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【ES試乗】レクサス成功の立役者が凱旋!“デジタルアウターミラー”は未来の進化に期待

&GP / 2018年12月9日 19時0分

【ES試乗】レクサス成功の立役者が凱旋!“デジタルアウターミラー”は未来の進化に期待

【ES試乗】レクサス成功の立役者が凱旋!“デジタルアウターミラー”は未来の進化に期待

“日本発のプレミアムブランド”として、トヨタ自動車がグローバルマーケットで展開するレクサス。最初のモデル「LS」のデビューと同時にブランドが北米で立ち上がったのは、1989年のことだった。

それから四半世紀が過ぎ、今やレクサスは世界中で年間60万台を売り上げるブランドへと成長。その販売ボリュームは、メルセデス・ベンツやBMWにこそ届かないが、ジャガー&ランドローバーを超える規模だけに、プレミアムブランドとして確固たる市民権を得たといっても過言ではないだろう。特にアメリカ市場では、プレミアムブランドのセールストップをメルセデス・ベンツやBMWと競うまでに発展。定番ブランドのひとつとしてカウントされるまでになった。

そんなレクサスが、日本での展開を始めたのは2005年のこと。当初は、ミドルサルーンの「GS」とエントリーセダンの「IS」のみというラインナップだったが、着実に拡充を図り、現在は全12車種(「GS F」や「RC F」といったスポーツモデルは、ベース車両とは別のモデルとしてカウント)を用意するに至った。

しかし、日本で販売されているモデルは、実はレクサスの“すべて”ではなかった。ここに紹介する「ES」はその代表例で、かつて日本市場向けにトヨタ「ウィンダム」のネーミングで売られていたことはあるが、本名のESを名乗るモデルとしては、7代目となる今回の新型が初の日本導入となる。海外で実績を積み、満を持して日本導入となったわけだ。

日本初導入とはいえ、実はこのESは、世界で最も売れているレクサスのセダン。そんな“出来のいい帰国子女”だけに、その出来栄えには期待せずにはいられない。

■リアシートの広さは旗艦モデルのレクサスLSに匹敵

新しいESで特筆すべきは、これまで日本のレクサスにはなかった、新しいポジショニングのクルマだということ。

日本におけるレクサスのセダンは、ドイツのプレミアムブランドを参考に、メルセデス・ベンツ「Sクラス」やBMW「7シリーズ」に相当するフラッグシップサルーンのLS、メルセデス・ベンツの「Eクラス」やBMWの「5シリーズ」をライバルとするミドルサイズサルーンのGS、そして、メルセデス・ベンツ「Cクラス」やBMW「3シリーズ」に相当するコンパクトセダンのISを展開。いずれも駆動方式はFR(後輪駆動)で、運動性能を磨き上げているのが特徴だ。

ところがESは、ボディサイズ的にはGSに近いものの、ドイツのプレミアムブランドには存在しない立ち位置のクルマだ。GSとの大きな違いは、運動性能よりも車内の広さと快適性を重視していることで、スポーツセダンではなく、コンフォートセダンといった位置づけ。かつてレクサスには、ハイブリッド専用のFFセダン「HS」が存在したが、新しいESもそれと同様、日本におけるレクサスのセダンとしては、変則的なポジションのクルマなのである。

では、そんなESの注目ポイントは、どこにあるのだろう? 真骨頂は、なんといってもリアシートの広さである。

ボディサイズが近いといっても、GSのそれはESほど広くはない。なぜなら、GSはFRレイアウトで、ドライビングプレジャーを重視したパッケージングを採っているからだ。その点、快適性を第一に見据えたESは、FF(前輪駆動)レイアウトを採用。FFは、パワートレーンをコンパクトに集約できるから、同じボディサイズであっても、FRのそれより居住スペースを広くとることができるのだ。ESは、そうしたFFレイアウトのメリットを生かし、広大な後席空間を確保。それは、車体がより大きなフラッグシップサルーンのLSと同レベル、といえば、その広さを理解いただけることだろう。

さらに、その広さを生かすべく、上級グレードでは、電動式の後席リクライニング機能や、後席回りの温度を前席とは別に調整できる後席専用エアコン、そして、日差しや周囲からの視線を防ぐドアとリアウインドウのサンシェードも装備する。

ちなみに、日本市場で販売されるレクサスにおいて、後席にリクライニング機能を組み込んでいるのは、現状、最高峰のLSとこのESだけ。開発責任者の方が「何よりも重視したのは快適性」と語っていたことからも明らかなように、ESは後席の居住性にこだわったクルマなのだ。そのため、ファミリーセダンとして活躍するのはもちろん、法人が重役などの送迎に使う、運転手付きのクルマとしてのニーズも満たすことだろう。

■ハイブリッドカーながら十分な荷室空間を確保

さて、新しいESを前にしてまず驚いたのは、その堂々たる風格だ。全長は5m弱と、ボディサイズがかなり大きいことから、存在感の強いクルマだろうとは予想していたが、実際のポジションよりも格上のクルマに見えるのは、LSの流れを汲んだスタイリングの影響が大きい。隣に並べて比較しない限り、少し離れるとLSとの区別がつかないほど、両車はよく似ている。

「FR車らしいシャープなハンドリングや、研ぎ澄まされたコーナリング性能は要らないけれど、LSに匹敵する存在感や、広くて快適な室内空間を備えたクルマが欲しい」というニーズに見事に合致するのが、新しいESといえる。そう考えると、世界で最も売れているレクサスというのも、十分納得のいく話だ。

海外市場向けには、3.5リッターのV6や2.5リッターの直4といった、純粋なエンジン車もラインナップしているESだが、日本市場向けのパワーユニットは、2.5リッターエンジンにモーターを組み合わせたハイブリッド仕様のみ。昨今、この価格帯の国産セダンは、ハイブリッドでなければ売れないという流れになっていることから、これは当然の選択といえるだろう。

ハイブリッドのメカニズムは、基本的にはトヨタ「カムリ」に搭載されるシステムと共通で、違いといえば、リアシート下に積まれる駆動用バッテリーが、カムリのリチウムイオンバッテリーに対し、ESはニッケル水素バッテリーを採用している。

かつてのハイブリッドセダンは、バッテリーをリアシートの背後、ラゲッジスペースの前方に配置したクルマが多かったため、荷物の積載量といった使い勝手の面でガソリン車に劣る、といわれていたが、ESはバッテリーをリアシート下に配置することで、443Lというラゲッジスペースを確保。使い勝手に対するいい訳は、もはや不要となっている。

グレード構成は、17インチタイヤを履くベースグレードの「300h」、18インチタイヤを履く上級グレードの「300h“バージョンL”」、そして、19インチタイヤを履き、専用のサスペンションを組み合わせたスポーティ仕様「300h“Fスポーツ”」の3本立て。バージョンLは、シート生地が“セミアニリン”と呼ばれる柔らかい本革になるほか、電動の後席リクライニング機能などを装備したリアシート重視の豪華仕様で、Fスポーツは専用形状のシートや、レーシングカーをイメージさせるメーターなど、インテリアもスポーティに仕立ててある。

■30分も乗るとすっかり慣れる“デジタルアウターミラー”

さて、新型ESの走りはどうだろうか?

ハイブリッドカーということもあり、加速フィールはガソリン車のような“胸のすく爽快感”こそ味わえないものの、トヨタ「プリウス」など従来のトヨタ式ハイブリッド機構に比べると、かなり改善している。“ラバーバンドフィール”と呼ばれる、パワートレインの反応が遅く、アクセルを踏み込んでから遅れて加速するような感覚がかなり薄まり、ドライバーの意思にさほど遅れることなく反応してくれる印象だ。もはやハイブリッド仕様だからといって、加速感に目をつむる必要はなさそうだ。

グレード別に見ると、操縦安定性と乗り心地がベストバランスなのは、豪華仕様のバージョンL。乗り心地だけに限れば、まるで魔法のじゅうたんのように、路面からの衝撃を異様なまでに和らげてくれるベースグレードの乗り味も魅力だが、ドライバーからしてみれば、ハンドルを切ってからのクルマの反応がひと際良好なバージョンLの方が、運転する楽しさを味わえる。気になる乗り心地に関しても、バージョンLのそれは十分ほめられる水準だ。

一方、スポーティな走りを好むドライバーにとっては、キビキビと走れるFスポーツの走りは理想的。しかし、硬めのサスペンションによって、乗り心地の面で我慢しなければならない場面も少なくないため、リアシートに家族や仲間を乗せる機会が多い人には、他のグレードをおすすめしたい。

ところで新型ESは、ドアミラーの代わりにカメラとモニターで左右・後方の死角を表示する“デジタルアウターミラー”を、世界で初めて採用したことでも話題を呼んでいる。バージョンLにオプション設定されるこの機構は、後方確認時の視線移動を減らせるほか、より広い範囲を確認でき、雨の日は窓に水滴がついていてもしっかり後方視界を得られる。またカメラのステーは、通常のドアミラーよりも細いことから、斜め前方の視界も広がるなど、安全性の向上に寄与する多数のメリットがある。

カメラが捉えた映像は、フロントピラーの根元に装着されたモニターに映し出されるが、後方確認時に視線を向ける位置がいつもと異なることから、モニターではなくついドアミラーの位置を見てしまうなど、最初はちょっと戸惑った。しかしそれも、慣れの問題。30分もドライブしていたらすっかり馴染み、特に右側のモニターは、視線をわずかに動かすだけで後方確認できることから、その便利さを実感した。

また同機構には、ウインカーに連動し、従来のドアミラーが映し出す範囲よりも、より広いゾーンをモニターに映し出す機能が備わっているが、今回の試乗時は、メリットの大きさを痛感。例えば、高速道路で本線に合流する際や、車線変更の際などは、左右の死角が減り、振り返らなくても広い範囲をチェックできるため、信じられないほど運転がラクに感じられたのだ。

カメラ部分は、雨などの水滴がつかないよう、レンズを奥に引っ込めた状態でステーに組み込まれ、また、曇りを防ぐためのヒーターも内蔵されるなど、デジタルアウターミラーには大小さまざまなアイデアが盛り込まれている。とはいえ、オプション価格は21万8000円と高価。また、モニターの解像度や画像処理の速度など、まだまだ課題を抱えているのも事実である。そのため、積極的に選ぶなら、もう少し性能が上がり、価格も身近になってからでも遅くはないかもしれない。

実はESは、初代LSと同時にデビューを飾ったレクサスの古参モデルで、レクサスの成長を支えてきた重要な車種。販売台数の面から見れば、レクサス成功の立役者といっても差し支えない。今回、晴れて“凱旋帰国”した新型ESは、日本市場において、新たなユーザーを獲得することだろう。

<SPECIFICATIONS>
☆300h
ボディサイズ:L4975×W1865×H1445mm
車重:1680kg
駆動方式:FF
エンジン:2487cc 直列4気筒 DOHC+モーター
トランスミッション:電気式無段変速機
エンジン最高出力:178馬力/5700回転
モーター最高出力:120馬力
エンジン最大トルク:22.5kgf-m/3600〜5200回転
モーター最大トルク:20.6kgf-m
価格:580万円

<SPECIFICATIONS>
☆300h“Fスポーツ”
ボディサイズ:L4975×W1865×H1445mm
車重:1720kg
駆動方式:FF
エンジン:2487cc 直列4気筒 DOHC+モーター
トランスミッション:電気式無段変速機
エンジン最高出力:178馬力/5700回転
モーター最高出力:120馬力
エンジン最大トルク:22.5kgf-m/3600〜5200回転
モーター最大トルク:20.6kgf-m
価格:629万円

<SPECIFICATIONS>
☆300h“バージョンL”
ボディサイズ:L4975×W1865×H1445mm
車重:1730kg
駆動方式:FF
エンジン:2487cc 直列4気筒 DOHC+モーター
トランスミッション:電気式無段変速機
エンジン最高出力:178馬力/5700回転
モーター最高出力:120馬力
エンジン最大トルク:22.5kgf-m/3600〜5200回転
モーター最大トルク:20.6kgf-m
価格:698万円

(文/工藤貴宏 写真/&GP編集部)

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