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開けゴマ!スマートロック「セサミ mini」の製造現場に潜入【オトナの社会科見学】

&GP / 2018年10月26日 15時0分

開けゴマ!スマートロック「セサミ mini」の製造現場に潜入【オトナの社会科見学】

開けゴマ!スマートロック「セサミ mini」の製造現場に潜入【オトナの社会科見学】

2015年に米Kickstarterで約1万4000ドル(約1億7000万円)を調達して製品化を実現した米国発のスマートロック「セサミ」の日本向けモデル「セサミ mini」が登場した。2018年8月28日にクラウドファンディングサービス「Makuake(マクアケ)」でプロジェクトがスタート。10月30日のプロジェクト終了まで約半月を残した時点で7000万円を超える資金を調達し、プロジェクトを成功させている状況だ。

米CANDY HOUSEが日本向けに開発したスマートロック「セサミ mini」。スマホアプリからBluetooth経由でカギを開け閉めできるだけでなく、別売のWi-Fiモジュールを利用することで遠隔操作やスマートスピーカーを利用したカギの開け閉めもできるようになる。2018年10月30日までクラウドファンディングの「Makuake」で支援を受け付けている

セサミ miniはプロジェクト支援者に向け2019年1月以降順次送付される予定だが、プレス向けにセサミ miniの製造現場を巡るツアーが開催された。ハードウエアスタートアップがどのようにしてスマートロックを設計・製造しているのか紹介していきたい。

■3Dプリンターで10回以上のプロトタイプを試作

3D Realfun 3D Printerは3Dプリンターを用いて製品の試作品を作るサービス業者だ。

▲数多くの3Dプリンターが並ぶ。こちらはテグスのようなものを溶かしながら積層していく、低コストな方式

▲こちらは液体状の樹脂に紫外線を当てることで硬化させる方式。コストは高いが精度の高いプロトタイプを作れる

▲部品ができあがったところ

セサミは米国のサムターン(内鍵つまみ)に対応するため比較的大型だったが、セサミ miniは日本市場をターゲットにしたモデルのため、かなりコンパクトに仕上がっている。

▲従来モデルのセサミ(写真中央左側)と日本向けモデルのセサミ mini(写真中央右側)。米国のサムターン(写真左側)と比べて小さい日本のサムターン(写真中央)に向けて小型化した

セサミと同じ基板やモーター、センサーなどを流用してコストを抑えつつ、小型化を図るために10回以上も3Dプリンターで試作を重ねたとのことだ。

「日本にも3Dプリンター業者はありますが、ここは夜に依頼して次の日には製作してくれるスピードが魅力です」(セサミシリーズを製造販売するCANDY HOUSE CEOのJerming Gu氏)

▲セサミシリーズを製造販売するCANDY HOUSE CEOのJerming Gu氏。台湾出身で大阪で日本語の勉強をした後に米スタンフォード大学に留学したという経歴の持ち主で、日本語も流暢に話す

■金型製作に長年のノウハウを注入

続いては金型工場を訪れた。こちらではプロトタイプの試作を繰り返した後にできた設計図を基に、量産化のための金型を製作する。

金型には樹脂を注入し、固めてから取り外すという工程がある。そのため、注入のしやすさ、取り外しやすさなどに金型設計の長年のノウハウが必要になる。

▲ビスを留める部分に厚みがあると冷えたときに縮むため、最適な厚さになるように金型工場から指導があったという

▲樹脂を注入する穴の場所、成形後に押し出すための穴を設ける場所などにも長年のノウハウが結集されているとのことだ

深センの金型工場では2週間ほどでできあがるのに対し、この金型工場では金型作りに4~5週間、その後の修正に2週間と、約7週間ほどかかるとのこと。しかし、「信頼性が高くてその後のトラブルがないため、管理コストを抑えられるのが魅力だ」とJerming氏は語っていた。

▲金型工場の中の様子

▲こちらはセサミ miniの金型。金型にはノウハウが詰まっているので、ほとんどのプレス向け見学会でも撮影NGのことが多い

▲プレス機でセサミ miniのプラスチック部品を成形しているところ

▲プラスチック部品ができあがったところ

▲できあがると、検品が行われる

▲検品しているところ

▲こちらは金型の製作や修理などを行う現場

▲熟練の職人が作業に当たっていた

■スマホケースなども手がける塗装工場でカラーリング

プラスチック部品を生産したら、次は塗装工程だ。塗装工場では、セサミ miniのプラスチック部品を「ジグ」と呼ばれる器具に装着し、手作業によってホコリを取ってから自動塗装工程に移る。塗装後に表面をきれいに仕上げればできあがりだ。

▲セサミminiのプラスチック部品をジグに取り付けたところ

▲こちらではスマホケースのラインが動いていた。プラスチック工場から届いた部品を検品し、ジグに取り付けている

▲ジグに取り付けられたプラスチック部品が流れてくるので、ハケを使ってホコリを取り除く

▲こちらは自動的に塗装する工程だ

▲紫外線を当てて硬化させている

▲外観を検査し、表面をきれいに仕上げればできあがりだ

▲塗装されたプラスチック部品

 

■世界最大サイズの基板にも対応する基板実装工場

続いてはセサミ miniの心臓部とも言える、基板の製造工程を見ていこう。今回はWi-Fi基板の製造工程を見せてもらった。

▲基板の製造ライン

▲シルクスクリーンのような要領で、基板にクリームはんだを塗る

▲こちらは基板を実装する工程

▲リールに巻かれている部品が基板に実装されていく

▲装着後に炉の中に進み、約260℃の高温で固められることでできあがる

▲Wi-Fi基板ができあがったところ

▲この基板工場では、120×40cmもの世界最大の基板への実装にも対応しているとのことだ

 

■ハードウエアスタートアップに優しい台湾のものづくり現場

最後に訪れたのが、プラスチック部品や基板、モーターなどを組み立てる工場だ。

▲最終組立工場の現場。定時を過ぎていたため閑散としていた

こちらではモーターモジュールや、サムターンを回すつまみ、歯車、電池ボックスなどさまざまな部品を組み立てて最終製品に仕上げる。

▲モーターモジュールやつまみ、電池ボックスなどを組み立てていく

▲できあがったところ

▲検査機で仕上がりを検査しているところ

できあがると、初期不良がないかどうかテストする「バーンイン試験」を行う。これは50℃の庫内で約8時間、カギを開け閉めするというものだ。実際にカギに装着してテストするわけではないが、ここで慣らし運転と初期テストを行うという位置付けのようだ。

▲50℃の庫内で約8時間、カギを開け閉めする「バーンイン試験」を行う

テストが無事終了すると、最終製品のファームウエアを書き込み、パッケージにして出荷するという流れになっている。

▲完成したセサミ miniの本体とパッケージ

台湾の工場は中国・深センなどに比べて小さいため、大量生産にはあまり向かない。しかし「長年のノウハウを提供してアドバイスしてくれるなど、ハードウエアスタートアップにも親切に対応くれるのが大きな魅力です」とJerming CEOは語っていた。日本でもハードウエアスタートアップの動きは加速しているが、日本からいきなり中国に飛ぶのではなく、台湾を経由するというのも一つの手なのかもしれない。

>> セサミ

 

(取材・文/安蔵靖志)

profile-654x720 あんぞうやすし/IT・家電ジャーナリスト

ビジネス・IT系出版社で編集記者を務めた後、フリーランスに。総合情報サイト「日経トレンディネット」、「NIKKEI STYLE」などで執筆中。KBCラジオを中心に全国6放送局でネットしているラジオ番組『キャイ~ンの家電ソムリエ』にも出演中。

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