【クラウン試乗】驚きの変わりっぷり!過去と決別して世界を目指すトヨタの挑戦魂
&GP / 2018年8月11日 19時0分
【クラウン試乗】驚きの変わりっぷり!過去と決別して世界を目指すトヨタの挑戦魂
トヨタの人気車種「クラウン」は、一体、どこへ向かっているのだろうか?――そんなことを考えながら、15代目となる新型に試乗した。
先代クラウンは2012年12月の誕生だったから、今回のフルモデルチェンジは5年半ぶり。2003年に登場した“ゼロクラウン”と呼ばれる12代目以降、クラウンはモデルチェンジのたびに“変革”が話題になってきたが、今回の新型クラウンの変化も、相当なものだと思う。
果たして、クラウンにとってこれまでお得意さまだった団塊世代のオジサンたちが、新型の変わりっぷりに着いてこられるのかどうか? ちょっと心配になるほどだが、トヨタは大丈夫だと判断したのだろう。まさに新型クラウンは、守りに入ることを良しとしない今のトヨタの企業姿勢を具現したかのような、チャレンジングなモデルに仕上がったと思う。
■伝統のグレード、ロイヤルサルーンがなくなった!
新型クラウンの話に入る前に、改めてその歴史についておさらいしたい。初代クラウンがデビューしたのは、今から半世紀以上前の1955年。“純国産設計で作られた初の国産セダン”という、由緒正しき生まれだ。以来、長きに渡って日本車を牽引してきた“国産セダン界の生き字引”的存在である。
そんな、血統書付きともいうべきクラウンが、15代目の新型ではまさかのクーペ風スタイルに変身。これは大事件である。しかも変わったのは、Cピラーをグッと寝かせた軟派…というか、セダンのトレンドを反映したスタイルだけじゃない。例えば、これまで親しまれていたグレード体系も刷新された。クラウンの歴史においては後発となる「マジェスタ」や「アスリート」がなくなっただけならまだしも、伝統の「ロイヤルサルーン」まで手放してしまったのだから、正直、驚いた。
かつて“いつかはクラウン”との思いを胸に秘め、仕事に励んだ団塊世代のビジネスパーソンたちが憧れたロイヤルサルーンは、新型クラウンには用意されないのである。もし僕が開発責任者だったら、とてもそんな決断を下す勇気はない。
■心臓部はハイブリッドや4気筒エンジンが主流に
パワートレーンに関しても、新時代の到来を感じさせる。新型のそれは、ハイブリッドや4気筒エンジンが主流となっているのだ。2リッター4気筒ターボエンジンが追加された、先代の後期型からその兆候はあったものの「クラウンといえば6気筒エンジン」というお約束も、今では完全に過去のものとなった。
新型に用意されるパワートレーンは3タイプ。ハイブリッドは、2.5リッター4気筒+モーターと、3.5リッターV6+モーターの2種類から選べ、ハイブリッドではないモデルは、なんと2リッター4気筒ターボのみという潔さ。今や6気筒エンジンにこだわるクラウンユーザーは、ごく少数しかいないという現状の表れだ。
■LINEを通じて愛車と“友達”になれる
トヨタは新型クラウン(と同時発売の「カローラスポーツ」)から“コネクテッドカー”という呼称を大々的にアピールしている。コネクテッドカーとは、クルマに車載専用の通信ユニットを搭載し、携帯電話のアンテナ網を介してインターネットに常時接続できる車両のこと。クラウンは、先代や先々代でも通信ユニットをオプション装着することでコネクテッドカーに仕立てられたが、新型では全グレードにユニットが標準採用されたことが、まずは大きなトピックといえる。
コネクテッドカー化による日常使いでの最大のメリットは、ナビゲーション(もしくはオペレーター)と対話しながら、目的地の検索やナビの設定が行えることだろう。さらに、検索時点での詳細な通行データ(区間ごとの通過所要時間なども細かく集計されている)を活用した“目的地まで最短時間でいけるナビ案内”や、画面上の操作だけで完結する最新地図へのバージョンアップといった機能も、やっぱり便利だ。
その上、離れた場所からスマホでドアやトランクフードのロック状況、さらに、ハザードランプの点灯状態などを確認できるし、スマホを介してドアの施錠やハザードランプの消灯を行えるのも「あれ、ドアロック施錠したっけ?」なんて不安な時に、地味に便利だと思う。そして万一の際には、エアバッグが展開すると同時に、自動で車両位置や車両の状況をコールセンターへと通報、緊急車両の手配をサポートしてくれる機能も心強い。
ほかにも、故障時に車両の状況を販売店と共有できる新機能など、トピックの多いコネクテッド機能だが、中でも「その発想はなかったわ!」と驚いたのは、LINEとの連携だ。LINEは今や、日常生活に不可欠なコミュニケーションツールとなったが、LINE上で愛車と“友達”になれるという発想が、まずはユニーク。そして、友達になった愛車とLINEでやりとりするだけで、ナビ機能に目的地を登録できたり、LINE上の愛車が目的地への到着希望時間から算出した出発時間を教えてくれたり、目的地への道中で給油が必要かどうかを教えてくれたり、はたまた目的地の天気予報まで教えてくれたりするのだから、とても斬新だ。
こうしたコネクテッドカーに“できること”は、今後のアップデートでますます増えていくだろうから、さらに期待は膨らむ。トヨタという企業は保守的と思われがちだが、最近の動きを見ていると、決して保守的なんかじゃない。新しいクラウンは、まさにその象徴といえるだろう。
■変えるだけじゃない! クラウンらしさはしっかり継承
一方、新型になっても、クラウンらしい部分はもちろん変わっていない。レクサスや欧州のプレミアムセダンとは異なり、ナビゲーションなどの操作は、画面から離れた位置にあるコマンダーではなく、多くの人が慣れ親しんでいるタッチパネル操作にこだわっているし、インパネの造形はあくまで、センタークラスターの存在感を強調した威風堂々とした雰囲気。そして、エアコンのルーバーは、電動で左右に振られるスイング機能つきだ。
リアシートに目を移せば、単に広いというだけでなく、居心地の良さを追求した跡が見て取れる。「プリウス」や「カローラ」、そして「カムリ」といったFF車をベースとするハイブリッド車は、走行用バッテリーをリアシートの座面の下に組み込んでいるが、クラウンの場合、あえてその位置に組み込んではいない。車内空間の効率を考えれば、走行用バッテリーは後席下に積むのが理想的だが、新型クラウンでは、クッション部分が沈み込むよう配慮するなど、座り心地を第一に考えているのだ。
不変の要素は、実はグレード体系にも見て取れる。リアスポイラーを標準装備する走り重視の新グレード「RS」が、新型クラウンで大きな話題を集める一方、先代における「ロイヤルサルーンG」の実質的な後継グレード「Gエグゼクティブ」は、電動リクライニング式のリアシートやリアエアコンを備えた、まさに“後席に座る人のための仕様”。新型はスタイリングからフォーマルな雰囲気を排除しているとはいえ、運転手つきのクルマとして使われるグレードもしっかり残しているのである。
また、流れるようなルーフラインや、傾いたリアピラー、そして、リアピラー部分に窓を組み込んだ“6ライトスタイル”などを採用したエクステリアは、一見すると、流行に乗って変わった部分に思えるが、実は機能性については、クラウンらしさを残している。例えば、ルーフが後ろ側まで延びたことで、リアシートの頭上空間は先代よりも広くなり、ドア開口部の天地サイズも拡大。また、6ライト化によってリアドアの開口幅が広がるなど、後席に座る人にとっては乗り降りがしやすくなり、快適性も向上しているのだ。
■勝ち続けるために“世界基準”を目指した
開発を担当したエンジニアによると、新しいクラウンは“世界基準”を目指したという。新型はプラットフォームから刷新し、クラウンの歴史上初めて、市販車開発の聖地といわれるドイツの過酷なサーキット・ニュルブルクリンクを走り込むなど、走行性能を徹底的に磨き込んだ。正直いってその動的性能は、欧州のライバル車と肩を並べるレベルにあると実感できたし、衝突安全性能についても、日本の基準だけでなく、欧州や北米の試験もクリアできるレベルを確保したという。
とはいえトヨタには、新型クラウンを輸出する計画はないという。従来モデルをベースとした車両で行っている中国での生産販売も、新型では予定がないそうだ。ではどうして、新型は世界基準を目指したのか? そこには、クラウンの置かれた厳しい現状が見え隠れする。
包み隠さずにいえば、日本市場でも高価格帯のセダンカテゴリーにおいては、輸入車のシェアがどんどん高まってきていて、日本車で唯一の勝ち組とされるクラウンといえども、予断を許さない状況になっている。そんな中、欧州プレミアムブランドに対抗するためには、日本専用車であっても、世界基準をクリアする必要に迫られたというわけだ。もはや、クラウンという名が付いていれば売れる時代ではない。それが新型クラウンの、変化の理由なのである。
中には、新型を見て「クラウンらしくない」と変化を受け入れない人もいるだろう。しかし、スポーティ化、そして主力仕様のハイブリッド化を果たしたクラウンが向かっているのは“日本の上級セダンの未来そのもの”といってもいいのではないだろうか。新型における大胆な変更は“クラウンがこれからもクラウンであり続けるための進化”。そう考えると、新型の劇的な変化も、すべてが腑に落ちる気がした。
ところで、新型クラウンの走りをパワートレーン別に見ると、最も爽快な走りを味わえるのは2リッターのターボ。走る歓びを何よりも大切にしたいなら、2リッターターボの「RS」系グレードがお勧めだ。
一方のハイブリッドは、2.5リッターと3.5リッターとで大きく印象が異なる。プリウスのようにモーターでの走行感覚が強い2.5リッターは、ハイブリッドらしさを求める人、そして、燃費を重視する人に向いている。対する3.5リッターは、モーターの存在感が控えめで、ハイブリッド車というよりも、大排気量の自然吸気エンジンのような乗り味。そのフィーリングは、音の演出も含めてV8エンジンに近い感覚で、新型クラウンの中で最も加速が力強く、かつ豪快な走りを味わえる。
3.5リッターハイブリッドのメカニズム自体は、レクサスの「LC」や「LS」に搭載されるものと基本的には同じだが、エンジニアいわく「LSよりもダイレクトさやキビキビ感を強調している」という。その鋭い走りもまた、新型クラウンの魅力のひとつでもあるのだ。
<SPECIFICATIONS>
☆2.0 RSアドバンス(白)
ボディサイズ:L4910×W1800×H1455mm
車重:1730kg
駆動方式:FR
エンジン:1998cc 直列4気筒 DOHC ターボ
トランスミッション:8速AT
最高出力:245馬力/5200〜5800回転
最大トルク:35.7kgf-m/1650~4400回転
価格:559万4400円
<SPECIFICATIONS>
☆2.5 G(青)
ボディサイズ:L4910×W1800×H1455mm
車重:1750kg
駆動方式:FR
エンジン:2487cc 直列4気筒 DOHC+モーター
トランスミッション:電気式無段変速機
エンジン最高出力:184馬力/6000回転
エンジン最大トルク:22.5kgf-m/3800~5400回転
モーター最高出力:143馬力
モーター最大トルク:30.6kgf-m
価格:562万1400円
<SPECIFICATIONS>
☆3.5 Gエグゼクティブ(銀)
ボディサイズ:L4910×W1800×H1455mm
車重:1900kg
駆動方式:FR
エンジン:3456cc V型6気筒 DOHC+モーター
トランスミッション:マルチステージハイブリッドトランスミッション
エンジン最高出力:299馬力/6600回転
エンジン最大トルク:36.3kgf-m/5100回転
モーター最高出力:180馬力
モーター最大トルク:30.6kgf-m
価格:718万7400円
(文/工藤貴宏 写真/&GP編集部)
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