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【ベンツ S400d試乗】未来は明るい!衝撃の新ディーゼル“OM656”のスゴい性能

&GP / 2019年1月15日 19時0分

【ベンツ S400d試乗】未来は明るい!衝撃の新ディーゼル“OM656”のスゴい性能

【ベンツ S400d試乗】未来は明るい!衝撃の新ディーゼル“OM656”のスゴい性能

メルセデス・ベンツ「Sクラス」の新グレード、「S400d」に搭載されるディーゼルエンジンは、恐ろしいほど衝撃的なものだった。

職業柄、日常的に多くのクルマに触れ、エンジンバリエーションの違いまでカウントすれば、年間100台以上のクルマに試乗している。ニューモデルはいずれも新しさに満ちているため、試乗時に「これは素晴らしいエンジンだ!」と衝撃を受ける機会というのはさほど多くないのだが、S400dのエンジンフィーリングには、ウソも誇張もなしに、後頭部をハンマーで殴られたくらいのショックを受けた。

そのエンジンフィールには、この10年で最も驚いたし、このエンジンを語らずしてイマドキのエンジンは語れないと思った。S400dの新ディーゼルは、そんな気持ちを抱かせるほど新感覚のエンジンだったのだ。

■欧州では、高級車でもディーゼルが当たり前

S400dを解説する前に、まずはSクラスについておさらいしておこう。

メルセデス・ベンツが展開するセダンのラインナップは、ニューカマーかつ最小モデルの「Aクラス」(日本未上陸)を筆頭に、「Cクラス」、「Eクラス」という順でボディサイズが大きくなり、Sクラスはそのラインナップの頂点に位置する。ライバルはBMW「7シリーズ」やアウディ「A8」、レクサス「LS」などだが、Sクラスはそんな強力なライバルをも相手にせず、ダントツの人気を誇る同セグメントのリーダーだ。世界の富裕層に愛用される高級車の代名詞的存在であり、ベーシックグレードでもプライスタグは1000万円オーバー。また、プレミアムブランドであるメルセデス・ベンツの頂点に立つサルーンだけあって、豪華なインテリアと装備が乗員を迎え入れてくれる。

そんなSクラスの新グレード、S400dに搭載されたエンジンは、3リッターのディーゼルターボ。「超高級なハイエンドサルーンにディーゼルエンジン?」と、驚く人もいるかもしれないが、ヨーロッパではこのセグメントにおいても、ディーゼルエンジン搭載モデルが少なくない。低回転域から力強いディーゼルエンジンは、重い車体を加速させるのに都合がいいし、一度の移動距離が長いヨーロッパでは、ディーゼルの優れた燃費性能による航続距離の長さも好まれる。

そのため、プレミアムサルーンのクラスでも、ディーゼルエンジンを選ぶユーザーが多いのだが、ガソリンエンジンと比べてしまうと、やはり、静粛性や振動の面で劣るのは否めない。いいかえれば、上級セグメントのクルマほど、音や振動の小さいディーゼルエンジンが求められているのだ。

■新ディーゼルのレイアウトは直列6気筒

「もちろんメルセデス・ベンツは、今後、パワートレーンの電動化を進めていきますが、ディーゼルエンジンの開発・採用を止める計画はありません」と語るのは、メルセデス・ベンツ日本のスタッフ。それを証明するかのように、Sクラスを始めとする高級車向けに、“OM656”型と呼ばれる新しいディーゼルエンジンを開発してきた。

このエンジンで注目したいのは、直列6気筒レイアウトを採用している点。一度、世の中から絶滅しかけた直列6気筒エンジンだが、メルセデス・ベンツはガソリン車だけでなくディーゼル車においても、この形式を復活させてきた。

OM656型の排気量は3リッター。アルミ製のシリンダーブロックにスチール製のピストンを組み合わせ、そこに2ステージターボチャージャーと可変タービンジオメトリーを採用することで、トルクフルな特性を実現している。

また、メルセデス・ベンツ日本が「最新の排ガス浄化技術を惜しみなく投入している」と胸を張るように、クリーンな排出ガスもOM656型の美点だ。エンジンは機構上、冷えた状態では排出ガス浄化装置を正常に働かせることが難しいのだが、排出ガスを燃焼室内に戻すことで燃焼室の温度を上昇させる“排気側カムトロニック機構(可変バルブタイミング)”や、“マルチウェイEGR”といった新システムの投入で、排出ガスを一段とクリーン化。年々厳しくなる環境基準に対応させている。

■定評あるBMWやマツダのディーゼルも過去のものに!?

そんなOM656型の乗り味は、まさにプレミアムカーにふさわしいものだった。ディーゼルエンジンといえば、「ガラガラという独特のノイズを発し、細かい振動を絶えず乗員に伝えてくる」と思う人が多いかもしれない。しかしS400dでは、ガラガラという不快な音も、クルマの脇に立っている時、路面からの反射音が聞こえてくるくらいだし、車内に乗り込んでしまうと、そうしたノイズや不快な振動は全く感じることができない。それは誇張なしに、ガソリン車と同じ水準であり、知らない人が乗ると、ディーゼルエンジンであることに気づかないレベルに達している。

一方ドライブフィールも、想定外のものだった。ディーゼルエンジンにありがちなザラザラとした感覚は一切なく、回転上昇時のフィーリングは驚異的ななめらかさ。例えば、BMWやマツダのディーゼルエンジンも、ひと昔前のディーゼル車に比べると、フィーリングが繊細で運転するのが楽しいのだが、それらさえ“過去のもの”にしてしまうほど、OM656型はなめらかかつ、繊細に回るのである。

その上、アクセルペダルを踏み込むと、高回転域までスムーズに回転が上昇し、それとともに、グググッという力強い加速を得られる。これまでのディーゼルエンジンは、高回転域まで回すとパワーの落ち込みを感じられるものが多かったが、OM656型はしっかりと高回転域まで吹け上がり、なおかつ、回せば回すほどパワーが付いてくる感覚なのだ。

そのフィーリングは、到底ディーゼル車とは思えないものであり、ガソリン車だといわれたら、何の疑いもなく信じてしまうほど。OM656型は史上初めて、官能性を語れるディーゼルエンジンだと思うし、「ディーゼルエンジンなのにガソリン車としか思えないフィーリング」には、本当にショックを受けた。そして、未来のエンジンはガソリン車とディーゼル車のフィーリングの違いがなくなるのかも…、そんな将来のエンジン像さえも垣間見せてくれた気がした。

■今、Sクラスならエントリーグレード一択

OM656型を搭載するS400dは、Sクラスにおける最もベーシックなグレードだ。車体は全長5155mmの標準ボディと、リアシートの足下スペースを広げ、全長を5255mmへと延長したロングボディとが設定され、駆動方式には後輪駆動と4WDが用意される。ベーシックなエントリーグレードではあるものの、もしSクラスを選ぶのなら、この官能的なディーゼルユニットに乗るためにS400dを積極的に選ぶ価値はある。

ところで、メルセデス・ベンツの本拠があるドイツといえば、2018年以降、自治体の条例による「都市部へのディーゼル車乗り入れ禁止令」が一部で話題を集めている。しかしそれは、すべてのディーゼル車に適用されるものではない。あくまで、環境性能に劣る古いディーゼル車を規制するための条例であり、最新基準“ユーロ6”の適合車であれば、どこでも規制外となっている。乗り入れ禁止という一面だけを見て、ディーゼルエンジンに未来がないと判断するのは誤りだ。むしろ、OM656型のような素晴らしいディーゼルエンジンを味わった今となっては「これからはますます、ディーゼル車の時代が来る!」という気持ちにさえなっている。

<SPECIFICATION>
☆S400d 4マチック
ボディサイズ:L5155×W1915×H1495mm
車重:2150kg
駆動方式:4WD
エンジン:2924cc 直列6気筒 DOHC ディーゼル ターボ
トランスミッション:9AT
最高出力:340馬力/3600〜4400回転
最大トルク:71.4kgf-m/1200〜3200回転
価格:1183万円

(文/工藤貴宏 写真/&GP編集部)

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