1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. ライフ
  4. ライフ総合

文房具は職人技とコダワリの宝庫です!【CRAFTSMANSHIP】

&GP / 2019年4月3日 19時30分

文房具は職人技とコダワリの宝庫です!【CRAFTSMANSHIP】

文房具は職人技とコダワリの宝庫です!【CRAFTSMANSHIP】

【特集】CRAFTSMANSHIP

日本にはコダワリの詰まった文房具が多数存在する。しかし、そのコダワリが細かすぎて、伝わりにくいモノも少なくない。そこで、日本初の文房具トークユニット「ブング・ジャム」の3人が、埋もれた良品をフックアップ!

▲(左から)きだてたくさん、高畑正幸さん、他故壁氏さん

文房具ユーザー 他故壁氏さん
コレクターではなくユーザーとしての立ち位置を守り続けている。しかし他の2人からは「他故さんが一番ヤバイ」と言われ続ける。

▲他故壁氏さんセレクション(上段左から)「ジョッター」「カスタムURUSHI」「AQUA DROPs ドキュメントファイル」(下段左から)「能率手帳ゴールドメモランダム」「Arch消しゴム」

 

文具王 高畑正幸さん
テレビ東京系「TVチャンピオン」文具通選手権で3連覇を達成し、名実が伴った文具王。 YouTubeチャンネルでは日々動画を投稿中。

▲高畑正幸さんセレクション(上段左から)「透明鉛筆削りケズール/透明鉛筆削りトガール/透明2枚刃鉛筆削り」「セロテープ 小巻 カッターつき」(下段左から)「フェアライン3プラスクリップ」「コンセプション」「鉛筆シャープ」

 

文房具ライター きだてたくさん
雑誌やWEBで最新文房具の紹介や使いこなし術などを語る文房具ライター。また珍妙奇態な色物文具の世界的コレクターとしても有名。

▲きだてたくさんセレクション(上段左から)「PROCYON」ツイストノート A6のリング/マルマンニーモシネ A5 ノートパッド 特殊5mm方眼罫」「ペンカットプレミアチタンコート」(下段左から)「折りたたみカッティングマットA4サイズ」「ハイパーM厚型特専黒刃(M厚)」

■文具の良さは触って使って初めてわかるもの。使用感の心地良さまで考えられています(他故さん)

他故:まず私から。情報カードという5×3インチの紙が好きでメモによく使うんですけど、この紙を挟む革の「ジョッター」を紹介します。

きだて:コンパクトな画板みたいなものですね。

▲革が固く立ったままでも書きやすい!大丸藤井╳ソメスサドルセントラル「ジョッター」(ペン差しなし、ペン差し付き)」

他故:これは札幌の大丸藤井セントラルが、ソメスサドルという日本唯一の革製の馬具メーカーとコラボしたオリジナル商品です。革がものすごく厚くて丈夫で、固くて圧倒的に書きやすい。6年くらい使ってますけど、壊れないしイイ艶が出て肌触りも◎。ペンが入る製品もあります。

▲手帳技術を活かした最高のメモ帳です!ナガサワ文具センター「能率手帳GOLD MEMORANDUM」

もうひとつ、表紙の革が気持ちいい、「能率手帳ゴールドメモランダム」。もともと能率手帳ゴールドという週間ダイアリーがあるんですが、これは同じサイズ、同じ紙で全部メモ帳になっている。ナガサワ文具センターのオリジナル商品です。インドヤンピーっていう羊の革が柔らかくて開きやすい。中の紙も薄いのに、手持ちのどの万年筆で書いても裏抜けしない。筆記用としては万能に近い紙です。

高畑:日本を代表する手帳メーカーの技術がそのまま反映された小さいノートだよね。

他故:そう! ポケットに入る紙が大好きで。常に体のどこかに紙を持っていたい。まあフェティシズムに近い話になってしまいましたけど。

きだて:近いじゃなくて、フェチそのものだよ(笑)。

高畑:僕はクツワから出ている鉛筆削りから紹介します。「ケズール」「トガール」「2枚刃」とどれも同じようなパッケージですが、3つとも違う商品でして。ケズールは削り具合を調節するもの。ピンピンに尖った鉛筆は最初から細い線が書けますが、例えば絵を書きたい時など色鉛筆は折れやすいのでもう少し先端を抑えめにしたい用途があるんですね。

一方、「トガール」はどれもピンピンに尖るんですが、鉛筆の先端の尖り角度が変えられるんですよ。細く鋭角に尖ってる鉛筆に対し、こっちは鈍く尖ってるんです。

▲削り方がここまで細かく変えられる!クツワ「透明鉛筆削りケズール」「透明鉛筆削りトガール」「透明2枚刃鉛筆削り」

きだて:本当に小学生がここまで求めてるのかというところは疑問ですけどね(笑)。

高畑:「2枚刃」は表と裏に刃がついていて、一度で2度削りできるので、従来の約2倍速く削れる。普通に削れるだけで十分なのに、わざわざ機能を足したものを3つも作るのが日本的。こんな豊かな生態系のある文具業界は世界でも稀だと思いますね。

▲フラットな切り口が未来の常識になる!? ニチバン「セロテープ 小巻 カッターつき(まっすぐ切れるタイプ)」

■文具は常に進化して使いやすくなっている。メーカーのこだわりをリスペクト!工夫してくれてありがとうと言いたい(高畑さん)

きだて:次は僕から。実はここ4~5年で万年筆を使い始めたビギナーなんですが、今のところ一番これすごいと感じているのがプラチナ万年筆の「プロシオン」。普通の万年筆ってペン先の根本にインク吸入口が付いてるので、首の部分までインクに漬けなきゃいけない。そうするとインクを入れ替えるたびに拭いたりして面倒くさいんですが、「プロシオン」の吸入口はペン先のちょうど中間くらい。

▲インクを吸う作業がラクになった!プラチナ万年筆「PROCYON」

だから、ペン先の真ん中くらいまで漬けるだけ。ケアが楽だし、インクが少なくなった状態でも吸入しやすい。万年筆ってキャップしててもすぐにインクが乾いちゃうんですけど、スリップシール機構によって1年くらい放置してもペン先が乾かず書ける。何より嬉しいのはこれで5000円!

他故:そんな初心者に対し、やり過ぎた万年筆を出すことになりますが。パイロットコーポレーションの「カスタムURUSHI」です。やり過ぎなのは異様にでかいペン先。

▲比べるとこんなに大きさが違う!(左)「PROCYON」(右)パイロットコーポレーション「カスタム URUSHI」

高畑:プロシオンと並べると親子くらいの差があるよ。

きだて:初心者に対するマウンティングですね(笑)。

他故:大きいことで非常に柔らかくしなって、文字がサラサラと進んでいく。多分長くドライブしていたい良い車ってこういうことじゃないかなと。一番効果的だったのが年賀状ですね。50枚書こうが100枚書こうが苦にならないし、もっと書きたくなる。

あと、漆の軸のしっとりした感じを味わうと、他の樹脂軸が物足りなくなる。ここより上は、もう宝飾品とか工芸品とか飾る万年筆で、実用の万年筆としては人類の手に渡る最高級品だと思います。

高畑:実用品でいくと、このニチバンの「セロテープ小巻カッターつき」も進化しています。新商品はテープのギザギザの部分がすごく小さくなってほぼフラットなんですね。これにより見た目がキレイになって、ギザギザの谷の方からテープが裂けちゃうことが少なくなります。

でも製品の見た目は従来品とほぼ一緒なんです。気が付かないうちに見慣れたモノがいつの間にか進化してて。今はテープの先端を絵で表現する際、ギザギザを書くのは当たり前ですが、この製品が普及したら、やがて子供から「このギザギザって何?」って聞かれる時代が来るんじゃないかなと。

きだて:この小巻って、たぶん日本で一番使われてるテープカッターでしょ。それがついにフラットカットになった。この状況は震えるよ!

他故:消しゴムの進化も気づかれにくくて。サクラクレパスの「Arch」はスリーブっていう紙のケースの先端部分が丸くアーチ状になっています。消しゴムはスリーブの角に力がかかって、そこから折れてしまうことが多いんですね。正しく持てばここに力がかからず、持つところに滑り止め加工もされています。中に入っているフォームイレーザーという消しゴムは、消しカスが糸状にまとまるので、つまんで捨てやすい。リビング学習でも周囲を汚しにくい。

▲スリープの工夫で折れにくくなった!サクラクレパス「Arch消しゴム」

高畑:さらに微妙な工夫を挙げると、オートの「コンセプション」っていうシャープペン。側面に並んでいる丸い窓はダイアルを回すと色が変わるんですが、これは1回ノックしたときに出てくる芯の長さを表示しています。

▲1ノックで芯を出す長さが調節できる!オート「コンセプション」

きだて:僕がいつものシャープペンを使うときは、大体ノックを3回やってほんの少しだけ戻す(笑)。使う側がいちいち微調整する手間を機能で解決してくれるって、すごい便利ですよね。

高畑:これを製図用でない一般筆記用で出しているのが面白い。コクヨの「鉛筆シャープ」も面白くて、シャープペンの一個の欠点として芯を入れ替えるときにキャップを外すと、キャップか消しゴムがどこかいっちゃうことがある。これはそうならないようキャップがなくて、後ろに穴が開いていて、ここからダイレクトに芯を入れるんです。

でも、単に穴が開いてるだけなら、ひっくり返すとたまたま穴から逆流して芯が本体から出てくる可能性が万が一あるじゃないですか。それを絶対起こさないよう、通常分解できない場所に部品があって、芯を入れると開き、芯が本体の中を通り抜けると閉じている。

きだて:逆止弁だ!

高畑:ユーザーは単純な構造だと思っているけど、実は複雑な構造が隠されています。

▲見えないところに逆止弁パーツが!コクヨ「鉛筆シャープ」

■自分にフィットする文具は探せば見つかる。それってスゴイことだと思いませんか?(きだてさん)

きだてペン型ハサミも匠の技が生きている世界です。レイメイ藤井の「ペンカットプレミアム」は他社製品と違い、柔らかい樹脂のハンドルが出てきます。ハンドルがあることで、段ボールなども力をかけて切ることができる。僕はよく喫茶店で試作品作ったりすることあるんですが非常に便利です!

▲スライドするとハンドルが出てくる!レイメイ藤井「ペンカットプレミアチタンコート」

高畑:普通は作らないよ(笑)。

きだて:オルファの「ハイパーM厚」も最高。M厚は刃の幅が通常のカッター(S刃)に近くて厚みが大型のL刃に近い刃です。カッターで曲線切りや細工切りをする時、L刃だと小回りが効かない。でも、S刃だと段ボールを切る時に刃がしなって怖い。つまり、段ボールの曲線切りに最適!

▲ゴム引きボディで軍手でも滑りにくい。オルファ「ハイパーM厚型特専黒刃(M厚)」

他故:狭すぎねーか(笑)。

きだて:最近このM厚に滑りにくいハイパーXボディ版が出たんです。後ろに付いてる鉄の爪が万能で。段ボール開梱用のオープナーだけでなく、段ボールに折り線を付けるのにも便利だし、机の上に付いた塗装を削ったり、何なら首の後がかゆい時に孫の手としても使える。そしてついに、鋭角に研ぎ上げられた特専黒刃のM厚刃も登場!

高畑:きだてさんの考える最強カッターだね。

きだて:その通り。どこに出しても恥ずかしくないカッターです。よくぞ作ってくれた。ちなみに僕のカバンにはカッターマットも欠かせません。

他故:統一感あるなあ。

きだて:「折りたたみカッティングマット」には賢い工夫も。折り線が真っ直ぐではなく波状になっていて、刃が折り線に落ち込まずにまっすぐ切れる。カッターマットって刃も机も保護するもので、絶対使うべき製品。収納しやすいことで使いやすくなった。

▲折り畳み選が波形で刃が溝に埋まらない!ナカバヤシ「折りたたみカッティングマットA4サイズ」

他故:確かにまな板置かないで包丁使う人はいないわけで。きだてさんと同じく自分にフィットした文房具が、リヒトラブの「ドキュメントファイル」。こういうファイルって余計なものまで入れたままにして、整理するのが嫌になるくらい膨らんだりするんですが…。

でもこれだと、表紙のフタを折り返せばゴムバンドで閉じたまま中の書類を確認できる。透明な板で挟んで書類を保持しているだけなので薄くて持ち運びやすい。でも落ちない。側面が無いからクリアファイルもそのまま入れられる。タスク管理型の整理をしている私には便利なんですが、伝わりにくい。

▲薄くて開きやすくて整理整頓に便利。リヒトラブ「AQUA DROPs ドキュメントファイル」

きだて:自分のベストを追求するのは大事でしょ。僕はリングノートのリングが手に当たるのが嫌だから、上辺をリング留めしたA5ノートがいい。でも大好きなマルマンの「ニーモシネシリーズ」にはそんな製品が無い。無いなら自作ですよ。

▲欲しいノートが無ければ自分で作ればいい! リヒトラブ「ツイストノート A6のリング」+マルマン「ニーモシネ A5 ノートパッド 特殊5mm方眼罫」

リヒトラブの「ツイストノート」はルーズリーフのように開閉できる特殊リングを使っているので、ニーモシネのA5パッドを分解して専用パンチで上辺に穴を開けて、A6ノート用のツイストリングで綴じました。メーカーがいろんな技術をつぎ込んだ便利な製品を作ってくれてるからこそ、自分ベストなノートも自作できるんですよ。

高畑:先程に続き、きだてさんの最強のノートができたと。

きだて:自分の快適さのためには努力を惜しまない!

高畑:最後にこれだけ紹介したいのですが、セーラー万年筆の「フェアライン3プラスクリック」。見た目は普通の3色ボールペンですが、なんと本体の中によく使う黒色の芯の予備が入っているという。

他故:4色ボールペンにしなかったってすごいね。

高畑:そう! 4本入るスペースはあるけどあくまで3色。画期的なのに、見た目が奥ゆかしくて伝わりにくい!

▲本体の中にもう1本予備芯が隠されてる!セーラー万年筆「フェアライン3プラスクリップ」

今回思ったのが、3人とも文房具の楽しみ方が違っていて、他故さんは手触りだとか質感、きだてさんは自分に合うかどうか、僕はメーカーの工夫に惹かれている。

日本は、喫茶店で段ボール工作する人が満足できる文房具が揃うほど、選択肢が幅広い(笑)。だからこそ、こういうディテールや職人技を知らずに、なんとなくハサミやペンを選んだりするのはもったいないですよね。

▲1人が紹介した文具に他の2人が知識をかぶせるなど、文房具愛にあふれた3人のトークはつきない。「それイイよね!」と、終始笑顔がこぼれる座談会は3時間近くに及んだ

>> 【特集】CRAFTMANSHIP

本記事の内容はGoodsPress4月72-55ページに掲載されています

(構成/津田昌宏 取材・文/サンシャイン岩崎 写真/宮前一喜<APT>)

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください