【ヤマハ SR400試乗】不死鳥のように再復活!スタイルそのまま、排ガス性能の進化で現代にアジャスト
&GP / 2019年3月17日 19時0分
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【ヤマハ SR400試乗】不死鳥のように再復活!スタイルそのまま、排ガス性能の進化で現代にアジャスト
“変わらない”ためには、変えなければいけない…。これは、マツダ「ロードスター」の開発陣の皆さんからよくお聞きしたフレーズですが、そのことは、4輪も2輪も違いがないようです。
“変えない”ために変わってきたバイクの代表例が、ヤマハの「SR400」。現在、販売されている現行モデルを前にしても、“にわかライダー”の自分などは「全然、昔のママじゃね!?」などと思ってしまいます。世のバイク乗りにそう感じさせるため、エンジニアの方々はずいぶん苦労されていることでしょう。
■二度目の復活を果たしたヤマハの看板モデル
いうまでもありませんが、SR400は1978年に初代が発売された、ヤマハを代表する長寿モデル。丸いヘッドランプにシンプルなデザイン。その端正なフォルムに「これぞバイク!」と感じる日本人も多いはず。昨今、東南アジア向けのくどい(…失礼)、アグレッシブなルックスのモデルが増える中、SRのオーセンティックな姿は、美しいメッキパーツともども、ますます輝きを増しているようです。
細かくフィンが切られた単気筒エンジンもSRの魅力のひとつですが、今という時代に、399ccの“空冷”ユニットを存続させる大変さは、想像に難くありません。旧日本軍の戦闘機や懐かしいフォルクスワーゲンのオリジナル「ビートル」を引っ張り出すまでもなく(!?)、空冷エンジンはシンプルで打たれ強いのが特徴。一方で、温度や燃焼状態の管理が難しいため、排ガス規制が厳しくなると、なかなか対応できない。2008年を境に、SR400を始め、空冷エンジンや燃費が厳しいマルチシリンダー(4気筒)搭載モデルが一斉に姿を消したのは、その2年前に施行された排ガス規制の猶予期間が終了したからでした。
ところが2009年末、SR400は復活します! 空冷シングルの燃料供給デバイスを、キャブレターからフューエルインジェクションに変更しての再デビュー。シリンダーへの燃料噴射を細かくコントロールすることで燃焼を効率化し、また、新形状のマフラーに触媒とO2センサーを組み込んで排ガスのクリーン化を押し進めました。燃料を高圧で噴射するためのフューエルポンプを左のサイドカバー裏に押し込むことで、ルックスをほとんど変えることなく、エンジンのアップデートに成功しています。
そして2017年、いわゆる“ユーロ4”(二輪車平成28年排ガス規制)に対応するため一時的にカタログ落ちしたSR400は、デビュー40周年を迎えた2018年、環境性能をさらに引き上げて、またまた復活!! 今回は、燃料噴射をより精緻に制御するため、新しいECUを採用。また、排気系を改良し、チャコールキャニスターを追加して、気化したガソリンの大気放出を抑えています。
見た目を“変えない”ために、大型になったECUはシートの裏側を削ることでシート下に収め、どうしても外に吊る必要があったキャニスターは、形状や配置を工夫してフレームに沿わせ、できるだけ目立たないようにしています。ホース類の取り回しに、エンジニアの方々の苦労がしのばれます。
■まずはキックペダルでの“儀式”から
そんなSR400ですから、“変わらない”部分を存分に楽しむのが、ユーザーとして正しい姿勢ではないでしょうか。まずは“儀式”と称されることもある、キックペダルによるエンジンスタート。
よく知られているように、クラシカルな外観を持つSR400は、一般的なバイクがエンジン始動に使うセルモーターを装備しません。代わりに、人の足でキックペダルを踏んでクランクを回すのです。
バイクは、エンジンを切ると大抵は、一番抵抗が大きい圧縮行程でピストンが止まります。その状態でクランクを回すのは大変ですから(チカラ技で回す人もいますが)、クラッチレバーの下に設けられた“デコンプレバー”を握って、エンジンのバルブを少し持ち上げてやります。すると、シリンダー内の圧縮を抜きながらキックペダルを踏める、つまりクランクを回せるので、一番抵抗が大きい部分をラクに越えられます。慣れないうちは、右ヒザ下辺りの“キック・インジケーター”の小窓に、銀色の目印が出るのを確認。キーをオン、ギヤをニュートラルにしてキックペダルを勢いよく踏むと、エンジンがかかる、はずです。
一度エンジンがかかってしまえば、もうこっちのもの! 399ccのシングルカム単気筒エンジンは、24馬力/6500回転の最高出力と、3000回転で2.9kgf-mの最大トルクを発生。低回転域で厚いトルクを得られるので、エンストの心配はいりません。
シート高は790mm。身長165cm(短足)の自分でも、不安なくまたがれます。前後にフラットなシート形状と、よく考えられたハンドル位置のおかげで、すぐに自然なポジションをとれるのがありがたい。
SR400は、重心が低くて走りは安定しているし、ハンドリングもナチュラルなので、街中でも気楽に乗れる。Uターンも躊躇なくできます。
■4000回転を超えると望外にカッ飛んでいく
それでいて、いざ単気筒にムチを入れると、SR400はにわかにスポーツバイクの顔を見せ始めます。ボア×ストローク=87.0×67.2mmのショートストロークユニットは、4000回転を超える辺りからドンドン振動が大きくなりますが、覚悟を決めて(!?)スロットルを開けると、望外に軽々とSR400はカッ飛んでいきます。レスポンスもいい! シングルユニットの強い鼓動が直接、体に響いて、なんとも男らしい気分になります。
ちなみに、SR400に搭載される4ストロークエンジンは、1970年代にダートトラックやラリーレイドなどで活躍した「XT500」由来のもの。499ccシングルのストロークを縮めて、400cc内に収めています。そんなプチヒストリーを知っていると、SRに対するプライドと愛情が、ますます高まるに違いありません。ホント、現行モデルとして販売されていて、「感謝!」です。
ちなみに、SR400のボディカラーはブラックとブルーメタリックの2種類。価格は57万2400円です。
<SPECIFICATIONS>
☆SR400
ボディサイズ:L2085×W750×H1100mm
車重:175kg
エンジン:399cc 単気筒 SOHC
トランスミッション:5速MT
最高出力:24馬力/6500回転
最大トルク:2.9kgf-m/3000回転
価格:57万2400円
(文&写真/ダン・アオキ)
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