歌にした感じを受けました。
横山 ずっとそんな作り方ですからね。行き当たりばったりの曲も多いんですよ。できた曲を、片っ端からレコーディングしていっちゃうんで、あらかじめテーマを決めて作ったことがないですから。
▲『GOING TO A GO-GO』通常盤(3000円/税別) 8月1日発売
──そうなんですか!
横山 一応、ミーティングをやったりもしてるんですよ。でも、いざ作曲してレコーディングとなると、そこで何を話したかなんて全部忘れちゃうから(笑)。ただ完成した後から議事録を見ると、「あ、意外と合ってたな」なんてね(笑)。まあ、曲って考えてできるものじゃないですから。どこかに寄せようとするなら、歌詞で寄せるしかないんですけど、そうすると天然ウナギと養殖ウナギの違いみたいになっちゃう。やっぱり天然がうまいじゃないですか。
──そうですね(笑)。
横山 『タイガー&ドラゴン』が今までで一番セールスがよかったんですけど、あれこそ天然も天然で、何の制約もなく、運転しながら出てきただけの曲ですから。だからなるべく天然で作った方が刺さるんですよね。
──そしてツアーも始まりますね。
横山 8月25日の福生市民会館から11月25日の沖縄・ナムラホールまで、21本。その間に、9月24日に横浜アリーナで20周年記念スペシャルライブがあります。僕らにとっては21本のツアーだけど、お客さんにとってはその土地土地で年に1回しか見られないライブですからね。覚悟を決めていっぱい練習して、老若男女全ての人に楽しんでもらえるように、「来てよかったね」と思ってもらえるツアーにしたいですね。
▲「クレイジーケンバンドデビュー20周年記念スペシャルライブ」9/24 横浜アリーナ
▲「CRAZY KEN BAND TOUR 2018 GOING TO A GO-GO Presented by NISHIHARA SHOKAI」8/25 福生市民会館 9/1 酒田希望ホール 9/8 釧路市民文化会館 9/9 札幌市教育文化会館大ホール 9/14 NHK大阪ホール 10/7 日本特殊陶業市民会館ビレッジホール(名古屋市民会館中ホール) 10/8 福岡国際会議場メインホール 10/10 宮崎メディキット県民文化センター演劇ホール 10/13 高知県立県民文化ホールグリーンホール 10/19 倉敷市芸文館 10/20 京都劇場 10/27 白河文化交流館コミネス 10/28 仙台電力ホール 11/1 防府市公会堂 11/2 鹿児島市民文化ホール第2 11/9 幸田町民会館 11/10 中野サンプラザ 11/15 富山県教育文化会館 11/17 北國新聞赤羽ホール 11/23 神戸国際会館こくさいホール 11/25 ナムラホール(沖縄)
──選曲はニューアルバム中心ですか?
横山 3分の1ぐらいですかね。4~5作前の、まだ成長中の曲もたくさんありますから、選曲には苦労してます(笑)。曲ってCDが完成形じゃなくて、ライブなどを経て育っていくものですからね。
──頭の中で生まれたものが「PSR-280」を通じて卵になって、レコーディングで命を吹き込まれて、さらに育つと。
横山 本当にそうですね。その意味では、この「PSR-280」にはだいぶ助けられてますね。子供用だけど出来の良い相棒ですよ。いないと困るっていうね。これがなかったら今のCKBはない!
──では最後に、ニューアルバム発売とツアーへの意気込みを改めてお願いします。
横山 サッカーで言えば、今までのキャリアが前半戦。この2年間のお休みがハーフタイムで、これからCRAZY KEN BANDの後半戦、最終章の始まりです。そういう意気込みで、『GOING TO A GO-GO』というタイトルにしたので、皆さんもこの渦に巻き込まれに来てください。
──これから後半戦ということは、あと20年楽しめるわけですか。
横山 アディショナル・タイムも、PKもありますから、まだまだです(笑)。いつも加山雄三さんにヒントをもらってるんですけど、加山さんが81歳であんなにお元気なのを考えると、あと20年はできるかもしれない。あ、あと20年やってもまだ加山さんより年下だ。じゃあ、まだまだ大丈夫ですね(笑)。
>> クレイジーケンバンド OFFICIAL WEB SITE
(取材・文/高崎計三 写真/田口陽介)
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