【検証・未来のクルマ】2020年までに一般道での自動運転を実現へ!日産が考える近未来のクルマとは?
&GP / 2015年12月2日 21時0分
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【検証・未来のクルマ】2020年までに一般道での自動運転を実現へ!日産が考える近未来のクルマとは?
「2020年の東京では、きっと自動運転車が走り回っています!」
5年後に東京オリンピックをひかえたニッポンでは、安倍晋三総理大臣の力の入ったアピールを背景に、自動運転技術の実用化がにわかに脚光を浴びています。
そんな中、自動運転への取り組みがとりわけ熱心に見えるのが日産自動車。社長兼CEOのカルロス・ゴーンさんは「2020年までに革新的な自動運転技術を複数車種に搭載予定」と語っています。期待できそうですね!
日産の場合、EV(電気自動車)が構想の中心にドン! と置かれているのが特徴。先の東京モーターショーには、未来のEVたる「IDSコンセプト」が展示されました。より現実的なモデルとしては、「リーフ」をベースにした実験車があります。ここでは、日産の考える自動運転と近未来のクルマの在り方について紹介します。
■自動運転車に肝心なのは、ドライバーの好みの学習
いきなり私事で恐縮ですが、徹夜仕事となって寝不足の時にも、取材すべき新車の発表会や試乗会は、容赦なく開催されます。東京から試乗会場のメッカである箱根や千葉方面へと向かう。せめて高速道路の間だけでも、運転をクルマに任せて自分は眠って行きたい…。事情や状況は異なれど、同じような思いを持つ方、多いのではないでしょうか?
IDSコンセプトは“PD(パイロットドライブ)”モードと称する自動運転で、私(そして皆さん)のそうした要望に応えてくれます。ドライバーがPDモードを起動させると、ステアリングホイールやペダル類はインパネの奥に引っ込み、代わりに大きなディスプレイが登場します。また、前席の乗員が互いにおしゃべりしやすいよう、左右のフロントシートをハの字型に近づけることも可能です。
IDSコンセプトは、複数のレーダー、レーザー、そしてカメラと、各種デバイスを駆使して周囲の状況を判断し、自動運転を実現するのです。すでに、速度が変化する前走車への自動追従や、車線逸脱を防ぐためにステアリングを自動で操るシステムが実用化していますから、高速道路での自動運転は「ある程度、目処が立っている」といっていいのかもしれません。
面白いのが、自動運転に関する日産の考え方。PDモードには、ドライバーの好み、ステアリングの切り方やアクセル操作、ブレーキを踏むタイミングなどを事前に学習させ、反映させておかなければいけない、と考えているのです。
自動運転といえども「ベルトコンベアのようにA地点からB地点まで移動する」だけではダメ。(本来の)ドライバーは、自分でステアリングホイールを握っていないので、なおさら“普段どおりの運転”でクルマが走っていないと、リラックスできない、というわけです。なるほど!
クルマしか走っていない高速道路(自動車専用道路)よりさらに難しいのが、市街地など一般道での自動運転です。ドライバーが熟睡している場合(!?)、信号のない交差点では、例えばクルマが歩行者に向けて「お先にどうぞ」とディスプレイに表示させ、交通秩序を守る必要があります。
人の動きは、法律やルールはもとより、習慣や環境に支配される部分も大きいですから、「行動学」をはじめとした基礎的な研究の蓄積が求められます。“自動運転”車が安全、確実にドライブする技術的なハードルに加え、ソフトウェア面での開発も難しそうです。人の行動ほど、なかなか予想できないものはないですからね。
一見、夢物語のようなIDSコンセプトですが、近未来に向けた技術がしっかり反映されています。自動運転の話題から少し逸れますが、EVの近未来についても説明しましょう。
まずはスタイリング。EVの効率を追求していくと、従来のクルマ以上にエアロダイナミクスが重要になります。東京モーターショーのステージ上では分かりにくかったのですが、IDSコンセプトの全高は、わずか1380mm。タイヤ幅は175と細め。もちろんそれらは、空気抵抗を減らすためです。さらに、ホイールはフィンの役目も果たします。ホイール表面に気流の渦を生じさせることで、空気をスムーズに流してやるのだとか。
電気自動車は、内燃機関のクルマと比較すると、バッテリーやモーター搭載位置の自由度が高いんです。そのおかげで、空力を意識したデザインを採りやすい。また、熱による無駄、エンジンやトランスミッションなどの機械的な抵抗が格段に小さいため、相対的に、エアロダイナミクスの重要度が増すのです。
日産では、従来のように前方から風を当てて測定するのに加え、実環境に近い、斜め前方からの風にも対応すべくデザインを進めているそうです。
PHEV(プラグインハイブリッド)やEVの普及が本格化すると、これまで以上に空力デザインの競争が激化するはずです。“路上のF1マシン”さながらの熾烈な競争が展開されるでしょう。
さて、EVと切っても切れないパーツが、バッテリーです。IDSコンセプトは60kWhという大容量のバッテリーを搭載しています。リーフの約2倍の容量ですね。
「これでは充電が大変では!?」と考えがちですが、さにあらず。携帯電話や電動アシスト付き自転車のバッテリー充電で「8割程度までは急速に充電される」ことを、経験的に知っている人も多いでしょう。
EVも同様で、同じ時間なら60kWhの大容量バッテリーの方が、むしろ充電量は多くなる。同程度の充電量なら、短い時間で済む。ちょっと“コロンブスの卵”的なハナシなんですね。EVとして成立させるため、“重量”や“コスト”との兼ね合いはありますが、バッテリーをたくさん積んだ方が充電面では有利になるんです。
バッテリーそのものの高密度化、長寿命化の研究も意欲的に進められていますが、さらに革新的な研究も!
それは、非接触型の充電方法。日産では従来の3kWから、現在、7kWでの充電実用化を目指していて、将来的には20kWクラスも視野に入れているそう。電気のパワーが強くなれば、充電器とクルマの距離を離せる。充電器とEVの位置が多少ズレていても充電できる。近未来では、高速道路の左レーンは充電レーンになっていて、EVはバッテリーをチャージしながら走行する…。そんなことが行えるようになるかもしれません。
日産は、自社の自動運転のコンセプトを“ニッサン・インテリジェント・ドライビング”と名づけ、具現させる技術を順次投入する、としています。
その第一歩が「リーフ」をベースにした実験車両。ボディには、周囲を認識する各種デバイスを複合的に装備しています。比較的遠方をサーチするミリ波レーダー、クルマの進む方向を決める8台のカメラ、そして、3次元計測が可能な高精度レーザーが、周囲の物体を正確に把握します。
この実験車は、まずはナビゲーションシステムで設定したルートガイドに従って、一般道を自動運転するのが目標です。すでに神奈川県での公道実験が始まっていますから、今後の進化が楽しみです。
日産は、2016年末までに高速道路での自動運転を実現させ。2018年には高速道路で車線変更を可能に。そして2020年までには、市街地を含む一般道での自動運転技術を導入する計画だといいます。
退屈な高速道路や渋滞時は運転席で寝て行ける…。そんな時代がやってくるのでしょうか? ぜひとも実現していただきたい!
(文&写真/ダン・アオキ)
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