これぞアメリカンナイフ!ランドール「M11 アラスカンスキナー 5”レザーハンドル」【アウトドア銘品図鑑】
&GP / 2018年9月8日 7時0分
これぞアメリカンナイフ!ランドール「M11 アラスカンスキナー 5”レザーハンドル」【アウトドア銘品図鑑】
1936年創業のランドール社は、アメリカ製ハンドメイドカスタムナイフの基礎を作ったと言われるナイフメーカーです。創業当時から一貫して“フォージング”という製法で炭素鋼からブレードを作っています。
フォージングとは、いわゆる鍛造のこと。炭素鋼は手入れを怠ると錆びるという欠点がありますが、研いだ後の切れ味のよさは格別です! 最近は錆に不安を持つ人がいるのでステンレスブレードも用意していますが、ステンレスだって鍛造というから徹底しています。
本国のWebサイトにはシースナイフのいろいろな形をラインナップしていて、ブレードの形や用途を記載してあります。ランドールは、ブレードの形を系統立てた初めてのメーカーであるとも言われているんです。
そんなアメリカ製ナイフのレジェンドとも言えるランドールの中から、ナイフやサバイバル技術の著書をもつエイアンドエフ会長・赤津孝夫さんが選んだのが「M11 アラスカンスキナー 5”レザーハンドル」(11万5000円/税別)です。
1941年より軍に納品していたモデル1に始まり、順次新しいモデルを追加してきたランドールのナイフ。現在はモデル28までラインナップされ、M11=モデル11のアラスカンスキナーは、アラスカのトミー・トンプソンがデザインしたモデルで1952年2月に発売されました。
ブレードはほんの少し先端が落ちたドロップポイント。スキナー(皮を剥ぐ人)という名前を持つとおり、切ったり皮を剥いだりするときに威力を発揮します。赤津さんはキャンプだけでなくハンティング歴も長く、大物の解体もこのナイフで行うそうです。
▲エイアンドエフ会長・赤津孝夫さん
「とがった部分で刺して、弧を描いている部分で皮を剥ぎます。ハンティングのときには、刃がしなやかで医療用メスのような形をしたケーピングナイフも持っていって、細かな作業をするのに使います。西部開拓時代、ナイフはとても重要な道具で、アメリカ人は好きなナイフを職人に作らせていました。ランドールはその名残から今もハンドメイド。カスタムもできます。(この型ではありませんが)宇宙開発用ナイフも作られていて、宇宙飛行士が持っていったんですよ」(赤津さん)
■機能
炭素鋼のブレードは、ステンレスと比較すると錆が発生しやすいんですが、切れ味は最高。
「炭素鋼のナイフは研ぎやすく、研いでいるうちにだんだん短くなっていきます。一生の友だちという感じ」(赤津さん)
ブレードをハンドルに取り付けるための金属部分を「タング」と言います。上写真の右はタングをハンドルで挟み込んだ「フルタング」。タフで、木の硬さや太さ、ブレードの素材とサイズなど条件によりますが、バトニング(薪割り)をしても破損しづらいほど強度に優れています。ただ、どうしても重くなり、バランスが悪くなるという面も。
ランドールはタングの幅がハンドルより狭くなっている「ナロータング」。中の様子は見えませんが、細めのタングをハンドルの穴に差し込んでいます。鍛造ナイフではナロータングが主流です。
ハンドルにタングを差し込むだけでは、固定できません。ランドールはバットキャップ(ハンドルエンドにかぶせるもの)を装着してネジで締めて固定しています。
「レザーのハンドルなのですべりにくくていいんですが、使っていると縮んでしまうことも。そうなると、タングを留めるネジを締めて調整します」(赤津さん)
ハンドルはレザーワッシャー。DIYでは、ボルトがゆるまないようにワッシャーをかませますが、レザーワッシャーとはこのワッシャーのような形のレザー製円盤。タングに合わせて穴を空けたレザー製ワッシャーを重ねているんですね。だから、微妙な色の違いが味わいになっています。真ちゅうヒルト(指をガードする鍔のようなもの)、ジュラルミンのバットキャップもかっこいい。
「ヒルトは蝋付けされているので、水分がハンドル内部に入ることがありません。フルタングは錆びやすいけれど、ナロータングは錆びにくいという点があるんです」(赤津さん)
■使い方
いろいろな持ち方がありますが、ブレードの近くを持つほど力をこめやすく、手の延長でナイフを使えます。グーで握るよりもブレードの背に親指を添えておけば、力を加減しやすくなります。
赤津さんによると「よく切れるナイフは、先端が薄くなっています。そして、刃をよく見るとノコギリのようになっているんです。包丁や工具もそうですが、切れる刃物は軽い力で作業できるので安全。切れない刃物は力を入れないと切れないし、切り口もつぶれて美しくありません。何より疲れます。使っているうちに刃が丸まってだんだん切れ味が悪くなるので、研ぐかタッチアップ(簡易的なシャープニング)をしましょう」。
ランドールのナイフは、タッチアップ用砥石のポケットが付いたシースがセットになっていてどこでも研ぐことができます。
砥石と刃を15度くらいの角度にキープしてタッチアップします。ツメに刃を当ててカリッと引っかかるような感じになればOK。髪の毛に刃を当てて、食い込むような感じがすると、これも研ぎ上がりの合図です。
理髪店では、ときおり皮のコードバンでカミソリを研いでいる様子を見られます。棒状のシャープナーは、これと同じように棒にこすりつけて刃をつけるというタッチアップです。持ち運びやすく、水や油を使わないのでどこででもナイフの切れ味を復活させられます。ただし、これは簡易的なものなので、後できちんと砥石で研ぎなおす必要があります。
シースナイフは、シースから取り出すとすぐに使えます。それに、フォールディングナイフよりもタフ。アウトドア好きなら持ち運びやすいフォールディングナイフとシースナイフ、両方ともほしい道具です。
ランドールには狩猟向きの「M11」だけでなく、「M12スポーツマンズボーイ」「M5キャンプトレイル」「M26パスファインダー」などキャンプ向きモデルも多数あります。自分はどんな使い方をするか、目的別にじっくり考えるのも醍醐味です。
*鉄砲刀剣類所持等取締法(銃刀法)では、業務など理由なしに刃体の長さが6cm(折りたたみ式ナイフは8cm)を超える刃物を携帯してはいけないとされています。キャンプでナイフを使ったあとはクルマやバッグの中に入れたままにせず、必ず自宅で保管しましょう。
>> エイアンドエフ
(取材・文/大森弘恵)
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