【検証2018-2019年の注目車①】2年連続でボルボが日本のNo.1に輝いた理由とは?
&GP / 2018年12月29日 19時0分
【検証2018-2019年の注目車①】2年連続でボルボが日本のNo.1に輝いた理由とは?
その年を代表するのにふさわしいクルマを選出するアワードが、日本カー・オブ・ザ・イヤー。その2018-2019日本カー・オブ・ザ・イヤーにおいて、驚くべき出来事が起きた。前回の2017-2018に続き、2年連続でボルボがNo.1の座を獲得したのだ。
過去にも、2年連続で同一メーカーのクルマが大賞に選ばれたことはあったし、日本車ではなく輸入車が選ばれるのも今回で3度目だから、さほど驚くことではない。しかし、“輸入車が2年連続で大賞に選ばれた”というのは、40年近い日本カー・オブ・ザ・イヤーの歴史を振り返っても、初めてのことなのだ。
果たして、大賞に選ばれたXC40は、どんなところが高く評価されたのだろうか? また、2年連続で栄冠を勝ち取ったボルボは、なぜこれほどまでに高い支持を得ているのか? 3つの視点から検証してみたい。
■トナカイにも反応する充実の先進安全装備
まずは、ボルボのXC40がどんなクルマなのか、改めておさらいしておこう。
ボルボのネーミングにはそれぞれ意味があり、車名を見れば、どんな性格で、どんなサイズのクルマなのか、分かるようになっている。例えば、頭文字がアルファベットの「S」であればセダン、「V」だとステーションワゴン、そして「XC」ならばSUVであることを表す。また、頭文字に続く数字はボディの大きさを示していて、最も大きいのが「90」、ミドルサイズが「60」、そして、現状のラインナップにおける最小サイズが「40」となる。つまりXC40は、ボルボにおける最も小さなSUVであり、今、日本だけでなく世界的に大ヒットを記録している、コンパクトSUVのジャンルに属したクルマなのだ。
日本でブレーク中のジャンルということは、それだけ世間的な注目度も高く、その分、カー・オブ・ザ・イヤーの大賞に選ばれやすい、といえるかもしれない。しかし今回、最終選考に残った“10ベストカー”の顔ぶれを見ると、三菱の「エクリプスクロス」やBMW「X2」など、ほかにもコンパクトSUVが存在していた。ではXC40は、それらと何が違うというのだろう?
XC40と他の“10ベストカー”とを比べた時、まず目につく違いが、先進安全装備の充実ぶりだ。XC40は世界最高水準の安全装備を、すべてのグレードに標準装備している。最先端の安全装備を全グレードに標準装備したモデルというのは、小型車クラスではまだ珍しい存在だし、しかもその内容が、世界最高峰レベルにあるというのが、XC40のすごさを物語る。
今や、自動ブレーキを始めとする先進安全装備を抜きにして、クルマは語れない時代となった。だが実際には、自動ブレーキの精度や性能にはメーカーや車種ごとに差異があり、装備されているからといって、一概には安心できない状況にある。その点、ボルボのそれは、自動ブレーキが反応する対象が車両だけでなく、人や自転車も含まれていて、その上、トナカイや馬といった大型動物にも対応する。さらに、明るい昼間はもちろんのこと、暗い夜間にもしっかり反応。おまけに、交差点で右折する際、対向車との衝突を避ける制御も盛り込まれるなど、他の自動車メーカーが採用を進める自動ブレーキと見比べても、かなり先を行っている。
しかもXC40には、道路から逸脱しそうになると、ハンドルを自動操作して進路を修正するとともに、ブレーキを使って道路からの逸脱を防ぐ仕掛けも組み込まれている。また、後方から車両が接近して衝突されそうになったり、路面から逸脱したりした場合には、衝突直前にシートベルトを巻き上げて乗員のダメージを軽減するなど、とにかく、ドライバーやパッセンジャーを守るための仕掛けが盛りだくさんなのである。
ちなみに、XC40は389万円〜と、同クラスの日本車と比べると少々高価なのは間違いない。しかし、凝った先進安全装備がこれほどまでに充実したコンパクトSUVというのは、世界中を見渡してもXC40くらいしか見当たらない。そうした安全性への志の高さが、XC40とボルボが高い評価を獲得している大きな理由のひとつだと思う。
■先進的かつ使いやすいインターフェイス
またXC40は、先進性の高さも魅力的だ。この項目においてまず目立つのは、インパネの中央に鎮座する、縦型12.3インチのタッチパネル式ディスプレイ。かつてのボルボ車は、運転席回りに多くの物理スイッチをレイアウトしていたが、XC40を始めとする最新世代のボルボ車は、スマホ感覚で扱えるタッチ式ディスプレイをインパネの中央に組み込み、ナビゲーションやオーディオ、空調、車体設定などに関する各種操作を、モニターで行えるようにしている。
こうした先進的なインターフェイスも、5年ほど前であれば、世の人々に受け入れられなかったかもしれない。だが、スマホ操作にすっかり慣れた現代人にとっては、さほど違和感なく操作できることから、多くの人々が自然に受け入れられている。このように、世の流れと上手にリンクし、扱いやすいインターフェイスをカタチにしてきた辺りに、ボルボの先見性とセンスの良さを感じさせる。
とはいえ走行中は、ドライバーは運転に集中しなければいけないため、タッチパネル操作だけではすべてを安全かつ確実に操作することは難しい。そこでボルボは、音声による操作を最大限に活用している。もちろん、日本語にも対応していて、例えば、乗員が「暑い」といえばエアコンの設定温度を下げてくれるなど、利便性にも優れている。
こうした新時代の到来を感じさせるインターフェイスを採用していたのは、今回、10ベストカーに選出されたクルマの中ではXC40だけ。こうした要素も、高い評価を集めたことは想像に難くない。
■連続するコーナーもストレスフリーに駆け抜ける
XC40の魅力を語る上でやはり外せないのは、走りの爽快感だ。特に、ハンドリング性能やハンドリングフィールといった動的性能/動的質感の面において、XC40はクルマ好きの期待を決して裏切らないのである。
XC40の走りをひと言で表現するなら、軽快という言葉がふさわしい。中でも、ハンドルを切ったり戻したりする時の“操舵感”が、実にスムーズなのだ。操舵感がスムーズではないクルマは、運転している際に人間の感覚との差が生じてしまい、ドライバーはどこか気持ち悪さを覚えてしまう。その点、XC40は操舵感が自然であり、とても心地よくドライブできるのだ。
その上で、峠道でのコーナーや、高速道路への入出路などを曲がっていく際に感じられる、自然なハンドリングフィールが印象的。乱暴な運転さえしなければ、ドライバーが「あそこを通って欲しい」と思う走行ラインを、XC40はしっかりトレースする。“アンダーステア”と呼ばれる、旋回中にクルマが外側へと膨らんでいくような現象も起きにくく、ストレスフリーにドライブできるのだ。その実力の高さはかなりのもの、世のクルマ好きたちを十分納得させられるだけの実力を備えている。
以上、今回は3つの視点からXC40の実力を振り返ってみたが、すべての項目において、XC40が高く評価された理由が十分理解できたはず。それらは、限られた一部のクルマ好きにしか刺さらないものではなく、先進安全装備は「安全性」を、先進性は「(プロダクトとしての)新鮮さ」を、そして、爽快な走りは「運転する楽しさと安心」を、といった具合に、乗る人すべてに多彩な幸せを提供してくれるのだ。
ちなみにXC40は、2018年の欧州カー・オブ・ザ・イヤーにも選ばれるなど、日本だけでなく世界的にも高く評価されている。欧州カー・オブ・ザ・イヤーといえば、過去、コンパクトカーが多く選ばれるなど、消費者により近い視点から選ばれているアワード。そこでNo.1に輝いたことからも、XC40の優れた実力と魅力が伝わってくる。
<SPECIFICATIONS>
☆T4 モメンタム
ボディサイズ:L4425×W1875×H1660mm
車重:1610kg(サンルーフ付き:1630kg)
駆動方式:FF
エンジン:1968cc 直列4気筒 DOHC ターボ
トランスミッション:8AT
最高出力:190馬力/4700回転
最大トルク:30.6kgf-m/1400〜4000回転
価格:439万円
(文/工藤貴宏 写真/&GP編集部)
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