【ルノー メガーヌ スポーツツアラー試乗】パンチある走りと趣味道具を運べる積載力が1台に
&GP / 2018年8月14日 20時0分
【ルノー メガーヌ スポーツツアラー試乗】パンチある走りと趣味道具を運べる積載力が1台に
ルノーの「メガーヌ スポーツツアラー」は“二面性が魅力”のクルマ。そのように書くと、何やらジキル博士とハイド氏のように、二重人格的なキャラクターを想像してしまいそうですが、それは間違い。でも、そのネーミングどおり、1台でスポーツカーとツアラー=ステーションワゴンという、ふたつの個性が融合したモデルに仕上がっています。
スポーティな走りを楽しみたい。だけど、かさ張る趣味道具を運んだり、普段使いのことを考えたりすると、積載性や居住性も譲れない…。愛車に対し、そんな思いを抱く人は少なくないでしょう。また、パワーや積載性で上回るワゴンは少なからずあるけれど、クルマ好きも満足できる趣味性を求めると決め手に欠ける…。そんな話を聞くことも、結構あります。そんなクルマ好きたちの悩みを解消してくれるのが、メガーヌ スポーツツアラーなのです。
■スポーツモードでの弾ける走りはいかにもラテン系!
2017年末に日本での販売がスタートした4代目のルノー「メガーヌ」。日本仕様は現在、5ドアハッチバックの「GT」と「GTライン」、そして、ワゴンボディの「スポーツツアラーGT」という3モデルが用意されています。
フランス本国向けには多彩なエンジンが用意されるメガーヌですが、日本仕様はグッと絞り込まれた設定。GTラインには、最高出力132馬力の1.2リッター直4DOHCターボが、GTには、205馬力の1.6リッター直4DOHCターボが搭載されています。とはいえ、1.2リッターでも普段使いには十分なスペックですし、1.6リッターはスポーティなGTというキャラクターを裏切らない、ハイパフォーマンスを備えています。
また、走行モードを「コンフォート」や「スポーツ」などから選択できる“ルノーマルチセンス”の設定もなかなか絶妙。ちなみにこのルノーマルチセンス、4つの走行モードからセレクトできますが、アレンジされる項目はというと…
①フルカラーTFTメーター(走行モードに応じて表示スタイルと情報を変更)/②2ゾーンオートエアコン/③アンビエントライト(ブルー、イエローなど5色)/④R.S.ドライブ(スポーツモード。コンソールのボタンからも切り替え可能)/⑤4コントロールシャシー(4輪操舵システム)/⑥パワーステアリング(ステアリングの操作感)/⑦電子制御7速AT(変速タイミング)/⑧エンジンレスポンスとサウンド…といった具合に、多岐にわたりますし、コンフォートとスポーツとでは明確にキャラクターが変化するなど、演出もなかなか巧みです。
例えば、コンフォートや「ニュートラル」モードでは、快適かつ経済的な走りに徹しますが、スポーツモードをセレクトすれば「いかにもラテン系!」といった、弾けるような走りを楽しめます。また、各項目を自在に組み合わせられる「パーソナル」モードも搭載しているので、用途やドライバーの好みに合わせたセッティングを行えます。
さて、新型メガーヌといえば“4コントロール”と呼ばれる4輪操舵システムによる痛快無比なコーナリングが特徴のひとつに挙げられます。同システムは、60km/h以下(スポーツモードでは80km/h以下)では後輪が前輪と逆位相に最大で2.7度、それ以上の速度域では、同位相に1度切れるという制御を行います。これにより「足回りを硬めることなく、高いコーナリング性能と快適な乗り味を実現した」とのことですが、実際には、スポーティモデルらしい程良い硬さといった印象です。
■ボディサイズの拡大で走り味に落ち着きが出た
実際にスポーツツアラーGTをドライブしてみると、ハッチバックボディのGTより全体的にややマイルドな乗り味。スポーツツアラーGTのボディサイズは、全長4635mm、全幅1815mm、全高1450mmと、ハッチバックに比べて全長が240mm長く、ホイールベースは40mm延長されていて、車重は50kgほど増加していますが、そうしたボディサイズの差が、走り味の違いとして表れているようです。
例えばハッチバックの場合、低中速コーナーが続くワインディングでは、4輪操舵による機敏な動きが楽しい! と感じる一方、独特の旋回フィールにより「助手席やリアシートに乗る人が酔わないかな?」という、ちょっとした心配がありました。もちろん、ドライバーが丁寧なステアリング操作や加速・減速を心掛ければいいのですが、その強烈な旋回性を体験してしまうと、ついつい試したくなるほどの切れ味なのです。
その点、スポーツツアラーGTはというと、リアタイヤがステアする角度はハッチバックと同じ(逆位相最大2.7度、同位相1度)ですが、ホイールベースの延長と重量の増加により、全体的に反応がやや穏やかに感じます。気になる低中速コーナーでの走りも、レールの上を進むかのようにピタリと狙ったラインをなぞれるのは、まさに4コントロールらしいところですが、決して強い違和感を覚えることはなく「これは面白い!」と感じられる範疇にあり続けます。
もちろん「今日はとことん走りを楽しみたい!」という時には、スポーツモードを選べば、ズシッと手応えのあるステアリングフィール、ダイレクトでパンチの効いた加速感、そして、控えめではありますが乾いたエキゾーストサウンドの演出が加わりますから、ワインディングなどでは心地良い汗をかくこともできそうです。
一方、長距離ドライブや荷物を積んでのお出掛けなど、穏やかに走りたい時は、ワゴンらしい落ち着いた走りを味わえるのも、スポーツツアラーの長所。高速道路では、4コントロールによって後輪が同位相にステアしますが、車線変更などでの滑らかでスムーズな動きは、高速走行の緊張感を和らげてくれます。さらに、街中では「ちょっと硬めかな?」と感じることもある足回りですが、速度を上げていくに連れてフラット感が増してくるところは、フランス車らしい美点といえるでしょう。
■後席を倒せばフラットなラゲッジスペースが出現
もちろん、ステーションワゴンといえば、実用性も気になるという人が多いはず。スポーツツアラーの場合、ボディの延長分の大半がラゲッジスペースの拡大に充てられていますから、居住性に優れるのはもちろん、積載性や実用性も十分以上。ちなみにラゲッジスペースの容量は、リアシート使用時で580L、リアシートを倒した状態で1695L、荷室長はリアシート使用時で950mm(ハッチバックは469mm)、倒した状態では1754mm(同1582mm)を確保しています。
ちなみに、リアシートを畳んだ状態では、荷室フロアがフラットに。床板は2枚のラゲッジボードとしての機能も有しているので、荷物のサイズに合わせてラゲッジスペースを前後に分割することも可能です。
フロントシートは、ハッチバックと共通の、シェイプの深いスポーツ仕様で、クッションはコシのあるタイプ。使いやすく、シンプルなデザインのダッシュボードもそうですが、インテリアについては同じフランス車といっても、プジョーやシトロエンとは異なり、コンサバティブな雰囲気でまとめられています。
そんなメガーヌ スポーツツアラーGTを人間に例えるならば、ある時は爽やかなスポーツマン、またある時は堅実な家族思い…。そんなふたつの顔を持つ二枚目、といった感じでしょうか。凡人から見れば、ちょっと憎らしいほどの器用さですし、ちょっと個性的な一面もありますが、ピタリと反りが合う人にとっては、まさにかけがえのない存在になりそうです。
<SPECIFICATIONS>
☆スポーツツアラーGT
ボディサイズ:L4635×W1815×H1460mm
車両重量:1480kg
駆動方式:FF
エンジン:1618cc 直列4気筒 DOHC ターボ
トランスミッション:8速AT(デュアルクラッチ式)
最高出力:205馬力/6000回転
最大トルク:28.6kg-m/2400回転
価格:359万9000円
(文&写真/村田尚之)
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