【MINIクーパー試乗】退屈知らずのデザインと走りは、もはやエンタメの域に到達!
&GP / 2018年8月20日 19時0分
【MINIクーパー試乗】退屈知らずのデザインと走りは、もはやエンタメの域に到達!
「サイズは小さくないのだから、もう“MINI”という名前は見合わないんじゃないか?」
新型が登場するたびに、必ずそんな話題が飛び交うのがMINI。実はMINIというのは、今では車名ではなく、ブランド名になっており、そこにはいくつもの車種が存在する。
かつてのMINIの後継モデルといえる「3ドア」や、そのオープンモデルである「コンバーチブル」に始まり、車体を少し延長してリアドアをプラスした「5ドア」、より大柄なステーションワゴンの「クラブマン」、そして、MINIで最も大きなボディを持つSUVの「クロスオーバー」と、ボディスタイルだけで選択肢は5つもある。確かに、クラブマンやクロスオーバーは全長が4.2mを超えているから、ボディサイズだけを見ると「これはもうMINIじゃないじゃん」という人の気持ちも分からなくはない。
そんなMINIのメインストリームである3ドアと5ドア、コンバーチブルが、先日、マイナーチェンジを受けた。その中身が大規模かつ、かなり濃い内容だったので、その印象をお伝えしよう。
■ユニオンジャックをあしらったリアランプが個性的
新型における最大の変化は、まずトランスミッション。最強モデル「JCW(ジョン・クーパー・ワークス)」を除くガソリンエンジン車の2ペダルトランスミッションが、7速のデュアルクラッチ式に現行された。ちなみにJCWは、相変わらずトルコン式の8速ATを採用するが、こちらも新開発のユニットに進化している。
新型は内外装もリフレッシュされた。エクステリアでは、昼間も点灯するデイライトを組み込んだヘッドライトユニットや、MINIの故郷である英国のユニオンジャックをあしらったリアコンビネーションランプの採用など、一新された灯火類がポイントだ。
対するインテリアでは、2ペダル車のシフトレバーが“電子シフト”化されたのが最大の変化。トヨタ「プリウス」のそれのように、操作後に手を離すと、レバーが自動で中立位置へ戻るのが特徴だ。また、ナビゲーションのパネルが、タッチパネル操作に対応し、扱いやすくなったのもうれしいバージョンアップといえる。
そのほか、走行モードの切り替えスイッチが、シフトレバーを取り囲むリングからセンターコンソールのスイッチに移されていたり(これは独自性が薄くなって少々残念)、燃料計などメーターのデザインが一部変更されていたり…と思ったら、これは今回の改良ではなく、2017年の一部変更時に先行導入されていたそうだ。実は先述したトランスミッションの変更も、一部グレードでは2018年の始めに実施されていたというから、話は少々ややこしい。
もうひとつ、今回の改良における大きな注目ポイントは、コネクテッドカーへの進化。新型は、ベーシックグレードの「ONE(ワン)」を除いて、車載用の通信モジュールを標準装備化した。インターネットを介して、万一の緊急時にボタンひとつ(エアバッグ展開時は自動)でコールセンターにつながり、緊急車両を手配できる“「SOS」コール”や、各種問い合わせ、ホテル/レストランの手配、薬局や病院の検索などをコンシュルジュデスク感覚でオペレーターに依頼できる“ドライバーサポートデスク”、そして、スマホ上で車両の位置を確認したり、ドアの施錠/解錠、車内の換気をスマホから遠隔操作できたりと、未来を感じさせる機能が使えるようになった。これらは、BMWではすでに全車に組み込まれている機能だが、それが今回、MINIにも波及してきたのだ。
■MINIだから許される尖った走り味
まず試乗したのは、MINIのラインナップ中、最上のパフォーマンスが自慢の3ドアJCW。いやはやこのモデルは、相変わらず元気がいい! まずはそこに安心させられた。なぜなら、世に出てくるニューカーの走りがどんどん丸くなってきている昨今、そんな周囲の状況を全く気にかけることなく、JCWの走りは相変わらずの尖りっぷりだったからだ。
231馬力を発生する2リッターのターボエンジンは、回すほどにどんどん元気が良くなるから、ついついアクセルペダルを踏み込みがちになる。足回りは硬く、ハンドルを切った際の反応もクイックそのもの。どう考えても、一般的なクルマならば「やり過ぎ!」と評価されるラインを超えてしまっているのだが、それが許されるのは「だってMINIだから」、「だってJCWだから」という免罪符に尽きる。
そして「コレってチューニングカーだっけ?」と勘違いしそうなほど、耳に響く迫力のエンジン&排気音も、ドライバーをその気にさせてくれる(もちろん、おとなしく走る限りは、それなりに静かなのでご安心を)。「どこかにツッコミどころがあるに違いない」と意気込み、重箱の隅を突くかのように意地悪くチェックした8速ATの変速フィールも、気になる部分はまるでなし。デュアルクラッチ式のように変速スピードが速い上に、しっかりとしたダイレクト感もあるので、全く不足を感じないのだ。
強いてウイークポイントを挙げるなら、相変わらず乗り心地が悪いことだろうが、それも個性だと許せてしまうところは、MINIの役得といえる部分。いずれにしろ、MINIのJCWは、オシャレなだけでなく、運転が楽し過ぎる点も魅力の1台なのだ。
そしてもう1台試乗したのは、5ドアの「クーパーS」。JCWと同じ2リッターのターボエンジンを搭載しているが、パワーは控えめの192馬力と、JCWに比べるとおとなしい。しかしそれは「JCWと比べれば」というだけであって、一般的にはかなり元気のいい部類のクルマだ。いうなれば、JCWの刺激をちょっとマイルドにした感じのクルマ、といったところだろうか。それは、動力性能だけでなく、コーナリング時のフィーリングや乗り心地も同様で、少々やり過ぎ感のあるJCWに比べ、クーパーSは適度な元気の良さが魅力的だ。
今回試乗した2モデルに限っていえば「とにかくドライブが大好き。クルマは過激であればあるほどテンションが上がる」という人には、断然JCWがお勧め。一方「適度な刺激で十分に満足。乗り心地はそれなりにいい方がうれしいし、音も控えめがいい」という人には、クーパーSをお勧めしたい。
■MINIはクルマ界のエンターテイナー
新型MINIに触れてみて、乗ってみて、改めて感じたのは、MINIは単なるクルマではなく、もはやエンターテイメントだということ。明らかにMINIだと分かるスタイルや顔つきに始まり、大きなセンターメーターをモチーフにナビ画面を上手に組み込んだインパネ、古風な“トグルスイッチ”など、内外装のデザインには独自性にあふれている。それは、凝ったイラストを表示する走行モード切り替え時のディスプレイなど、細かい演出についても同様だ。そして走れば“ゴーカート・フィーリング”と評されるクイックな動きなど、MINIらしさ全開。とにかくMINIは、全身に独自の世界観が貫かれていて、それらがユーザーのニーズと見事にマッチしている。
MINIに求められているのは、便利とか、効率の良さなどではなく、どれだけオーナーや乗る人を楽しませてくれるか、ということに尽きるのだと思う。例えば、新たに採用されたユニオンジャック柄のリアランプなんて、まさにその真骨頂だと思う。普通に見たらぶっ飛んだデザイン&アイデアだが、MINIだから許されるわけだし、それを見たみんなは、笑顔になるのだ。
ユーザーは何を期待し、どうすれば喜んでくれるのかーーそれにしっかりと応えるべく進化を続けるMINIは、まさにエンターテイナーそのものだ。ボディサイズが大きいか、小さいかなんてことは、もはやMINIにとってはどうでもいい話。それよりも、MINIに期待されているのは、あくまでMINIらしさを貫くことである。だから「小さくないからMINIじゃない」なんていう議論は、全く意味のないものなのだ。
<SPECIFICATIONS>
☆JCW 3ドア(8速AT)
ボディサイズ:L3875×W1725×H1430mm
車重:1290kg
駆動方式:FF
エンジン:1998cc 直列4気筒 DOHC ターボ
トランスミッション:8速AT
最高出力:231馬力/5200回転
最大トルク:32.6kgf-m/1450〜4800回転
価格:450万円
<SPECIFICATIONS>
☆クーパーS 5ドア
ボディサイズ:L4015×W1725×H1445mm
車重:1320kg
駆動方式:FF
エンジン:1998cc 直列4気筒 DOHC ターボ
トランスミッション:7速AT(デュアルクラッチ式)
最高出力:192馬力/5000回転
最大トルク:28.6kgf-m/1350〜4600回転
価格:388万円
(文/工藤貴宏 写真/&GP編集部)
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