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【検証2018-2019年の注目車②】なぜクルマのプロは「カローラ」を高く評価したのか?

&GP / 2018年12月30日 19時0分

【検証2018-2019年の注目車②】なぜクルマのプロは「カローラ」を高く評価したのか?

【検証2018-2019年の注目車②】なぜクルマのプロは「カローラ」を高く評価したのか?

2018年、注目を集めた新型車といえば、トヨタ「カローラスポーツ」を外すわけにはいかないだろう。その年を代表するクルマを選ぶ2018-2019日本カー・オブ・ザ・イヤーにおいても、大賞に輝いたボルボ「XC40」に次ぐ2位の座を獲得。各選考委員が与える最高点“10点”の獲得数では、大賞のXC40さえも上回った。

ではなぜ、クルマのプロたちは、カローラスポーツを高く評価するのか? その理由を3つのキーワードから解き明かしていきたい。

■新世代の「カローラ」であることを実感させる“強い存在感”

「これがあのカローラなのか?」

ブランニューモデルのカローラスポーツを見て、クルマ好きの多くはそう思ったに違いない。カローラといえば、1966年にデビューした半世紀以上の歴史を持つモデル。日本の高度経済成長期とともに進化し、日本が経済力で頂点を迎えたバブル期やその崩壊、そしてリーマンショックなど、日本社会の浮き沈みをともに歩んできた。

そんな自動車界の生き証人といっても過言ではないカローラは、同時に、日本を代表する大衆セダンでもあった。2001年にその座をホンダ「フィット」に明け渡すまで、カローラは長年、年間販売台数のトップに君臨。国産ファミリーカーの代名詞的存在だったのだ。

そんな過去を持つカローラだけに、新しいカローラスポーツの姿を見て、驚いた人も多いことだろう。カローラスポーツにはあまりにも、従来型の面影がなかったのである。2018年に先行登場したモデルは、“スポーツ”というサブネームが付けられた5ドアハッチバックだったとはいえ、長い歴史を持つカローラがここまで大変身したことに、驚きを禁じ得ない。

日本におけるカローラ、その本筋はあくまでセダンである。現行モデルのセダンは、フロントデザインこそ派手なデザインをまとっているが、ボディサイズは5ナンバー規格に収まるシンプルで質実剛健なパッケージングだ。

それに比べると、新世代カローラの第一幕となったカローラスポーツのデザインは、なんともスポーティでチャレンジング。従来モデルに相当する、海外市場での販売をメインに開発されたハッチバックカー「オーリス」と比べても、ルーフを低く抑え、着座位置を下げたスポーティなドライビングポジションを採用したほか、ボディサイズは3ナンバー規格の国際サイズとなるなど、カローラスポーツは次の時代に向けた、新世代のクルマにするんだ、という、トヨタの意気込みが伝わってくる。

もちろんインテリアも、ドライバーを包み込むようなインパネデザインを採用するなど、スポーティな感覚が強い。中でも、最上級の「G“Z”」グレードに搭載される、7インチの液晶ディスプレイを組み合わせたメーターパネルは、機能性に優れるだけでなく、このメーターのためだけに最上級グレードを選びたくなるほど、先進的でカッコいい。

このように、新世代のカローラは、従来の“年配の人々に向けた地味なクルマ”という立ち位置から脱却し、若い世代も納得して選べる、スポーティなモデルへと華麗なる転身を遂げたのである。

■新世代のカローラは走りが自慢

歴代のカローラは、派生モデルの「レビン」や「トレノ」といったクーペ、「FX」と呼ばれたハッチバックを除けば、積極的に走りを語りたくなるようなクルマではなかった。しかし、新しいカローラスポーツは違う。

まずパワートレーンは、1.8リッターエンジン+モーターのハイブリッドと、1.2リッターの“ダウンサイジングターボ”という2種類と用意。1.5リッターの自然吸気など一般的なエンジンは用意されず、あくまでハイブリッドかターボの二択となる。このラインナップにも、新しい時代の到来を感じずにはいられない。

そもそも、両パワートレーンともに高機能かつ凝った内容のため、一般的なエンジンに比べると、開発に高いコストを必要とする。高コストということは、その分、価格のアップにつながるわけだ。実際、「プリウス」譲りのシステムを備えたハイブリッド仕様が241万9200円〜、ダウンサイジングターボ仕様でも210万6000円〜というカローラスポーツの価格設定は、従来のカローラに対する価値観からすれば、「かなり高い」といわざるを得ない。しかし、そうした声が挙がるのは承知の上で、カローラがこの先も生き残っていくためにはどうしたらいいか? と考えたトヨタの答えは、新しいメカニズムを積極投入し、時代を反映したモデルへとカローラを進化させることだった。

例えば、カローラスポーツのトランスミッションには、“iMT”と呼ばれるMT仕様が用意されるが、そこには、変速時のエンジン回転数を自動制御して変速ショックを軽減する仕組みや、発進時にトルクをアップさせてスムーズな操作を助ける仕掛けが盛り込まれている。これは、日本市場で販売されるトヨタ車としては初の採用で、ハイブリッドのような先進技術はもちろんのこと、伝統的なメカニズムであってもしっかりブラッシュアップしていることが伝わってくる。

またリアサスペンションには、走行安定性を高めると同時に、快適な乗り心地も実現するダブルウイッシュボーン式を採用。同方式はコストが高くつくため、価格を重視しがちなこのクラスでの採用例は、さほど多くない。その上、オプション設定ではあるものの、“AVS(アダプティブ・バリアブル・サスペンション・システム)”と呼ばれる、電子制御で瞬時に減衰特性を切り替えられるショックアブソーバーも用意。この種のショックアブソーバーは、スポーツカーや高級車では採用例が増えているものの、カローラスポーツ級のハッチバックへの導入は珍しい。それだけトヨタは、カローラスポーツの走りにこだわったのである。

今やクルマは、どんなモデルを選んでも、走りに不満を覚えることは少ない、といわれるが、さらに上を目指そうと新しい技術や高コスト部品の導入をいとわなかった結果が、新世代カローラの爽快な走りにつながったのだ。

■カローラスポーツは“コネクテッドカー戦略”の第1弾

“コネクテッドカー”とは、専用の通信端末を車内に搭載し、インターネットを介して世の中とつながるクルマ、を指す。今後クルマは、社会とさまざまな情報を常時やりとりしながら走ることになるだろう。分かりやすい例でいえば、リアルな渋滞情報をカーナビがキャッチし、最も短い所要時間で目的地へと到着するルートを選べる一方、クルマ自体は走行している道路のリアルタイム情報をセンターへと送信、より正確な道路データの生成に活かされるようになる。

実は、その一端を担う通信端末が、カローラスポーツには全グレードに標準採用されている。もちろん、トヨタが展開するレクサスは、すでに2005年から全モデルに通信端末が組み込まれていたし、トヨタ車でも多くのモデルにオプション設定されるなど、クルマに通信端末を搭載する例は、今に始まったことではない。しかし、カローラスポーツがコネクテッドカーとして話題を集めているのは、ほかの部分に理由がある。ひとつは、高級車ではなく、長年、大衆車として愛されてきたカローラのシリーズに、通信端末が標準搭載されたこと。そしてもうひとつは、AIがユーザーとの会話から人の意図を理解し、各種機能へ反映する点だ。実際、カローラスポーツに設定されるシステムは「近くのラーメン屋を探して、駐車場のあるお店がいいな」といった、ユーザーのあいまいなリクエストにも応えてくれる。

また、今や日本ではスタンダードになったコミュニケーションツール「LINE」を通じて、オーナーとクルマをつないだ点も新しい。LINEを介して、車外からナビゲーションの目的地を検索・設定できたり、給油しないで走れる距離を事前にユーザーへ教えてくれたりと、クルマに乗っていなくてもクルマとつながる世界を“ごく普通”に提供してくれるのである。

「カローラなのに」といっては失礼かもしれないが、そんな近未来を身近にしてくれた点も、カローラスポーツの新しさといえる。これから一般化していく技術を、トヨタはカローラで先取りしたのだ。

より強まった存在感、こだわりの走り、そして、次世代技術の先行投入…。カローラスポーツは、まさに時代をリードするクルマとして誕生した。大衆車だったはずのカローラの大変身は、2018年の自動車界にとって、かなりインパクトのある出来事だったといえるだろう。

そして2019年は、先行デビューしたカローラスポーツに続き、セダンやステーションワゴンのフルモデルチェンジが予定されている。すでに海外のモーターショーでは、それぞれの次期モデルが公開されているが、日本仕様のセダンとワゴンは、日本市場に合わせた専用の仕上げが施されているという。その登場が今から楽しみだ。

<SPECIFICATIONS>
☆G“Z”(MT)
ボディサイズ:L4375×W1790×H1460mm
車重:1330kg
駆動方式:FF
エンジン:1196cc 直列4気筒 DOHC ターボ
トランスミッション:6速MT
最高出力:116馬力/5200~5600回転
最大トルク:18.9kgf・m/1500~4000回転
価格:238万6800円

(文/工藤貴宏 写真/&GP編集部)

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