【VW ザ・ビートル試乗】間もなくお別れ!工業デザインの傑作は永久に不滅です
&GP / 2019年2月2日 19時0分
【VW ザ・ビートル試乗】間もなくお別れ!工業デザインの傑作は永久に不滅です
「終わっちゃう!」となると、にわかに名残惜しく感じられるのが世の中の常。クルマもその例に漏れません。
先頃ついに、VW(フォルクスワーゲン)「ザ・ビートル」の生産終了が、発表されました。…といっても、そこは引く手あまたの人気モデル。駆け込み需要で混乱が生じないよう、「2019年中に」と、多少の猶予が設けられています。
■花道を飾るのは装備充実の特別仕様「マイスター」
現在、日本で販売されているザ・ビートルは4種類。ベーシックな「ベース」(239万9000円)、カラフルな内装が選べる「デザイン」(278万円)、この2モデルが搭載する1.2リッター4気筒ターボ(110馬力)に代え、排気量を拡大した1.4リッターターボ(150馬力)を積むスポーティな「Rライン」(303万円)、そして、2リッターターボ(211馬力)を積むホットバージョン「2.0Rライン」(354万円)です。
VWでは、ザ・ビートルの生産中止を前に「See You! The Beetle キャンペーン」を実施中で、その第4弾として発表されたのが、「マイスター(Meister)」シリーズ。デザイン、Rライン、2.0Rラインの3グレードに、特別仕様車が用意されます。
具体的には、全車に“バイキセノンヘッドラント(ハイトコントロール付き)”が装備され、オプションの“VW純正ナビゲーションシステム 716SDC”を標準装備。加えて、過去の限定車にも採用された“リアエンブレム内蔵型リアビューカメラ”が与えられます。
「デザイン・マイスター」は、“パドルシフト付きマルチファンクションステリングホイール”や“2ゾーンフルオートエアコン”を装備。17インチホイールが専用デザインとなって価格は303万円。
「Rライン・マイスター」と「2.0Rライン・マイスター」は、黒、もしくは黒/赤のコンビネーションから選択できるレザー内装となり、2.0Rライン・マイスターには“電動パノラマスライディングルーフ(UVカット機能付)”も標準装備されます。価格はそれぞれ348万円と397万円です。
■“庶民の味方”という元祖の精神を継承
今回は別れを惜しんで(!?)、ザ・ビートル・デザイン・マイスターに乗ってみました。オプションの“レザーシートパッケージ”(22万6800円)装着車です。
改めてザ・ビートルを前にすると、その外観、意外と堅実なカタチをしていますね。1998年に登場した、前モデルに当たる「ニュー・ビートル」は、「タイプI」ことオリジナル・ビートルのデザインエッセンスを抽出してポップに仕上げた、一種のファンカーでした。
初めてニュー・ビートルの実車に接した際には、ダッシュボード上面がやたらと広いのにビックリした記憶があります。一方、リアのラゲッジスペースは、申し訳程度でとても狭かったのを覚えています。「やはり、既存のFFハッチバックの車台に、無理やりビートルの上屋を載せたんだなぁ」と、ちょっぴり意地の悪い感想を抱いたものでした。余談ですが、リアゲートを開けて小さな荷室を覗き、「アッ!? エンジンがない!」と驚いてみせるジョークは、若い編集者たちにはまるで理解されませんでした(泣)。
荷室の広さに若干の難があった新世代ビートルですが、VWには実用の鑑たる「ゴルフ」がありますからね。ビートルは、何はともあれ、存在がハッピーならそれでOKなのです。実際、単なる派生車種の枠を超え、よく売れました。
もちろん、クルマ自体の魅力は欠かせませんが、価格がリーズナブルであったことも見逃せません。ご存知のように、復活したビートルは、基幹モデルたるゴルフよりやや古いプラットフォームを用いて、開発・生産コストを抑えていました。ですから、工場に最新鋭の設備をそろえる必要もありません。ニュー・ビートル、ザ・ビートルともに、生産国はメキシコです。
おかげで、普通なら若者の手が届かない価格帯になるはずのスペシャルティモデルを、ナウなヤングの皆さま、そして、ヤング・アット・ハートな方々が楽しむことができたのです。ニュー&ザ・ビートルは、オリジナル・ビートルとカタチが似ていただけでなく、“庶民の味方”という精神も引き継いでいたのですね。
■しばしの別れ!? 次に来るのはe-Beetleか
2011年のモデルチェンジにより、ニュー・ビートルは現行のザ・ビートルになりました。ニュー・ビートルで目についた詰めの甘さが改善され、実用性がグッと上がっています。と同時に、デザインもオリジナルに寄せ、真面目寄りのスタイルに変更されました。この辺りの連動具合は、ちょっと面白いですね。
久しぶりにステアリングホイールを握ったザ・ビートルは、1300kgのボディに、最高出力150馬力、最大トルク17.8kgf-mの1.2リッターターボエンジンですから、まあ、順当な速さ。それでも不足はありませんし、ほどほどの動力性能。また、乗り心地は穏やかで、しっかりしたボディが印象的です。
デザイン・マイスターには特別装備のパドルシフトが備わりますが、Dレンジのままでもデュアルクラッチ式の7速“DSG”が自然にギヤを変えてくれるので、山岳部でもさほどパドルに指が伸びません。ステアリングは、今となってはややダル方向。エキサイティングにドライバーを急かすフィールがない分、かえって飽きが来なくて長く乗れそうです。
マイスターシリーズのリアエンブレム内蔵型リアビューカメラは、後退時に便利なだけでなく、安全確認の一助にもなります。また、リアバンパーにはレーダーセンサーが設けられ、見通しの悪い駐車位置からバックで出る時や、通常の走行中にも、死角に他車が入ってこないかを監視してくれます。必要に応じて警告を発し、後退時には自動ブレーキまで踏んでくれることも。ありがたいですね。
ザ・ビートルになって8年。ニュー・ビートル時代から数えると21年のモデルライフを誇った新世代ビートル。間もなく系譜は途絶えますが、それも「一時的なこと」と信じたいですね。次に来る(であろう)ニューモデルは、「A Beetle」になるのか、はたまた「The Beetles」か、いや、マジレスすると、電気自動車化された「e-Beetle」になるのでしょうか!? いずれにせよ、工業デザインの傑作にして、自動車の、というよりも、「モビリティがもたらす自由」の象徴として、ビートルは、永久に不滅です!
<SPECIFICATIONS>
☆デザイン・マイスター
ボディサイズ:L4285×W1815×H1495mm
車重:1300kg
駆動方式:FF
エンジン:1197cc 直列4気筒 DOHC ターボ
トランスミッション:7速AT(デュアルクラッチ式)
最高出力:105馬力/5000回転
最大トルク:17.8kgf-m/1500~4100回転
価格:303万円
(文&写真/ダン・アオキ)
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