国産初ジェットMRJ「数字で見る」初フライトへの道のり
&GP / 2015年11月15日 18時0分
国産初ジェットMRJ「数字で見る」初フライトへの道のり
2015年11月11日は日本の航空機史上、記念すべき日になりました。そう、戦後初のプロペラ旅客機「YS-11」の初飛行から約半世紀、三菱航空機が開発を手掛ける国産初のジェット旅客機「MRJ(三菱リージョナルジェット)」が初飛行に成功したのです。
今後は量産化に向けて飛行試験なども本格化することになりますが、今回はこれまでの歩みとともに、MRJにまつわる幾つかの数字にスポットを当て、その姿に迫ってみたいと思います。
■発表から初飛行まで何日?かかった費用は?大きさは?
2784日
三菱重工業が小型旅客機MRJの事業化を発表したのは2008年3月28日のこと。'02年頃に発表された経済産業省の小型ジェット機開発案に基づき、三菱重工業では小型ジェット機の開発を行っており、ANAによる発注を受けて事業化が決定。'08年4月1日にはMRJ事業を担う新会社として「三菱航空機株式会社」を立ち上げています。
実に約50年ぶりの国産旅客機ということもあり、開発はやや難航、'13年に予定されていた初飛行は数回にわたり延期されました。そして'15年11月11日、事業化決定から2784日目に初飛行を行い、見事成功を収めたのです。
600日
初飛行に成功したMRJはこれから安全性などの基準を満たしているかなど、2500時間にもおよぶ飛行試験を行い、形式証明を取得することになります。
計画によるとローンチカスタマーであるANAには'17年第2四半期に納入を予定しているといわれます。つまり、開発と製造が順調にすすめば約600日から700日後には、ANAカラーの機体に搭乗できるということです。
11
「1」が4つ並んだ11月11日に初飛行を行ったMRJですが、往年の航空機ファンならば「11」といば国産初の旅客機「YS-11」を思い浮かべる方も多いはず。
このYS-11が初飛行を行ったのは1962年8月30日のこと。YSは輸送機と設計を英文表記した際の頭文字、11は搭載が予定されたエンジンの候補に割り振られた番号と機体仕様案の番号になります。
YS-11の開発・製造は「日本航空機製造株式会社」が行いましたが、同社は国内の重工メーカー各社が参画しており、その中核を担ったのが新三菱重工でした。
このYS-11はとにかく頑丈な旅客機で、2006年に国内の民間航空会社による運航こそ終了しましたが、製造から約50年が経過した現在でも航空自衛隊で運用されています。
YS-11
40,000,000~50,000,000ドル
MRJ、1機のカタログ価格は4000万ドルから5000万ドル、為替レートによる変動や購入先の設備などにより変動はありますが、48億円から60億円といわれています。
ちなみに、2015年4月時点での受注機数は407機(確定223機)となっています。 参考までに、MRJよりひと回り大きなボーイング737-800では9600万ドル(約118億円)、大型機747-8では3億7850万ドル(約464億円)です。
ボーイング747-8
ボーイング737-800
35.8m
MRJ90の全長は35.8m、全幅は29.2m。そう聞いても機体のサイズを想像するのは簡単ではないかもしれません。例えば、首都圏を走る電車は1両約20mなので、2両分よりやや短いという感じでしょうか。
ジャンボの愛称で呼ばれるボーイングの大型旅客機747-8ICの全長は76.3m、全幅は68.5m。また、国内線で活躍する737-800は全長39.5m、全幅は35.8m。
MRJは座席数70席から90席という小型機ですが、伸びやかな機体や鶴を思わせる洗練された機首デザイン、伸びやかな主翼とあいまって、その姿は実に凛々しく、空港での存在感はなかなかのものでした。
2.76m
MRJの胴体縦径は116.5インチ(2.959m)、室内幅は2.76m。座席配置は一般的なエコノミークラスでは2列+2列となります。
座席幅は約47cmが基本となるので、窮屈さを感じることはないでしょう。
ちなみに、秋田新幹線「こまち」として活躍するE6系の車体幅は2.945m。MRJでは客室天井部に荷物入れ、床下には各種機器が納めるスペースがありますが、室内幅やシート幅はほぼ同等というイメージです。
E6系 秋田新幹線「こまち」
1450m
プライベートジェットから大型旅客機までが行き交う羽田空港の滑走路長をご存知でしょうか。東京湾に面したC滑走路は3360m、羽田沖に建設されたD滑走路は2500mという長さ。
旅客機は機種や重量により離陸に要する距離が異なりますが、ボーイングの中型機787の場合、1650mから2150m。地方路線で活躍する小型プロペラ機ボンバルディアQ400では1300mから1425mという離陸滑走距離が必要。
MRJ70の標準仕様では1450mと、プロペラ機と同等の距離で離陸可能なのです。
飛行機の場合、離陸滑走中にトラブルが発生した場合、滑走を取りやめ、停止するためのマージンも必要なので、大型機が離着陸する空港では3000mから4000mほどの長さが確保されています。
78.2kN×2
MRJが両翼に搭載するのは米プラット&ホイットニー社製の新型ターボファンエンジンPW1200シリーズ。MRJ90用、1基あたりの推力(出力)は78.2kNという値。とはいえ、簡単に馬力換算できないので、イメージが沸きにくいかもしれませんが……。
現在、世界最強の航空機用エンジンはボーイング777-200LR/300ERが搭載するゼネラルエレクトリック社製の「GE90-115」というエンジンで、ギネス・ワールドレコードに記録された推力は568.9kN(定格は512.9kN)に達します。
しかし、MRJで注目すべきは推力ではなく、その静粛性。世界各地の空港では国際基準に則った騒音規制がありますが、MRJは同クラスに課せられた基準を大きく下まわります。乗客の快適性はもちろのこと、空港周辺に住む人にも優しい旅客機なのです。
MRJに搭載される米プラット&ホイットニー社製の新型ターボファンエンジンPW1200シリーズ
いかがでしょう? 少しは国産初のジェット飛行機MRJのことがお分かりいただけましたでしょうか? 実際に搭乗できる日が楽しみです!
(文・写真/村田尚之)
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