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独自の哲学で音へのこだわりを貫き通す気鋭ブランド「final」の真価【CRAFTSMANSHIP】

&GP / 2019年4月1日 20時0分

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独自の哲学で音へのこだわりを貫き通す気鋭ブランド「final」の真価【CRAFTSMANSHIP】

【特集】CRAFTSMANSHIP

高品質なヘッドホンやイヤホンを手がけるオーディオブランド「final(ファイナル)」は、独自の開発姿勢により、近年、高い支持を集めている。多彩かつ独自性あふれる製品を生み出す秘密に迫る。

■自社工場だからこそ作れる最高峰のヘッドホン

ここ数年、オーディオ関連の専門家や愛好家から高い支持を集めているfinal。その歴史が始まるのは今から40年以上前のことで、当初はハイエンドのオーディオショップとして創業した。

ブランド初の製品はレコードカートリッジで、以降、ハイエンドオーディオのフルセット販売や業務用機器の音のチューニングなど、音作りに関わるさまざまな事業を手掛けてきた。

▲ヘッドホンのハイエンドモデルは、川崎市の自社工場で製造。専門スタッフが手作業で緻密な調整を繰り返し、組み立てていく

本格的にイヤホンやヘッドホンを展開し始めたのは、つい最近のことだ。日本モレックスの子会社として設立されたS'NEXTが2014年に独立。この時から徐々にfinalブランドでのイヤホンやヘッドホンが増えていった。

▲熟練のスタッフがひとつひとつのパーツを丁寧に組み立てる

そのものづくりの特徴は、音響工学的に正しい音を追求すること。マーケティング的な観点でトレンドに沿った製品を作るのではなく、音響工学に基づいた理論をベースに開発し、実証実験を繰り返して、製品化するというものだ。

▲組み立て途中の「D8000」。パーツの接着工程後、乾燥させて、イヤーパッドなどを装着する

この考え方を実践すべく、川崎市の本社に自社工場を併設し、ここで開発や設計を行なっている。ハイエンドのヘッドホンについては、製造も自社工場で手がけ、振動板を独自開発した機械で1枚ずつ作り、コイルも自分たちで巻くというこだわりようだ。

▲自社工場は研究所のような雰囲気

こうした音作りに対する徹底した姿勢は、エントリーモデルのイヤホンにも反映されている。2017年に登場した「E3000」は5000円ほどという価格に見合わない音の良さでたちまち話題となり、幅広い層の支持を集めた。2018年にはさらに低価格の「E1000」も発売。

▲工場内には音質の検証用機器も設置している

「いい音をより多くの人に届けたい」という思いとものづくりに対する真摯な姿勢が、多彩な製品を通して着実に広まりつつある。

 

■finalが生み出してきた傑作5モデル

▼艶やかな筐体が引き出すプレステージサウンド

「SONOROUS X」(62万9000円)

ヘッドホンの頂点を目指したモデル。振動板にはチタンを使い、ドライバーユニットのハウジングは無垢のアルミから削り出したもの。妥協のない明瞭な音と美しさを高次元で実現した。

 

▼ホールで聴く余韻を美しいフォルムで再現

「Piano Forte X」(25万3500円)

ライブ会場やホールの臨場感をイヤホンで再現。イヤーピースがない仕様だが、音の余韻までも表現できるクロム銅筐体や大口径ドライバーにより、美しい響きを堪能できる。

 

▼外観もエージングして経年変化を楽しむ

「Heaven V aging」(3万7800円)

筐体のエージングも楽しめるモデル。ボーカルを自然な音で響かせる真鍮を無垢のまま使い、バレル研磨を施してザラつきがある質感を再現。年月を経ると独特の味わいが生まれる。

 

▼共振を分散させる煌びやかな凹凸模様

「Heaven VⅢ」(7万8600円)

シングルタイプのBAドライバーを採用。金属微粉末とバインダーを金型で整形し、焼結して形状を整える技法で、背面に独特な凹凸模様を施した。これは共振を分散させ、音を安定させる働きがある。

 

▼広大な音場を生み出す異形デザイン

「LAB Ⅱ」(生産終了)

今までにない製品を作るべく、独特な形状を3Dプリンタを用いて緻密に造形。複雑かつ理想的な二重メッシュ構造と、フルオープンの背面により、広大な音場を再現できる。

【finalが目指す“ブームに流されない音作り”とは?】

他とは一線を画すモノづくりで、高品質な製品を世に送り出し続けるfinal。そこにはどんな思いが込められているのか? 多彩なオーディオ機器に触れてきたAVライターの折原一也さんが、 finalを手がけるS'NEXTの細尾社長にその真意を聞く。

 

■大手に負けない開発力を持つ

折原:私もfinalの製品をいくつか所有しているのですが、すごく真面目なメーカーだという印象があります。

細尾:今のオーディオ製品は、マーケティング的な視点で音質もトレンドを追うケースが多いのですが、私たちは人間が持っている本質的な音の感じ方を学問的に追求しています。それを製品化すると地味な印象になるので、真面目だというイメージになりやすいと思いますね。

折原:でも「E3000」は売れましたよね。僕も試聴してすぐに「この価格でこの音はすごい!」と衝撃を受けました。

▲初の製品であるレコードカートリッジは、ソニーなどで活躍した故・森芳久氏が手がけたもの。名エンジニアがfinalを支えてきた

細尾:それは良かったです。私たちは、一般的な音楽ファンにいい音が届かないという現状を何とかしたいという思いも抱いています。オーディオマニアと音楽ファンではヘッドホンやイヤホンの選び方が全然違っていて、そんなにお金をかけない層にも自分たちの考えを反映した製品を使ってもらいたいと思っていたんです。

折原:ヘッドホンとイヤホンは音響特性に違いがありますが、その辺の開発はどう対応しているんですか?

細尾:確かにヘッドホンはスピーカー寄りの考えで設計できますが、イヤホンは少し違いますね。でも、当社にはオーディオ機器を一から開発できるベテランエンジニアが在籍していて、音響工学の専門家もいます。小さい会社ですが大手に負けない開発力は備えていると思っています。

▲振動板の製造マシンについて説明を受ける折原さん。音に対するこだわりから、この機械も自社で開発した。

■効率が悪くてもいい音を多くの人に届けたい

折原:自社工場を構えているのはなぜでしょうか?

細尾:私たちのヘッドホンは振動板から製造しているのですが、1枚ずつ作る必要があって、これだと効率が悪く、外部の工場では対応してもらえないのです。でも、そこまでやらないと自分たちが目指す音が作れない。高い商品なので、的確な修理対応を行うためにも開発スタッフがいる自社工場は必要なのです。

▲「D8000」は長く使ってもらうため、修理しやすい構造を採用する

折原:ビジネス的には難しいでしょうが、ユーザーとしてはありがたいですね。ちなみに、いま主流になっているワイヤレスタイプは作らないのですか?

細尾:まず私たちの目指す音質が再現できることが最優先で、それに見合うチップなどが登場するのを待っています。ただ、今年から性能が高いものが出始めていて、私たちも開発を進めています。来年には自信を持てる製品を出せると思います。

折原:finalの音をワイヤレスで堪能できるようになるわけですね。それは楽しみです。

細尾:チューニングを楽しめる「MAKE」シリーズの派生モデルや、イヤホンのフラッグシップモデルも開発しています。マーケティング的な発想だと、私たちの思いを反映した製品はできませんし、大手にはかないません。他にはできない私たちならではの面白い製品をこれからも作っていきたいですね。

 

S'NEXT代表取締役社長 細尾 満さん

大学卒業後、建築系上場企業に入社。退職後、デザイン設計やコンサルティングなどを手がけた後、S'NEXTに設立メンバーとして参加。2014年に同社の代表取締役に就任した

 
 

AVライター 折原一也さん

オーディオ・ビジュアル専門誌やWeb媒体、商品情報誌などで、デジタルAV機器のレビュ ーをはじめ多彩な記事を執筆。 2009年よりVGP(ビジュアルグランプリ)審査員も務める

 
 

■finalならではの音を楽しめる主要モデル

▼平面磁界型を再発明し理想のヘッドホンを追求

「D8000」(38万8000円)

独自開発したAFDS(エアフィルムダンピングシステム)により、平面磁界型ならでは繊細な高域と、ダイナミック型の開放感や量感を両立。圧倒的にリアリティのある音を楽しめる。自社工場で生産し、長期間使用することを想定した、修理しやすい設計を採用。 2年間保証も付いている

▲空気の動きを調節する構造で、音質と量感を追求

▲密閉度の低いイヤーパッドで自然な音の広がりを再現した

▲筐体には高級カメラに使われるレザー塗装を施す

▲ケーブルは3.5mmミニプラグと6.mm標準プラグを同梱

 

<手を出しやすい購入プランを用意>

約40万円と高価なモデルながら多くの人に手に取ってもらうべく、finalでは独自のクレジットプランを用意。約半額となる24カ月分のクレジット払いを終了後、商品を返却することもでき、購入のハードルを下げている。

 

▼クリアで没入感のあるサウンドを実現

「E5000」(実勢価格:2万9800円前後)

6.4mmのダイナミック型ドライバーを搭載したリケーブル対応モデル。低域から高域まで量感とクリアさを感じる音を実現した。筐体はステンレス製で鏡面仕上げを施している。

 

▼納得の音を楽しめるハイコスパモデル

「D3000」(実勢価格:5480円前後)

6.4mmのダイナミック型ドライバーとユニット背面のメッシュ加工により、広い音域で解像度の高いクリアな音質を実現。音の広がりも実感できる。ステンレス製筐体を採用。

 

▼手頃な価格帯でライブ感覚の臨場感

「E1000」(実勢価格:2400円前後)

上位モデルと同じ設計や音響工学を盛り込みつつ、樹脂製の筐体などにより低価格化を実現。ポップスやロックに向いたチューニングを施している。本体カラーは3色。

 

▼自分の手で好みの音にチューニング

「MAKE1」(実勢価格:5万9800円前後)

付属フィルターを自ら交換することで、77通りに音質を調整できるモデル。BA型ドライバーを3基(高音用×1、中低音用×2)搭載する。筐体は鏡面仕上げのステンレス製。

 

▼音質の選択肢は800通り以上!

「MAKE2」(実勢価格:3万2800円前後)

847通り以上に音質をチューニング可能。 BA1基とダイナミック型1基からなるハイブリッドドライバーを搭載。筐体はステンレス素材にガンメタリック仕上げを施している。

 

▼音質と使い勝手を高いレベルで両立

「F7200」(実勢価格:4万9800円前後)

筐体本体が2g以下の超軽量小型設計ながら、鼓膜に近い位置にBAドライバーユニットを配置し、ダイレクトで生々しい音質を実現。装着感や遮音性も高い。リケーブルにも対応。

>> 【特集】CRAFTMANSHIP

本記事の内容はGoodsPress4月66-69ページに掲載されています

 

(取材・文/高橋智 写真/田口陽介)

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