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【雪上試乗】圧巻の走破力に快適性をプラス!北の大地で感じた最新ジープの進化と真価

&GP / 2019年2月25日 19時0分

【雪上試乗】圧巻の走破力に快適性をプラス!北の大地で感じた最新ジープの進化と真価

【雪上試乗】圧巻の走破力に快適性をプラス!北の大地で感じた最新ジープの進化と真価

アメリカのジープは、世界で最も有名なオフローダーのブランドです。

現在ジープはFCA(フィアット・クライスラー・オートモービルズ)グループの一員で、多くのSUVをラインナップしています。そしてどのモデルも、ベスト・イン・クラスの悪路走破性を標榜しています。そのイメージを牽引するのは、なんといっても1940年代に米軍の要請によって開発された軍用車を起源に持つ「ラングラー」でしょう。

(左から)ラングラー アンリミテッド サハラ ローンチエディション/ラングラー スポーツ/ラングラー アンリミテッド ルビコン

ラングラーの丸目2灯のヘッドランプの間に7つのスリットが開いたアイコニックなフロントマスクと四角いシルエットは、軍用車時代から現行モデルまで変わっていません(正確にいうと、最初期のジープはスリットの数がもっと多く、また一時期、角目ライトを採用した時期もありました。しかし市場はそれを許さず、程なくしれっと丸目に戻りました!)。

この冬、そんなジープの各モデルで、北海道の雪上特設コースを走行する機会を得ました。スタッドレスタイヤを装着したジープの走破性は圧巻で、特に2018年にモデルチェンジしたラングラーや、その4ドア版の「ラングラーアンリミテッド」については、やはり“餅は餅屋”だと思わされました。

■使用用途に合わせて4WDメカを使い分け

“餅屋の走り”を報告する前に、ジープが多数とりそろえる4WDシステムについて紹介させてください。

システムは大きく分けて3つあります。まず「コンパス」、「レネゲード」、「チェロキー」といったエンジンを横置きに搭載するモデルには、オンデマンド式の“アクティブドライブⅡ”が採用されています。

コンパス

チェロキー

通常は前輪駆動で走行し、前輪のスリップを検知すると後輪にもトルクが伝わって4WDとなるタイプで、世の中の多くのSUVがこのシステムを採用しています。比較的安価で4WD化できる半面、常時4WDで走行するシステムに比べると、厳しい条件下での走破性は一歩劣ります。

アクティブドライブⅡ

フラッグシップSUVである「グランドチェロキー」には“クォドラトラックⅡ”が使われています。

グランドチェロキー

これは伝統的なセンターデフ式の4WD機構で、50:50とか40:60などと、あらかじめ定められた前後トルク配分の4WDで走行します。その配分が固定のタイプもあれば、クォドラトラックⅡのように必要に応じて配分を変更できるタイプもあります。そして、副変速機によってローギヤを選ぶこともできます。エンジンを縦置きに搭載するランドローバーの各モデルや、メルセデス・ベンツ「Gクラス」などもこの方式を採用しています。

クォドラトラックⅡ

そして、新型ラングラーが採用するのは“セレクトラックフルタイム4×4システム”。ジープが誇る最強の4WDシステムです。いうなればパートタイム式4WDとフルタイム式4WDとを組み合わせた“4WD全部載せ状態”。このシステムで走破できない道は、もはやクルマでは走破できない道です。

ラングラー

従来のラングラーは、後輪駆動か4WDかをドライバーが選択する、パートタイム式の“コマンドトラック”という4WDシステムを採用していました。シンプルで耐久性があり、修理もしやすいという長所を持つ代わりに、センターデフが備わらないので、ドライ路面でステアリングを切ると前後の車輪に回転差が生じ、タイヤがよじれて変な動きをする“タイトコーナーブレーキング現象”が発生するという短所もありました。

その点、新型にはセンターデフが備わり、4WDにしてドライ路面でステアリングを切っても、スムーズに走行することができます。ドライバーが路面に応じて後輪駆動か4WDをいちいち選ばなくても常時4WDで走行できるようになりました。

セレクトラックフルタイム4×4システム

もちろん、副変速機によってローギヤを選ぶことも可能。かつてパリ・ダカールラリーで活躍した三菱「パジェロ」も、同種のシステムを採用しています。グランドチェロキーのクォドラトラックⅡに近づいたともいえますが、用いられるトランスファーなどの耐久性などが異なります。

■走破性を最優先したラングラーのメカニズム

そんなセレクトラックフルタイム4×4システムを搭載したラングラーでコースイン。まずは登坂路。走行が繰り返され、路面がところどころツルツルになっています。速度を上げて駆け抜けるだけならそこら辺の4WDでも可能ですが、ラングラーがすごいのは、ここをゆっくりと登ることができる点にあります。先がどうなっているか分からないことも多いオフロードで、ゆっくり走らせることができるのは、それ自体が性能なのです。

「4WDオートモード(センターデフオープン)」でも走行できますが、「4WDロック(センターデフロック)」ならより安定して走行できました。このツルツル路面では、さすがに途中で停止すると再び発進することはできませんでしたが、それは坂の角度が急過ぎたのではなく、タイヤのグリップ力の限界です。同じ角度の未舗装路であれば、それが可能だったでしょう。

続いてモーグル路。左右輪が互い違いに盛り上がりを乗り越えるようなコースです。ここでは、ラングラーの前後“リジッドアクスル”が役に立ちます。リジッドアクスルとは、左右輪が1本の車軸でつながっていることを意味します。これだと、例えば右車輪が山を乗り越える際に縮むと、左車輪は反対に伸びます。このため、左右両方の足つき性というか接地性が高いのです。

これに対して独立懸架だと、右車輪が縮んでも左車輪に影響を与えないので、車体底部を擦ってしまう恐れがあるのです。リジッドアクスルは悪路走破には有利で、多くのクルマ、とりわけ4WDのSUVに採用されてきましたが、良路での乗り心地には不利なので、最近では採用例が減りました。現行モデルでは、ラングラーを除けばスズキの「ジムニー」くらいでしょうか。この2台がいかに悪路走破性を優先しているかが分かります。

そして、雪上特設コースを後にし、ラングラーアンリミテッドで圧雪された一般道を走ります。当然ながら、何事もなく走行できます。

リジッドアクスルは乗り心地に不利と書いたばかりで恐縮ですが、不利な機構を堅牢なシャーシやよく煮詰められたショックアブソーバーのセッティングなどでカバーしているせいか、乗り心地は良好とまではいいませんが、悪くもありません。このクルマが得意とすることを理解すれば、十分に許容できる範囲だと思います。

■基本性能の高さこそジープのDNA

ところで、4WDというのは、どのようなシステムを採用しても、路面の凹凸によっていずれかの車輪が浮いてしまったり、凍った部分に乗っかったりしてグリップを失うと、トルクがすべてその車輪に逃げてしまい、その車輪が空転するばかりで走行できなくなる恐れがあります。ジープを始めとする現代の4WD車は、電子制御の横滑り防止装置を利用し、空転する車輪にのみブレーキをかけ、接地している(グリップしている)車輪にトルクを伝えることで、走行不能に陥るのを回避しています。

ただジープの場合、どのモデルもロードクリアランス(最低地上高)がしっかり確保されているほか、“ホイールアーティキュレーション(各車輪が上下にストロークする量)”が豊富なので、少々の凹凸がある区間を走行しても車輪が浮きにくくなっています。すぐに電子制御のお世話になろうというのではなく、できるだけ基本性能の高さでカバーしようというのが、ジープの基本理念なのです。

どんなに高価な部品を使ったとしても、電子制御には故障のリスクがありますが、基本性能の高さは故障しようがありません。へき地での故障は乗員の生死を分ける可能性もありますから、少しでも故障のリスクを減らそうという理念です。あるいは、長年厳しい場面で使われてきたジープのDNAといえるかもしれません。

最近では、4WD車を手掛けるメーカーはたくさんあります。オン/オフを問わず快適な乗り心地を保ち、パワーも十分で、楽しさ、心地良さを与えてくれるモデルも少なくありません。一方で、道なき道を走破でき、頼もしさを感じさせてくれるモデルもたくさんあります。ただ、両方を1台で兼ね備えるクルマはそうそうありません。ラングラー始めジープの各モデルは、その意味で貴重です。

<SPECIFICATIONS>
☆スポーツ
ボディサイズ:L4320×W1895×H1825mm
車重:1830kg
駆動方式:4WD
エンジン:3604cc V型6気筒 DOHC
トランスミッション:8速AT
最高出力:284馬力/6400回転
最大トルク:35.4kgf-m/4100回転
価格:459万円〜

<SPECIFICATIONS>
☆アンリミテッド ルビコン(参考値)
ボディサイズ:L4785×W1875×H1868mm
車重:2021kg
駆動方式:4WD
エンジン:3604cc V型6気筒 DOHC
トランスミッション:8速AT
最高出力:284馬力/6400回転
最大トルク:35.4kgf-m/4100回転
価格:未定(2019年春上陸予定)

(文/塩見 智 写真/&GP編集部、FCAジャパン)

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