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【スズキ ジムニー試乗】走り?デザイン?人気爆発の秘密はどこに:河口まなぶの眼

&GP / 2018年8月18日 9時0分

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【スズキ ジムニー試乗】走り?デザイン?人気爆発の秘密はどこに:河口まなぶの眼

20年ぶりにフルモデルチェンジを果たしたスズキ「ジムニー」。その人気の高さは驚くほどで、今オーダーしても、長い納車待ちを強いられるとウワサされています。

軽自動車、本格オフローダー、プロフェッショナルユース優先の設計…といった具合に、非常に先鋭的なモデルでありながら、多くの人たちから注目を集めるに至った新型ジムニー。今回は、その人気の秘密を解き明かしてみたいと思います。

検証してくれたのは、YouTubeチャンネル「LOVECARS!TV!」を始め、雑誌、Webと多彩なメディアで活躍する河口まなぶさん。人気の自動車ジャーナリストは、新型ジムニーの人気の秘密を、どのようなに分析しているのでしょうか?

■かわいらしいデザインが多くの人を惹きつけた

20年ぶりに新型へとフルモデルチェンジした軽オフローダーのスズキ「ジムニー」が、爆発的な人気を集めている。

ジムニーは2018年7月5日に発表されたが、Webメディアなどを中心に、一時は「納車まで1年待ち」というウワサも広まった。実際、スズキの関係者に話を聞いても「かなりお待たせしてしまうことになる」とのことだった。もっともその後、スズキは製造ラインの対策を行ったようで、状況は改善されつつあるという。

それにしても、軽オフローダーという特殊なジャンルのクルマが、なぜこれほどの人気を集めているのだろうか? その理由の第一は、デザインにあると考える。

新型ジムニーのデザインがネット上に初めて流出した際には、SNSなどを通じてかなり拡散された。その顔つきに始まる、端的にかわいらしくユニークなルックスは、多くの人たちの間で即座に話題を呼んだ。しかも新型のデザインは、よく見ればかわいらしいだけでなく、オフロード4WDとしての機能を追求したカタチであり、どこか本格的な雰囲気が漂う。さらに、歴代ジムニーを彷彿とさせるような懐かしさを感じる点や、最近のクルマには少ない直線基調のデザインが新鮮に感じられたことも、人気を集めた理由のひとつといえるだろう。

また、新型のデザインが事前にリークされたことで、そもそも、ジムニーがフルモデルチェンジすることが明らかになり、ニュースソースの価値が高まったともいえる。デザインが流出するまで、ジムニーがフルモデルチェンジするということを多くの人は知らなかったし、逆にフルモデルチェンジが行われると分かり、おまけにそれが、実に20年ぶりという事実も広まったことで、さらに話題は盛り上がった。実際、新型ジムニー登場のウワサが流れるまで、メディアもクルマ好きも、偉大なるジムニーの存在を忘れてかけていた感はあったわけで、そうした事実が余計に、新型デビューの話題を加速させたともいえる。

そして、いざ発表されてみると、新型のデザインを見て「欲しい!」と感じた人は相当数に上ったようだ。関係者によれば、スズキのディーラーにはこれまでのユーザーとは全く異なる人たちが訪れているほか、女性ユーザーがジムニーを見に来るケースも増えているという。つまり新型のデザインは、それほどまでに多くの人の興味を惹きつけたというわけだ。

新型ジムニーのデザインに関しては「合理的でムダのない機能美。『プロの道具』をデザインする」というテーマが掲げられたという。スズキは新型ジムニーに関して“原点回帰”を謳っているが、デザインに関しても、実際に車両の姿勢や状況を把握しやすいスクエアなボディ、過酷な環境に負けないタフなパネル断面、走破性・積載性を高める細部の工夫といった、3つの要素を表現したという。この辺りは、ジムニーのデザインにのみ反応した人々には無縁の話かもしれないが、実は新型のデザインには、オフロード4WDとしての硬派な要素がてんこ盛りなのである。

しかしながら、新型のデザインが端的に、ひと目惚れするような要素を持っていたというのは、デザインのチカラが相当強いからだともいえる。スズキによれば、新型のデザインは「歴代ジムニーのアイコンだったエレメントをさまざまな部分に引用している」という。特に、新型の印象的な顔つきは多くの人々の興味を引いたわけだが、それも実は、かわいらしさを狙ったものではなく、過去へのオマージュだったという点も興味深いところである。

加えて、ボディカラーや素材に関しても「機能を表現するもの」とスズキは説明している。例えば、新色のキネティックイエローは、暗い森の中や悪天候下でも目立つことから、レスキューなどのプロに必要な性能として採用された。逆にジャングルグリーンは、隠れる性能を意識したカラーで、森に溶け込み、動物保護活動などのプロをサポートするのに有効な色として採用されたものだ。

さらに、水平基調のインパネデザインも、オフロード走行時に車体の傾きなどを直感的に判断しやすくするための、機能の一部。このように、新型ジムニーのデザインは、内外ともに本気を感じさせるものに仕上がっているのだ。

こうして、数々の機能的理由からデザインされた新型ジムニーだが、果たして実車を目にすると、ひと目でかわいいと感じ、愛着がわき、生活の相棒にしたくなるような感覚を誰もが覚えるものに仕上がっている。それと同時に、機能を徹底的に追求したデザインであるにも関わらず、新型ジムニーのそれは、現代のさまざまな叡智が集結した自動車デザインとは明らかに一線を画す、独自の魅力を提示している点も面白い。

結果、新型ジムニーは、これまでジムニーを乗り継いできたユーザーや、アウトドア趣味を持つ人々といった正統派の顧客にとどまらず、これまでジムニーとは無縁だった人々の注目も多く集め、話題をつくり、爆発的人気となっていったのである。

■さらに色濃くなったジムニーならではの世界観

20年ぶりに生まれ変わったことで、新型ジムニーの本格オフローダーとしての機能性や走破性の高さ、そして、オフロードでの使い勝手などは、当然のごとく、これまで以上のものへと進化を遂げた。

特に今回のフルモデルチェンジでは、ジムニーもついに電子デバイスを手に入れた。その一例が“ブレーキLSD”と呼ばれる新機能だ。ESP(車両制御安定装置)を活用することで、例えばオフロードで1輪が地面から離れて浮いた状態になっても、その1輪にブレーキをかけて空転を止め、残りの接地しているタイヤへ駆動力を伝えて脱出しやすいように配慮している。その結果、より簡単にオフロードを走破できる性能を手に入れたというわけだ。

通常の道路を走らせた際には、現代の自動車とは少し異なるフィーリングを伝えてくる。なぜならジムニーは、いわゆる乗用車が採用するモノコックボディ構造ではなく、トラックなどと同じく、ラダーフレーム上にボディを架装するという構造を持つ。それだけに、通常の道路を走らせた際には、乗用車とは少々感触が異なるのである。

高速域での安定性や乗り心地は、当然ながら乗用車の方が良い。とはいえ新型ジムニーは、伝統のフレーム構造を採用したクルマでありながら、現代のクルマと呼ぶにふさわしい乗り心地や快適性、そして安定性も備えている。つまり、20年ぶりのフルモデルチェンジが功を奏し、いい意味でいわゆる“乗用車に近い感覚”を手に入れたわけだ。もちろん、現代の乗用車と比べると、やはり独特の感覚は少し残っていて、カーブを曲がる際には車体が傾くし、ハンドル操作に対しても穏やかな反応を見せるなど、いかにもジムニーらしい部分は残っている。

新型ジムニーは、そのデザインでこれまでとは全く異なるユーザーを振り向かせたことに加えて、走りや中身においても、いい意味での“一般性”を手に入れたことで、今までとは違うユーザーを取り込めるプロダクトに進化した。そんな新型ジムニーで、筆者が高く評価しているのは、ジムニーならではの世界観が色濃いことだ。

現在の自動車は便利で快適になり、また、ハイブリッドカーや電気自動車が当たり前の存在になりつつある。そして同時に、自動車は進化して便利で快適で安全になったのと引き換えに、価格も徐々に高くなりつつある。

そうした中にあって、新型ジムニーは日本特有の軽自動車規格のクルマであり、比較的安価な部類に属しながら、ジムニーでしか実現できない固有の機能と、そこから生まれる世界観を有し、まさに他に代わるもののない1台になった。

最近の自動車の、天井知らずの進化には驚かされるばかりだが、そんな中にあってジムニーのような存在には、どこかホッとさせられるのも事実。こんな風に肩のチカラがいい具合に抜けた最新モデルというのは、探してもなかなか見つけることはできない。まさにこの辺りに、新型ジムニーが多くの人から注目され、話題となり、人気を集めたことの秘密があるのではないだろうか。

<SPECIFICATIONS>
☆ジムニー XC(5速MT)
ボディサイズ:L3395×W1475×H1725mm
車重:1030kg
駆動方式:4WD(パートタイム式)
エンジン:658cc 直列3気筒 DOHC ターボ
トランスミッション:5速MT
最高出力:64馬力/6000回転
最大トルク:9.8kgf-m/3500回転
価格:174万4200円

(文/河口まなぶ 写真/村田尚之)

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