なぜ地中13.5mに巨木が!? 太古の神秘に触れられる「三瓶小豆原埋没林」を訪ねた
&GP / 2018年10月19日 18時0分
なぜ地中13.5mに巨木が!? 太古の神秘に触れられる「三瓶小豆原埋没林」を訪ねた
島根県の中央部に位置する大田市。こちらで1998年に日本の自然史に関わる大きな発見がありました。今から約4000年前、縄文時代の頃の森林が、噴火によりまるごと火山灰に埋まってそのまま地中に残っていたのです。その事実が判明したのは、’83年に出現した1本の杉の巨木でした。
現在、日本全国で一般公開されている埋没林は3カ所。太田市の埋没林がほかのふたつと大きく異なるのが、根を下ろした幹が大きく残る状態で発見されたことでした。これはとても稀な例なんです。そして、それら巨木を含む発掘物の保存と展示のために「三瓶小豆原埋没林公園(さんべあずきはらまいぼつりんこうえん)」が作られました。
実際に訪れてみると、周囲には山しかありません。そんなところに突然野原が開け、地上に出入口がぽつんとある。まるで子供の頃にみた戦隊ヒーローものの秘密基地のようです。地下に作られた「縄文の森発掘保存展示棟」では、その姿を間近で見ることができます。
▲秘密基地みたいじゃないですか?
▲秘密基地にはこの入口から…。高所恐怖症の方はご注意ください
▲地下に入るとまず遭遇するのが、堆積物が層になった壁。正しくは、我々がいる場所が穴を掘った部分なので、地層の中に入りこんでいるのです
■保存作業は現在進行形! 今なら作業の過程も見られる
根が張った状態で展示室内に立つのは、杉が3本と広葉樹が4本。1998年から3年かけて行った発掘で確認された30本の立木、その範囲の一部を囲って地下施設が作られてました。ここでは、展示公開と同時に、保存のための作業が行われています。2002年の開館以来、試行錯誤を繰り返し、砂糖の一種「トレハロース」を塗って保存する方法を取り入れることにしたそう。過去に例がない規模での保存処理で、すべてが新しい取り組みです。
▲発掘された杉の古木
▲写真左にいる人と比較すると、どれぐらい大きな木であるかがよくわかる
▲巨木を下から見たところ。天井部分に円形の器具が見えますが、巨木を囲みながら上下して木の表面に保存液を塗っていました
施設の中央部は、囲いがあって足を踏み入れられないのですが、予約をすれば個人・団体ともにガイドツアーをしてもらえます。ただし、繁忙期だと難しいそう。でもぜひガイドツアー付きでの参加を! 柵に囲まれたさらに先に入れてもらえたり、実際に触れることもできるそうです。
▲泥に埋もれながらも、力強く400年もの長い間、根を張り続けているのだと思うとぐっときます
▲表面は湿気た状態でぷわぷわとした感触
■貴重なものとはつゆ知らず、切って10年以上も放置!?
そもそもの巨木は、水田工事の過程で発見されました。なんとものどかな話なのですが、地面の下にあった「じゃまな木」を取り除こうとしたところ、掘っても掘っても深く続いている。
▲巨木の切断前の状態
この時は「火山噴火で埋もれた大昔の森」という価値には気づかず、約5mの深さまで掘ったところで巨木を切り、工事を進めました。その時に近所の方が撮影していた写真を、数年後に三瓶火山研究家の松井整司さんが目にして学術的な価値を指摘し、調査を始めたのです。苦労の末、ようやく地中に立ち並ぶ太古の森を発見したのは1998年のことです。
▲細かい流木が刺さっている地層
▲林を埋めた土石流によってなぎ倒された樹木も展示されています。年輪の細かさとともに、土石流の衝撃で幹に割れが入った様子を見ることができます
▲根株展示棟の入口
▲こちらも螺旋階段をひたすら下っていくと、根を間近で見ることができる
■天然記念物だけどグッズが作れる理由
こちらの埋没林、現在は国の天然記念物に認定されています。その認定より前に発掘した根がない木があるのですが、施設の1階ではそれらを使ったグッズを販売中です。つまり、「ほぼ」天然記念物のグッズです。「埋もれ木」と呼ばれるこの杉の木を使ったキーホルダーやストラップは、残りの数がそう多くはありません。縄文時代の木を持ち歩くのって、ちょっとロマンがありませんか?
▲「埋もれ木キーホルダー」は700円と1000円
▲同じく埋もれ木から作られた「幸せ杉ストラップ」740円
この公園では、毎年7月ごろになると大田市指定の天然記念物・古代ハス(大賀ハス)が咲き誇り、ピンク色の美しい光景が広がるそうです。この時期に訪れた人は、地下だけでなく、地上もチェックをお忘れなく。
>> 三瓶小豆原埋没林公園
(取材・文/北本祐子)
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