中国・深セン&広州製造工場潜入レポート ―「小さい財布」製作日記③ 後編
&GP / 2018年9月9日 20時0分
中国・深セン&広州製造工場潜入レポート ―「小さい財布」製作日記③ 後編
前編はこちら(>> 「小さい財布」製作日記③ 前編)
今回、見学に訪れた広州の工場。&GP×モノグッズの「小さい財布」は、ここで製造される。あらかじめ仕入れた素材(今回の財布は、バリスティックナイロンやファスナー、内部に使う水牛の仔牛のレザーなど)をここに送り、設計図を元に切り抜きや縫製が行われる。
到着した我々は、挨拶もそこそこに、さっそく工場内を見学させてもらうことに。
■広く快適な工場
▲さまざまなブランドのバッグや服飾小物を作る工場なので、各種素材が運び込まれている
工業製品とは違い、手作業が多いためラインなどはない。大型の機械がないからなのか、工場内は予想よりはるかに静かだ。そしてキレイに整頓されていて、清潔。広さにも余裕があり、ゆったりとした空間でさまざまな工程の作業が行われている。
案内してくれた工場長によると、働く人の多くは、中国全土から集まってきているらしい。
作業する人たちは、黙々と仕事をこなしている。モノグッズ現地スタッフによると、
「有名ブランドもやっているだけあって、細かい部分までしっかり仕上げてくれるんですよ」
とのこと。
▲ひとつひとつ形の異なる革から、極力無駄を減らしてパーツを切り出す
▲切り出されたパーツ類
▲パーツ取り用の型が並ぶ棚
2階に上がると縫製作業が行われていた。ここは女性が多いが、もちろん男性もいる。
▲業務用のミシンがずらりと並ぶ
▲この日の気温は約30℃。雨も振っていたので蒸し暑かったが、窓を開け放ち、天井から下がった扇風機が回る工場内は、エアコンなしでも快適だった
順番に作業所を巡っていくと、工場長が立ち止まり何かを説明しはじめた。「ここで、我々の財布を作っているそうですよ」(モノグッズ現地スタッフ)
■「小さい財布」発見!
おぉ、これは! たしかに7月に手に取ったサンプルと同じ財布だ! ここでこうやって作られているのか。なんだか感慨深いぞ。
▲小銭入れ部分の革パーツ
▲そして小銭入れ部分のメインパーツ
▲ひとつひとつパーツを組み合わせて、財布にしていく
バラバラだったパーツが職人の手でひとつになっていく様子は、いつまでも見ていられる。流れるような動きは、まさに熟練のワザだ。工業製品とは違い、服飾小物などは機械化が難しい。多くの工程で、人の手が必要になる。だからこそ人手が必要で、そしてその人手の質がそのまま品質へと影響してくる。
そういった製品の生産地が、圧倒的な労働人口を持つ中国になるのは必然ではあるが、これぞまさに伝え聞いていた“工場の質”といったところだ。
正直、建物を見たときは「う~ん、大丈夫?」と思ったことも事実なのだが、清潔な工場内、手際よく作業をこなしていく従業員たち、そしてコバの処理といった仕上がったパーツから分かる作業の質の高さ。まさに世界中のプロダクトの製造を担う中国の底力といったところだろう。
やっぱりスゴいわ、中国!
■工場長が最終チェック!
見学したあとは、工場長の部屋に招かれ、中国茶でおもてなし。モノグッズ現地スタッフによると、どこに行っても中国茶を淹れるセットはあり、お茶を振る舞って客をもてなすらしい。
工場長がなにやら話しながら、袋を取り出す。
「かなり上等なプーアル茶らしいですよ」
湯を沸かし手際よくお茶を注いでくれる。さっそくひと口…、美味い! ちょっとでもなくなると、お茶を足してくれる工場長。
そうこうしているうちに、従業員が何やら持って部屋に入ってきて工場長に渡した。袋から出てきたのは、そう我々の財布だ!
するとおもむろに工場長が、ギューギュー押したり引っ張ったりし始めた。ちょちょ、ちょっと、なにしてるの?
そして、運んできた従業員になにやら指示を出す。
「最終の製品チェックだと思います。工場長が最後に品質管理をしているんです。ちょっとだけ修正させるみたいですね」
こんなこと、製造業関係の人なら当たり前の光景かもしれないが、恥ずかしながらここまでの細かい工程を見たことがなかった身としては「本当にちゃんとしてるんだなぁ」と思わず感心してしまった。最後は人の手と目でチェック。これ大事。
そして次に現れたのが、なんと財布を入れる袋!
「これに入った状態でお客さんのもとに届くんです」
なにこれ! 聞いてなかったんですけど! モノグッズと&GPのロゴが入った布の袋。黒い起毛の袋は、しっかりと財布を守ってくれそうで高級感もある。これいいじゃないですか!
▲ロゴの刻印もしっかり入っている
これにて、メーカーサイドとしての最終チェックが完了。これより一気に生産に入るとのこと。「この工場でパッケージングまで行います。すべて作り終わったら、あとは日本に送られてきて、税関を通って、我々モノグッズのもとに届きます。もうちょっとですね」
モノグッズ現地スタッフのこの言葉に、わずか数カ月ではあるが、モノづくりに携わってきたんだなぁとの感慨が押し寄せてきた。うーん、これはたまらん。
■発売は近し!
工場長に「よろしくお願いします」と頭を下げて工場をあとにした我々は、モノグッズ現地スタッフの「せっかくだから中国の新幹線に乗って深センに戻りましょうか」という提案で、隣の街である東莞の虎門駅へ。
深セン北駅までは約30分。時速300km超で走り抜ける。1等車でも54.5元(約900円/2018年8月時点)と、かなり利用しやすい料金なので、多くの人が手軽に利用している
▲まだ新しい深セン北駅は新幹線専用駅だ。ここからは北京や上海への直通列車も出ている。ここから香港まで延伸することになっていて現在工事中だ
深センに戻り、広州料理の夕飯を済ませホテルに戻った。そして翌日、深セン宝安国際空港から成田への直行便に乗り込み、帰国したのだった。
* * *
『GoodsPress』『&GP』と、モノをメインに扱うメディアに携わる中で、数多くのプロダクトに触れてきた。過去には“Made in Japan”特集で、日本のモノづくりを取材したこともあった。
でも、なんだかんだ言って、モノを扱う上で“Made in China”は避けて通れないのは事実だ。「工場によっては、かなり品質は高いよ」という話は聞いていた。そんなモノづくりの一大集積地である、中国の広州、東莞、深セン地域で、ゲンバを見学できたことで、今後の中国製に対する見方が変わってくるだろう気がしたのは事実だ。
そして、&GP×モノグッズの小さい財布プロジェクトも佳境を迎える。発売はもうすぐだ。実はこっそりひとつもらってきて、もう使い始めていたりするのだが…。
▲この思いつきが
▲きちんとデザインされて…
▲サンプルとしてカタチになって…
▲中国で作られることに
思いつきから始まった、小さい財布プロジェクト。完結まではもうすぐだ!
[関連製品]
中国・深セン&広州製造工場潜入レポート ―「小さい財布」製作日記③ 前編
(取材・文/&GP編集部 円道秀和)
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