【ホンダ N-VAN試乗】遊びのアシにも大活躍!ホンダらしさが詰まった独創の塊

&GP / 2018年8月6日 20時0分

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【ホンダ N-VAN試乗】遊びのアシにも大活躍!ホンダらしさが詰まった独創の塊

今、最もホンダらしいクルマは、もしかしてコレかも?――

いわゆる“4ナンバー”の商用登録車ホンダ「N-VAN(エヌ・バン)」のことを知れば知るほど、そんな思いが強くなる。

ホンダらしさとは何か? という問いに対する答えは、人それぞれだろうが、ここで僕がいいたいのは“独創性にあふれていること”と“使う人のことを考えた工夫がふんだんに盛り込まれていること”。それってつまり“人の役に立つ商品を開発するべき”というホンダの原点であり、企業精神そのものといってもいいのである。

■ランプのLED化でリアゲート開口幅を4cm拡大

ブランニューモデルのN-VANは、従来までの商用ワンボックス車「アクティバン」や、その乗用車仕様「バモス」の後継モデルに当たる。と同時に、日本で一番売れている乗用車「N-BOX(エヌ・ボックス)」の派生モデルでもある。

だから「N-VANはN-BOXの車体やメカニズムをベースに、内外装を少し変更したクルマだろう」と予想していたのだが、実際は全く違った。ガラリと違う上に、その違いのすべてに“使う人のことを第一に”というホンダのこだわりと、それを実現するためのモノづくりの底力がひしひしと伝わってくる。

ボディは、助手席側のフロント/リアドア間の“Bピラー”を廃した構造で、助手席側の前後ドアを開けると、大きな開口部が目を引く。ベースモデルのN-BOXはBピラーレスの構造ではないので、派生モデルとはいっても、N-VANは車体設計そのものからN-BOXとは異なることが分かる。そしてこの大きな開口部は、人の乗り降りをラクにするため…ではなく、あくまで大きな荷物の出し入れをラクにするための工夫。職人さんが車体の左側から、大きくて長い脚立を積載する、なんてことを想定したものだ。

車体構造へのこだわりは、細部にまで及ぶ。N-VANはLEDテールランプを採用しているが、コレは見た目のカッコ良さを求めたものではなく、LED化によってライトユニットを小さくすることが狙い。結果、電球を使ったものと比べて、リアゲートの開口幅を片側2cmずつ、合計4cm拡大することに成功している。また、多くの軽自動車は、スペアタイヤを搭載せず、パンク修理キットで代用するケースが増えているが、実用第一を目指すN-VANは、しっかりとスペアタイヤを搭載。しかも、万一の際、荷室に積んでいる荷物を降ろさなくてもタイヤ交換ができるよう、スペアタイヤは荷室の床下に積まれていて、簡単にアクセスできるよう、リアバンパーの中央部が取り外し式になっている。コレらすべての工夫が、ひとつひとつスゴいと感じさせるものだし、すべてが腑に落ちる内容となっている。

インパネはN-VAN専用の設計で、N-BOXに比べると、収納スペースのフタが付いていないのが特徴。これは、中身を隠すことよりも“サッと置いて、サッと出す”ことを重視しているからで、助手席の前には、純正オプションの簡易テーブルをセットするための溝が用意されていたり、助手席側のエアコン吹き出し口がすべてドライバー側へ向けられるようになっていたりと、いろんな工夫が見られて面白い。見た目や雰囲気よりも“とにかく実用性”というのが、N-VANの生き様なのだ。こういったクルマは、ありそうでなかなかない。

インテリアといえば、ドアや壁の内張りが、荷物を積む時に邪魔にならないよう張り出しを抑えた形状で、素材はキズつきにくい(キズが目立ちにくい)仕上げが施されるなど、とにかく実用主義。

そしてハイライトは、なんといってもシートの構造だ。運転席はしっかり作ってあり、座り心地はかなりいいけれど、ほかの席ははっきりいって“オマケ”レベル。助手席もリアシートも、畳んだ時にフロアへフラットに格納できることを重視し、可能な限り薄く作っているのである。その分、見るからに簡易的でサイズも小さく、実際に座っても座り心地は良くないが「人をしっかり座らせたいならN-BOXを選んでください」という割り切りが感じられる。

その恩恵は絶大で、運転席以外のシートをすべて畳めば、奥行き2.5m以上、最長2635mmという、軽自動車最長の荷室スペースが出現。ビールケースを40個も積める大空間は、まさに驚きとしかいいようがない。

また、この状態では、一部の大型バイクを除き、ほとんどのバイクを積載できるので、トランスポーターという軽自動車の新たな使い方も可能に。さらに、フロアの高さが地上から50cm程度と、従来のアクティなどとは比べものにならないほど低い上に、フラットにもなるので、車中泊のためのクルマや、趣味のためのクルマなど、楽しみ方のイメージがいくつも浮かんでくる。もしかしたらN-VAN最大の魅力は、高い実用性はもちろん、こうした軽自動車の新たな使い方を創造させてくれる点かもしれない。

N-VANのグレード構成は、プロフェッショナルの道具に徹した「G」や「L」をベースに、プライベートユースにも使えるよう遊び心を盛り込んだ「+STYLE(プラス・スタイル)」系をラインナップ。GとLはハイルーフ&自然吸気エンジンの組み合わせのみだが、+STYLE系はハイルーフの「+STYLE FUN(プラス・スタイル・ファン)」と、ロールーフの「+STYLE COOL(プラス・スタイル・クール)」から選択でき、エンジンは自然吸気のほかに、ターボ仕様も選択できる。もし僕が選ぶとしたら、+STYLE FUNのターボ仕様が第一候補だが、自然吸気エンジンにしか用意されない6速MTの操る楽しさも、捨てがたいところだ。ちなみに+STYLE FUNは他のグレードとは異なり、ヘッドライトが丸目でちょっと気の抜けたユーモラスな感じに見えて、けっこうキュートだと思う。

では、走ってみたらどうなのか? 結論からいえば、N-VANはとても普通に良く走る。…これだと多くの人にその良さが伝わりにくいかもしれないが、これまでの軽バンといえば、まるでゴムボールの上に乗っているかのように、走行中の車体の挙動がヒョコヒョコして落ち着かなかったり、高速道路では忙しくハンドル修正が求められる上に音がうるさかったり、そもそも、ドライビングポジションが独特だったりと、とにかく快適とは程遠い特殊な乗り物だった。

そんな軽バンを普通に運転できる上に、(運転席なら)乗り心地も落ち着きがあり、高速道路ではしっかりとまっすぐ走り、音もさほどうるさくなく、快適に100km/h巡行できるという点だけでも、従来とはケタ違いの動的性能といえる。我慢せずに普通に乗れる、それこそがとても大切なのだ。

ちなみに、シートを畳んだ時にフロア高を低く抑えられたことと、普通に不満のない走りを可能にしたのは、なんといってレイアウトのFF(フロントエンジン/フロントドライブ)化が大きい。これまで軽バンといえば後輪駆動が常識だったが、N-VANは軽トラックと別の設計とし、FFレイアウトへとスイッチできたことが、まさにホンダらしい発想の転換といえる。

発表されて以降、好調なセールスを記録しているN-VANだが、メディアやSNSなどでの話題制においても、大きな注目を集めている。これまでさほど話題に上らなかった軽バンが、どうしてここまで人を惹きつけるのか? 間違いないのは、道具に徹したストイックな感覚。そして、そのバックボーンとなる、使う人のことを第一に考えたホンダらしい独創性ではないだろうか。

ワークユースにはもちろん最適。けれど、バイクや自転車のトランスポーター、キャンプや車中泊、釣りといった趣味のためのギアとしても、N-VANはとても優れている。車体は小さいけれど、そこには大きな魅力が詰まっている。「商用車だから」なんていって見向きもしないのは、もったいない1台だ。

<SPECIFICATIONS>
☆+STYLE FUN Honda SENSING(黒)
ボディサイズ:L3395×W1475×H1945mm
車重:960kg
駆動方式:FF
エンジン:658cc 直列3気筒 DOHC
トランスミッション:CVT
最高出力:53馬力/6800回転
最大トルク:6.5kgf・m/4800回転
価格:156万600円

<SPECIFICATIONS>
☆+STYLE COOL・ターボ Honda SENSING(青)
ボディサイズ:L3395×W1475×H1865mm
車重:1020kg
駆動方式:4WD
エンジン:658cc 直列3気筒 DOHC ターボ
トランスミッション:CVT
最高出力:64馬力/6000回転
最大トルク:10.6kgf・m/2600回転
価格:179万9280円

<SPECIFICATIONS>
☆G Honda SENSING(銀)
ボディサイズ:L3395×W1475×H1945mm
車重:930kg
駆動方式:FF
エンジン:658cc 直列3気筒 DOHC
トランスミッション:6速MT
最高出力:53馬力/6800回転
最大トルク:6.5kgf・m/4800回転
価格:126万7920円

(文/工藤貴宏 写真/&GP編集部)

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