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世界唯一のスターバックス自社農園で知ったコーヒーが直面する課題[コスタリカコーヒーツアー前編]

&GP / 2019年2月22日 22時0分

世界唯一のスターバックス自社農園で知ったコーヒーが直面する課題[コスタリカコーヒーツアー前編]

世界唯一のスターバックス自社農園で知ったコーヒーが直面する課題[コスタリカコーヒーツアー前編]

日本の店舗数1400店以上。世界では3万近い店舗数となるスターバックス コーヒー。海外旅行時にお世話になったという人も多いのでは。ひょんなことから、そのスターバックスが自社で運営するコーヒー農園があると聞いたのは昨年秋のこと。

毎朝、目覚めにコーヒー豆をひき、ハンドドリップしているひとりのコーヒー好きとしては、これは気になる! ということで、軽~い気持ちでスターバックス コーヒー ジャパンの広報さんに聞いてみたんです。

「あの~、スターバックスの自社農園があるって聞いたんですが、それって取材できるんでしょうか?」

そう、この一言がきっかけで、まさか24時間移動して、3日間がっつりコーヒー三昧な体験ができるとは思ってもいませんでした。そしていま、コーヒー好きにとって由々しき事態が起こっていることも、おそらく知らなかったかもしれません。

■コスタリカは遠かった…

取材できないですかと軽~く聞いてから約1ヶ月後の2018年11月。スターバックス広報さんから一本の電話が。

「1月末に自社農園のハシエンダ アルサシアを北米のパートナー(スターバックスでは従業員のことをこう呼ぶそう)が見学するツアーがあるんですが、それに日本からも何人か参加できそうなんです。もしよろしければいかがですか?」

なんと! そりゃまたとないチャンス!

「ホントですか! ぜひぜひ!」

…そしてあっという間にやってきた1月下旬。

ふたつ返事で行きますと言ってから知った目的地、中米コスタリカに向けて成田空港を出発しました。

途中メキシコシティでの長ーいトランジットを経て、ほぼ丸1日。コスタリカの首都サンホセの空港に降り立ちました。

うん、遠い…。

深夜0時過ぎの到着で、気温は15℃前後。寒い1月の日本からやってきた身としては、過ごしやすい。コスタリカには乾季と雨季があり、1月2月は乾季らしく、乾いた風が心地良い。

この日は空港近くのホテルに直行して、すぐに就寝。

 

■こんなところにもスターバックス コーヒーが!

翌日も晴れ。というかピーカン! 半袖で十分な天気です。さっそくバスに乗りこみ、移動すること約40分。山道の途中に目指す目的地“ハシエンダ アルサシア”はありました。

おぉここが世界唯一のスターバックス自社農園! 見慣れたロゴを発見!

さっそく、現地のパートナーによるコーヒーでのお出迎え。もちろん使う豆はここで採れたもの。

実はこのハシエンダ アルサシア、ただコーヒー農園があるだけではないんです。入ってすぐのところにはスターバックス コーヒーのストアがあり、そしてビジターセンターも整備されています。そう、誰でも予約すれば訪れることのできる施設なんです。

▲ハシエンダ アルサシア ビジターセンター。開放的な空間だ

▲ビジターセンターのパートナーがお出迎え

▲ビジターセンター

到着するとまずは、ビジターセンターでのコーヒーツアーから始まりました。実は今回のこのツアー、“ORIGIN EXPERIENCE”と名付けられています。コーヒーがどう栽培され、どう加工されて、世界中の人に届いているのかを体験して知ることが目的です。ツアーでは、他の農園にも行ったのですが、一般の人でも実際にコーヒーに触れることができます。

誰もが身をもってコーヒー体験できるのが、ビジターセンターでのコーヒーツアーです。

▲最初に植物としてのコーヒーの基礎知識から

▲そして苗植えから体験スタート

▲その横には成長したコーヒーの木が

▲実際にコーヒーチェリー(コーヒーの実)の収穫もできる

▲採ったコーヒーチェリーを隣の加工場へ

▲上から下へとコーヒーチェリーが流れていく中で加工されていく

▲水で洗われるコーヒーチェリー。ここで使われている水はすべて再利用されている

▲最後には種だけの状態に

▲種は天日で乾かす。定期的にひっくり返して、まんべんなく乾燥させる

▲乾いてくると、パーチメントという米でいうもみ殻の状態になる。これをとって生豆焙煎することで、いわゆるコーヒー豆となる

▲出荷状態の生豆。乾燥されたものを麻袋に入れ出荷される

種から焙煎前の生豆状態までというコーヒー豆が作られる一連の過程を、実際に体験しながら理解できるようになっているビジターセンター。そしてその後ろには、広大なコーヒー農園が広がっています。

▲ここが研究開発の場となるコーヒー農園

でもなぜスターバックスは、このような自社農園を持つことにしたのでしょうか。

 

■コーヒーの2050年問題

ハシエンダ アルサシアの責任者であるビクターさんは、その目的を「コーヒー産業を支援するため」と話してくれました。

▲Victor Trejosさん。ハシエンダ・アルサシアのマネージャーでパートナーのひとり。「コーヒーのテーマパークができたのかと思ったよ(笑)」と開設された当時のことを話してくれた

世界でいまコーヒーを作っている農家の97%が小規模農家だそう。もちろんコスタリカも例に漏れず小規模なコーヒー農家が多い。ちなみにコスタリカのコーヒー農園の平均農地面積はわずか3~5ヘクタール。ハシエンダ・アルサシアでは、そのような小規模農家を支援する活動をしているといいます。

「以前のコスタリカでのコーヒー収穫量は、1ヘクタールあたり20ファネガ(コスタリカでは重さではなく容量でコーヒーの収穫量を計ります)でした。今はようやく平均38ファネガになりました。これを60まで引き上げたい。そのための研究や開発を行っています」

▲1ファネガはこの容器ふたつ分

「私はアグロノミスト(農学者)であると同時にコーヒー農家出身でもあります。地元コスタリカのコーヒー農家の状況を、そして生活をなんとかしたい。そのためにはお手本が必要です。だから、ここで研究した結果は、そのまま近隣の農家に提供しているんです」

1本の木から少しでも多くのコーヒーチェリーが採れれば、小規模な農家でも収入は上がる。そうすることで、生活も豊かになり、コーヒー農家を続けられるというわけです。

▲研究開発の拠点となる農園部分は広大だ。元々はスターバックスにもコーヒー豆を卸している農場だったが、オーナーの事情により廃業。そこを買い取り、自社農園にした

▲農園では数多くの品種を栽培。病気に強い品種や収穫量の多い品種を掛け合わせるといった研究などが行われている

ところでコーヒーの2050年問題って聞いたことありますか? 実は恥ずかしながら、この問題ついてはハシエンダ アルサシアに行くまで知りませんでした。いま地球は温暖化が進んでいます。このまま続くと、2050年にはアラビカ種(コーヒー豆生産の6割弱を占めている品種)の生産量が、いまの50%にまで落ち込むと言われています。これが2050年問題です。

温暖化によって引き起こされる品質の低下、そして“さび病”といった病害による収穫量の低下、これらによって経済的に厳しくなったコーヒー農家は廃業してしまう。このような世界中のコーヒー生産地で起こっている問題を乗り越えるべく日々コーヒーを研究しているのがハシエンダ アルサシアなんです。

▲コーヒーが飲めなくなるのは困る…

この問題は、当然ながらスターバックスだけの問題ではなく、世界中のコーヒー農家、そしてその先にいるコーヒー好きたちにとっても大問題。

その問題を乗り越えるためにビクターさんたちは、気候変動に強い品種、病害に強い品種を作るべく、ハシエンダ アルサシアで研究を続けています。

「ここで開発した品種や栽培方法などはすべて無償で提供しています。そのことを多くの人に知ってほしいのです」

▲ハシエンダ アルサシアのビジターセンターは、予約をすれば誰でも訪れることができる

そして、これらの取り組みには、“C.A.F.E. プラクティス”という認証基準がベースにあるといいます。この認証基準とはいったいなんなのか。これによりコーヒーはどうなるのか。そしてスターバックスにとって“C.A.F.E. プラクティス”とはなんなのか。それは翌日、2日目に訪れた小規模コーヒー農家で聞いた話から見えてきたんです。

>> コスタリカコーヒーツアー後編

 

>> スターバックス コーヒー

>> ハシエンダ アルサシア(英語)

(取材・文/&GP編集部 円道秀和 写真/田口陽介)

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