ルンバが “スマートホーム”のコアに!iRobot社CTOに聞くロボット掃除機の未来とは?
&GP / 2018年11月8日 21時0分
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ルンバが “スマートホーム”のコアに!iRobot社CTOに聞くロボット掃除機の未来とは?
2002年に初代「ルンバ」を発売(日本では2004年に発売)し、ロボット掃除機カテゴリーを生み出した米アイロボット(iRobot)社。2016年には軍事用ロボットや産業用ロボットなどのB2B事業を廃止してコンシューマー商品に特化し、さまざまな機器を連携させることで住宅をインテリジェント化する「スマートホーム」の実現へ力を入れるという方針を打ち出した。
▲「ルンバe5」/4万9880円(税抜)
2018年10月には実勢価格5万円を切る戦略的商品の「ルンバe5」を発売し、ロボット掃除機のさらなる普及を目指している。
そんな中、アイロボットのCTO(最高技術責任者)を務めるクリス・ジョーンズ氏が来日し、インタビューする機会を得た。これまでのロボット掃除機開発への取り組みや、スマートホームの実現に向けた課題などについて聞いた。
■家庭用ロボット実現に立ちはだかる3つのハードル
▲アイロボット社 CTO(最高技術責任者)、クリス・ジョーンズ氏
──ジョーンズさんは、これまでにどのような形でロボットの研究開発に携わっているのでしょうか。
ジョーンズ氏:大学研究室や米国政府機関などで研究開発に携わった後、2005年にアイロボットに入社しました。これまでに約20年間、ロボティクス技術の研究開発に携わっています。現在はさまざまな技術や機能を開発したり、新しいパートナーと提携したりしながら、スマートホームの実現に向けて取り組んでいます。
──アイロボットに入社した当時にはすでにルンバは生み出されていたわけですが、現在のように進化すると考えていましたか?
ジョーンズ氏:どの分野でも当てはまると思いますが、早い段階で成功するかどうかを見極めるのは決して容易ではありません。しかし、いつか成功すると考えながら、大きなビジョンと信念を持って取り組んできました。
結果的に現在でもまだ日の目を見ない技術はありますが、ナビゲーション技術は大きな進化を遂げてきたと思います。私が2005年の段階で任されたのが、ロボットが自動的に周辺環境を把握し、ナビゲーションする技術の開発でした。軍事用のナビゲーション技術をベースにしつつ、時代の経過とともにセンサーや処理性能、アルゴリズムなどが大幅に進化しました。一方で当初は高価だったセンサーのコストが下がってくるなどして、10数年で成熟してきたと思います。
──これまで開発に携わっていて、最も大きなハードルはどういったことでしたでしょうか。
ジョーンズ氏:これはどのようなロボット製品にも当てはまりますが、大きな課題は3つあります。1つめは多くの技術を備えて、何らかのソリューションを実際に提供できること。2つめは多種多様な住宅環境の中で実際にそれが動くこと。3つめは、消費者に受け入れられる価格を実現することです。
ナビゲーション技術を開発するに当たっては、どれも大きなハードルでした。技術力は備えても、本当にそれが各家庭の環境で効率的に動くのか、コストを抑えられるのか。そういった理由もあってソフトウエアは組み込み式ですし、イメージセンサーもほかのロボットが搭載するような(高価な)レーザーセンサーではなく、ケータイに使われるような一般的なイメージセンサーを使いました。
▲「e5」裏面
そういったものを採用することでコストを抑え、最新技術を活用しながら課題を克服することで3つのハードルをクリアしました。アイロボット、特にルンバでは、この3つの要素をクリアできたからこそ成功したのだと思っています。
■ナビゲーション技術の進化がカギを握る
──現在、ロボット掃除機の開発に関して技術的な課題はどんなところにあるのでしょうか。
ジョーンズ氏:消費者向けロボット掃除機の分野でも、まだイノベーションを起こせると思っています。メインの機能であるクリーニング性能をどんどん追求していきたいと思っています。
もう1つは、ナビゲーション分野への継続的な投資ですね。ロボットが周辺の環境や空間をより理解でき、さらに空間の中の物体を理解できるようになれば、よりインテリジェントで効率的な働きができるようになります。
2015年にルンバ900シリーズを発売しましたが、このモデルからイメージセンサーによってマップを作れるようになりました。そうすることで、掃除中に充電が切れそうになるとドックに戻って充電し、途中まで掃除していた地点まで戻って掃除を完了させることができるようになりました。今後のテクノロジーロードマップでは、さらなる性能改善をしていきたいと考えています。
──今後のロードマップで、具体的に実装される機能はどういったものなのでしょうか。
ジョーンズ氏:先日一足先に米国でリリースしたのですが、マップを一度だけ作成して使うのではなく、マップを作成して記憶・維持する機能を搭載しました。部屋全体ではなくてリビングだけを掃除場所に指定すると、どうやってそのリビングまでたどり着くか、どうやってリビングを掃除するのか、どこまでがリビングなのかを理解して、その掃除を終えると自らドックに戻るというように、個々のニーズに合わせた対応力が向上します。
▲「ルンバ980」走行イメージ
さらにその先のロードマップでは、室内の空間だけでなく、空間内に何があるのか。例えば家具がどこにあるのかを理解できるようになると、よりインテリジェントかつ効果的に掃除できるようになります。そこにダイニングテーブルがあるのであれば、恐らくクリーニングの頻度が高いだろうと分かります。ソファーの位置を認識できれば、「ソファーの周りを掃除して」と指示するだけでそこを掃除できるというように、よりスマートになっていきます。
ロボットはマップを作成できるので、各家庭の“マスター”としてどこに何の部屋があるのか、どこにどのような機器があるのかを熟知できる状況にあります。それが私たちが提供できる価値提案のコアであり、こういった切り口が次世代スマートホームを実現する上でも非常に重要になっていくポイントになります。
どこにデバイスがあって、部屋のレイアウトはどのようになっているのか、どうすればスマートホームのベストな体験を提供できるのか。ロボットが認知力を活用することによって、さらなるイノベーションを起こせると思っています。
──ルンバが部屋をマッピングすることで部屋の間取りや大きさ、家具の位置などを把握するということですが、ほかの機器でマッピングした情報と連携するといった可能性はあるのでしょうか?
ジョーンズ氏:おそらくそういったことはないと思います。ルンバ自体が自分のセンサーに基づいてマップを作成しなければならないですし、マップ作成者じゃないとマップ自体を最適化できないということもあります。他のパートナーやソフトウエアを使ってそのマップをより向上させることはあっても、作成主体はあくまでもルンバ自身だと思います。
今後の開発の方向性としても、ルンバがマップを作成して維持・更新できることに重きを置いています。センサーを使って1日に何度も同じスポットを行き来し、常に最新状況を把握しているからこそ、時間や照明状況によって変わる空間情報への理解を深められるのです。
■ルンバがスマートホーム実現の“コア”になる
──2016年の発表会でコリン・アングルCEOが今後スマートホームに力を入れていくと発表しました。日本ではようやくスマートスピーカーが出始めたくらいで、スマートホームはまだほとんど普及していません。米国では今どういった状況なのでしょうか。
ジョーンズ氏:日本よりは少し先を進んでいるとは思いますが、まだまだ初期段階です。確実に伸びていますが、課題があります。スマートホームは多種多様なデバイスが連携することで、初めて価値を提供できるようになります。個々のデバイスがいかにスマートホーム体験を提供するとしても、デバイスが増えれば増えるほど消費者にとっては負担が増えて、全てのデバイスをフルに使いこなせないことになりかねません。
それだけのデバイスを操るユーザビリティーの良さが実現できないと、スマートホームが達成しようとしているビジョンを全て実現することはできないでしょう。ルンバならGoogle HomeやAmazon Echoなどのデバイスを通して使うことで、あるいはマップを作成してさらにそういったデバイスを使うことでユーザビリティーを向上できると思います。
例えばスマート照明の理想形は、自分で取り付けたあとは「アレクサ、キッチンの照明をつけて」と言うだけで点灯するようなスタイルです。今の技術力でできないわけではないのですが、そのためには膨大なセッティングが必要になります。
そこにロボットが介入してマップを作ることで、リビングやキッチンがどこにあって、照明がどこにあるのかを把握できるようになります。ロボットが住宅環境を理解して、その情報をスマートホームのプロバイダーに提供することで、部屋の間取りやデバイスの位置などの情報が整い、「どの部屋のどの照明を付けて」といったことが実現できるようになります。
──スマートホームのその中核になるのはルンバだと考えていいのでしょうか。それとも、スマートホーム向けのロボットがルンバとは別に登場するイメージなのでしょうか。
ジョーンズ氏:家の中にあるロボットが空間を認識してマップを作成するということが、今後スマートホームを実現するためのコアになると思っています。しかし、それだけが唯一のハブというわけではありません。それとともにスマートスピーカーやモバイル端末などがユーザーインターフェースとして引き続き大きな役割を果たすと思います。
──ルンバがスマートホームのコアになるというのは、いつごろになるのでしょうか。
ジョーンズ氏:実現に向けてのスケジュールはまだありません。現在はさまざまなパートナーと最適解を提供するために、スマートホーム実現に向けてどういった形での貢献ができるかを探っているところです。パートナーと消費者が最も必要とするソリューション提供に向けて、今まさに開発段階にあります。
──今後10年ほどでアイロボット自体がどうなっていくのか、あるいは消費者に対してどんなソリューションを提供していきたいのか、あるいはどのような生活の変化をもたらしたいと考えているのでしょうか。
ジョーンズ氏:スマートホームというエコシステムの中で複数のロボットがそれぞれの役割を果たしていくことで、多様なニーズに応えていけると考えています。1つの汎用ロボットですべてをカバーするというのではなく、1つの家事サポートに特化した機能を持つロボットが複数存在するようになると見ています。
一般的な話として、10年先のロボットは家の中での物理的な動作がよりスムースにできるようになると想像しています。長寿・介護社会の対応として、お年寄りが持ち上げられないものを代わりに持ち上げてくれるとか、棚から薬を取ってきてくれるとか、自分がソファーから動かなくてもビールを持ってきてくれるといったように、家の中のエコシステム内でさらに動作範囲が増えていくのではないかと思います。
(取材・文/安蔵靖志 写真/&GP編集部、下城英悟)
あんぞうやすし/IT・家電ジャーナリスト
ビジネス・IT系出版社で編集記者を務めた後、フリーランスに。総合情報サイト「日経トレンディネット」、「NIKKEI STYLE」などで執筆中。KBCラジオを中心に全国6放送局でネットしているラジオ番組『キャイ~ンの家電ソムリエ』にも出演中。
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