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【検証2018-2019年の注目車③】COTY辞退が話題を呼んだ「フォレスター」の本当の実力

&GP / 2019年1月5日 20時0分

【検証2018-2019年の注目車③】COTY辞退が話題を呼んだ「フォレスター」の本当の実力

【検証2018-2019年の注目車③】COTY辞退が話題を呼んだ「フォレスター」の本当の実力

その年を象徴する“年グルマ”を選ぶ日本カー・オブ・ザ・イヤー(COTY)。2018-2019シーズンの大賞は、ボルボ「XC40」が獲得した。

このアワードは、自動車メディアを中心に構成される実行委員会が選んだ60名の選考委員が、1次選考で残った10台のモデル=“10ベストカー”の中から1台を選出ものだが、今回の最終選考会は、いつもより1台少ない9台で争われた。

実は、スバル「フォレスター」が10ベストカーに選出されていたのだが、完成検査不正問題を理由に、10ベストカーの受賞を辞退したのである。その判断の是非はともかく、10ベストカーに選ばれていたということは、それだけ、フォレスターはクルマとしての評価が高かったわけである。そこで今回は、COTYの10ベストカー受賞を辞退した、フォレスターの本当の実力に迫ってみたい。

■新型オーナーの実に5割以上がe-BOXERを選択

世界的な大ブームを受けて、世界の自動車メーカーが積極的に市場投入しているクロスオーバーSUV。現在は、ユーザーニーズの多様化に合わせ、クーペのようなデザインを採用したモデルや、ハッチバックカーをベースにした車種など、多彩な顔ぶれがそろっているが、その中で、クロスオーバーSUVの“ど真ん中”をいくのが、今回紹介するフォレスターだ。個性派ぞろいのスバル車のラインナップにおいては、どちらかというと質実剛健なキャラクターだが、スバルの好調な北米販売をけん引するとともに、グローバル販売台数においてもトップに君臨する、スバルのエースなのだ。

クルマの詳細をおさらいしておくと、エクステリアは先代モデルからのキープコンセプトでありながら、スバルのデザイン言語である“ダイナミック&ソリッド”に加え、フォレスター独自の“モダンキュービックフォルム”の考えを盛り込んだデザインを採用。先代とは一見、似ているようで、子細に眺めていくと結構異なるルックスとなっている。ボディサイズは、先代モデルに対して必要最小限の拡大に留めている。最小回転半径も先代モデル比プラス0.1mの5.4mに抑えており、取り回しの良さは健在だ。

インテリアは、先代モデルに対し、デザイン/質感ともに大幅にレベルアップ。「インプレッサ」のインパネデザインをベースとしながら、コクピット感覚を強める、高い位置にレイアウトしたセンターコンソールや、よりリアルな質感を目指した加飾パーツやステッチなどで、フォレスターらしさとSUVらしさを演出する。

また、先代モデル比でプラス30mm延長されたホイールベースは、その分をリアシートの足元スペース拡大に活用。スクエアな形状のラゲッジスペースに加え、歴代フォレスターでは最大幅となる1300mmというリアゲート開口部によって、使い勝手も追求している。

■SUVでベストの性能を出すことを目指した“SGP”

フォレスターのパワートレーンを、2種類を用意する。ガソリンエンジンは、ターボ仕様がラインナップから消え、自然吸気のみの設定に。ただし、先代モデルの2リッターから2.5リッターへと排気量を拡大したほか、直噴化と約90%に及ぶ部品の設計見直しなどにより、184馬力/24.4kgf-mのパフォーマンスと、カタログ値で14.6km/L(JC08モード)という省燃費を両立している。

一方、新たに採用された“e-BOXER(イー・ボクサー)”は、2Lエンジンとトランスミッションとの間に、13.6馬力/6.6kgf-mのモーターを挟み込んだシンプルなパラレルハイブリッド仕様。システム構成は、先代の「XVハイブリッド」のそれを継承するが、バッテリーをリチウムイオン化したり、よりモーターのアシストを活かした制御を導入したりしている。

駆動方式は、スバル車らしく全グレードともフルタイムAWDを採用。従来モデルから定評のある“ACT-4+Xモード”機構を継承するが、新型では路面状況に合わせ、走行特性の変更が可能なモードスイッチをプラスしている。

プラットフォームは、現行のインプレッサから採用が始まった“SGP(スバル・グローバル・プラットフォーム)”をフォレスター用に最適化。実はSGPは、走行性能や快適性などの面で条件的に厳しいSUVにおいて、ベストの性能を出すことを目指し開発されたものだ。

サスペンションセッティングは、ガソリン車の場合、「ツーリング」、「プレミアム」の両グレード向けのノーマルタイヤ仕様と、「X-BREAK(エックス・ブレイク)」用のオールシーズンタイヤ仕様という2種類を用意。ちなみに、e-BOXERを搭載するグレード「アドバンス」では、ガソリン車のノーマルタイヤ仕様をベースに、重量アップに合わせてスプリングレートを高めている。

先進安全装備は、全グレードに“アイサイトツーリングアシスト”を標準装備。それに加え、スバル車として初の採用となる“ドライバーモニタリングシステム”をアドバンスに設定する。ドライバーモニタリングシステムは、ドライバーのわき見や居眠りを推定して注意を促すことで、安全運転をサポート。さらに、あらかじめ登録しておいたドライバーを顔認証で判別し、シートのポジションやドアミラーの角度、ドライバー好みの空調設定などを自動調整してくれる。

ちなみにスバルは、「新型の主力モデルは2.5リッターのガソリンエンジン車」と想定していたようだが、いざフタを開けてみると、実に50%以上の人がe-BOXER仕様を選択。予想を超える人気に「生産が追いつかない」という、スバルにとってはうれしい悲鳴も聞かれる。

■e-BOXERには未来のスバル車の姿が見える

では、新型フォレスターの2.5リッターガソリンエンジン車とe-BOXERとを実際に乗り比べると、何が違うのだろうか?

ガソリンエンジン車は、ダウンサイジングターボエンジンのような、モリモリとトルクがわき出る力強さこそないものの、実用域でのトルクアップと、CVT(リニアトロニック)のレシオカバレージ拡大などにより、スペック以上の力強さと実用域のドライバビリティを備えており、「これなら自然吸気仕様でも十分だね」と感じさせるポテンシャルを秘めている。

ただ、それと引き換えに、水平対向エンジンならでは特性、つまり、回転の滑らかさやレスポンスの良さなどは、新型になって薄れてしまった感がある。また、走行特性を自在に使い分けられるスバル独自のドライブアシストシステム“SI-DRIVE(エスアイ・ドライブ)”も、モードごとの違いがあまり感じられなくなった。

一方e-BOXERは、SI-DRIVEのモードによって、走りの性格が結構変わる。「I(インテリジェント)」モードでは、ホンダのハイブリッド機構“ホンダIMA(インテグレーテッド・モーター・アシスト・システム)”のように、エンジンに対してモーターのアシスト力が自然に上乗せされ、イメージ的に、2.2〜2.3リッターの自然吸気エンジンのようなドライブフィールを得られる。ガソリンエンジン仕様は、水平対向エンジン特有の発進時の応答性の悪さをスロットルの特性によってごまかしているが、e-BOXERはモーターアシストの効果で、スッと自然に動いてくれる。

逆に、SI-DRIVEを「S(スポーツ)」モードに変更すると、電動化されたパワーユニットであることを意識させる、強いアシストに変更。アクセルペダルを踏んだ瞬間からグーッと加速力が立ち上がる力強さは、まさに“電動ターボ”といったイメージで、この領域に限定すれば、従来のガソリンターボ仕様の役割をカバーしているともいえる。

ただし、いずれのモードも、絶対的なモーター出力やバッテリー容量の関係で、モーターアシストが高回転域まで続かないのが残念。また燃費に関しては、同じルートを同じように走らせた場合、2.5リッターのガソリンエンジン車に対して約2割アップのデータを記録するが、燃料タンクがガソリンエンジン車の63Lに対し、e-BOXER仕様は48Lと小さいため、航続距離においては省燃費のうま味を活かせていない。この辺りは次の商品改良において、ぜひガソリンエンジン車と同じ燃料タンク容量に拡大して欲しいところだ。

■STIのコンプリートカーに匹敵する動的質感

フットワークはどうだろうか? ガソリンエンジン車の場合、タイヤのグリップレベルが低いオールシーズンタイヤを履くX-BREAKであっても、違和感のないスッキリとしたステアリングフィール、操作に対する正確なクルマの動き、抜群のロールコントロール、4本のタイヤにしっかりと仕事をさせているのがよく分かる安定した車体の挙動、ドライバーだけでなく同乗者も納得できる優しい乗り心地…といった具合に、SUVであることを決していい訳にしない、上々の走り味を実現。ワインディングロードにおいても「気持ちいい!」、「楽しい!!」と思わせるレベルに達している。さらに、18インチのサマータイヤを履くプレミアムの場合、より精緻な印象のハンドリングフィールと、ドシッとした乗り味に仕上がっている。

e-BOXER仕様も、ガソリンエンジン車と印象は大きく変わらないが、ガソリンエンジン車に対してプラス110kgの重量増と、後方に搭載したバッテリーによる前後重量配分の適正化により、より安心感の高い接地感と、しっとりとしたサスペンションの動き、そして、前後左右方向ともにムダな動きを抑えたハンドリングを実現している。

その動的質感の高さは、スバルのフラッグシップモデルである「レガシィ アウトバック」のそれを超越。さらに、スバル直系の子会社で、モータースポーツ活動も担うSTIが手間ひまを投じて開発したコンプリートカー「Sシリーズ」の領域にさえ達している。

ちなみに、e-BOXERを積むアドバンスは、パワートレーンが異なるのはもちろん、内外装ともにフォレスターのラインナップ中、最もプレステージ性の高い位置づけで、ブラウンのレザーを随所にあしらった上質なインテリアを採用するなど、まさに見た目と走りが伴ったグレードとなっている。

では、ガソリンエンジン車とe-BOXER仕様、どちらがお勧めなのか? 個人的には、ガソリンエンジン車のバランスの良さは認めるものの、従来モデルの延長線上にあるモデルという感がやっぱり否めない。対するe-BOXER仕様は、まだまだ荒削りな部分があるものの、電動化による洗練された走りや、それらに起因する良好な乗り味から、ガソリンエンジン車とはひと味違う“プラスα”を感じさせる。さらに“未来のスバル車の姿”が見えることなどを踏まえると、やはりここは、e-BOXER推しとしたい。

ちなみに、「ハイブリッドだから高いでしょ?」と思われるかもしれないが、e-BOXERを積むアドバンスと、ガソリンエンジン車の最上級グレード、プレミアムとの価格差は7万5600円。アドバンスにはドライバーモニタリングシステムがプラスされることなどを考えると、“ほぼ同じ”と考えていいだろう。

<SPECIFICATIONS>
☆アドバンス
ボディサイズ:L4625×W1815×H1715mm
車重:1640kg
駆動方式:4WD
エンジン:1995cc 水平対向4気筒 DOHC+モーター
トランスミッション:CVT(リニアトロニック)
エンジン最高出力:145馬力/6000回転
エンジン最大トルク:19.2kgf-m/4000回転
モーター最高出力:13.6馬力
モーター最大トルク:6.6kgf-m
価格:309万9600円

<SPECIFICATIONS>
☆プレミアム
ボディサイズ:L4625×W1815×H1715mm
車重:1530kg
駆動方式:4WD
エンジン:2498cc 水平対向4気筒 DOHC
トランスミッション:CVT(リニアトロニック)
最高出力:184馬力/5800回転
最大トルク:24.4kgf-m/4400回転
価格:302万4000円

<SPECIFICATIONS>
☆X-BREAK
ボディサイズ:L4625×W1815×H1730mm
車重:1530kg
駆動方式:4WD
エンジン:2498cc 水平対向4気筒 DOHC
トランスミッション:CVT(リニアトロニック)
最高出力:184馬力/5800回転
最大トルク:24.4kgf-m/4400回転
価格:291万6000円

(文/山本シンヤ 写真/&GP編集部、SUBARU)

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