【ボルボS60ポールスター試乗】ジキルとハイドの二面性を秘めた現代の“羊の革を被った狼”
&GP / 2015年11月13日 18時0分
【ボルボS60ポールスター試乗】ジキルとハイドの二面性を秘めた現代の“羊の革を被った狼”
クリスチャン・ダール率いるポールスター・レーシングが、STCC(スカンジナビアン・ツーリングカー選手権)で勝利を欲しいままにしていたのを目の当たりにした2013年。
ブルーのボディカラーは、どこまでが青空で、どこからが湖面なのか分からない、水彩画のようなスウェーデンの風景に見事に溶け込んでいました。
2015年、ボルボはそんなポールスターの株式を100%取得。古くはミニに対するクーパー、そして、メルセデス・ベンツのAMGやBMWのMのような、ハイパフォーマンスモデルの“称号”を、ボルボも手にすることになったのです。
そんなポールスター・レーシングとボルボの開発陣が、ガッツリとタッグを組んで生み出したのが、ここで紹介する「S60ポールスター」(829万円)と、そのワゴンバージョンである「V60ポールスター」(849万円)。
なんと、昨年、ポールスター・レーシングのエンジニアたちが来日。その際、箱根にポールスターモデルを持ち込んで、オーリンズ製サスペンションのセッティングを確認したという本気ぶり。
そんなS60ポールスターを、彼らと同じ箱根の地で存分に堪能してきました!
■ハートをつん裂く咆哮に酔いしれる!
日本で見るポールスターのボディカラー“レーベルブルー”は、北欧の斜光の下で見るのとは、まるで印象が違っていました。スウェーデンで見たそれは、同色の国旗に煽られていたせいもあるのでしょうが、自然、ナチュラル。違和感ゼロ。
しかし、日本へ持ってくると、ただならぬ存在感を漂わせています。遠くまで視認性の高い、目立つソリッドの“青”をまとうには、なんらかの意図があるはず、と身構えさせるほど。メルセデス・ベンツのシルバー、フェラーリの赤でさえ、これほどまで特別な印象を与えるのは、もはや難しいのではないでしょうか。
それが確信に変わるのは、20インチホイールの造形を見た時。スポークがマッチョに外側へ盛り上がっているんです。ポールスターが名門ブレンボ社と共同開発した6ポッドのキャリパーを収めるために、スポークがキャリパーと干渉しないよう、外側へ逃げるデザインになっているんですね。細マッチョどころか、ムキマッチョ。
その気になってドアを開け放ち、乗り込みます。デカいシートにカラダを沈めて走り出すと、拍子抜けするほどフツー。サスペンションがガチガチのセッティングになっていないか気にしていたものの、完全に杞憂に終わりました。
3リッターの直列6気筒エンジンは、ボルグワーナー製のツインスクロールターボチャージャーで過給され、350馬力(258kW)/5250回転、51.0kg-m(500Nm)/3000〜4750回転を発生。停止状態から100km/hへ到達するのに要する時間は4.9秒とアナウンスされています。
フツーにお買い物へ行ったり、渋滞をかいくぐって帰省したり、日常の脚として気負わず使える印象。ハイパフォーマンスカーを支配下に収めているというアドレナリンの誘発はありません。もっとも、昨今のハイパフォーマンスカーは、たいていそういう感じですが…。
6速ATのシフトノブをスポーツモード側へパンッと倒し、まるでパッシングするようにパドルシフトをパシパシッと2速まで落とすと…。
「ファンッッッ、ファーーーーーーーアッ!」
マジか? というような快音が頭のてっぺんを一気に貫いたような気がしました。ポールスターのエキゾーストシステムにはフラップが備わっていて、必要に応じてこれが全開になるんです。すると直6ターボエンジンが豹変。間髪入れずに戦闘モードへシフトしちゃいます。
決して高回転タイプではありませんが、パンチのあるトルクが電子制御式AWD(四駆システム)を通じて無駄なく路面へとたたきつけられ、加速力へと変換されていく感じです。
私が観戦したSTCCで走っていたマシンはワンメイクで、市販モデルとは直接、関連性はありませんでした。それでも、このS60ポールスターの直6ターボエンジンは実戦向き。レースで闘える手応えさえ感じさせます。昨今のレースは、クラスごとに性能調整が入り、トップスピードなどに差が出にくいようになっています。コーナーから立ち上がる際の加速や、中間加速にアドバンテージがあった方で、バトルで競り勝つ武器になるんですね。その点、S60ポールスターの直6ターボは、そういったたくましさを感じさせるんです。
箱根ターンパイク。登りも得意。グングン駆け上がる。コーナーの入り口でブレーキング。試乗車は走行距離が1万km以上走っていて酷使された感はあったものの、6ポッドブレーキのキャリパーが直径371mmあるベンチレーテッドディスクに激しく咬みつきます。
そして、コントローラブル。ペダルを踏む力と制動力の関係がリニア。ターンの姿勢を作りやすいんです。ボディ全体が沈んだタイミングで、ソロリとステアリングを当てていくと、コーナーの出口を目指して涼しげに旋回していきます。
危なげない。
いやぁ、これ以上のスピードで進入するのはマジで嫌。レーベルブルーの限界はもっと奥。いつかサーキットで、続きを試してみたいと本気で思いました。
ショッピングモールへの足からサーキットまで、守備範囲が広いというより、そのジギルとハイド的な二面性が印象深いS60ポールスター。羊の皮を被った…というような形容詞がお好みなら、アイスホワイトかオニキスブラックメタリックのボディカラーを選ぶとなお良いでしょう。レーベルブルーは早晩、狼の色として知れわたる覚悟が必要ですから。
ちなみに、ポールスターモデルは世界限定750台。日本へはS60が10台、V60が40台の合計50台のみが上陸します。11月11日現在、V70は残り20数台、S60は残り2台とのことでした。
<SPECIFICATIONS>
☆S60ポールスター
ボディサイズ:L4635×W1865×H1480mm
車重:1780kg
駆動方式:4WD
エンジン:2953cc 直列6気筒 ターボ
トランスミッション:6速AT
最高出力:350馬力/5250回転
最大トルク:51.0kg-m/3000〜4750回転
価格:829万円
(文&写真/ブンタ)
外部リンク
この記事に関連するニュース
-
マツダは「尖った商品に挑戦する」、特別な『ロードスター』で新規ファンにも発信…東京オートサロン2025
レスポンス / 2025年1月14日 14時0分
-
トヨタ「爆速ハッチバックスポーツ」カスタムカー公開! ド迫力の“ロー&ワイド”ボディד高性能化エンジン”搭載! トムスのレーシングDNAが詰まった「GRヤリス」とは
くるまのニュース / 2025年1月12日 17時10分
-
2Lエンジン搭載ロードスターは「12R」だけじゃない! マツダスピリットレーシング・ロードスターの詳細スペック…東京オートサロン2025
レスポンス / 2025年1月12日 14時0分
-
マツダが「新たなロードスター」を初公開! 待望の200馬力「2リッターエンジン」×オープンモデルが登場へ! “匠手仕上げ”の「高性能モデル」TASで披露 25年内に発売へ
くるまのニュース / 2025年1月10日 11時20分
-
スズキ現行「“最後の”スイフトスポーツ」登場に大反響! 「終了ってマジ?」「新型は出る?」の声続出! めちゃカッコいい「ファイナルエディション」とは?
くるまのニュース / 2024年12月17日 18時10分
ランキング
-
1賞味期限「2年前」のゼリーを販売か…… 人気スーパーが謝罪「深くお詫び」 回収に協力呼びかけ
ねとらぼ / 2025年1月15日 7時30分
-
2「室内寒暖差がつらい…」その要因と対策が明らかに! - 三菱電機が紹介
マイナビニュース / 2025年1月14日 16時10分
-
3芸能人なぜ呼び捨て?「日本語呼び方ルール」の謎 日鉄会長の「バイデン呼び」は実際に失礼なのか
東洋経済オンライン / 2025年1月15日 9時20分
-
4バイトをしているコンビニでは廃棄商品の持ち帰りは禁止されています。もう捨てる商品なのになぜダメなのでしょうか? 捨てるほうがもったいない気がします。
ファイナンシャルフィールド / 2025年1月14日 5時0分
-
5靴下真っ黒で徘徊…87歳老母が冷凍庫に隠していた「うなぎパック50個」の賞味期限を知った50代娘の切なさ
プレジデントオンライン / 2025年1月15日 10時15分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください