【VW パサート オールトラック試乗】SUV全盛の今こそ注目!悪路にも強いクロスオーバーワゴン
&GP / 2019年1月26日 19時0分
【VW パサート オールトラック試乗】SUV全盛の今こそ注目!悪路にも強いクロスオーバーワゴン
VW(フォルクスワーゲン)の「パサート オールトラック」は、いかにも“分かっている人”向けのクルマですね。
流行りのSUVもいいけれど、日常使いには「ちょっと大げさかなぁ」と感じている。実際の使い勝手を重視するけれど“いいモノ感”も大事にしたい。それでいて「イザ!」という時の頼りがいも譲れない…。そんな条件に見事に合致した1台なのです。
かいつまんで紹介すると、パサート オールトラックはVWのトップモデルのワゴンボディ=「パサート ヴァリアント」の車高(最低地上高)を上げ、2リッターのディーゼルターボ(190馬力/40.8kgf-m)とデュアルクラッチ式6速AT=DSGを組み合わせ、“4モーション”こと4WDシステムを搭載したクロスオーバーモデル。価格は、ベースの「TDI 4モーション」が509万9000円。18インチホイールを履き、レザー内装がおごられ、より多くの先進装備を盛り込んだ「TDI 4モーション アドバンス」が569万9000円となります。
■凜々しさを感じさせるソリッドなスタイル
ここまで読んで、「パサートのヨンクが約500万円!?」と興味をそそられたVWファンの方も多いのではないでしょうか? 「しかもディーゼル!!」と。VWに限らず輸入車は、ベーシックなモデルとは異なるボディバリエーションや、基本機能が拡充されたグレードを購入しようとすると、価格がググッと上昇するのが常です。装備ほかが異なるので単純には比較できませんが、それでも、パサート ヴァリアントの上級版「TDI ハイライン」の価格は509万9000円ですから、多少簡素な仕様になるとしても、「4WDが欲しい!」とオールトラックに目を向ける層は一定数いるはずです。
では、もう少し詳しく、パサート オールトラックをチェックしてみましょう。今回の試乗車は、上位グレードのTDI 4モーション アドバンスです。
ボディサイズは、エクステリアに専用バンパー、ホイール(+サイドシル)エクステンションが装着されたため、全長はノーマルのヴァリアントより5mm長い4780mmに、全幅は25mm広い1855mmになっています。車高は、グランドクリアランスを130mmから160mmにアップさせて悪路での走破性を高めたため、20mm高い1535mmに。日本車でいうと、やや短いものの、スバルの「レガシィ アウトバック」やマツダ「アテンザ ワゴン」などと同じような大きさです。
それにしても、パサート オールトラックは、現行の第7世代「ゴルフ」に通じるソリッドなボディスタイルが凛々しいですね。ハコの部分が長いワゴンボディながら、間延びした感がありません。ただし、樹脂製のエクステンションで車体を囲んではいますが、アウトドアテイストは希薄。レジャーに勤しむ優しいパパ向けというよりも、むしろ、足元を選ばぬ仕事人ならぬ、仕事グルマのイメージが強い。個人的に惹かれます。
車内は、見慣れたVW車の世界で、エクステリアの直線基調がここでも踏襲されます。上級グレードならではの、贅沢なナッパレザーシートは、マッサージ機能やシートヒーターに加え、アドバンス仕様の特権としてシートベンチレーションが備わります。蒸し暑い夏にはうれしいですね。
ベースグレードと比較した場合、日常的に「ありがたい」と思う専用装備は、“アクティブ・インフォ・ディスプレイ”でしょうか。メーターナセル内の12.3インチパネル全体にナビゲーションの画面を表示できます。左右の速度・回転計の表示を控えめにして地図を見やすくできるほか、燃費や運転サポート機能など、各種車両情報を確認することも可能です。
ちなみに、センターコンソールに備わる9.2インチのタッチスクリーンは、2グレードとも共通。手のひらをかざして左右に振ることでオーディオなどを操作できる、ジェスチャーコントロールに対応。スマートフォンと接続して各種情報をゲットできるテレマティックス機能も導入されています。
■悪路走破力を高める「オフロード」モードを追加
パサート オールトラックの目玉たる4WDシステムは、“ハルデックスユニット”と呼ばれる電制多板クラッチを用いたもの。路面状況に応じて前後輪へのトルク配分を、前:後=100:0から50:50の間でコントロールします。
好みに合わせ、スロットルの特性や6速DSGのシフトタイミング、パワーステアリングのアシスト量、さらには、ABSの作動などをまとめて選択できる“ドライビングプロファイル”には、「エコ」、「ノーマル」、「スポーツ」の各モードのほか、「オフロード」モードが加わりました。オフロードモードをセレクトすると、滑りやすい路面に素早く対応するため、アクセル操作への反応が敏感になり、また、ABSの設定を変えて一定のホイールロックを許容するようになります。各輪の前方に砂などの堆積物を作り、制動の一助にするのです。
ドライビングプロファイル機能はベースグレードにも備わりますが、アドバンスグレードではドライブモードにコンフォートモードが追加されるほか、4駆システムの電子制御がより高度化されています。具体的には、アダプティブシャシーコントロール“DCC”によって、足周りの硬軟も状況に応じて変化させるのです。
コーナリング時、必要に応じて内輪にブレーキをかけ、曲がるのを手伝う電制デフロック機能“XDS”を備えるのも、アドバンスのみ。滑りやすい雪道で密かに(!?)助けられることの多い機能です。
TDI 4モーション アドバンスを選ぶべきか、60万円お安いTDI 4モーションで十分か。本革内装好き、はたまた「どうしてもサンルーフが欲しい!」(電動パノラマスライディングルーフをオプション選択できるのはアドバンスのみ)という人以外は、4WDシステムの必要頻度によってグレードを決めることになりましょう。
■力強いTDIがストレスフリーの走りをサポート
いうまでもありませんが、ワゴンとしての基本性能は2グレードの間に違いはありません。3分割可倒式のリアシートを活用し、通常の639Lから最大1769Lまで容量を拡大できる使い甲斐のあるラゲッジスペースや、両手がふさがっていてもリアバンパー下方で足をスイングすることでリアゲートを開けられる“イージーオープン”といった便利機能はもちろん、一定の距離をキープして前車を追従するクルーズコントロールや、走行中に死角を監視して車線を変える際の安全性を高める“レーンチェンジアシスト”、他車や歩行者を検知して必要な場合には自動でブレーキをかけて衝突を回避、あるいは被害を軽減させる“プリクラッシュブレーキ”などの基本的な安全・先進機能も、ベーシックグレードに備わっています。
ステアリングホイールを握って走り始めれば、2リッターのTDIエンジンが、力強くパサート オールトラックを運びます。わずか1900回転で4リッターエンジン級の最大トルクを発生する力持ちで、昨今のクリーンディーゼルらしく、ガラガラ音はよく抑えられています。100km/h巡航時は、1750回転付近でユルユル回るだけ。ストレスの少ないロングドライブを楽しめましょう。
注目のTDIユニットは、環境にも配慮され、尿素を使ったAdBlue(アド・ブルー)システムや、捕集フィルターなどでNOxや微粒子をカットするクリーンなコモンレール式ディーゼルエンジン。ターボチャージャーには、可変式のガイドベーン(翼)が採用され、排ガスの強弱に合わせて効率よくエンジンを過給します。“メカの国”たるドイツらしい構成部品ですね。ちなみにカタログ燃費は、17.3km/Lと記載されています(両グレード共通)。
このように、見た目も機能もカッチリ真面目なパサート オールトラック。SUV全盛の今だからこそ目を向けて欲しい、堅実なクロスオーバーモデルです。
<SPECIFICATIONS>
☆TDI 4モーション アドバンス
ボディサイズ:L4780×W1855×H1535mm
車重:1680kg
駆動方式:4WD
エンジン:1968cc 直列4気筒 DOHC ディーゼル ターボ
トランスミッション:6速AT(デュアルクラッチ式)
最高出力:190馬力/3500〜4000回転
最大トルク:40.8kgf-m/1900〜3300回転
価格:569万9000円
(文&写真/ダン・アオキ)
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