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S.I.H.H.2019で見つけた究極の職人技時計【CRAFTSMANSHIP】

&GP / 2019年3月20日 20時0分

S.I.H.H.2019で見つけた究極の職人技時計【CRAFTSMANSHIP】

S.I.H.H.2019で見つけた究極の職人技時計【CRAFTSMANSHIP】

【特集】CRAFTMANSHIP

価格が数百万円以上もするスイスブランドの高級時計は、工業製品の枠を大きく超えて、持つ人のステイタスやパーソナリティを表現するために作られるもの。その中には、ひと目見ただけで人を夢中にする、感動させるものがある。

そんな腕時計には必ず「サヴォア・フェール」が必ず織り込まれている。これはフランス語で「芸術の域に達した職人技」を意味する言葉。具体的には文字盤だったり、ムーブメントだったり、ケースだったり。

高級時計の世界2大見本市のひとつで、毎年1月にスイス・ジュネーブで開催される「サロン・インターナショナル・オート・オルロジュリ(国際高級時計展、略称S.I.H.H.)」。先日開催された今年のフェアでも、そんな「サヴォア・フェール」が結晶した新作腕時計が数多く登場した。

今回は「時計の顔」である文字盤にフォーカスして、職人技を極めたそんな最新・最高峰の高級時計をご紹介。

【Marquetry(マルケトリ)文字盤】

マルケトリはフランス語で、木の表面に違う色や質感の木をはめ込んで模様を作る「寄木細工」のこと。現在では、木だけでなくその他の素材を使ったものもマルケトリと呼ぶことも。細かな素材をひとつひとつ美しく並べ、寸分なく組み合わせる手間のかかる技法。今年もこの技法を文字盤に使った新作が登場した。

■贅沢な素材でパンテールの精悍な顔を表現

Cartier
「カルティエ ロンド ルイ カルティエ ルガール ドゥ パンテール ウォッチ」(960万円/予価)。世界限定30本。9月発売予定。自動巻き、イエローゴールドケース、アリゲーターストラップ、ケース径36mm

© Cartier

「王の宝石商にして、宝石商の王」と讃えられる世界最高峰のハイジュエリー&ウォッチメゾン、カルティエのこのモデルは、素材と技法が画期的。ブリリアントカットダイヤモンドと、ひとつひとつ彩色したマザー・オブ・パール(真珠母貝)を格子状に並べることで、メゾンを代表するアイコン的なデザイン・モチーフ、野性味あふれるパンテール(豹)の精悍な顔を描いた。

しかもその目には蓄光性のスーパールミノバ加工が施され、暗い場所では暗闇からこちらを見つめているように輝くという遊び心のあるサプライズも楽しい。

 

■繊細な技と感覚によって生まれた愛らしいパンダ

VACHERON CONSTANTIN
「ヴァシュロン・コンスタンタン レ・キャビノティエ “ワイルドパンダ”」
(価格:要問い合わせ)世界限定1本。入荷未定 自動巻き、ホワイトゴールドケース、ケース径41mm、3気圧防水

1755年の同社創業当時、時計はすべて一品製作。顧客の注文に応じキャビノティエと呼ばれる最上階の工房で作られていた。その伝統を継承し1本だけ製作される特別コレクション。この新作は何十種類もの小さな木片を組み合わせるウッド・マルケトリで希少で愛らしいジャイアントパンダを描いた。

周囲の葉だけで約130、パンダには約300もの木片が使われている。ムーブメントには文字盤という “キャンバス” に、時、分、日付、曜日を4隅の窓で表示する特別な自社製ムーブメントを採用。絵柄とケース素材が異なるモデル2本もある。

▲原画を描き、マルケトリのパーツ構成を考え、木片を切り出す。これをひとつずつ組み合わせて文字盤が出来上がる

 

【Engraving(エングレービング)文字盤】

エングレービングとは美術の世界では版画の素材に溝を掘ること。だが時計の世界では彫刻(スカルプチャー)、つまり金などの金属素材を彫り刻んで立体的な造形や装飾、文字などを刻み込むこと。文字盤はもちろんケースやケース裏にもこの技法が使われる。また規則的なものをギョーシェ加工と呼ぶこともある。

©JohannSauty-VacheronConstantin

■野生のタイガーが文字盤で躍動!

VACHERON CONSTANTIN
「ヴァシュロン・コンスタンタン レ・キャビノティエ “マジェスティック・タイガー”」(価格:要問い合わせ 世界限定1本 入荷未定)自動巻き、ホワイトゴールドケース、ケース径41mm、3気圧防水

“ワイルドパンダ” で使われているウッド・マルケトリでタイガーの住む森を、バス・レリーフ(浅浮き彫り)という彫刻技法でホワイトゴールドを素材に、エングレーバー(彫刻職人)がすべて手作業で、今にも獲物を襲おうと身構える野性味溢れるタイガーの姿を立体的に浮かび上がらせた作品。

タイガーの身体のさまざまな部分に施された異なる表面仕上げの精密さや、金の表面を酸化させることでクッキリとした縞模様も見どころ。このモデルの他に、タイガーがピンクゴールド製で、マルケトリの背景が異なるモデルもある。

 

【Enamel&Guillocheur(エナメル アンド ギョーシェ)文字盤】

エナメル装飾は金属の表面にガラス質の釉薬を焼き付ける技法。特に約800度の高温で焼き付けるものはスイスでは「グラン・フー」と呼ばれ、スイスでも職人はごくわずか。またギョーシェは金属の表面に規則的な彫刻加工を施すこと。手作業でも機械でも行われる。どちらもやり直しができない繊細な装飾加工だ。

▲まず文字盤にギョーシェ加工を行い、次にガラス質の釉薬を載せて高温で焼き上げる。ひとつひとつが微妙に異なる

 

■吸い込まれるようなブルーエナメルの輝き

Jaeger-LeCoultre
「マスター・ウルトラスリム・ムーン・エナメル」(395万円 限定100本 今秋発予定)自動巻き、ホワイトゴールドケース、アリゲーターストラップ、ケース径39mm、5気圧防水

シンプルな超薄型の機械式腕時計は最もエレガントで、またその開発・製造には複雑時計と変わらぬ特別な技術が必要。そしてこのジャンルで誰もが認めるのが、ジャガー・ルクルトの丸型メンズウォッチ「マスター・シリーズ」のウルトラスリムモデル。

今年はこのコレクションから、エナメルとギョーシェ、2つの伝統的な職人による加工を組み合わせた特別限定モデルが登場した。深いブルーのエナメルは半透明のフランケエナメルというタイプで、その奥から放射状のギョーシェ模様が浮かび上がる。その整然とした美しさは感動的。

 

【Miniature(ミニアチュール)文字盤】

ミニアチュールは日本語で「細密画」。もとは中世の時代に聖書などの写本に描かれた挿絵のこと、今では極細の筆で小さな面積に精密に描かれた画のこと。時計の世界では伝統的にガラス質の釉薬で金属素材の上に画を描いて焼き上げるエナメルの細密画が文字盤やケースに施されてきた。華やかな色彩と繊細な表現に心惹かれる。

▲原画を細密画の職人が文字盤に再現

▲原画を描くミロ・マナラ氏

 

■ファンタジックな海の物語が文字盤に

ULYSSE NARDIN
「ユリス・ナルダン クラシック マナラ」(300万円/予価 世界限定100本 4月発売予定)自動巻き、SSケース、アリゲーターストラップ、ケース径40mm、30m防水

腕時計におけるエナメル技法の復活に大きな役割を果たし、昔の帆船や動物など伝統的なモチ ーフを細密画で描いた文字盤のモデルを得意とするユリス・ナルダン。だが今年はイタリアのマンガアーティスト、ミロ・マナラが自身の代表作の世界を描いたカラーイラストを文字盤に、発色の鮮やかなアクリル絵の具の細密画で再現した、エロティックで美しい限定モデルを発表した。

イラストのバリエーションは全部で10種類。それぞれにオリジナルイラストのレプリカが付属する。ローズゴールドケースモデルもある。

>> 【特集】CRAFTMANSHIP

本記事の内容はGoodsPress4月38-39ページに掲載されています

 

(取材・文/渋谷ヤスヒト)

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