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【ホンダ インサイト試乗】走りが爽快!荷室は広々!!ハイブリッド車らしくないのが3代目の美点

&GP / 2019年2月10日 19時0分

【ホンダ インサイト試乗】走りが爽快!荷室は広々!!ハイブリッド車らしくないのが3代目の美点

【ホンダ インサイト試乗】走りが爽快!荷室は広々!!ハイブリッド車らしくないのが3代目の美点

うるわしいスタイルをたたえた、大人に似合うセダンーー。フルモデルチェンジで3代目となったホンダ「インサイト」を前にして、そんなことを考えた。

実用性や安全性はもちろん大事だが、クルマはやはり第一印象が肝心。実用に割り切ったモデルならともかく、高額車らしく所有する喜びを感じたいなら、この第一印象がひときわ重要になってくる。

■時代にマッチしたホンダらしいハイブリッド車

ところで、ホンダのインサイトほど、世代ごとにポジショニングが大きく変化するクルマは少ない。

1999年にデビューした初代は、世界最高の燃費性能を狙って開発された2ドアクーペ。車体はコンパクトで、軽量化のために各部の素材に軽いアルミを採用(クルマを軽くすると加速時のエネルギーを軽減できるので、燃費が良くなる)。アルミは高コストゆえ、車両価格が200万円少々のクルマに採用するなど一般的には考えられない話だが、ホンダはそれほどまでに、燃費の追求に真剣だったのだ。また初代は、空気抵抗を徹底的に追求。その結果、室内は狭く、リアシートを省いた2シーターレイアウトとなった。とにかく、初代は燃費第一の実験的車両で、いわば、ホンダの燃費向上に向けた挑戦の賜物でもあったのだ。

そんな初代からバトンを受けた2代目は、キャラクターを一新。ボディサイズや室内空間を拡大し、実用性の高い5ドアハッチバックとなり、ファミリーカーとして使えるパッケージングとなった(ボディの素材も一般的なスチールに)。また、エントリーグレードは200万円を切るリーズナブルな価格設定とし、“ハイブリッドの一般化”に尽力。それなりにヒットしたので、インサイトといえばこの世代、という人も少なくないだろう。

そして新しい3代目は、また新たな方向へと舵を切った。ボディ形状は4ドアセダンとなり、サイズも5ナンバーサイズだった2代目からふた回りほど大きくなり、格段に立派なモデルへ。300万円台中盤の価格設定も含め、プレミアムセダンと呼べるポジションへと上級シフトした。

このように、ボディサイズやデザインなどが、3世代それぞれで全く異なるインサイトだが、実はいずれの世代にも共通するアピールポイントがある。それは、「これこそがホンダの最新ハイブリッドだ!」という強烈なメッセージ。インサイトという存在は、カテゴリーや車格を表すものではなく、いわば「ホンダの考える、その時代にマッチしたホンダらしいハイブリッド車の提案」と考えれば分かりやすい。そして、世代によってボディサイズやデザインなどは変わろうとも、ハイブリッド専用車という立ち位置は一切ブレていない。

というわけで、フルモデルチェンジで3代目となった新型インサイトは、上級セダンという新たなポジションへとシフトした。ボディサイズは、全長4675mm×全幅1820mm×全高1410mmと大きくなり、冒頭に書いたとおり、魅力的な流麗フォルムをまとっている。ホンダは、ハイブリッドセダンとしてコンパクトな「グレイス」もラインナップしているが、ミニマム志向のグレイスに対し、インサイトは伸びやかで優雅なクルマという印象を受ける。

そんな3代目インサイトは、プラットフォームを始めとする車体骨格を「シビック」のセダンと共用する。いわば“シビックのハイブリッド仕様”ともいえる構成なのだが、前後のボディパネルなどを専用設計としているため、全く別のクルマに見えるし、シビックより落ち着きある美しいデザインは、インサイトの大きな魅力になっている。

インテリアも、インパネ回りやシートなど、乗員が触れる部分はインサイト専用のデザインになっており、シビックより上質な空間に仕立てられている。

つまり、かつての「アコード」のように、ちょっと上級のサルーンというのが、新世代インサイトのキャラクターなのだ。

■複雑なi-MMDの恩恵で全領域において爽快&高効率な走り

さて、そんな3代目インサイトの一番の特徴は、「ハイブリッドカーらしくないこと」だ。ハイブリッドカー専用車なのにハイブリッドカーらしくない、とは、矛盾しているように思われるもしれないが、決して虚言などではない。

その一例が、実用性。ハイブリッドカーの多くは、バッテリーを搭載する必要があるため、その分、ラゲッジスペースが犠牲になっているモデルが多い。非ハイブリッド車に比べ、奥行きが短かったり、荷室床下のサブトランクが狭かったりするのだ。

ところが新型インサイトには、そういったハイブリッドのネガが見当たらない。ラゲッジスペースの広さはシビックのセダンと同じで、トランクリッドを開けた瞬間、「えっ!?」と驚きを隠せないほどの容量を確保。しかも、リアシートの背もたれを倒せば、自転車だって積める。「ハイブリッドだから」という言い訳は、全く存在しないのだ。

それは、走りについても同様だ。ハイブリッドカーの走行フィールに対し「爽快感がない」と感じている人がかなりいるが、新型インサイトでそのように感じる人は、恐らくいないのではないだろうか。アクセル操作に対し、リニアで伸びのある加速を得られるため、運転していてとても気持ちがいいのである。

その要因は、パワートレーンにある。“スポーツ・ハイブリッド i-MMD(インテリジェント・マルチ・モード・ドライブ)”と呼ばれるインサイトのハイブリッド機構は、低中速域においてはエンジンを発電機として使い、駆動力をモーターで生み出す仕掛け。日産自動車自慢のハイブリッド機構“e-power(イー・パワー)”が、気持ちいい加速フィールを味わえると巷で高評価を得ているが、一般道においては、i-MMDも同様の仕組みを採っているのである。

そのため、例えば、走行モードをダイレクト感の強い「スポーツ」にすると、アクセルペダルを踏み込む量に対し、速度が高まる感覚がシャープになるため、ドライブ好きのドライバーにも歓迎される味つけだと思う。

ただし速度が高まると、モーターよりエンジンを駆動力とする方が高効率なため、i-MMDはエンジンの動力を直接、駆動力として使うように切り替える。この複雑な仕組みこそが、モーター駆動一択というe-powerとの最大の違いであり、また、エンジンで駆動する領域においても、気持ちのいい走行フィールが継続する。この辺りは、長年、心地良いエンジンフィールで高評価を得てきたホンダの面目躍如といったところだろう。

ところで、「ステップワゴン」や「CR-V」、アコードなどに搭載されるi-MMDは、2リッターエンジンとの組み合わせのため、もしかすると、1.5リッターエンジンとの組み合わせとなるインサイトに対し、パワー不足などを心配する人がいるかもしれない(同システムに1.5リッターエンジンを組み合わせているのは、プラグインハイブリッドカーの「クラリティPHEV」のみ)。しかし、モーターからわき出す太いトルクのおかげで、新型インサイトは十分以上の加速性能を披露。排気量が小さいからといって、心配は無用だ。

今という時代に、“あえて”ハイブリッド専用車=インサイトを訴求するならば、どのようなモデルがふさわしいのか? そんな自らへの問いに対するホンダの回答は、所有する喜びを感じられる上級セダン、だった。326万1600円〜と、絶対価格は決して安くはないが、カーナビゲーションや先進安全装備は、全グレードに標準。さらにその上、先進的なハイブリッドシステムが搭載されていることなどを考えれば、新型インサイトは決して高い買い物ではないと思う。

<SPECIFICATIONS>
☆EX
ボディサイズ:L4675×W1820×H1410mm
車重:1390kg
駆動方式:FF
エンジン:1496cc 直列4気筒 DOHC+モーター
トランスミッション:電気式無段変速機
エンジン最高出力:109馬力/6000回転
エンジン最大トルク:13.7kgf-m/5000回転
モーター最高出力:131馬力/4000〜8000回転
モーター最大トルク:27.2kgf-m/0〜3000回転
価格:349万9200円

(文/工藤貴宏 写真/&GP編集部)

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